391話
エミリアを回収し移動を開始する。
エミリアを見かけた『魔鯛』の頭上に、「!」が出ていた。僕は危うく水辺に落っこちるところだった。
このダンジョンさんは何がしたいのだろう・・・。
襲って来た『魔鯛』を握り潰し、魚鱗のお土産を持って帰って来た僕の人魚はとっても楽しそうだ。
僕は、エミリア一人を水流で運んで来たミューズを労う。
『驚きの落下スピードに、お魚さんも追いかけるのを諦めていたのですよ!!もはや特技なのです!』
「うん、お疲れ様。」
僕も観ていた、泳いでるように見えるのに、何故か沈む速度が減少しないんだ。
あれは特殊能力だよ・・・。
ムーンウォークの原理だろうか?
無意識的にそんな事やってるなら、もはや手の打ちようもない。
理解不能だからだ。
淡水だから浮き難いとか、そういうレベルじゃないんだ。
水の抵抗すら無視する速度で落っこちていくんだ。
自分の眼を疑う現象だった。
「・・・装備の重さが残ってるって説はどうだろう?」
「なるほど。」
さすがはミラだ。
この現象に、科学的根拠を提示する事が出来るなんて。
僕には無理だ・・・、僕には物理的、魔法的根拠を無視して沈んで行った様にしか見えなかった。
あえて言うなら、無重力空間における運動に近い動きだったのではなかろうか?
完全に一定の速度で沈んで行くんだ・・・。
ダンジョンの不思議も不思議だけど、僕は彼女の不思議を先に解き明かさなきゃいけない気さえする。
『ハズレ♡』の文字を誰もが理解した不思議、ダンジョンの難易度が年々上がっていると感じる事態、ダンジョンが人類を学習しているという脅威。
頭の痛い事態だ、そんな脅威を感じさせない作り、これがダンジョンの意図ならばいっそ見事だ。
もしかしたら、こういうのが学習型AIの行き着く先のひとつなのかもしれない。
今は無理だろう、だけど未来において高度なAIに人類の保全を任せたら、ひょっとしてこんな答えを出すのかもしれない。
ソフィアがサッと剥ぎ取ったホタテに反応してる場合じゃないのかもしれない・・・。
なんだ、服か・・・。
悪い笑顔の2人に、僕は思わず目が泳ぐ。
その後、エミリアに揶揄われながらも探索を続ける。
「あれかな?マッハ軍曹確認してくれる?あれが噂の羊であってるかな?」
僕の指差す方向に、マッハ軍曹は急いで双眼鏡を向けて確認してくれる。
こういう時、真っ平らな地面はありがたい。方向さえ合っていれば、見逃しようもないからね。
正式名『ホワイトシープ』、漂白したのかってくらい真っ白な純白で、アフロかってくらい身体の毛がモッコモコなんだ。
本物の羊も意外とモコモコしてるけど、こいつはその比じゃない。もはや毛玉かって感じだ。
僕は、転がって来る事を予測したくらいだ。
「奴です!間違いありません!!」
マッハ軍曹の報告に、皆キリッと表情が引き締まる。
「来たか・・・。」
「待ちわびたよ・・・。」
特にミラと遥が、出番だとばかりにやる気を見せている。
マッハ軍曹の仕込みのせいで、みんなリアクションの準備に余念がない。
もうちょっと、緊張感を持って真面目に探索しようよ・・・。
こちらから奴に近づく。
こちらに気づいた奴の目ん玉が飛び出す!
ええ〜・・・。
その目がピンク色のハートに変化し、鼻息も荒く興奮している様子だ!!
カッ!と口を開いて突進してくる。
ダンジョンさん・・・、何を学習したんですか?
アメコミだろうかこの表現?
僕は脱力する身体にムチ打って、みんなに広がるように指示を出す。
その瞬間、奴が方向を変えたんだ!!
ソフィアが慌てて奴の進路に身体を差し込んで止め、僕を含めた前衛陣でトドメを刺した。
強くはない、ただ、予想外の動きだった。
女性に向かってくるのは、マッハ軍曹から聞いて知っていた。
だけど、確かに進路を変えたんだ!
ソッと変えた進路のその先を振り返ると・・・、そこにはアデレードがいた。
『この羊、ご主人様とおんなじ趣味なのです!!』
僕もまさかとは思ったけど、ミューズにトドメ刺されて僕は崩れ落ちた。
何処がホワイトだったのだろうか・・・、ダンジョンさんには変態羊へと改名を要求したい。
貝殻型宝箱の案を読ませていただいて、青い宝箱にした事を後悔してます。
途中で変えるかもしれませんが、変わっていたらそういう事だとご理解ください。
m(_ _)mお願いします。




