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69話 ようやく覚醒の兆し!

「だよなぁ、やっぱり夢だよなぁ。フェニスがあんなにデレデレなわけないし、Gちゃんが黄金よりも俺を好きとか言うわけが……」


 夢のような状況とは総じて本当に夢である。

 いやね、自分でも薄々そうじゃないかなーとは思っていたんですよ。

 それでも、ほんのちょっとは期待したかったと言いますか、現実だったら嬉しいなって期待して……


「全く、いつまでブツブツと文句を言っておる。貴様が修行中に気を失ったせいで、まるで目標に届いていないのじゃから、しっかり集中せんか」


「……へいへい、分かりましたよ」


 悲しみに暮れる間もなく、頭上の鬼コーチはペチペチと俺の頬を叩いてくる。

 彼女の言う通り、俺は魔術修行を行っている最中に意識を失ってしまい、あの幸せな夢の中へと逃避していたらしい。 


「よし、ならばもう一度やれ。自身の体に流れる魔力を感じ取るのじゃ」


「おう、やってやるぜ!」


 ユーディリア城にある修練場の一室で、俺は座禅を組み、瞑想する。

 そしてベリアルに指示された通り、目には見えない魔力の流れというものを、自分の体の中から見つけ出そうと……意識を集中させた。


「むむむむむ……む?」


 すると、一休みした事が功を奏したのか。

 今朝からずっと、何度繰り返しても掴めなかった魔力の感覚を――僅かではあるものの、感じ取る事ができた。

 

「このあったかい感じ、みんなと契約した時や魔神憑依した時にも……」


 体内を巡る、血液とは違う何か。

 頭の先からつま先まで、俺の体内を満たすその存在に……俺は気付く。


「うむ。お前は今までも、知らず知らずの内に魔力を扱っておる。しかし、その知識と認識が欠けていた為に、そのコントロールがおざなりになっていたのじゃ」


「確かに、前に感じた時はもっとこう……ぶわっとしていて、どどどーって溢れ出る感覚だったな」


「それは無駄に魔力を垂れ流しておった証拠じゃ。意識して魔力をセーブできれば、魔神を憑依していられる時間も増える。逆に、大事な場面で魔力を爆発させる事で、圧倒的な力を生み出す事も可能じゃろう」


 なるほど。

 つまり魔力っていうのは、バトル漫画でよくある気とかオーラみたいなものか。

 上手く扱えれば扱える程、その分強くなれるわけだ。


「過去のソロモンは、そこが非常に長けておってな。あやつが憑依すれば、伯爵クラスの魔神でも公爵クラスと同等の力を発揮できたものじゃ」


「……前世の俺って、本当に凄かったんだな。魔法も色々扱えたらしいし、カリスマもあって……多くの人から慕われていたんだろ?」


 座禅を解き、俺はふと視線を部屋の壁に向けてみた。

 そこには、俺と瓜二つの顔を持つ青年……ソロモン王が描かれた肖像画が飾られている。

 顔は同じでも、俺とは似てもにつかない凛々しい表情だぜ、全く。


「まぁのぅ。あやつは本当に非の打ち所のない奴じゃった。そもそも、魔神との契約方法も直接契約ではなく、魔法陣を用いたやり方を使っておったし」


「いや、そこは今のままでいいや。俺は断然、直接契約派だから」


 魔神少女達の体のどこかに存在する紋章に、俺がソロモンの指輪を嵌めた右手で触れる事で……その魔神少女に契約を強いる直接契約。

 そんな直接契約の際には、魔神側に性行為をも上回る快感の波が走るらしく、多くの女の子達がビクビクと快感に悶える、えっちぃ光景を見せてくれたものだ。

 その特典があるというのに、わざわざ魔術による契約を覚える利点など皆無。

 俺はこれからも、女の子をよがらせながら契約を行うのだ! 絶対に!


「うむ。過程や方法はどうでも良い。大事なのは魔神と契約する事じゃからな」


「ああ。いずれ72柱全員と契約すりゃ、お前も完全に元の姿に戻れるようになるんだろ? だったら、もっと頑張らねぇと」


 ぬいぐるみの姿をしているベリアルだが、彼女本来の姿は絶世の美女である。

 こんな姿になった理由や経緯はよく知らないが、なんでも俺が魔神と契約する度に力を取り戻し……やがては、本来の姿へと戻るのだという。

 現在俺は72柱の魔神の内、7柱の魔神と契約を交わしているから、今のベリアルは全力のおよそ十分の一程度の状態に、一日五分だけ戻れるのだとか。


「ふふふ、そうじゃな。お前は儂の元の姿にメロメロじゃからのぅ」


「……否定はしねぇよ。ぶっちゃけ、あの姿は卑怯だし」


 普段は小うるさいぬいぐるみの癖に、元の姿は俺の好みドストライクだからタチが悪い。あの姿を一日五分しか見られないなんて、生殺しもいいところだぞ。


「じゃが、ミコトよ。契約によって強くなるのは、何も儂だけではない。お前もまた、新たに魔神を従えるごとに……徐々に魔力の総量が上がっておる」


「へ? そうなの?」


「間違いない。結局のところ、お前が成長すればするほど、儂の復活は早まる事実に変わりないのじゃが……一応、そこのところは覚えておけ」


 ふぅん? よく分かんないけど、俺が強くなる近道は契約って事なのか。

 だったら、こうして地道に修行を続ける事よりも、新たに俺のハーレムに加わってくれる子を探しに行く事も視野に入れるべきかもしれないな。


「……アイツを早く迎えに行く為にも、俺はもっと強くならねぇといけないし」


 俺が今すぐにでも、強くなりたい理由。

 それは、俺が弱いばかりに連れ帰る事の叶わなかった1柱の魔神少女……ヴァサゴを、一日でも早く取り戻したいからだ。

 別れ際。この赤いマフラーを残して去っていった彼女の、最後の悲しい笑顔を見送る事しかできなかった過去の俺を――超える為に。


「うむ。奴もきっと、お前を心待ちにしているじゃろうて」


 ベリアルもまた、あの時にヴァサゴを救えなかった事を悔いているのだろう。

 こうして俺の修行に精を出してくれているのも、きっとそれが理由に違いない。

 だから俺は、その期待に応える為にも……もっと強くならなければ。


「さて、少し話が逸れてしまったかのぅ。そろそろ、修行を再開――」


 無駄話は終わりだと、またしても俺の頬をぺちぺちと叩き始めるベリアル。

 そんな彼女の催促に応じて、俺が気を引き締め直そうとした……その時。


「みぃーこぉーとぉーさぁーまぁー!!」


 バッタァーンと、大きな音を立てて開かれる扉。

 そして、その音に負けないくらいの大声を上げながら室内へと飛び込んできたのは、俺がこの世界にて最初に契約を交わした魔神少女――ルカだ。


「むふぅ!! ミコト様!! 修行の調子は順調ですか!?」


「やぁ、ルカ。修行はようやく一歩進んだところだよ」


 部屋に飛び込んでくるなり俺の前に跪き、キラキラとした瞳で頭を撫でて欲しそうに上目遣いしてくるルカ。

俺はそんな彼女に要望に応えるように、その頭に手を乗せた。


「むっふっふー! 流石はミコト様ですね!」


「こら、フルカスよ。修行中は邪魔をするなと、言っておいた筈じゃが?」


「ひっ!? ち、違いますよ! 邪魔なんてするつもりはありません!!」


 喜びはしゃぐルカとは対照的に、恐ろしく冷たい声で話すベリアル。

 ルカは一瞬ビクッと怯えたように反応するも、慌てた素振りで両手を振り、ベリアルに向かって弁明を始めた。


「昼食のご準備ができましたので、お知らせに来たんですよ!! ミコト様、修行もいいですけど腹ごしらえも大事ではないでしょうか!?」


「ああ、そういう事か。確かに、もうお腹ペコペコだよ」


 早朝、寝室を共にしているベリアルによって叩き起され、修行を始めてからというもの……俺は一切、食事はおろか、水すらも口にしていない。

 というか、俺がさっき気を失ったのは、それが原因なんじゃなかろうか。


「チッ、しょうがないのぅ。餓死寸前まで追い詰めるつもりじゃったが、修行も一段階進んだ事じゃし……食事くらい、許可してやろう」


「お前な、昨今はそういうスパルタ方式の特訓はウケねぇんだぞ」


 物騒な事をのたまうぬいぐるみを小突きつつ、俺は空いた手でルカの手を取る。

 

「むっふっふふー! それじゃあ行きましょう、ミコト様!!」


「ああ。どんなご飯が出てくるのか、楽しみだよ」


 スベスベで柔らかいルカの手の感触を堪能しながら、俺は実感する。

 俺が異世界にやってきてから、色んな子と出会い、契約を交わし……こうして、彼女達と同じ日々を過ごしている事は、決して夢なんかじゃない。


「ところで、食堂にはみんな揃ってるのか?」


「はいっ! 今日は珍しく、ミコト様と契約している全員が食堂にいますよ!」


 俺の問いかけを受けて振り返り、屈託の無い笑みを向けてくるルカ。

 ウェーブがかった髪をなびかせ、たわわな胸を胸当てごと揺らして進む美少女の可憐な姿を見て……俺はこの世界に来られた事を、深く感謝するのであった。


いつもご覧頂いたり、ブクマ登録などして頂いてありがとうございます。

主人公がきっかけを掴んで能力を覚醒させ、ゴリゴリに強くなっていく展開がお好きな方は是非、ブクマやポイント評価をお願いします!

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