幕間の物語 ベリト1【黄金ペロペロソーセージ 後編】
「もぉ!! どうして駄目なんですの!?」
「この場所は男の子のデリケートな場所なんだ!! なんと言われようとも、ここだけは許すわけにはいかない!!」
俺の大事な部分に黄金を塗りたくり、舐め回すという凶行を実行しようとしているGちゃんを静止し続けて……十数分後。
中々折れてくれないGちゃんに、俺は未だに手こずっていた。
「よく聞いてくれ、Gちゃん。この部分は、いざという時にだけ、愛する相手に見せるものなんだ!!」
「でしたら!! ワタクシの事を愛していないという事ですの!?」
「そういう事じゃなくて!! 俺はまだ、あの経験が無いし……そもそも、初めてはやっぱり、シチュエーションが大事だと思うから……」
「ああもう!! なんなんですのぉ!! 焦れったいですわねぇ!!」
頭部から生えた二本の触角……もとい、アホ毛をピコピコと激しく動かしながら、地団駄を踏むGちゃん。
そんな風に言われても、俺はまだ童貞なんだから……仕方ないじゃないか。
「大体、その棒は一体なんなんですの!? 昔、男の方の大半は股間に金を隠し持っているとお聞きしましたけど……それとは違いますの!?」
「……確かにその金の袋も大切だけどね」
望みが叶わず、どんどん不機嫌になっていくGちゃん。
これ以上拒否だけを続けても話は平行線になりそうだし……しょうがない。
「うぇひぃっ!? 金の袋!? そんなモノを男の方が!?」
「……あのな、Gちゃん。ちょっとそこに座ってくれ」
「え? な、なんですの……? 急に、真面目な顔になって」
「いいから。お前にはこれから、保健体育の講義をしてあげよう」
俺はGちゃんを椅子に座らせると、その耳元に口を近付ける。
俺達の他には誰もいないのだから、耳打ちをする必要は無いんだけど……面と向かってアレ系の話をするのは恥ずかしいからな。
「うぇひっ、耳がくすぐったいですわ!」
「よく聞いて、覚えておいてくれ。あのな、男の人の股間にあるのは……」
そして俺は、一から全てを説明する。
生命の誕生の神秘――それに至るまでに必要な、性なる儀式について。
「……え? 子供を作る為に……? で、でも子供は黄金のコウノトリが運んでくる筈じゃ……女性の……はいっ!? ナカに挿れるって……!!」
「そんでもって……」
「うぇひぃぃぃ!? 子供を作る為に、そんな事を行いますのぉ!?」
一つ一つ、俺が順序建てて説明を行うも、小学生レベルの性知識も持ち合わせていなかったGちゃんは、ただただ困惑の声を上げるばかりだった。
「で、ではワタクシは……そんな大切なモノに、黄金を塗って……舐め回したいなどと、言っていましたの……?」
そして、その全てを語り終える頃には。
流石のGちゃんも、自分がどれほどとんでもない発言を口にしていたのかを理解したようで。
「うん。そうなるね」
「な、ななぁっ……!!」
身に纏っている紅いドレスよりも顔を真っ赤にして、凄まじいスピードでベッドの中へと潜り込んでいった。
言うまでもなくその動きは、まるであの昆虫に似た……カサカサカサッという動きである。
「うぅっ……ワタクシはなんて破廉恥な事を……!! ああっ、もうアスタロトに会わせる顔がありませんわっ!! いっそ殺してくださいましっ!!」
「だ、大丈夫だって。知らなかったんだから、無理もないよ」
ベッドのシーツに全身包まって、泣き言を漏らすGちゃん。
そんな彼女を俺はベッドの脇から慰めるも、これは相当な精神ダメージだったようで……中々、Gちゃんは顔を見せてくれない。
「おーい、Gちゃん?」
「…………何も、言いたくありませんわ」
「……しょうがないな」
下手な慰めの言葉じゃ、シーツの中からGちゃんを出す事は難しそうだ。
そう判断した俺は、ベッドに腰を下ろし……先程金粉を塗りたくった右腕を、シーツの中へと差し込む。
「ほら、Gちゃん。折角塗ったんだから、ちゃんと堪能してくれよ」
「……………………」
それから、一分、三分、五分と。
シーツの中に腕を突っ込んだまま、しばらくの沈黙が流れた後。
「……ぺろっ」
「おっ?」
湿った生暖かい感触が、少し遠慮がちに……俺の右腕を這っていく。
ようやく、Gちゃんが餌に食いついてくれたようだ。
「ぺろぺろ……ぺろぺろ」
「機嫌を直してくれて、嬉しいよ」
腕の場所からGちゃんの頭の位置を割り出した俺は、空いている左手を使ってGちゃんの頭をシーツ越しに撫でる。
すると、あんなに弱々しかった舌の動きが、途端に激しさを増していき。
「うぇひっ、うぇひひひひひっ……!! ワタクシはやっぱり、こうして金に染まった腕を舐めているのが一番ですわ!!」
「こんな腕でよけりゃ、何度だって貸してあげるさ」
「うぇひひひひひひぃっ! 当然でしてよ!! アナタはワタクシの大切なコレクション! 絶対に離したりしませんわ!」
こうして、Gちゃんはようやく普段の調子を取り戻し……一時はどうなるかと思われた毎晩の日課も、無事に終える事ができた。
だが、たった一つだけ。
想定外というか、俺の思っていた路線とは違う方向に進んだ事があって。
この一夜から、明けた次の日の食堂にて――
「ミコト様っ!! 昨日の夜、ミコト様がベリトに赤ちゃんの作り方を教えたというのは本当ですか!?」
「ぶぅううううっ!? ル、ルカ!? いきなり何を……!?」
「むふぅー!! ずるいです!! 私にも教えてください!! ミコト様の赤ちゃんを私にも……ぶべへぁっ!?」
「フ、フ、フルカス!! 貴様ァッ!! こんなに朝早くから、なんと破廉恥な話を口にしている!?」
「むふがぁー!! 今回ばかりはアンドロマリウスに何を言われようとも譲れませんよぉ!! 真っ向勝負です!!」
食堂に入ってくるなり、大声でとんでもない事を叫んだルカ。
そしてそんなルカと、取っ組み合いの喧嘩を始めるアンマリー。
アンマリー、最近そんな役回りばっかりだね。
「ふーん? 新マスター君も、ヤる事はヤってるんだねぇ。ボク、びっくりだよ」
「がうぅ? がうがうがうー?」
「ダーリィィィィィィィィィィィィィンッ!? どういう事ですぅ!? 私というものがありながらぁ、ベリトさんと●●●してぇ、●●●したんですかぁ!?」
「うわー……なんだか凄い事になっちゃったぞぉ」
その他、食堂にいる面々も……ルカの言葉を聞いて、間に受けているし。
いや、子供の作り方を教えた事は本当なんだけどさ。
「もしかして、Gちゃんの奴……!」
そんなにも、あの夜のひと時が彼女にとって幸せだったのか。
それとも、子供の作り方を知った事が嬉しかったのか。
いずれにせよ。
今夜、あの子の部屋に行った後には……
「ふむ、ミコトよ。これから貴様には事情聴取が必要じゃな」
「ふんっ、くっだらない。でも、ちゃんと正直に答えないと……二度とアンタとは口をきかないからね? 覚悟しなさいよ」
「あはは……ははは……善処します」
たっぷりと、恨み言を呟かねばならないだろう。
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次回のアスタの幕間が終われば、いよいよ新章突入予定です。
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