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30話 認めて貰いたいから


「悩んでおるのか、ミコトよ」


 ドレアとの勝負を受けるべきか思案していると、俺の頭上にしがみつくぬいぐるみ、ベリアルがヒソヒソと俺の耳元で囁いてくる。

 他勢力の魔神に正体がバレないように、ただのぬいぐるみのフリを続けるのは構わないんだが……いきなり耳元で囁かれるとくすぐったいぞ。


「どうしたらいいか、答えでもくれるのか?」


「この愚か者め。それではお前の成長に繋がらぬではないか。儂が行うのは、お前が決断を下す為のアドバイスじゃ」


 随分と手厳しい事を言うぬいぐるみだと思うけど、アドバイスを貰えるだけマシと考えるべきか。実際、今のままの俺じゃ72柱の美少女魔神達を全員束ねたハーレム作成なんて夢のまた夢だし……しっかり、成長していかないとな。


「オーケー。それじゃ、そのアドバイスとやらをくれよ」


「うむ。ミコトよ、奴の能力とて完璧ではない。付け入る隙は必ずある」


「付け入る隙? そんなもの無さそうだけど」


「いいか? 奴の能力をしかと思い出せ。お前が考えるべきは最初から、奴の能力を理解し……使いこなす事なのじゃからな」


 周りに悟られないように気を付けながら、小さな声でベリアルと会話を交わす。

 ベリアルが言う通り、俺がドレアの主となるには彼女の能力を理解し、使いこなせる男だと証明しなければならない。

 だからここは【彼女の提案である紋章当てゲームを受ける】か【彼女を説得して自分が勝てる勝負を提案する】か、それを悩んでいるわけで……


「……ん? ちょっと待てよ?」


 このまま紋章当てゲームを受けても、俺が彼女の紋章の位置を当てられる可能性は限りなく低い。しかしだからといって、俺が彼女に自分が勝てるゲームを提案し、議論によってその権利を勝ち取る事は……彼女の【議論や口論において絶対に負けない】能力に阻まれてしまう。確実に俺の提案は通らないし、通ったとしても実際はドレアに有利な内容のゲームに決まってしまうかもしれない。

 つまり、今の俺は既に詰みの状態……? この二択を迫られている時点で、ドレアの思惑に乗せられているという事にならないか?


「でも、それだと俺達が取る行動は――」


「あや、あややややややぁっ!! 本当の本当に、この手前めを攻撃なさるおつもりですか!? 千年前は同じ釜の飯を食べた仲だというのに、無慈悲に、残酷に、情け容赦なくこの手前めを痛めつけようというのですか!? フルカス氏、フェニックス氏、ヴァサゴ氏!! ご無体な!! ご無体なぁ!!」


「ああもう、うるっさぁぁぁぁい!! アンタはウェルダン決定よ!!」


「むふぅー!! 可哀想だとは思いますが、全てはミコト様の為に!!」


「最初から、これが手っ取り早い……方法だから」


 俺がベリアルからアドバイスを受け、少し考え込んでいた間に周囲の事態はかなり進展していた。いや、進展というよりは、血の気が盛んな子達がドレアを血祭りに上げようと逸っているといった感じだな。


「……俺達に不利な条件を提示すれば、こうなる事は目に見えていた筈だよな」


 紋章当てゲームを受ける事も、他のゲームを提案する事も選択できない俺達が二階に上がるには、こうしてドレアを実力行使で倒していく他に無い。

 だがそうなれば、ご覧のようにドレアは酷い目に遭ってしまい……彼女は俺達に二階への進出を許してしまうという【敗北】を強いられる事になる。

 でも、そんな事は彼女の持つ能力からして有り得ないわけで。

じゃあ、彼女はそうなった場合も――


「……あっ! ちょっと待った、みんな!! ドレアを攻撃するのはナシ!!」


「「「!!」」」


 その事実に気が付いた瞬間、俺の頭には一筋の電流が流れていた。

 推理漫画で探偵の頭にピシューンと閃きが走るのは、こういう感覚なのかも。


「なんで止めるのよ、ミコト。早くコイツをぶっ殺して先に進みましょ」


「いや、そんな必要は無いって。だからほら、拳は収めてくれ」


 ほんの十数分前、ベリトに粗暴だと言われてキレていたとは思えない行動を取る少女達を、俺は穏やかな口調で制止する。

 そして、潤んだ瞳で俺に縋るような視線を向けてくるドレアに……お返しとして、俺はニヤリとほくそ笑んでみせた。


「この世界にやってきて初めて、俺自身の力だけで女の子に認めて貰えるチャンスなんだ。そう簡単に、諦めるわけにはいかねぇよな」


「へ? それじゃあミコト様、もしかして勝負を……?」


「ああ。受けるつもりだよ」


 まだ完全に、俺の推測が正しいと決まったわけじゃない。

 もしかしたら、まるで見当違いの決断なのかもしれない。

 しかし、それでも俺は自分の意志で、この選択を選ぶ。


「さて、ドレア。今から俺は、お前の望む通りに……お前を堕としてみせるぞ」


 俺が彼女達の主として。

 ハーレムの主として相応しい事を、証明する為にも。


いつも本作をご覧頂いて、誠にありがとうございます。

敵だと認識したら昔馴染みだろうが容赦なく攻撃しちゃう美少女がお好きな方は是非、ブクマや評価をお願いします!

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