50話
僕は、精神的に疲れる昼食を切り上げ、教室に戻ると。今度は、何やら思いつめた顔の遥君が、僕を待っていた。
ゴールデンウィーク目前の楽しみな気分が、今朝から急降下して止まらない・・・。
今の僕に、これ以上厄介事は要らないんだけど。
「幸太君、放課後に少しで良いから時間をくれないかな?」
ねえ?
断ってもいい?
・・・ダメだよね〜、はぁ。
「良いよ、直ぐそこのファミレスで良い?あそこなら『yen』が使えるんだ。」
「あー、出来れば、人の居ない所の方がいいな。」
その時、教室が急に、強烈な腐のオーラに満たされてしまった。気がした。
あの人たちは・・・。
爛々と輝く瞳で、こちらを見ている女子たちが、そこにはいた。
菊池さん!呆れて見てないで、お友達を止めてよ!
「しょうがない、僕のアパートで話を聞くよ。割と近くなんだ。」
「ありがとう、助かるよ。」
菊池さん!腐臭が、腐臭が!
その人たちはもう手遅れなんだ!腐ってるんだよ!それでも止めてよ!?
鳥肌が立っちゃうから!
授業の内容は右から左に素通りしていき、僕の中に留まる事はなかった。
放課後が、待ち遠しく思えないなんて、こんな事は初めてだ。
今日はダンジョンをお休みにして、ゴールデンウィークの予定と目標を立てる話になっていたのに。
それ自体も流れてしまった。
僕は足取りも重く、遥君と僕のアパートに向かっている。
「どうぞ、上がって。」
「お邪魔します。」
「いや、誰も居ないから。僕は、1人暮らしをさせてもらってるんだ。」
「そうなの?大変じゃない?」
「ゴミ出しと洗濯辺りが大変かな?それ以外は何とかなるよ。1階にコインランドリーも入ってるしね、そこも大変ってほどじゃないと思うよ。」
2Lのペットボトルからお茶を注いで出し、武藤たちとの探索の話なんかをして、遥君が落ち着いて話し出すのを待つ。
正直、こういう気遣いとか、得意じゃないんだよね。
でも、パーティーに女性が多いから、何かと気を使う機会も多い。
お手洗いとか、月の日とか、本当に男の僕には察する事が難しい事も多いんだ。
そのおかげで、あるいはその所為で、最近、人の気遣いに敏感になってる気がするんだよね。
分かってしまうと、自分もやらないとって気がして、結構大変だ。
それに比べて、ダンジョンに行って、ゴブリンを叩いてるのって楽だよね。
話が終わったら、少し行ってみようかな?
いけないな、集中力が切れて来てる。でも、遥君が醸し出す緊張感に、耐えられないんですけど。
「遥君・・・
「実は。」
おっ、話す気になったかな?
これで、恋バナとかだったら、泣くよ僕は。
「うん。」
「スキルが現れたんだ。」
よし!第1関門クリア!
想定内の話だ!
「そっか、おめでとう。」
「え?あ、うん、ありがとう!」
うん、そこで照れなくても良いからね!
赤くならなくても良いからね。
そんな、嬉しそうな笑顔。クラスの女子にでも向けてあげて、きっと喜ぶから!
でも、僕は要らないから!
もう、話を進めちゃうよ?
「何系のどんなスキルか、もう調べられたの?」
「・・・それが、まだ途中なんだ。」
調べる項目の多いスキルっと。
武技なら、モンスターに当ててみるしかないし。攻撃系魔法でも同じだ。
やってみれば、だいたい分かるし。ゲームみたいに通常攻撃の何%、なんて分かる訳でもない。攻撃系スキルってそんなもんだ。
鑑定みたいな特殊系スキルだと、僕らいち学生、いち個人には手に負えないものだ。
ソフィアの甲冑を調整した、特殊・錬金系スキルとか、誰が、どうやって、使い方を調べたのかサッパリわからない。
だけど、遥君は途中だと言った。
ネットである程度調べられて、効果の確認が必要なスキルとか、・・・やっぱり支援系スキルだと思う。
遥君は、人に知られるのを恐れている。
だから、間違いないだろう。
賢明な判断だ。
ただ、なぜそれを、僕に相談しに来たのかがわからない。
調べ方に自信が持てないのか、確認方法が思いつかないのか?
本人に聞いてみるしかない。
だけど、本当に僕が踏み込んで良いところなのだろうか?
その秘密を知る事には、重い意味がある。




