58話
忙しい1日だ、これほど行ったり来たりする事は、これまでなかった。
僕らは、その日の内に動き出す事を決め。
再び、ダンジョンに舞い戻ったんだ。
正確にはギルドだけど、すぐ近くだからね。
遥君が、ダンジョンの前で無駄にダンスを披露して、それを僕が動画に収める。まずはここからだ。
・・・僕が言い出した事だけど、遥君のダンスはスキルなしにしても見事なものだった。
彼が踊り終えた時には。周りの人たちから、暖かな拍手が起こるほどで、配信したら、お小遣いくらいにはなりそうな雰囲気がしてきた。
「遥、もしかして、ダンスやってた?」
「うん、中2までやってたよ。ダンス教室でチームを組んでたんだけど、受験で辞めてく人がいてね。それ以来かな。」
なんか・・・、嘘から出た誠さんになりそうだ。
え?僕が編集するの?無理だって!!
ダンジョンにも突撃して、勝利のダンスでやってみる事にした。
FFの決めポーズみたいなものだ、これなら視聴者にも受け入れられやすいだろう。
・・・イケメンめ、爆発しろ!!
戦闘から、倒すところ、そしてフィニッシュまで、流れるようにこなして、最後にバシッとポーズを決めた。
僕は思わず、ゴブリンを応援したくなった。
こいつらに僕の、【支援魔法】をかけてやりたい!
・・・良い案だ。
そっか、モンスターで試せば良いんだ。
そうすれば、他人に知られる事なく。僕の【支援魔法】が、他の人に効くかどうかが試せる。
「幸太、こんな感じで良かった?」
おっと、録画停止してっと。
今のは、素人っぽくて良いよな?最初だしな。
「オッケー、完璧だ。」
爆破スイッチが欲しくなるほど完璧だ。
本当に彼は、天から身長以外の物を全て、与えられてるんじゃないだろうか?
いや、ダンスの所為か?
聞いた事がある、体操選手なんかは、全身に筋肉が付き過ぎて、身長が伸びるのを阻害してしまうとか。もしかしたら、彼もそれか?
しかも、ダンスは中2で止めたって言っていた、と言う事は。これから身長も手に入れるのか!?
爆破スイッチだ爆破スイッチ!連打してやる!!
おっと、いけない。
もう何バージョンか撮って検討する話だったのに、思わずゴブリンを殲滅してしまった。
ふぅ♪
「幸太の殲滅風景を投稿した方が、バズるんじゃないかな?」
「ありがとう遥。だけどね、エンターテイメントには見た目も大事なの。」
「そんなもんかな?」
「そんなもんだよ。それにね、最近、前から参考にしてる武術の動画の動きの意味が、おぼろげながら分かってきたんだ。今のひどい動きは、恥ずかしくてのせられないよ。」
あれは、本当にすごいんだ。
たった1人で動いてる演舞なのに、観ていて魅せられるんだよね。
ダンジョンが出来てから、武術家の多くが動画を配信してるけど、アノ動画が何というか、僕には刺さるんだよ。
「そんなにすごいの?」
「そうだね、遥も暇な時に、気に入った武術家の動きとか見ておくといいよ。参考になるから。」
「上手い人の動きから学ぶんだね、分かった、やってみるよ。」
今のは、ダメだった。
特に足運びが雑で、大股になったりしてた。これじゃあ、いつまでたってもアノ動画の人には近づけない。
そう、あのギルドのお姉さんみたいな、足運びが理想だ・・・。
・・・あの人、なに者だ?




