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80話 先が思いやられちゃう

「むー……ダーリン! 私の力も頼りにしてくださっているんですよねぇ!?」


 おっと、いけない。

 さっきからラウムとフロンの事ばかり構っていたせいで、ハルるんがすっかり拗ねてしまったようだ。

 ここは一度、彼女を選んだ理由もしっかり口にしておくべきか。


「勿論だよ、ハルるん。いざという時には、お前の力を頼らないとな。お前の戦闘スタイルは、潜入や遊撃向きなんだろ?」


「きゅふっ、きゅふふふふっ!! はぁいっ! お任せくださぁいっ!」


 まるでお姫様のようなフリフリの華やかなドレスを身に纏っているハルるんだが、彼女の戦闘力は伯爵クラスの中でも屈指であるそうだ。

 その高い戦闘力の源となっているのが、彼女の魔神装具の持つ規格外の能力だ。


「確かに武器マニアのハルファスなら、森の中での戦闘に向いているのかも」


「語弊がありますねぇ、カイムさん。別に私は武器マニアなんかじゃありませんよぉ。ただ単に【武器を無限に生み出す】武器庫を持っているだけですぅ」


 武器を無限に生み出す武器庫。

 この凄まじい言葉通り、ハルるんは剣、槍、斧などの近接武器から、弓やボウガンなどの遠距離武器に至るまで……自由自在に生み出せる力を持っている。

 俺がその能力を最初に目にしたのは、キミィが兵士として鍛え上げているユーディリアの若い民達に、望んだ武器を配り歩いていた時の事だ。

 何も無い空間に手を突っ込み、何十本にも及ぶ剣や槍を取り出した光景には――正直、かなり面食らったものだ。


「遠距離の武器を扱えるだけで十分、ハルるんは今回の作戦向きだよ。ルカやフェニス、Gちゃんの戦い方はかなり……目立っちゃうし」


 ルカは近接武器オンリーだし、そもそも元気過ぎて潜入や隠密行動には向いていない。フェニスは最後まで迷ったが、森の中で炎を使用すると大惨事になりかねない事を考えて断念。

 Gちゃんの強さ自体は問題ないんだけど、ルカと同じく潜入や隠密には絶望的には向いていないタイプだ。


「なるほどねー。戦闘能力の低いボクとビフロンスだけじゃなく、荒事の得意な魔神を連れてくるとなると……確かにハルファスが適任だ」


「ああ。ドレアとアスタは非戦闘タイプ。キミィは強いけど、どちらかと言うとユーディリアに残って兵士達をまとめる役目を任せておきたかったんだ」


「うむ。そして、アンドロマリウスはユーディリアに残してきた魔神達をまとめる役目……というわけじゃな?」


「そういう事。アンマリーなら、上手くやってくれると思うからさ」


 元々、ユーディリアに残った僅かな魔神達を束ねていたのは彼女だ。

 俺がいない間、留守を任せるのであれば……彼女こそが一番の適任だろう。


「ふーん? 昔のソロモンっちと比べてアホっぽいように見えたけど、ミコトっちも意外と色々考えているのかも。正直、ちょっと見直したかもー」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど……カイム。そろそろ出発したいから、いい加減に起き上がってくれないかな?」


 ちょっと目を離すと、カイムはすぐに地面の上にゴロゴロと寝転んでしまう。

 折角の極上の素材も、こんな風にグータラとした振る舞いのせいですっかり台無しになっている。

 本当に惜しいよなぁ……服の隙間から飛び出した、あのむっちりお腹。

 天然物なら大歓迎だけど、あれは完全に堕落した生活が生み出した養殖物だし。


「くぁっ……んんぅ。歩くの面倒だしぃ、おんぶして欲しいかもぉ」


 のそのそと気怠げに起き上がったカイムは、大きな欠伸をしながら俺の方へと歩み寄ってきた。しかし、そんな彼女の要求は……俺の前に立ち塞がったあの子によって、阻まれる事となる。


「は? カイムさぁん、アナタ今……私のダーリンに何か言いましたか?」


「はひぃっ!? じょ、冗談かもぉ……あはっ、ははは……」


 こちらからは後ろ姿しか見えないが、今のハルるんはかなり怖い顔をしているのだろう。

 顔を青ざめながら、引き攣った笑みを浮かべるカイムの様子が、その恐ろしさを如実に物語っている。


「なぁんだ、冗談なんですねぇ。それなら良かったですぅ」


「そーそー。だからほら、早いとこ出発した方がいいかもー!」


 ハルるんの脅しが効いたのか、さっきまでとは打って変わった態度で先陣を切って行くカイム。

 怠け者な面が目立つカイムだけど、こういったコミカルな姿は素直に可愛いな。


「きゅふふふふふふっ……安心してくださいねぇ、ダーリン。ダーリンに近付く敵も、泥棒猫も、みぃんな私が排除して差し上げますからぁっ!


 そして、カイムを制したハルるんが俺の横に駆け寄ってきて……ぐいっと右腕をがっちりホールド。たわわな胸の谷間に、俺の腕をずぷぷぷと差し込ませる。


「う、うん。やりすぎない程度に……お願い、したいかな」


 今までに何度も、こういったアプローチをされてきたが……それでもやはり、この素晴らしい感触を前にしたら、俺の理性はガリガリと削られていく。

 ああ、やわらけぇ……あったけぇ……良い匂いがする。


「ふんっ、デレデレと鼻の下を伸ばしおって!!」


「あいだぁっ!? いででででっ!」


「ベリアルさぁん!! ダーリンに乱暴はやめてくださぁいっ!!」


 機嫌を損ねたベリアルが俺の髪を強く引っ張り、それを見咎めたハルるんが抗議の声を荒らげる。

 もはやここ最近の定番となりつつあったやり取りを前にして――


「なーんか、色々と先が思いやられそうだね」


「がうがーががーう、がうがががががうが……」


 少し離れて俺達の様子を見守っているラウムとフロンとの距離が、今よりもほんの少し……遠ざかっていくような気がした。

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