幕間の物語 ベリト1【黄金ペロペロソーセージ 前編】
深夜のユーディリア城。
キミィの部屋で、楽しくも幸せな時間を過ごした俺は……続いて、新たな目的地を目指して歩いていた。
「さて、問題はあの子の方だな」
キミィの方はしっかり話し合えば、すぐに分かってくれるという確信があった。
しかし、これから訪れようとしている彼女の方は、果たして大人しく話を聞いてくれるのか……
「……ごくっ」
そうこう考えている間に、ようやく彼女の部屋の前まで到着。
ここまで来たのなら、もういつまでもウダウダ悩んでいても仕方がない。
当たって砕けろの精神で、彼女に平謝りするとしよう。
「あー……俺だけど、まだ起きてる……よな?」
ノックを何回か鳴らしてみるが、扉の中からの反応は無い。
まさか、もう寝てしまっている? いや、あの子に限ってそれは無いだろう。
「でも、返事も無いのに入るわけには……ん?」
どうしたものかと頭を抱えていると、突然扉がひとりでに開き始める。
あの子が力を使って、扉を開いてくれたらしいな。
「じゃあ、入るぞ」
部屋に入るとすぐに、ひんやりとした空気を感じる。
そりゃそうだ。なにせこの部屋は、内装の大半を黄金でコーティングされているんだから。
「やぁ、Gちゃん。待たせて、ごめんな」
「……ええ、首を長くしてずぅーっと待っていましたわ」
床、壁、天井のみならず、机、棚、ベッドに至るまで(流石にシーツやマットは別だが)が黄金によって飾られた一室の主。
それは勿論、黄金をこよなく愛する魔神――Gちゃんである。
「昨晩は、ほんの数秒しか【お楽しみ】をさせて頂けませんでしたもの。ですから今夜はきっと、来てもくれないのかと思っていましてよ」
Gちゃんはベッドの上で横になり、少し頬を膨らませながら俺を責めてくる。
キャンディ感覚で右手に握っている黄金の延べ棒が少し気になるものの、俺は頭を掻きながら彼女の言葉に堪える。
「いや、あははは……昨日はほら、アンマリーのお説教もあったし」
Gちゃんの言う【お楽しみ】とは、俺の体のどこかに金粉を塗りたくり、それをGちゃんがペロペロと舐める行為の事だ。
黄金を愛しすぎる彼女は、なんでも好きなモノを黄金として愛でたい衝動に駆られてしまうようで……嬉しい事に俺もまた、その対象に含まれているらしい。
「そんな事は関係ありませんわ。ミコト、アナタは全員平等のハーレムを作るんじゃありませんの?」
「おっしゃる通りだよ。本当にゴメンな」
「でしたら早速、いつもの神聖な儀式を行いますわ。さぁ、ミコト、今夜は腕を出してくださいまし」
むくりと起き上がったGちゃんは黄金の延べ棒をベッドに置いて、机の上に用意してあったスープ皿を手に取る。
そしてそのまま俺の傍にまで歩み寄ってくると、いつものように期待に満ちた瞳で……俺の顔を上目遣いに見上げてきた。
「ああ。ほら、これでいいか?」
「ええ、とても良いですわ。アスタロト程ではありませんけれど、アナタの腕も中々にそそる造形をしていましてよ……うぇひひひひ」
俺がローブの袖を捲り、右腕を突き出すと……Gちゃんは笑いながらスープ皿の中身、金粉を溶かし込んだ水を塗りこみ始めた。
筆などは使わず、右手を金粉に浸けて……それを俺の腕に触れて、塗っていく。
冷たい水の感触だけではなく、スベスベで柔らかいGちゃんの手の感触がなんとも心地いい。
「あぁっ……なんて美しいんですのぉ。ワタクシの大切なモノがどんどん黄金に塗れていくこの快感、堪りませんわぁ」
徐々に黄金に染まっていく俺の腕を見つめながら、うっとりと恍惚の表情を浮かべるGちゃん。こんなに喜んでくれるのなら、腕の一本くらい安いもんだ。
「これで、オーケーでしてよ。うぇひひひぃ……なんて美味しそうなのかしら。早く舐め回してあげたいですわ!」
そうして、黄金を塗り終えたGちゃんは皿を机の上に戻し……まずは自分の手の指に付着した金粉をペロペロと舐め始める。
赤く長い舌が、まるで生き物のようにGちゃんの指先を舐め回すその仕草を見て……俺はなんとも言えない、エロスを感じてしまう。
「んっ……ちゅっ、うぇひひひっ。やはり黄金は美味しいですわね」
「お前が黄金を舐めて喜んで、それを見た俺が喜ぶ。一石二鳥だよな、ほんと」
まだ俺の腕を舐められたわけではないが、それでも俺は十二分に満足感を得ている。美少女が喜ぶ姿が、俺にとっては何よりのご馳走だからな。
「でも、メインディッシュはこれからですわ。今夜もたっぷりと、アナタの腕を舐め回して差し上げ……あら?」
自分の手を舐め終えたGちゃんが、今度は俺の腕に舌を這わそうとした……その時である。
彼女の視線は黄金に塗れた俺の腕ではなく、それよりも遥かに下の――俺の大事な一箇所に集中していた。
「……ねぇ、ミコト。それはなんですの?」
「えっ……? あっ、いや!! これは、だな!!」
し、しまった!!
Gちゃんのペロペロしている姿がエロすぎるあまり、俺のソロモンが僅かに硬くなってしまい――その存在をにょきっと主張している!
「もしかして、それは……?」
「ご、ごめん!! これは男にとって、非常に大切な部分なんだけど、時々こうして自分の意志とは異なる動きをするというか、ある意味忠実というか!!」
テンパったあまり、自分でも何を言っているのかよく分からないが。
とりあえず、Gちゃんに幻滅されないように必死に謝る事にした。
「大切な部分……へぇ? ふぅーん? そうなんですのね」
しかし、相手はあのGちゃんである。
俺の考えや予想など、遥かに上回ってくるのが彼女なわけで。
今回だって、その例に漏れる事なく――
「それでしたら!! 今夜はソコにも!! 黄金を塗って舐めて差し上げますわ!!」
「うぇっ!? そ、それは……!?」
色んな意味でヤベェ爆弾発言を、容赦なくぶちまけるのであった。
※
本作はR15作品ですのでR18な描写に発展するような事はございませんので。
紳士淑女の皆様、ご安心して後編もお楽しみください。
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