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誰が四天王最弱ですって?  作者: もちもち物質
一章:彼は四天王最弱……だった
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29話

「し、四天王!?俺がァ!?」

「そうよ。だってそれしかないじゃない。次の王が導くなら、他の種族もついていきやすいでしょ?」

 元々そういう予定だったしね、と内心で思いつつ、あづさはラギトが慌てふためくのを眺めた。

「い、いやだって俺が次の四天王になるっつって、いい顔しない奴らだって居るだろ!」

「でしょうね。でも、あなたならファラーシアよりはマシだって思う種族も多いんじゃない?」

「そ、そんなこと言ったってよォ……」

 ラギトはあくまでも、ファラーシアに立ち向かう兵士の1人であるという自覚で居たらしい。そのために少々、混乱しているようであったし、尻込みもしている様子だったが……。

「だから、そのためにもあなた、誰よりも強く美しくならなきゃいけないのよ!皆がついていきたいと思うような!」

「無茶言ってんじゃねェよ!どういうこった、それは!」

 ラギトがギャアギャアと騒ぎつつ翼をバタバタとはためかせるため、風が起こってあづさの髪が吹き乱されていく。それを鬱陶しく思いつつも、あづさはラギトに詰め寄った。

「見た目に関してはまあ、頑張って。宝石は提供してあげる。きらきらしてればそれなりに好かれるんでしょ?」

「そ、そりゃあまあ……あのババアよりは若いし。そこは誤魔化す必要ねェし。幾らでも宝石使っていいっつうんなら張り合えるかもしれねえけどよォ……そんな単純なモンじゃねえだろォ……」

「ならよかった。それで、強さに関しては、私の魔力とやらを吸収させてあげる。萎びかけたマンドラゴラが3日で元気に鳴くようになったんだもの。あなたにも多少は効果、ありそうじゃない?」

「そういうことなら俺も魔力を提供してもいい。ファラーシアの魔力には追いつかんだろうが、それでも多少の足しにはなるだろう」

 ラギトはいよいよぽかんとし始めたが、あづさとギルヴァスは構わず続けた。

「それから、装備も。……ねえギルヴァス。私にくれた腕輪みたいな奴、作れないかしら」

「まあ、あづさのものより材質は落ちるが、幾つか作ってみよう。重ねづけすればそれなりの効果になるはずだ。うん、楽しみだなあ」

「ギルヴァス、あなた本当に物を作るの、好きなのね」

 装備を作るとなって、いよいよ楽しそうなギルヴァスを前に、ラギトは少しばかり、惹かれたような顔をする。光り物が好きなハーピィの性か、やはり装飾品には興味があるらしい。

「地の四天王が作るような立派な装備を身に着けていれば、それはラギトの力の誇示にもなるわ。こういう装備を入手できるツテを持ってるんだぞ、っていう」

「そ……そう、かァ……確かに、お前らみたいな凄い奴らとコネがなきゃ、そんなの準備できねえもんなァ……あ、なら!」

 突然、尻込みしていたラギトがパッと顔を明るくした。

「お前らと友好関係を結んでるって、言ってもいいか!?ファラーシア様に知れたらぶっ殺されかねねえと思ってたけどよォ、ここまで来ちまえば一緒だ!」


 一瞬、あづさもギルヴァスも、迷った。

 地の四天王団が今回のラギト達の謀反に関わったとなれば、火と水の四天王達から非難されかねない。だが……。

「……まあ、いいか。俺はいいと思う。どうせ、俺達が関わったことは遅かれ早かれ分かってしまうだろう。なら、『装備の提供と避難民の保護は行ったが他では手は出していない』と言えた方がいい。どうだろうか」

「そう、ねえ……まあ、要は、新・風の四天王団が地の四天王団の傀儡じゃないって印象付けられればそれでいいのよね……うん、分かったわ」

 ギルヴァスとあづさは頷き合って、ラギトに笑いかける。

「じゃあラギト。あなたが風の四天王領をしっかり治めてくれるって約束してくれるなら、私達の友好関係を公表してもいいわ」




 ……かくして。

 その日の内に3人は鉱山へ潜って、ラギトの装備の材料と、ラギトを単に飾るための宝石とを採集した。

 様々な金属や宝石を採り、そして3人はそれらを城に持ち帰り、ギルヴァスはそこで嬉々としてラギトの装備兼装飾品を作り始める。

 それを手伝うのはあづさやラギトではなく、鉱山に居たウィスプ達だ。

 ウィスプは小さな火の玉である。元々火の四天王領に居た魔物であるだけのことはあり、多少、火を操ることもできる。

 よってウィスプは自分達が集まって大きな火力となりながら、ギルヴァスがその熱を使って金属線を炙ったり、比較的低温で溶ける金属を熔かしたりするために働いている。

 手のひら大の火の玉が所狭しと集まって燃え盛り、ギルヴァスの為に働く様子は、なんともいじらしいものがあった。


 あづさとラギトは伝令役として動いた。

 まず、ラギトがあづさを連れて飛んで侵食地帯へ向かい、そこでスケルトン達に『可能な限り、弓と矢を作っておいてくれ』と指示を出し、それが終わった後は森林地帯へ飛んで『糸を作っておいてくれ』と指示を出し、その後は鉱山に飛んで、そこでゴースト達に宝石の回収を頼んだ。

 特にラギトはあづさを脚に掴まらせて飛んでいたため、城に戻った時にはすっかり疲れ果てていた。だが、ギルヴァスの作業は続いており、ラギトもあづさもその手伝いに駆り出されることになるのだった。




 翌日。コットンボール達に埋もれるようにして眠っていたラギトは、昼過ぎまでしっかり眠っていたものの、あづさに叩き起こされることになった。

「ねえ、ラギト。鉱山に行きたいんだけれど、いいかしら?」

「んあァ……?そんなの、四天王サマに頼めばいいだろォ……」

 眠いラギトはあづさに揺さぶられつつも眠ろうとコットンボール達の中に埋もれていこうとするが、あづさが1つ合図をすると、コットンボール達はさっと散らばっていき、ラギトは布団を失うことになった。

「ほら。いいでしょ?」

「……四天王サマがお前乗せて飛ぶのと、訳が違うンだからなァ……?わーってんだろなァ……」

「私が重いって言いたいの?ぶん殴るわよ?」

 あづさが根気強く揺さぶり続け、ラギトは遂に、体を起こすことになる。

「はい、おはよう。ラギト。今日も頑張りましょうね」

「んー……」

 ラギトは寝ぼけ眼のままもぞもぞと羽を動かすと、あづさに頬ずりした。

 あづさはこれに驚かされたが、どうやらハーピィ流の挨拶らしい、ということは理解できた。ラギトが寝ぼけながら何やら待っているのを見て察しつつ、あづさもやられたのと同じようにして挨拶した。羽がふわふわと柔らかく頬に当たってくすぐったい。

「んんー……よし、起きるかァ」

 挨拶を済ませて少しすると、ラギトはやっと伸びをして、まともに動くようになった。

「で、なんだっけ」

「鉱山よ。宝石とリビングロックが集まってるはずなの」

「それで、俺に運べってかァ?……ったくよー」

 ラギトは文句を言いつつも窓辺へ向かい……そこで、首を傾げた。

「あれ、何だ?」

 あづさも城の窓から外を見ると、そこには……空に浮かぶ、無数の点があった。




「どうもありがとうございます、地の四天王様。あづさ様。我ら一族を匿って頂けることに心より感謝申し上げます」

 ビータウルス達が揃って、ぺこり、と頭を下げる。その数は10や20ではない。100も200も超えるほどのビータウルス達が、揃ってここに並んでいる。

「いいのよ。よく来てくれたわね。あなた達の勇気に、私達こそお礼を言うわ。私達を頼ってくれて、ありがとう」

 あづさはにっこりと笑いながら……ビータウルス達を眺めて、いっそ清々しいほどの気持ちになっていた。

 ……彼らはたった36時間程度で、亡命を決定したらしい。流石、素早さと身軽さが強みの風の四天王団の一員であった、と言うべきか……とにかく、ビータウルス達は種族の全員がこのように避難してくるに至った、ということなのである。その素晴らしいスピードに、最早ラギトでさえも驚きのあまり言葉を失っている有様だった。

「しかし、よく決断したなあ。そんなに風の方の状況は悪いのか?」

「……はい。状況は極めて悪く……元々、パーティーの準備で疲弊していたところだったのです。限界はずっと、感じていました。そこに今回、ファラーシア様のお怒りが向けられ……」

 ビータウルス達は皆揃って、やるせない表情を浮かべている。どうやら、相当に風の四天王団内の状況は悪そうである。


「あの……ところで、何故こちらに風鳥隊のラギト・レラ隊長がいらっしゃるのでしょうか……?」

 ふと、ビータウルスの1体がラギトを見上げてそう言った。

 当然、気になるだろう。風の四天王が憎む地の四天王の元に、風の四天王団の幹部が居るのだから。

「ああ、それはね……」

 あづさが説明しようとした途端、ラギトの翼があづさの肩と背中に回された。

「俺達は元々、友好関係を結んだ仲だからな!」

 単純かつ明快な説明は、ビータウルス達に揃って首を傾げさせた。




「……成程。では、ラギト隊長は、ファラーシア様の圧政を廃し、新たな風の四天王団を作られるのですね!」

 ラギトの説明は少々稚拙だったが、ビータウルス達はおおよそその中身を把握できたらしい。あづさから見ると、ラギトよりビータウルス達の方がいっそ賢そうに見える。

「んー、そんな難しいこたァ考えてねェよ。ただ、今の状況は最悪だろ?風ってモンはもっと自由であるべきだろ?俺はそう思っただけだ」

 一方のラギトは、あづさに遠回しに『馬鹿っぽい』と思われているとは露知らず、ただそう言った。

 ……『難しいことは分からない。だが、もっと自由に』。

 決して賢そうではないが、だがその分、ラギトの考えは率直に伝わったのだろう。ビータウルス達はラギトへと期待に満ちた眼差しを向けた。

 現状を打破しようとしている存在がどうやら裏表のない良くも悪くも単純な人物であるという情報は、ビータウルス達にとって嬉しい情報であったのだ。

「ってことで、これから俺は他の種族も回って俺につく気はないか、聞いてみるつもりだ!お前ら、向こう離れそうな奴らに心当たり、ねェか?」

「そういうことでしたら。我らが所属していた花蜜隊は皆、地の四天王様のお許しがあればこちらへ亡命してくると思われます。別れの挨拶をした者も居ましたが、我らを羨んでいました」

 思わぬ収穫に、あづさは思わず頬が緩む。

 どうやら頭数は、それなりの数が揃えられそうである。


「あー、花蜜隊かァ。あいつら確かに全員、弱っちいもんなァ……っと、悪ィ」

「いえ、事実ですから」

 うっかり口を滑らせて、ラギトは気まずそうな顔をする。その一方、ビータウルスはそれを何とも思っていない様子だった。

 そもそも、強さにプライドがあるような種族なら、このように他の四天王のところへ逃げてきたりはしないだろう。ビータウルス達は皆、自分達の立ち位置を理解しているのだ。弱者としての、立ち位置を。

 ……だが。

「……でもいいんだ!お前らは弱っちくていいんだ!俺が強けりゃ済む話だ!な、そうだろ!」

 ラギトがそう言って、ぱたぱたと翼をはためかせる。

「俺は強いんだ!だから、お前らを守ってやれるぞ!弱っちけりゃ、強い奴が守ればいいんだ!」

 これに、ビータウルス達は驚いたように目を瞠る。

 今まで、『強さ』に虐げられていた者達には、ラギトの言葉は酷く眩しく届いたのである。




「ラギト・レラ様。我らも戦います」

 やがて、ビータウルスの1体がそう申し出た。

 すると続いて、他のビータウルス達も、自分も自分もと次々に声を上げる。

「えっお前ら、俺の話聞いてたのか!?」

 それにラギトは驚かされたが、ビータウルス達は強く頷いた。

「ええ。あなたのお言葉に感銘を受けました。そして、少しでもあなたのお役に立ちたいと思ったのです」

「お前ら……」

 ビータウルスは、弱者のそれらしくない力強い眼差しをラギトに向け、言った。

「我らの能力は、蜂を使役する能力です。……1匹1匹の蜂は非常に弱いですが、集まった時、多少の効果はあるはずです。手数なら、お任せを」




「よし。これで完成だ。両腕に両脚。首飾りに帯飾りもつけて、ここまで守りの魔術を重ねたんだ。それなりのものにはなっているはずだぞ」

 ギルヴァスは出来上がった装飾品をラギトに身に着けさせて、満足げに頷いた。

「すっげえ……」

 ラギトは目をキラキラと輝かせながら、自分を飾り守る装飾品を眺める。それら1つ1つが高級品として魔王城城下町に並ぶような代物である。ギルヴァスがこのようなものを作れるとは思っていなかったラギトは大層驚いたが、それ以上に装飾品の美しさに目を奪われていた。

「さて。綺麗に飾ったところで、やる気も出たわね?」

「おう!出た!すっげェ出た!」

 すっかり元気になったラギトは、意気込みながら早速、窓枠に片足を掛けて空を見上げる。

「よろしい。ならラギト。頑張っていってらっしゃい。私達は亡命種族受け入れの準備をしておくから。いくらでもこっちに寄越して頂戴ね」

「分かってるっつの!……じゃあ、行くぞ!できるだけ多くの仲間を助けるんだ!」

 ……そしてラギトは、数体のビータウルスを伴って、飛んでいった。

 彼らはこれから、風の四天王団の他の種族に声をかけて亡命と反乱を促し……風のファラーシアに対して、謀反を起こしていくことになる。


「……さて。じゃあ、どれくらい頭数が揃うかは分からないけれど……やれることはやっておきましょうか」

 あづさは立ち上がると、ギルヴァスに近づいた。

 ギルヴァスは装飾品を一揃い作り終えて満足していたが、あづさが近づいてくるのを見てギルヴァスもまた立ち上がる。

「さっき、ラギトに頼もうと思ったんだけれど、鉱山まで連れてってくれるかしら?宝石が集まってる頃なのよ」

「ああ。構わないぞ。……しかし、これ以上、何のために宝石を使うんだ?」

 ギルヴァスが楽し気に尋ねると、あづさは笑って答えた。

「『下手な鉄砲』にするのよ!」


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