28話
約束の時間に早くつき過ぎたので、僕はダンジョンの1階層を軽く流す。
MPには余裕がある事は分かっているから、【支援魔法】は常時かけておく。MPが余っているのに手を抜いて、怪我でもしたら目も当てられないからね。
【支援魔法】は切れる寸前にかけ直す。
早いところ習慣化して、支援ミスを起こさないように注意だ。
軽く走り周って、さーち&ですとろいってやつに挑戦する。どうせ短い時間しかないし、練習にはちょうどいいと思ってやってみた。
意外とこれが難しい。
適当な方向に向かって走って行くと、人がいたりして、追い越すのもなんだし、方向を変える。
そうしてしばらく行くと、今度はモンスターと戦っている人がいたりする、また方向を変える。
やっとゴブリンを見つけたと思ったら、狭い範囲をクルリと回って来ただけだという事に気づいた。
連日ダンジョンの1階層に通っていたので、僕は、周りの景色で現在地が分かるようになっていた。
とりあえず、ゴブリンを殲滅して腰を下ろし、この階層の歩き方を考える。
今の現在地は、この階層のちょうど中央にあたる、盆地というのだろうか?丘と丘の間の、浅い谷間になってるところだ。
おかげで、周りから人の視線が通らない。
僕が休憩してたって、誰も気にしないだろう。
「・・・人を完全に避けようとすると、全然進めない・・・。じゃあ、迂回かな・・・?」
1人暮らしをするようになって、僕は独り言を言う癖がついた。
まだまだ軽症なので、気味悪がられる前に直したい。
下を向いて思考に耽っていたので、頭を上げたら、視界に見慣れないモンスターがいた。
ウサギだ。
いや、ウサギはウサギだけど、青いウサギだ!!
豊田ダンジョンの1階層に、こんなモンスターが出るなんて聞いた事がない・・・。
でも、どう見ても青いウサギだ。
レアモンスターだ!?
完全にゲームの知識で、この世界のダンジョンに、そんなものが居るという情報を僕は知らない。
でも、豊田ダンジョンの紹介にも載っていない以上、未確認モンスターである事は確かだ!!
大発見だ!!
僕は興奮して、騒ぎたくなるのを必死になって抑える。
指は震えてるし。
呼吸も荒い。
口はカラカラだし。
心臓がうるさいほど脈打ってる。
足なんて、地面を踏んでる自信が持てないほど、フワフワしている。
おかげで、嬉しい事を我慢するのが、こんなに大変だなんて初めて知った。
僕は、息を殺して戦闘態勢に入る。
大丈夫、ここまではバレてない。
近づく事よりも、気づかれない事を最優先にして、動く。
緊張感よりも高揚感が勝っているため、意識はハッキリとしている。
1番の心配事項もこれでクリアだ。
迷ったけど、初撃はナイフを逆手に持って上から行くと決める。
直前で迷うと、やっぱり僕はやらかす気がするから、今のうちに決めておく。
あと15m。
ウサギは餌でも探しているのか、地面をしきりに探っている。
可愛い仕草に、僕の戦意が少し緩む・・・。
あと12m・・・。
あれはお肉、あれはお肉、あれはお肉!
よし、殺る気が戻って来た!
あと9m。
ウサギがふと顔を上げた。
気づかれただろうか・・・。
僕は動きを止め、息も止める勢いで気配を消す事を試みる。
時間がやたら長く感じられる。
もう、突進しちゃおうかという、甘い思考の誘惑に、僕はなんとか抗う。
ウサギが顔を下げ、再び地面を探り始めた。
僕は大きくなりそうな息を、慎重にゆっくり吐き出して、さらに距離を詰める。
7m、ウサギはもう目と鼻の先だ。
僕は最後に、少しだけ空気を吸い込んで、息を止めて突っ込んだ!!
上からの突き刺し。
横に跳ねるように転がって避ける!
すぐに、横薙ぎに繋げ。
前転して辛うじて避ける!
踏み込みながら、返す刀で切りつける。
ウサギの脚力をもって、走り出した!
「嘘だろ・・・!あれを躱すなんて・・・。」
その後も数回切りつけたけど、結局当てる事が叶わずに、巣穴に逃げ込まれた。
「っ〜〜〜〜っ!!」
僕は、悔しくて、口惜しくて、叫びたかった!!
だけど、ダンジョン内という事で、僕はなんとか我慢した。
ゲームなんかをやっていると、必ずこういった場面に出くわしますよね!
落っこちた、逃げられた、アイテムを拾いそびれたなどなど、そんな時の気持ちを思い出して頂けると、嬉しいです♪




