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ギルドの聖女



「相変わらず、貴方達の活躍が聞こえて来てるわ」


 ギルドの執務室にて最近恒例となった打ち合わせの時の事です。


 突然ルミエール様が話を始めました。


「サトウのスキルの事は聞いていたけど…素晴らしいわね。…とても助かっているわ」


「…いえ、そんな。こちらこそ…」


 ルミエール様の言葉に照れた様子の佐藤くんですがその瞳は嬉しそうに輝いています。


「これからも、スキルアップのための協力は惜しまないから、よろしく頼むわね」


「はい!」


 そんな2人の様子に私の顔にも自然と笑みが浮かびます。


「…ところで、ヤマダ」


 ニコニコとしている私へと振り返ったルミエールさまはこちらを向いて何やら真剣な顔で話を始めました。


「…ヤマダも…いつも薬草でみんなを治してくれてとても助かっているわ……」


「…はい!」


 私は佐藤くんみたいな凄いスキルは持っていないので地味に薬草で怪我した人達の回復を担ってきました。


「…とても、助かっては…いるのだけど…

 貴方はいったい、何の薬草をつかってるの…?」


「…へ?」


「…貴方の使う薬草の効能だけど…明らかにおかしくない…?」


「…?」


「…この間…討伐で腕を失った冒険者の腕を生やしたと聞いたわ……」


「…はい…」


 それがどうしたのだろう…



「…この辺にそんな効能の薬草があるなんて…そもそもそんな効能の薬草なんて聞いた事ないわ…」


「…あ、」


 そうでした。


 うっかり、目に付いたので治してしまったのですがこの辺には確かにそんな効能の薬草は少なかった気がします。


 しかし、生えていないわけではないのですよ。


「…いえ、たまたま見つけましたが、ちゃんと生えていましたよ」


それに、上手く調合すれば腕ぐらい生やせます。


「…いったい何処に…それに、貴方のその薬草の知識はいったい何処で手に入れたの…?」


「…それは、僕もずっと気になってた…」


じっと何かを探るようなルミエール様の視線に重なって、何故か佐藤くんまで興味津々でこちらを見つめます。


「…えっと…そんなに大した事ではないのですが…強いて言うなら…“お城”ですかね?」


「「…お城?」」


「…お城の書庫には色々な本や資料が置いてありましたので…」


これは嘘ではありません。


まだ、召喚されたばかりの待遇の良い頃にお城を見てまわっていたところ、たまたまお城の書庫を発見したのです。


人の出入りも少なく、そこの管理者の方達も何も言わなかったので何度か通わせていただきました。


聖女だった頃に送られてきていたマナーや魔法関連の本だったり、周辺地域の地図や国や領地の特色や特産品…それに、薬草の分布図などという物もありました。


それに、以前私が報告していた薬草の効能や植物の形態や生態、製法や用途などの情報をまとめた資料なども置いてあった為、懐かしくてその中身を確認したりもしていたのです。



「…あぁ!…たしかにお城の書庫には前の聖女が書き記した薬草の図鑑が残ってるって聞いた事があるわ…」


ルミエール様が軽くポンと手を打ちました。


「…いえ、図鑑ではないのです…確かに絵や図入りで厚みのある資料ではあるのですが…」


私の報告書を図鑑と言われ困惑しながらも返事をすると、ルミエール様は何となく納得した様子を見せます。



「…なるほど。治癒の様子がよく似てると思ったのだけど…彼女の資料を参考にしていたのなら確かに薬草を使っての治癒の仕方も似てくるのかも…」


「…」


え、ルミエール様…似てるって、まさかとは思いますが前世の私(聖女)の事ではないですよね?



「…それにしても、誰も知らない薬草の情報なんて…もし良ければ……その知ってる薬草の情報を他の者達にも教えてくれないかしら…?…もちろん報酬はそれなりに払うわ…」


「いいですよ」


「…え、良いの?本当に?」


ルミエール様からのお願いに快く返事をしただけなのに何故か驚かれてしまったようです。


「…こんな事頼んでおいてアレなのだけど…こんな貴重な情報は慎重に扱わないとダメよ」


「…?…でも、ルミエール様なら大丈夫なのでは…?」


「…!!」


「…それに、こんな大変な時はみんなで協力し合わないと乗り切れませんしね」


「…あなたって子は…」



こうして、私の薬草の知識をギルドのみんなで共有できるように協力する事が決まったのです。


……そして、そんな私の姿がいつの間にか“ギルドの聖女”と呼ばれるようになっていたなんて……私は全く気がついていなかったのです。







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