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65話

 その夜、あがっていた投稿を見て、僕は絶句した。

 素材は良いけど、写し方とカメラの性能が悪い遥君の映像と。素材は悪いけど、カメラワークとカメラの性能が良い僕の戦闘シーンと、踊りだった。


 効果的なアップと位置取りで、まるで映画のような出来栄えだった。

 エミリアの才能に脱帽だ。

 ミラも、エミリアの隠れた才能に驚いていた。


 音楽まで入れてあり、僕の雑な投稿とは天地の差だった。




 明くる朝、ソフィアの体調も戻りつつある事をLINEで確認して、返信をしてから家を出る。

 今日も遥君とダンジョンに挑む予定だ。


 ミラたちと、4人で行く案もあったけど。アデレード先輩と行く約束をしてしまったらしいので、今日も遥君と2人だ。


 今日も、おにぎりにお茶に水をリュックに入れ、ダンジョン前で待ち合わせ。


「やあ、幸太おはよう、今日も早いね。」


「おはよう遥。先に来てる、お前さんに言われたくないなぁ。」


 僕は、約束の6時半に、遅れないように6時すぎには家を出た。

 それなのに、先に来てるってどんなだよ?


「なんだか、昨日の投稿を見たら寝れなくってね。」


「小学生かよ!でも、まあ、気持ちはわかる。眠くなったり、体調が悪くなったら直ぐ言えよ、出口まで送って行くから。」


「ふふ、1人でもダンジョンに潜る気なんだね。さすが幸太だね。」


 何がさすがなのかは、分からないけど。遥君の中で、僕ってそういうキャラらしい。

 僕は、ダンジョンにいると、自分が変われる気がするんだ。だから潜り続けてる、ただそれだけなんだけどね。



 狩りの方は順調そのものだった。

 僕の狩りに慣れてきたのか、遥君の動きがだんだんと良くなって来ている。

 Lvが上がっているのかもしれない。

 おまけに、踊れば当たりを連続で引いて、人外じみた速度で僕らはダンジョンの2階層を走り回った。


 ダブルで支援を得ている、今の僕は、100m8秒台で、1㎞でも2㎞でも走れてしまう。

 遥君がついてこれないから、もう少しゆっくり走ってはいるけどね。


 困ったのは、ドロップ運までつき過ぎてて、ナイフなんかが重い事だ。



 ゴブリンの群れを潰して、そこでお昼ご飯にする事にした。

 倒すと、綺麗サッパリと消えてしまうのは、こういう時にはありがたい。


「幸太、また『魔石』が出たよ。」


「またぁ?今日出過ぎじゃない?」


「まあ、いっぱい倒してるしね。」


「いやぁ、僕が1人で1日狩っても、出ない日は出ないよ?」


「そうなの?じゃあ今日は、大儲けだね。」


『魔石』は、拳大の青みを帯びた黒い石で、これもとっても重い。

 僕は、せっかく新調した、リュックの底が抜けないか心配しながら、さらに『魔石』をリュックに詰めた。


「遥、これ使いなよ。」


 僕は、さっきドロップした、ウルフの牙をペンダントトップに加工したアイテムを遥君に放った。

 なぜ、完成品をウルフが落とすのか、謎でしょうがないアイテムだ。


「こ、これ!『牙のお守り』じゃないか!?ダメだよ!こんなのもらえないよ!?」


「いや、あげないよ?だけど、組んでる間は仲間は強い方が良い。売って分配するよりも、使って行った方が効率的だよ。他に良い物が出た時に相殺しても良いし、解散時に売って分配しても良いんだからさ。」


「そ、そお?そういう、ことなら、使わせてもらおうかなぁ。」


 遥君はキラキラした目で、『牙のお守り』を見ている。

『牙のお守り』はDEF1、MDEF1、力+1のアクセサリーだ。こんなちっこい物でも、結構なお値段するアイテムなんだ。

 スポーツ選手が、隠して着用して問題になったアイテムでもある。

 こんな物が出てくるダンジョンは、本当に謎だ。


「これって、幾つも着けて、効果があるんだっけ?」


「Lv0だと1つ、Lv1からは2つまでしか効果がないって言われてるな、確か・・・、オランダの研究チームの発表だったと思う。」


「幸太、詳しいね。」


「いや、大事な発表だったのに、全然注目を浴びなかった事が逆に、僕の心に残ったんだよ。ミラ辺りだったら、研究内容まで網羅してるかもしれないよ。最近、頑張って情報を集めてるみたいだからね。」


 ガチャガチャと沢山着けるだけで、際限なく能力が上がるんだったら、その価値は天文学的なお値段になるだろう。

 そうはならないからこそ、最下級アクセサリーなんて、数十万円程度に収まっている。

 それでも高額なのは、一般の人が着けても効果が得られるからだ。

 アクセサリー1個着けるだけで、ジーンズ並みの防御力が得られる。確かに、お守りにはちょうどいいだろう。まだお高いけどね!

 さあ!引き続きバリバリ狩ろう!




 それからしばらく狩って、キリの良いところで遥君に声をかけ、僕らはお昼休憩を取る事にした。

 ゴブリンをぶち殺した後の、長閑な風景を楽しみながら、僕はおにぎりを頬張る。パリッとした海苔の食感と磯の香りを楽しんで、再び声をかけようとしたら、遥君が船を漕いでいた。


 起こすのも気が咎めたので、辺りを警戒しながら昼食を済ませる事にする。

 僕がお茶のペットボトルで一息ついた頃には、遥君は膝を抱え込んで、完全に寝てしまっていた。

 そういう効果のアクセサリーではないので、寝不足が祟ったのだろう。僕は()()()()()()は、今日はこれまでだと諦めた。


 この後、少しだけ寝かせてあげて、遥君を起こしてダンジョンの出口まで連れて行った。

 恐縮きょうしゅくしきりの遥君だったけど、明日からは、しばらく別での活動になるので、その話を優先して、気にするなと言っておく。

 本当に気にしない奴だったら、ぶっ飛ばすけどね。彼は、そういうキャラじゃないから大丈夫。



 彼は、武藤君たちとの約束があったり、お家の人と、お出かけする予定があるらしいからね。

 そういう僕も、ソフィアたちと探索する予定になってる。

 色々とミラたちも動いているので、ソフィアが焦っているようだった。病み上がりに怪我などさせないように、気をつけないといけない。

 みんなの前で、【回復魔法】を使う勇気は僕にはないんだから・・・。


 まあ、ゴブリン程度に、DEF18のソフィアを傷付ける事が出来るとは、思えないけどね。

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― 新着の感想 ―
> 本当に気にしない奴だったら、ぶっ飛ばす こういう未熟なところが実に高校生らしくてリアリティがあります
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