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召喚後の生活


異世界に召喚されてから、もうすぐ3週間が経ちます。


“勇者”スキルを持つ進藤君を中心に、戦闘訓練を受けたクラスメートたちは日に日に自信をつけているようでした。



「おれたち、マジで最強じゃね?」


「勇者パーティーってやつだな!」


「異世界でチートとか、最高すぎる!」


聞こえてくる会話に思わず苦笑してしまいました。


彼らにはもう何かを言っても通じないでしょう…


残念な事に…彼らの歴史は既に黒く染まりつつあります。





一方で、戦闘に適性のない「戦力外組」は焦りとストレスを溜め込んでいる様子でした。


「……はぁ、私たち、どうすればいいんだろ」


「何もできないまま、置いていかれるのかな……」


環境がガラリと変わったせいで、ストレスを感じているのはみんな同じです。


その中でも派手な活躍の場もなくこちらで過ごさなければいけない子達は徐々に生活に対する不安などが大きくなっているのでしょう。


しかし、それがどれだけ自分達を救っているのかには気がつかないようです。



危険で過酷な旅になんて行かない方が良いに決まっています。


戦闘に特化すればする程、前線へと立たされ他の人にはいけない様な過酷な場所へと送り込まれてしまいます。


…しかも、成功した先に待つのは…黒歴史。



ですので、そんな特化したスキルから遠ければ遠いほど逃げることも拒否する事も人々から許容されやすくなり危険からも黒歴史からも遠ざかる事が出来るのです。



しかし、残念な事にそんな幸運な状況だという事に彼女達は気がついていないようです。




私はいつも通りのんびりと食事をしながら、クラスメイト達の様子を観察していました。


召喚されたクラスメイト達はあの快適で平和な世界で育った13~14歳の子達であり、まだまだ親の庇護下におかれるべき年齢です。


こんな、生活レベルが一段下がった世界で自分の身の回りのことを学びながら生活基盤を整えるなんてまず無理だと思います。


いくら王宮とはいえ、生活環境はもちろんのこと食事も慣れない味でストレスは溜まる一方だと思います。


それに、こちらの世界では13~14歳はもう立派に働いている子が多いです。城の者達も子供扱いはしてくれないでしょう。


更に…いくら召喚されたとはいえクラスの子達は平民だと認識されています。


お城に勤める者はそれなりの身分の者達ばかりです。能力のない者達に対してはきっと態度も良くないのでしょう。


もちろん、私もお世話なんてして貰えません。


しかし、そうなるとスキルが希少でない子達にとっては良い所のない居心地の悪い環境なのだと思います。



そんな状況であるため、最近では戦力外組のクラスメイトたちは端の方に座ってひっそりと過ごしています。




…私は今世では“聖女”になる気はありません。


しかし、そうは言っても“聖女”の能力はあるのです。


…しょうがないのでみんなに気づかれない範囲で洗浄や食べ慣れた味の食事、睡眠や疲労回復とふとした時のメンタルケアや愚痴聞くらいはしたいと思いました。


…これは黒歴史…には入りませんよね…?









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