33話 契約の快楽なんかには絶対に負けないっ!
服従のポーズ、というものがある。
犬とかがよく、地面に背中を付けて寝そべり、両手両足を曲げながら自身の腹部を相手に見せる……文字通り、服従を誓うポーズだ。
「あやややや……これはまた、は、恥ずかしいですね」
そんな、話には聞いた事があっても、ペット以外の相手ではそうそうお目にかかれない服従のポーズが……たった今、俺の眼前で繰り広げられていた。
そのお相手とは勿論、執事のような燕尾服を身に纏う魔神アンドレアルフス。
通称ドレア。俺達の前に立ち塞がった第一の門番である。
「ぶふぉっ! ぷくっ、くくっ……あっははははっ! こんなの面白すぎよ!」
「むーふー……アンドレアルフスにこんな趣味があったなんて、驚きです」
「マゾヒスト。肉体的、精神的苦痛を快楽に変換する……性癖を、持っている」
ドレアの体勢を見て、それぞれ異なるリアクションを見せるフェニス達。
千年前は共に前世の俺の元で行動し、世界を制覇したという間柄だというのに、ドレアがMであった事はまるで知らなかったそうだ。
「結局、彼女の欲求を満たせるかどうかが、主として認めるかの判断材料……だったとは。彼女がマゾだという事に、元マスターはいつから?」
「うーん。流石にここまでのレベルだとは思っていなかったけど、最初の方からなんとなくMっぽいなぁとは思っていたよ」
俺はヴァサゴの質問に答えながら、スニーカーを脱いだ右足を、服従ポーズをしているドレアのお腹の上に踏み下ろす。
「んぎぃひぃっ!? あやぁ……んっ」
するとドレアは一瞬苦しそうに呻くも、すぐに恍惚とした顔で両手両足をモゾモゾと動かし始める。その動きは、もっと強くして欲しいという催促なのだろう。
俺はそんな彼女の期待に応えるべく、右足のつま先にさらなる力を込めていく。
「あやぁーっ!! やぁー、あやややややーっ!!!!」
「ベリトの趣味に付き合って金色の寝袋に包まっていた事も気になったけど、一番はやっぱり……フェニスに焼かれる事を、楽しんでいた節があったところか」
下手な事を言えば炎で攻撃するとフェニスが忠告を入れても、ドレアは結局守らずに攻撃を受ける羽目になっていた。
議論や口論のスペシャリストである彼女ならば、そんな事にならないように上手く回避できてもおかしくないのに、なぜかそうしなかったのだ。
「とはいえ、一応は隠しておきたかったんだろうな。性根の奥底までメス豚のくせに、一丁前に人間の言葉を使ってベラベラと御託を並べていたし」
「あぁーやぁーやぁーんっ!」
グリッと足をねじると、ドレアは嬉しそうに嬌声を上げる。
俺、女の子相手にこんな事をするのは初めてだから、かなり緊張していたんだけど……喜んでくれているようで良かったよ。
本当なら女の子を足蹴にしたり、酷い事を言ったりしたくはないが、それで女の子が喜ぶというのなら、この根来尊! 容赦せん!!
「むへぇ……ミコト様が、ノリノリですよぉ」
「っと、悪い悪い。いつまでも楽しんでいる場合じゃないよな」
ふと我に帰ると、人差し指を咥えたルカが物欲しそうにこちらを見ていた。
もしかするとルカもM寄りなのかもしれないが、今はそれを確かめている時間がないので……またの機会に確認してみる事にしよう。
「もう十分だろ? 俺はお前をこんな風に愉しませてやれるし、幸せにしてあげる事もできる。だからお前にとって一番の勝利は、俺のモノになる事だ」
「はぁっ、はぁっ……ひ、否定はしません、けどぉ」
「断る理由が無いなら、さっさと契約しようか。先を急ぎたいし」
「あややややっ!! ソロモン氏、そのような情緒の無い言い方はちょっとどうかと思いますよ? でも手前めは、そんなぶっきらぼうなソロモン氏はワイルドで素敵だと感じております。ただ、どうせなら、この腹部に載せた足をもーっと下にずらして、もっと抉るように踏み込んでくだされば手前めはイッ……ぐぇぅっ!?」
「いいから早く、紋章を出せよ」
と、口では面倒そうな態度を取りつつも、俺はドレアの希望通りに足を動かす。
前に本か何かで、SはM以上の優しさと思いやりが必要だと読んだ事があるんだけど、アレは間違いなく本当の事だと思う。
「は、いぃっ……イイ……あややや、もっと、ご褒美をくださるのなら……」
俺に催促され、服従ポーズのままペロンチョと上着の裾を捲るドレア。
そうして顕となったくびれのある細い腰、その白い肌の上を滑らせるように視線を流していけば……右の脇腹辺りに、黒い紋章があるのを発見した。
「あぅっ……あやややぁっ! 誰にも見せた事の無い手前めの紋章が、こんなにも沢山の方に見られているなんて!! 初めてですのに、いきなりこんな羞恥プレイを覚えさせるとは、新たなソロモン氏は根っからの鬼畜ですね! しかし手前めはこう見えても、生粋の隠れM。直接契約の快楽如きには、絶対に負け……」
「ほいっ、たーっち!!」
「あやあああああああっ! これしゅごいぃぃぃぃぃぃっ!!」
お約束のノリを繰り広げるドレアに遠慮などする筈がなく、俺はソロモンの指輪を嵌めた手で、ドレアの紋章へと触れる。
俺が記憶する限り(ハルるんの時は寝ていた)は、フェニス以来の直接契約の機会だけど……やはり、女の子が快感に悶える姿はとても素晴らしい。
「これが……直接契約の、力? あんなにも、乱れて……」
「むふー! アレ、すっごく気持ち良いんですよ! 私ももう一回ヤリたいです!」
「アタシは勘弁。もう一度アレを喰らったら、引き返せなくなりそうだもの」
「ゴエティア! んーと……よし。ゴエティアの中にも、ちゃんと加わったな」
俺と契約を交わした魔神の詳細を記していく本、ゴエティアを出現させて……無事にドレアとの契約が完了している事も確認。
「クローズ。これで、ドレアはもう俺のモノだ」
俺はゴエティアを消して仕舞うと、床で寝転がったままビクビクと痙攣している彼女を抱き抱えるようにして持ち上げる。
元々細身の少女という事もあってか、さほど重さは感じなかった。
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↑お好きな方シリーズ、今回から始めています。
以前の投稿分全て(ソロモンの帰還3から)にも追記しておりますので、相当お暇な方はご覧ください。わかりみ、な方がいる事を祈っています!




