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リオン -剣術使い-  作者: 笹沢 莉瑠
第六章 『葬式の儀』に哀愁を
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【第6章4】葬式の儀

 「ちょっとあなた!どういうことよ」

「どうもこうも、お前が想像してるとおりだよ。俺はリオンという名によって‘2人’が見えるようになり、ほかの精霊も見える目になったんだよ。トワン、見えるだろ?俺の背後にいる‘2人’が」

「・・・・・・」

精霊の2人はわざとおどけて飛んだり跳ねたり、周りの普通の人間に見えないことをいい事にリオンとウェナ改めトワンをつついたりつねったりetc・・・などといろんな事をしていた。

(あ~、2人共。はしゃぐなら場所とタイミングを見極めてもらえる?)

<それが今こそ、そのときでしょう?>

リオンは苦笑いしながらため息をついた。

「リスベス帝国はお前みたいな操り人形・・・・を使いまくってるんだろ?報告する奴に伝えてくれないか?」

リオンはふいにジュディアのほうを向いて片膝をついた。

「俺はまだ全ての手を使い切ったわけじゃない、とな」

「え・・・?でも――――だが、我はどうなるのだ?」

「葬儀を先に行う」


 ジアスたち(そこに王家御一行も含まれる)が広場に着いた時、広場の空気は静まり返り少しでも物音がすると皆がそのほうへ目を向けた。ジアスとリブシアは動きの遅い馬車よりも先に広場に着くなり、リオンのほうへ駆け寄った。

「全員来てるのか?」

「ほぼ。確認してないからなんとも言えないが、人数的には来ている事になる」

リオンはジュディアのほうを向いて片膝をつき、頭を下げていた。2人が近くに駆け寄ってきてもその体勢を崩すことなく受け答えする。その姿はまるで死者に祈りを捧げているようだった。

そのうち馬車も到着し、マルス王も馬車から降りた。それを待っていたかのように、リオンは『真理の剣』の柄を握ってわざと目の青さを強調させて、静かにマルスの前で一礼した。

「陛下、今まで自分の使命のためとはいえ偽りを真実と言った事お許しください。強くなるためだったのです。決して一国に加担するわけで軍に入ったのではありません」

「・・・・・・薄々そのような予感がしておったが、やはりそうであったか」

「はい。わたくしがリオン・フェブリーヤ15代目であります」

この言葉に村人や事情を知らない兵士が驚いたのは無理もない。


 シェイが出て行ってから外の様子をこそこそ伺っていた村役場内。リオンの声と内容を聞くなり狭い室内は大騒ぎになった。窓から広場を見ていた女は声を上げた。

「あの子!絶対そうよ。あのリアン・・・ビルとジアスよ!」

「どっちが15代目だ?ジアスだろうな?」

「えっと・・・っ!?」

女は答えようとしたが驚きのあまり声が出なかった。待ちきれず窓の外を覗いたシェイの父親は息を呑んだ。彼の目に映るのは、豪華な服に身を包んだ国王の前に堂々と立つ青い瞳をたたえた、リオン。リオンは役場の方が騒がしいのに気づくと、窓辺に沢山の大人がこちらを凝視してるので近寄って窓を無理矢理開けた。

「皆さんもこちらへいらっしゃいませんか?」

「お、お前は・・・疎遠リアンのはずだ!」

「ええ。確かに俺は疎遠リアンですけど、頭首リオンになる条件は、なんでしたっけ?」

「・・・・・・っ」

「一つ。何百年も前の1代目の血をひいていること。二つ。先代よりも年が若いこと。三つ。さっきの二つが認められる者たちの中で、剣が優れていること。四つ。先代の教えを後代に教える事が出来る者。五つ。平和の為という使命をまっとう出来る者。以上・・・ですよね?」

リオンは不敵に笑うと続けた。

疎遠リアン頭首リオンになっていけないことはない。つまり、頭首リオンのこどもでも頭首リオンになれるという確証は得られないということ。1代目の血をひいているか否か、が条件に入っているのは偽者を排除する為であり、リオンの継承権利が王位継承権と同じだと思ってはいけない。次代を決める事ができるのはリオンのみ。ほかの人がとやかく言ってもその権利を誰かに譲り渡すことは出来ない。じゃないと碧眼のリオンはいなくなりますよ?」

そう言い残すと笑みを浮かべたまま、無理矢理窓を閉めた。


 「いいのか?あやつらは」

「シェイさんによると関係ないそうです。だからいいんですよ」

リオンはまたマルスに一礼するといつの間にか持ってきていた小さな壺を手に取り、広場の中心へ歩いた。村人や群集は広場を輪で囲むかのように広がっており、誰かが鳥の眼でこの状況を見たのならば、綺麗な人の環が見えていることだろう。

「これよりジュディア・フェブリーヤ改めリオン・フェブリーヤ14代目の『葬式の儀アルルオシュ』を執り行わん」

リオンはジュディアの手を取りそっと口づけする振りをして囁く。

『ル エフィ 灰に 変化せよ』

彼女の体があっというまに灰となり崩れた。民衆は驚きの声を上げて近寄ろうとした。しかし、彼はそれをとどめた。

「そこから1歩たりとも動かないで下さい!環が崩れては『葬式の儀アルルオシュ』は不完全なものとなり、死者を冒涜することになりますよ!」

群集はひるんで身じろぎ一つしなくなった。

リオンは灰を丁寧に手で壺に入れた。その動作が完了すると、群集の間からヤコブ神父が出てきた。ヤコブは無言で壺をリオンから受け取り、片手で抱えた。ヤコブは懐から銀素材のナイフを取り出し、リオンの左手首に刃を当て血を滴らせると壺の中に数滴入れた。それを見届けるとリオンは片膝をついて神父を見上げた。その眼には深い悲しみの証として涙が光っていた。

「こうして死者と汝の一部は永遠とわになった。汝はこれ以上にアゴーリブ神に何を望む?」

「我にゆるぎない真実と平和に達することのできる決意を」

ヤコブは環の一部に居るジアスを環の中に引き入れて片膝をつかせ問うた。

「汝は彼女の死からアゴーリブ神に何を望む?」

「・・・親友に負けない強き心を」

それを聞いたリオンはジアスを見て微笑んだ。ジアスも目を合わせて笑った。

次にシェイが中に引き入られ片膝をつかされた。

「汝は彼女の死からアゴーリブ神に何を望む?」

「ブランへの御加護を」

ジアスはシェイの瞳に映る辛く苦しく固い決心を感じ、胸の鼓動が激しくなった。

(シェイさんはこの葬式でブランさんを送っているんだ・・・・・・。俺がもし――――あいつを失ったら、絆で繋がっている俺はどうなる?・・・シェイさんとブランさんはいうまでになく信頼しあっていた。俺はどうすればいい?)

次に中に入れられ片膝をつかされたのはリブシアだった。

「汝は彼女の死よりアゴーリブ神に何を望む?」

「僕は・・・・・・家族の守護を」


 次々に神父は群集の環から中へと人を引き入れ片膝をつかせ、問うた。徐々に中に入った人が片膝をつくと環の中で小さい環が出来上がり、その中心にヤコブが立ち、大きい環の人々に問うた。

「汝らは何を望むのか?口に出さずとも神は既に御存知。ひたすらに祈るが良い。神へ・・・!」

ある者は手を胸の前で組み、ある者は空を見つめた。無言が沈黙を呼び、沈黙が『葬式の儀アルルオシュ』の魔法を発動させる。環の一部である全ての人にある魔力を少しずつかじりとって、本人が気づかないうちに全ての人と繋がっリンクして、死者に対する尊敬と死者を天へと還すみちを召喚する、呪文や詠唱を唱える事のない特殊魔法『葬式の儀アルルオシュ』を。

魔力の度合いが薄い人間には見えない、清らかな白い光が人でできた2層の環の間をはしり、ルーン文字とマークを刻んでいく。全てが完成すると、人々は一斉に空の一点を見つめた。魔力の度合いが濃い者には見えるだろう。螺旋階段のような白いみちが空の一点へと続き、その一点へ時折笑顔をこちらへ見せながら、涙しながら彼女の昇りゆく姿が。その姿やみちが見えようと見えまいと、人々は心揺さぶられ彼女に関する記憶が涙と悲しみに溢れてしまった。出会ったことがほんどない者たちでさえ、深い哀愁の気持ちになり涙を流していた。

リオンは目線は彼女を捉えながら、この光景をジアスに見せる為そっと呟いた。

「イレーレ エフィ ア 見える目に 一時 変われ」

するとジアスは潤む目を大きく見開きながら、彼女の姿に見入った。


 『ありがとう・・・』

『えっ?何か言った?ジアス』

ジアスは、もうすぐみちを昇り終えてしまう彼女の姿を見つめながら通信コンタクトを始めていた。

『お前が変えてくれたんだろ?先生が見える目に』

『・・・どっちでもいいじゃないか。それより先生に最後に言っておきたい事を言わなきゃ、だ』

リオンは曖昧に肯定も否定もせず、泣いたせいで少し引きつる顔を無理矢理笑顔にした。

『そうだな・・・。先生!ありがとうございましたっ!』

『先生!また今度はもっと技を教えて下さいね!』

白いみちの終着点の一歩手前で、彼女が振り向かずに手を振っていた姿が2人に見えたような気がした。

あの、サブタイトルにルビ振りたいって思うの私だけでしょうか?

ああ、振りたいw

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