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24話 黄金ボッチ


「はぁー……最悪。今すぐ引き返したいわ」


 目の前に現れた金色の屋敷を前にして、全員が呆気に取られる最中。

 最初に口を開いたのは、フェニスであった。


「む、むふぁ……私も、フェニックスに賛成ですよぉ」


 続くルカも、額にダラダラと汗を流しながらフェニスに同意する。

 その表情は怯えているというよりも、生理的に無理、といった反応に近い。

 例えるなら、席替えで俺の隣の席になったクラスメイトの女子のようである。


「序列、第28位……公爵クラスの魔神……ベリト」


 屋敷を前方に見据えたまま、1柱の魔神の名を告げるヴァサゴ。

 その名を口にする瞬間に見せた苦悶の表情と、喉の奥から絞り出すようなかすれ声から察するに……ベリトという魔神は相当に嫌われ者らしい。


「ベリトは、物質を黄金へと変化させ、自在に操る力を持つ魔神。なので、あの屋敷を作り上げたのは……ベリトである可能性が、高いです」


 なるほど、それでこんな金ピカハウスを作り上げる事が可能なわけだ。

 個人的には良い趣味だとは思えないが、お金持ちっていうのは大抵その財力を見せびらかしたがるものだからなぁ。


「ご覧の通り、ベリトは金に対して、異常なまでの執着と愛情を……抱いています」


「ふむふむ。自分の好きな物に夢中になれる、純粋な子なんだね」


「金に執着するあまり、ベリトはよく、元マスターに叱られていました。それでも彼女の悪癖……金に拘る態度は、変わらないまま」


「自分を曲げない、強い信念を持った子じゃないか!」


 俺は女の子……特に可愛い女の子に関する事は基本的にポジティブに捉えてしまうので、ヴァサゴの話を聞いても、特に悪い印象を抱く事は無い。

 むしろ、短所から長所を見つける事こそが自分の役目だと、俺は思っている。


「……………………否定は、しません」


 ヴェサゴは何か反論の言葉を言いたそうに、両手をオロオロと動かしていたが、結局は何も言葉が思いつかなかったようで……ガックリとその肩を落とす。


「そこは否定しなさいよ。アイツのヤバさは尋常じゃないんだから」


「ほうほう。そういや、ベリアルと名前が似ているけど、何も関係は無いのか?」

 

 ハルるんとマルファスみたいに名前が似ているから、ベリトとベリアルが姉妹でもおかしくはないと思ったんだが。フェニスは即座に首を左右に振り、否定する。


「全く無いわ。魔神の名前が似ているなんて、姉妹でなくてもありがちだもの」


 言われてみれば、確かに俺が知る限りでも、魔神の名前はかなり似通っている。

 ルカもフルフルって子と名前が被る事を気にしていたし……今後はなるべく、魔神少女の名前を呼ぶ時には愛称やあだ名で呼んであげた方がいいのかもな。


「そもそもベリトとベリアルじゃ、全てにおいて格が違うわよ」


「そうですね。序列第68位のベリアルは、魔神の中でも指折りの、強さと美しさを持ち……まさに、魔神の鑑とも呼ぶべき、方でした」


 よもや俺の頭上にベリアルがいるとは思っていないヴァサゴが、過剰なまでにベリアルを褒め始めるも……ぬいぐるみの姿しか知らない俺は疑いの声を漏らす。


「え? そうなの? いやぁ、そんな風には思えないけどなぁ……いだっ!? あいだだだだっ!? 抜けるぅっ!! 髪が抜けちゃうって!!」


 無論、すぐに凄まじい力で髪を引っ張られて、お仕置きされてしまいましたが。


「髪が、どうかしましたか?」


「い、いや!! 確かにベリアルは最高の魔神だなって思ってさ!!」


 俺がそう叫んだのと同時に、髪を引っ張る力が消える。

 あんな一言だけで、ぬいぐるみのフリを忘れる程に怒るなんて……俺が思っていた以上に、ベリアルはプライドの高い魔神であるようだ。


「むふぅ。ヴァサゴが言うように、ベリアル様はかつて……多くの魔神達にとって憧れでした。でも、その、ベリトは……」


「典型的な嫌われ者だったわよ。千年前も、アイツが誰かと一緒に食事を取っているところを見た事が無いし……仲の良い子がいたとも思えないわね」


 オブラートに包んで話そうとするルカに代わり、容赦の無いド直球を放り投げるフェニス。恐らくそこに悪意はなく、ただ純粋に過去の事実を述べているつもりなのだろうが……あれ、おかしいな。俺の目に涙が浮かんできたぞ?


「……ベリト、お前も辛かったんだろうな」


 学校中の生徒から爪弾きにされていた俺には、同じくボッチライフを過ごしていたベリトの苦しみがよく分かる。

 俺だって、青春を可愛い女の子達に囲まれながら過ごしたかったさ……!!


「むふぅっ!! ベリトが辛いだなんて、とんでもないですよミコト様!!」


「ほう。と、言いますと?」


「ベリトはいっつも、適当な下位魔神を捕まえては裸にひん剥いて、その全身に金粉を塗りたくるような……う、うぅっ……あんな、大事な部分までぇっ!」


「あ、ごめん。そこんとこ、詳細がとーっても気になるんだけど」


 泣き出しそうなルカには心底悪いとは思うが、こればかりは嘘を吐けない。

 美少女達を裸にして金粉塗れにするとは……ベリトの趣味はとてもすばらしいと思う。かくいう俺も、金粉少女というジャンルには常々興味がありまして。


「……ユーディリア城のお風呂が、しばらく金粉風呂にされた事もあったわね」


「むしろ、城そのものが……黄金に変えられました」


「むがぁー!! それくらい酷い魔神なんですよっ!! ミコト様!!」


「うーん。聞いている感じだと、とてもユニークそうな子だけど」


 やられた当人達からすれば笑い事で済まないのかもしれないが、こうして話を聞いている俺にとっては、面白い過去話だとしか思えないんだよなぁ。


「ユニークってところだけは認めるわ。実際、アイツがいると騒々しいし」


「ほうほう。でも、どうしてそんな子がアスタロトを攫ったりしたんだろう?」


 話を聞く限り、ベリトは意地悪な子であっても、根っからの極悪人ではない。

 こんな場所に魔神を攫って、監禁するようなタイプには思えないが……


「理由は簡単に想像が付くわね」


「へぇ? その答えはいかに?」


「金髪なのよ、アスタロトって。それも、ソロモンの魔神の中でも最上級の美貌を持っていたから……あの金フェチにとっては、最高のコレクションになるのよ」


 確かにそれならば、ベリトがアスタロトを攫ったとしてもおかしくはない。

 だけど、少し何かが引っかかる。今回の一件はそんなに単純な話じゃなくて、もっと何か……大きな思惑が動いているような気がするんだよなぁ。


「むふぅー! アスタロトの髪はとってもサラサラで、本物の黄金なんかよりも輝いていましたからね! 私も昔、一度だけ触らせて貰った事があります!」


「……そう、ですね。彼女は本当に、とても……美しかった」


 興奮気味に話すルカに反し、歯切れの悪い口ぶりで顔を伏せているヴァサゴ。

 アスタロトの話題になってから、ヴァサゴの様子がどことなくおかしい。

 彼女もまた、俺のように何か気になる事でもあるのだろうか。


「むふー。でも、相手がボッチのベリトだと分かったのは収穫ですねっ!」


「そうね。ソロモンの契約が解かれた後に、わざわざベリトと組むような物好きは少ないでしょうし……なんなら、敵はベリトだけの可能性の方が高いわ」


「こらこら。事実かもしれないけど、そういう嫌味な言い方はよくないぞ」


「むふぐぅっ! す、すみません!!」


「ふんっ…………善処はしてあげるわよ」


「うん。分かってくれて、ありがとう」


 過去の交友関係については今更口出しするつもりは無いが、これから先の近い未来では、ベリトも俺のハーレムの一員となるのだ。

 その暁には、ハーレムを構成する女の子達同士にも仲良くなって貰わないと困るからな。今の内からなるべく、こういう事には厳しく口出ししていこう。


いつも本作をご覧頂いて、誠にありがとうございます。

唯我独尊ぼっち系美少女がお好きな方は是非、ブクマや評価をお願いします!

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