92話
僕は、ソロ活動になる日を狙って、『ゴブリンの集落』にちょっかいをかけてみる事にした。
相手の出方を伺うつもりで、出来れば『ゴブリン・メイジ』を狩って帰りたいと、目標も決めた。
僕の見立てでは、集落自体も、遥君の支援があればワンチャンある相手だ。
ソロでは、あの族長風ゴブリンには絶対敵わない。
それほどの風格だった。
だから今日は、目標を仕留めつつ、族長が動く前に撤退する。
これが、僕が生き残る上での、最低条件だ。
族長風ゴブリンの、あの風格を思い出すだけで、僕は緊張で意識が遠のきそうだよ・・・。
だけど、僕だって経験して成長してるんだ、この程度の事で倒れてなるものか!
こちとら、日々、美少女エミリアに攻め立てられてるんだぞ!!
ゴブリンなんかに、失神させられたら、エミリアに申し訳が立たないんだよ!
あれで、結構強いんだよ!?
父親仕込みの蹴りとか、ヤバイんだって!
あの長い足で、遠心力をつけてこられたら、刈り取られるのは、意識だけじゃあ済まないかもしれない。
まあ、蹴られるよりも、喰われる危険性の方が最近高い気がするけど。僕の覚悟が決まるまで、今少しまってほしいです!
雑念を努力して振り払いつつ、僕は3階層にある『ゴブリンの集落』を目指す。
みんなでわいわい言いながら、ダンジョンを彷徨うのも嫌いじゃないけど。僕は、こうして1人で動く時間も、どうしようもなく好きだ。
力を抜き、他人に合わせる事なく、虚勢を張る事もなく、ありのままの自分を見つめなおして、受け入れる時間だ。
思いと身体を、同期する時間だと言ってもいいだろう。
我が儘だったり、欲張りだったり、見栄っ張りな、目を背けたくなる自分を、時に苦笑しながら受け入れていく。
自分ってこんなもんだよな?ってね。
別に卑下してる訳じゃないよ?
許してるんだよ、背伸びすんなよってね。
人によっては、背伸びし続ける事が成長だって言うかもね。
でも、それでは僕は疲れちゃうんだ。
だからこうして、1人の時間に、自分の歩幅を確かめるんだよ。
いいだろう?
他人に見られるのは、恥ずかしいんだ。
再び僕はここにやって来た。
前回見た時は、震えて逃げ出した『ゴブリンの集落』に。
ソロでの3階層の活動は、仲間を呼ぶ危険性のあるウルフを、如何に早く処理出来るかがカギだ。
僕は、積極的にウルフを狙って黙らせた。
モンスターの出現サイクルは、未だに分かっていない。
だから、どれだけ倒せば出なくなるという事ではない。
ゆえに、決めたのなら行くしかない。
見えた、『ゴブリンの集落』だ。
僕は目標の確認と、侵入ルートの確認を急いでこなす。
時間をかければ、それだけ発見される恐れが増える。今のところ、時間は僕の敵だ。
目標の『ゴブリン・メイジ』は確認出来た。
幸運な事に、僕の今いる位置から近い!
ルートも悪くない。少なくとも、素人の僕には望み得る最高の状況に見えた。
決行だ。
集落の壁伝いに、身を隠しながら静かに移動を開始する。
ダンジョンなのに、ほとんど外の自然と変わらない草木が、僕の移動を妨げる事に、若干の苛立ちを覚える。その度に深呼吸して、僕は冷静さを取り戻す。
時間はかかったけど、なんとか僕は、想定した侵入ルートにたどり着く事が出来た。
だけど、当初の位置から移動している『ゴブリン・メイジ』に、舌打ちをしそうになる。
メイジのくせに、ふらふらとしやがって!
僕の知ってるミラなら、絶対にしないだろう。
彼女なら必要ならば動き、無意味ならば絶対動かない。そんな確信が僕にはある。
仕方がないので、少し遠くなった『ゴブリン・メイジ』を、僕はこっそりと追いかける事にした。
『ゴブリンの集落』の中は、外から見た通り、粗末な作りの家々が並ぶばかりだ。
ともすれば、出来の悪いセットのようだ。
そうでない事は、辺りに漂う饐えた臭いと、辺りに散らかる、木片などで分かる。
なぜ、ダンジョンに吸収されないのかと、ささやかな疑問が僕の頭を掠めた。
僕は、今の現状を思い出し、疑問を頭の片隅に追いやった。
集落の中は、それなりの数のゴブリンが動いている。
幾つかの足音が聞こえて来る。
僕の、ジリリッとなる足音は無視していい、他の足音に集中する。
ジャッ、ジャッと規則正しい足音は、戦士系のゴブリンだ、ゴブリンマッチョこと『ゴブリン・ソルジャー』辺りだろう。
パワータイプで、僕とは相性の良いゴブリンだ。
ジッ、ジッ、ジッ、ジッっと小さくて素早い足音は、『ゴブリン・スカウト』かもしれない。僕はまだ戦った事がない、未知の相手だ。
出来れば、こいつに遭遇するのは避けたい。
ズッ、ズッ、トン、ズッ、ズッ、トンと、ダラシなく足をずって、杖をついているのが『ゴブリン・メイジ』で間違いないだろう。
聞こえる音の配置と、動きも悪くない。
「ついてるな・・・。」
いきなり、エミリアの攻撃が出て来ますが、エミリア魅力をその攻撃力で表そうとして、四苦八苦した結果です。
上手く纏まらなかった!
私の拙い努力の跡だけでも、感じて頂けたら幸いです。




