395話 side???
ここはさる山奥の別荘地。
高級サロンの様な豪華な内装の一室に、その男たちは集まっていた。
ある者はブランド品のスーツに高級腕時計、またある者は軍服に勲章を下げて、それぞれが己の権威を着込むような姿で紫煙を燻らせていた。
「外務省もかなりやられたようだね、悪いが聞かせてくれるかね。」
「下民共が!!」
「おいおい、そう熱くなりなさんな。」
「我らが閥を瓦解させようと、連中も必死なのさ。」
「先達から脈々と受け継がれてきたものだ、ここまで築き上げてきた先輩方に顔向け出来んよ。」
「そろそろいいかな?頼むよ蛭間くん。」
「はい。外務省ではすでに退職された方々を含め48名に容疑がかけられ、すでに32名が逮捕されています。警察庁に働きかけ、証拠不十分で不起訴になる予定だったのですが、フランスのせいで政府が先に証拠を押さえてしまったため、それも難しいです。」
ここで1度コップを傾け、喉を潤す。
カランッと氷がぶつかる音がやけに響く。
「残りの者は助かりそうなのかな?」
「どうでしょう、彼らは所在を隠して潜んでます。幾人かは、海外に脱出する事に成功した様ですけどね。」
「奴は外国にも引き渡し要求をしとるのだろう?」
「ええ、海外でのんびりと余生を送っていた方々にも手は伸びてるようですし、暴露れば彼らも二の舞いかと。」
「元々外交で鳴らした政治家だ、その辺りは奴の得意とするところだろう。忌々しいことだ。」
口々に総理の悪態を吐き、部屋の紫煙濃度を上げた。
不安を苛立ちで隠し、醜悪な笑顔を張り付けて会話する。かつて高い地位を占めた彼らには、呼吸をするよりも簡単な事だ。
「それにしてもフランスの連中も情けない。我々がせっかくお膳立てしてやったというのに、探索者共に首輪を着ける事も出来んとはな。」
こうして、何もせずにさも自分の労であったかの様に語るのは、彼らにとっていつもの事だ。
「まったくですな。彼らには期待したのですがね。」
「この勢いを止めるには、やはりやるしかないのでしょうかねぇ。」
この発言に部屋が一時静まり、吐き出される紫煙で部屋が一層染まる。
この部屋に集う者たちの眼だけが、ギラギラと輝いているかの様だ。
かつてなら誰かが諌めたこのセリフも、不満を溜め込んだ彼らにとっては魅力的な提案にすら聞こえてくる。
「青木くんは乗り気なんだろ?」
「警察庁の中にも我々の派閥はありますからね。」
「例えば、狙うとするならば誰が適任かな?毒島くんどう思う?」
毒島と呼ばれた軍服を纏った人物は、ニタリと笑い舌で唇を湿らせて答える。
「もちろん、あの小僧の身内でしょうな!」
「ふむ、君も青木くんと同じ意見か。」
「昨今、奴は目立ち過ぎております、この辺りでガツンとやっておきませんと、ますます増長してしまいます!!」
同調する者がいると知って、毒島はいよいよ舌を滑らかに回しだす。
「下民共が我ら上級市民に奉仕するのは当然なんだ!それなのに、昨今生まれも育ちも怪しい連中がでかい顔してのさばっている!嘆かわしい事です。連中は所詮労働者なんだといい加減気づかせねば、社会の秩序が崩れてしまう!連中は愚かなので、我々選ばれた者が正しく導いてやらねば、すぐに思い上がる!まったく困ったものですなぁ!!」
選民思想に染まった毒島の演説はなおも続いた。
それに、異を唱える者もいない。
ここに集うのは、そういった思想の者たちなのだ。
「君の思いは分かった、指揮は君に任せよう。なに、もしもの時は警察庁には青木くんがいる、彼なら上手くやってくれるさ。」
「警察庁と言えば、福田は取り込めんのか?あれも我々と同じ出だろうに。」
「ああ、彼は難しいね。なんたって彼は庶民派だからねぇ。」
「それだから青木くんに抜かれたんだよ。せっかく出世ルートに乗せてやったというのに、世迷言を本気で信じとるのか?アホらしい。」
「まあまあ、彼が下を押さえられるから青木くんが上で動きやすくなるのでしょう。後輩思いの良い先輩ではありませんか。」
「手駒が少々心許ないですかね?」
「宗教屋共にやらせるのはどうでしょう?」
「蛭間くん、連中はカネ喰い虫だぞ?」
「この計画に出資しても良いって宗教屋が確かいたと思います。まあ、海外の単一神にアーメンって連中ですけどね。」
笑いが起こる。
彼らは思っていた、なんて皮肉だと。
単一神信仰がカネを出し、多神教宗教が人を拐かす。その利益は自分たちが享受する、誰もその事を疑っていなかった・・・。
小さく小綺麗な家で、金髪の神父と男が合っていた。
「上手くいきましたカ、蛭間サン?」
「ええ、連中すこぶる乗り気です。」
「それはヨカった。どこの国も権力ニ魅せラレタ者は変わりませんネェ、愚かな事デス。」
「・・・ええ。それで・・・、家族の事は・・・?」
「なーんノ心配も要りまセン!移住ノ手続きハすでに済んでいマス。後ハ、あなたノお仕事が終わり次第一緒ニ行きマショウ!」
日本人らしからぬ大きなリアクションが、彼の生まれを表しているようだ。
男は、それを適当に受け流す。
「ありがとうございます。」
「お礼要らナーイ。アー、私ノ興ミィですがー、やっぱりダンジョンの多イ国コワイ?」
「いえ、それほどでもないですね。ただぁ・・・、法律が変わって自分がダンジョンに入らされるのが嫌なんですよ。」
「oh〜、なるフォドォう。」




