67話
ひとしきり、僕らは『小鬼丸』を鑑賞してすごし、午前中の精算をして別れた。
あのギルドのお姉さんは、どっかの道場から自衛隊に入隊して、ダンジョンに潜っていたんだろう。
それも、僕が見て、参考にしてる動画の流派に近いどこかだ。
そうでなければ、何も話してないのに、僕に『小鬼丸』の入荷を伝えて来るはずがない。きっと僕の動きのどこかに、同じ流派の匂いを感じとったのだろう。
これまで、必死になって模倣してきた価値があるというものだ。
終始恐縮しきりの遥君を見送って、僕は1人ダンジョンに舞い戻った。午前中だけとは思えない収入に、気を良くして2階層を歩いていた。
四六時中明るい空、天候すら変わる事ないダンジョンの中を、のんびりとした気分で、姿見をプレゼントしてくれた、妹へのお礼なんかを考えていた。
そんな僕の視界の端に、複雑な気分にさせるモンスターが現れた。
『青いウサギ』だ。
「・・・なんでだよ?なんで僕の前に、君は現れるのさ・・・。」
ひどい葛藤があり、悩んだ。
時間にしてみれば、たいした時間ではないのだろう。だけど、それは僕を激しく消耗させた。
ダンジョンでありモンスターなんだと、僕は覚悟を決め、『青いウサギ』に向かって距離を詰める。
この時、僕はひどい顔をしていただろう。
周りに、他の人がいなかったのが、せめてもの救いだ・・・。
いい加減慣れてきた素人式の潜伏術を使って、ウサギとの距離を詰める。
いつもは空いてる右手に、『魔石』を握り込んで準備する。
鉄よりも重い『魔石』は、握って殴れば威力が上がるし、投げつければ武器にもなる。『丸さん』の動画で見て知っていた。(本当にやる人は、いない事は知らなかった。)
今の僕なら10mまでなら近づける、そこから先は運が必要だ。
1階層よりも視界のきく2階層でも、そこまでは自信があった。
だけど、それ以上に近づけてしまった理由は、僕には分からない。
1階層で出会った時以上の速度で逃げる『青いウサギ』を、僕は意地になって追いかける。
視界に巣穴が見えれば、そっちに意識切り替えて、ウサギ以上の最短距離を走って、方向転換を余儀なくさせた。
前方に木や岩があれば、それに向かって追い込んで、失速と方向転換を強要した。それによって、僕はウサギとの距離を、また一歩縮めた。
斬りそして打つ、左右の手でウサギに対応させ続けた。
そして、再び巣穴が見えた時。
ウサギは僕を出し抜いて見せた。
巣穴のカバーに入った僕に対して、ウサギは逆に走るフリをして、小さな円を描くように走り、僕の股の下を抜けていった。
股下を抜けられた僕は、ウサギに賛辞を送りながら、見苦しくも右手に握り込んだ『魔石』を投げつけた。
・・・これが、ウサギに当たってしまった。
「キュ!?・・・。」
ウサギのお尻に当たり、ウサギが巣穴を超えて吹き飛び、転がった。
僕は、反射的に『青いウサギ』を捕まえていた。
「・・・お前、・・・モンスターを捕まえる、スキルもあるって話だ・・・、今度は、そういうスキル持ちに、あ、え、ると、いいな・・・。」
「キュ?」
僕は、再び『青いウサギ』を殺した。
なぜだか、いつからか僕は涙を流していた・・・。
可愛い生き物を殺すのは、気が咎めるのですよ。
じゃあゴブリンは良いのかって?もちろんです!
『海賊が財宝を狙ってどこが悪い!』の精神です♪




