サイコロのいうとおり
お待たせしました!
何とか期間内に最終話に至りました!
元は職場でやっていた自作ゲームを紹介するだけだったはずなのに、随分と長くなってしまいました。
この物語がそうなったのは私の責任だ
だが私は謝らない
嘘ですすみませんプロット立てないで書いてごめんなさい。
何とか着地させましたので、お読みいただければ幸いです。
放課後の職員室には、担任の清沢先生と数人の先生が残っていた。
三枝君と相楽さんが待ってる。
早く聞いて戻らないと。
「先生」
「お、藤和。どうした」
「相談したい事があるんです」
「お、いいぞ、何だ?」
「……気持ちがモヤモヤして、何を相談していいか、わからないんですけど……」
「ふむ……」
先生が腕を組む。
「……詳しく聞いてもいいか? 話せる部分だけで構わない」
「お願いします」
私はこれまでの話をそのまま伝える事にした。
「私が骨折して入院している時、三枝君がカード式のすごろくの試作品を持ってきてくれました」
「え、三枝が? 一人で?」
「はい」
「ほう……。あ、すまん。続けてくれ」
しきりに頷く先生に促され、私は話を続ける。
「そのゲームは試作品という事だったので、色々と改善点を伝えました。その後それに合わせて改良してくれました」
「それを変に勘繰られて朝の騒ぎ、と」
少し違うけど、三枝君をバカにされたのが嫌だったと言うのは何だか気恥ずかしい。
「……はい」
「で、その後また何かあったのか?」
「次の休み時間に相楽さんが謝ってくれて、三枝君も許していたので、話はそこで終わりました」
「へぇ、謝ったか。相楽も素直で良かった」
「昼休みに改良したゲームで三人で遊んで、とても楽しかったんです」
「おお、そんなに仲良くなれたのか。先生も嬉しいな」
「……私が変になったのはそこからなんです」
「変?」
そう、これを確かめないと、私は道を選べない。
「三枝君の作ったゲーム、すごく面白くなってるんです。進んだり戻ったりも自分で決められるし、サイコロ振った後にも使えるアイテムとかがあって……」
「へぇ、普通のすごろくと違うのか。先生も気になるな」
「一緒に作れた感じがしていて嬉しいのに、何だかモヤモヤするんです」
「モヤモヤ?」
「足のリハビリももうすぐ終わります。ずっと部活に戻りたかったのに、今は、その、もう少しリハビリが長引けばいいのに、とか思ってしまうんです」
「ふむ……」
「でも部活を辞めて三枝君のボードゲーム研究会に入るのも、何か違う気がしていて……」
「なるほど、大体わかった」
そう言うと先生は黙って考え出した。
今まで通り部活に専念した方がいいのか、それともボードゲームの方を選ぶのか……。
「……先生が思うに、藤和は極端に考えすぎなんだと思うぞ」
「極端?」
「あぁ。部活は大事、でも三枝のボードゲームも面白い。どっちかを選ばないといけないって思ってないか?」
「……はい」
「一つの事をしっかり取り組む事、それはいい事だ。事実、藤和はそれで卓球でエースになった」
「……はい」
「今の藤和なら、プラスアルファ何か新しい事に挑戦しても、大きく崩れる事はないと思うぞ。兼部って選択もあるし、部活が休みの時だけボードゲームで遊ぶのもありだろう」
「!」
部活をしながらボードゲームも……!?
そんな事、してもいいの……?
「ただし、これには条件がある」
「条件……」
……当然だろう。
いいとこ取りなんて虫のいい話はないはずだ。
「部活の方にも三枝の方にも、好きって事をちゃんと伝える事」
「えっ?」
好き? 好きってどういう事?
「ただ掛け持ちをするって言ったら角が立つからな。部活もボードゲームも好きだから両立したいって事をきちんと伝えるんだ」
「……はい」
そ、そういう事かぁ……。
びっくりした……。
「まぁどう伝えたってうまくいかない事もある。拒否される事もあるかもしれない」
「……」
ぞくっとした。
部活からも、三枝君からも拒否されたら、私……。
「でも諦めるな。卓球でワンゲーム取られただけで諦めたりはしないだろう? すごろくで1しか出なくったってやめたりはしないだろう? 本当に好きなら、好きって事を伝え続けな」
「……はい!」
モヤモヤは晴れた。
「ありがとうございます先生」
「いや、先生もハッピーになったからな。また悩んだら相談に来い」
「はい」
職員室を出た私は、三枝君と相楽さんの待つ教室に小走りで向かった。
早く伝えたい。この気持ち。この思い。
「お待たせ」
「あ、は、早かったね」
「並べ終わってるからー、早くやろー」
「ごめんなさい。その前に話したい事があるの」
弾む胸に手を当てて深呼吸。
サイコロを振る前に似たドキドキ。
でもどんな目が出ても、私は進む。
遠回りしても戻されても大丈夫って、三枝君が教えてくれたから。
「私、足が治って部活に復帰してからも、また三枝君と遊びたい」
「え、あ、う、うん、僕も……」
「あれー? あたしはー?」
「好きだから」
「へっ!?」
「……わ……!」
あら? 何で二人の顔が赤くなるの?
「あ、あう……、えっと、僕も、その……」
「きゃー! 茉里だいたーん! 決める時はストレートねー!」
「いや、決める時は大抵クロスだけど」
何でここで卓球の話をするんだろう。
「部活も好き。でもボードゲームも好き。だからこれからも遊んでくれる?」
「あ、あー! そういう! うん! あの、もちろん!」
「ありがとう」
「ちょ、ちょっと僕、顔、洗ってくるね!」
「あ! あたしもちょっと、トイレー!」
ばたばたと教室を出て行く二人。
良かった。ちゃんと伝えられた。
三枝君も受け入れてくれたし、後は部活に話ができれば……。
「あ……」
一枚床に落ちているカードを見つけた。
並べてる時に落ちたのだろうか。
カードにはねこ勇者達を「ヒトリボッチカワイソウ」と引っ張って集める、ねこフランケンシュタインの絵が描いてある。
スタートに一番近い人のところに全員集まる、マイナスなカード。
まるで骨折とボードゲームがきっかけで知り合えた私達みたい。
何だか愛おしくて、私はそのカードをぎゅっと胸に抱いて、二人が並べてくれたコースの終わりの方にそっと加えた。
読了ありがとうございます。
次に清沢先生のところに相談に行くのは、三枝君ですね。
恒例の名前紹介。
藤和 茉里=遠回り
三枝 頼通=道草、寄り道
相楽 美兎=ウザがらみ
清沢 金剛=清濁混合
無計画ぶりが露呈する雑なネーミング……。
合わせて各話の適当だったサブタイトルも書き換えました。
堪忍や……。堪忍やで……。
雑なイラストと二つの意味で甘いストーリーにお付き合いくださり、ありがとうございます。
そして小畠愛子様。
素敵な企画をありがとうございます!




