83話
急いで更衣室に行った、3人を見送り、僕はお姉さんとお喋り再開だ。
「今日使って、洗ってないですけど大丈夫ですか?」
「ええ、修繕してしまえば、汚れも臭いも何も残らないから、問題ないわ。まあ、あまり汚いまま持ち込まれたら、突き返すけどね!」
「分かりました、気をつけます。」
「素直でよろしい!それで?幸太君はアレを買いに来たんじゃないの?」
お姉さんが『小鬼丸』を見ながら聞いてくる。
今、髪の長いお姉さんが、丁寧に拭いている。
鑑定書は、書き終えたみたいだ。
「さすがに、手が届きませんよ。」
「あら?さっきシッカリと儲けたでしょう。」
「あれは、みんなで稼いだお金です。分配したら、『小鬼丸』には手が届きませんよ。」
僕も、実際ここまで短期間でお金が稼げるとは思っていなかった。
1月頑張ってバイトするのと、変わらないくらいを予想していた。それが、【支援魔法】を習得する事によって、大幅に変わった。
それによって欲が出て来た、色々な事に欲張りになって来たと思う。
変化を求めて来た僕だけど、この変化には少々戸惑っている。
今も、こう言いながらも、『小鬼丸』から目が離せない。
前の僕なら、高価な物なので直ぐに諦め。自分に相応な物を、見繕っている頃だろう。
平岩君なら、それで良いって言ってくれるのだろうか?
彼は、欲を持つ事の大事さを語っていたからね。あれは、もしかして、僕の為に言ってくれていたんだろうか?
「そうだ!」
僕の思考が、何処かへ飛んで行ってしまったのを、お姉さんが呼び戻してくれた。
「せっかくだから、少しだけ幸太君にアドバイスしてあげる。彼女たちが、戻って来るまでね。」
「アドバイスですか?」
「うん!うちの技を真似してるんでしょう?」
「はい、お願いします。」
そうだった、お姉さんは僕が参考にしてる動画の、本人だった。
「上体は真似しやすいけど、重心の安定と足運びなんかは、慣れないと大変でしょう?」
「お姉さんみたいに、体幹をシッカリさせようと意識してはいるんですけど、これがなかなか、上手く行かなくて。」
「うんうん、そんな感じね。」
普通に、立って話をしてるだけなのに、そんな事まで分かりますか・・・?
「実際に、動いてるところを見た訳じゃないから、断言は出来ないけど。幸太君は足首から下の、フットの部分ね、ここの使い方が分かってないから、重心移動がスムーズにいかないんじゃないかしら?」
足というと、足の付け根から足先までの事を指していう。
そこを、足首から下の部分の動きに焦点を当てて来た。確かに、動画サイトを見てて、足先の向きに注目して見る事はあっても、その動きまで見てるかと言われると・・・、見てない。
むしろ見えないよね!?
服のしたの動きまで真似てこそ、モノマネって事ですか!?
どっかのモノマネ芸人が言ってた気がするけど、まさか、自分がそれを意識する日が来るとは、思いもよらなかったよ。
「彼女たち、戻って来たみたいね。じゃあ私はこれで、またね幸太君。」
「はい!ありがとうございました!」
僕は、出来るだけ綺麗な礼をして、お姉さんを見送った。
足運びだけで、あんなに違う。
よくこれだけ違って、僕らは同じ流派の使い手だって分かったもんだよ。
お姉さんの見事な足運びを、僕は瞼に焼き付ける。
「コウタ、女性の臀部を、不躾に凝視するのは頂けないぞ?」
またそれか!エミリアァァ!!?




