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111話 正・解!


「あれ……?」


 バラムの紋章を隠していた鎧をなんとか剥がす事に成功したまではいい。

 しかしその直後、俺が勇み足をしてしまったせいで……絶体絶命のピンチを招いてしまった。


「バラムの奴、どうしたんだ?」


 逃げ遅れた俺は間違いなく、バラムの反撃を喰らってしまう。

 もう全ておしまいだと、俺は覚悟を決めていたんだけど――


(おかしいね。バラム、さっきから全然動かないよ)


「ああ。どうしたんだろう?」


 俺が紋章に触ろうとした瞬間に、蹴りによるカウンターを放ったバラムだったが、それ以降は俺への追撃すらせずに……ただじっと立ち止まったままだ。

 俺が時間稼ぎの為に投げつけた鎖の拘束も既に引きちぎっているので、もういつでも自由に動ける筈なのに。


「……すまなかった、ミコトクン。許してくれ」


「え?」


 バラムがその行動を取った瞬間、俺は思わず自分の目と耳を疑った。

 だってあのバラムが、真剣な面持ちでペコリと頭を下げて……俺への謝罪の言葉を口にしたのだから。


「お前は強い。無傷でオレの鎧を脱がせるなんて、オレと同じ支配者クラスの魔神にだって無理だろうぜ。それをお前は、こうもあっさりやってのけた」


 静かな口調でそう語るバラムだが、なんという酷い買い被りだろうか。

 無傷なのは一撃でも喰らえば終わるからだし、鎧を引き剥がせたのも作戦が奇跡的に上手く運んだだけに過ぎない。


「トゲ盾のカウンターと煙幕で俺の冷静さを奪い、また小細工による半端な攻撃と思わせて……オレの思い込みと幻影を利用したフェイントからの鎧剥がし。こんなにも見事にオレを嵌めるとは、流石はソロモンの生まれ変わりだな」


(ひゅーっ! すっごく褒められてるね、マスター君!!)


「ありがたいけど、非常にマズイだろ」


 俺はこれまで、バラムの慢心を利用した作戦で優位に事を運んできた。

 しかしこれでバラムが俺を警戒し、冷静で慎重な行動を取るようになれば……もはや幻影による陽動にも引っかからなくなるだろう。

 そうなれば、バラムの紋章に触れる為のハードルはグッと高くなるし、そもそもバラムが剥がれた鎧を着直そうとするかもしれない。

 鎧を剥がす為にあれだけの労力を費やしたのだ。

 もう一度バラムが鎧を着てしまったら、ほぼ確実に勝機は消えてしまう。


(あっ、ミコトクン!! バラムが鎧を!!)


「うげー! ですよねー!」


 予想通り、バラムは地面に落ちていた鎧を手に取って拾い上げた。

 そしてそれを、再び身に着ける――わけではなく、ポーンと宙に放り投げる。


「どりゃあっ!!」


 それはとても見事なアッパーカット。

 唸る右拳はまるで昇龍のような軌跡を描き、放り投げられていた鎧をボッという音と共に蒸発させた。

 くれぐれも間違えないで欲しいが、破壊や粉砕ではない。

 蒸発、である。


(な、なななぁっ!?)


「ひぇっ……!!」


 当然、そんなバラムのパフォーマンスに俺達は驚愕する。

 というか、攻撃の凄まじさも恐ろしいが、この状況で鎧を蒸発させる意味不明さの方が色んな意味で怖いぞ。


「言っておくが、これは油断や慢心じゃねぇ。ミコトクンという強敵に対する最大の賛辞のつもりだ。俺はもう二度と、鎧を着ねぇつもりだ」


 バラムはそう言って、ニカッと笑ってみせる。

 その顔はとても美しくて可愛らしいというのに、なんという男前なセリフを口にするのだろうか。

 

(うわー、出たよ脳筋タイプ。こういう暑苦しいの、苦手なんだよね)


 心底嫌そうに不満を漏らすラウム。

 俺は断然アリだと思うけどな。義理堅いのもポイント高いし、あのおっぱい強調のサラシスタイルも素晴らしいし。


「好きなタイミングで来いよ、ミコトクン。どうせ次に顔を合わせた瞬間が、お互いに最後の攻撃になるだろうからな」


 溢れる苛立ちを木々への攻撃で晴らしていた先程までの姿とは違い、落ち着いた佇まいで立っているバラム。

 彼女の言うように、次に俺が彼女への攻撃を行った時が最後になる事は確実だ。

 俺が先に彼女の紋章に触れるか、それとも彼女が俺をカウンター攻撃で殺すか。

 どちらにしても、ほんの一瞬で勝負は決まる。


(マスター君。何か作戦はあるの?)


「……うーん。あるには、あるんだけど」


(流石はマスター君!! でも、なんだか不安そうだね)


「うん。めっちゃくちゃ、不安だよ」


 バラムの反撃を掻い潜りながら、彼女のヘソ上の紋章に触れるという難題に適した能力を持つのは――どう考えてもあの子しかいない。

 その子を憑依する為にも、まずはラウムの憑依を外さないと。


「ラウム、今からお前との魔神憑依を解除するけど……一つだけいいかな?」


(うん。何かな?)


「俺がバラムを倒して、生きて戻ってこられたら……膝枕しながら、めいいっぱい俺を甘やかしてくれないか。いい子いい子って、頭も撫でて欲しい」


(えーっ!? そんな程度のご褒美でいいの!?)


「と、言いますと?」


(そうだなぁ……それじゃあボクの太ももにマスター君の顔を挟んで、すりすりとかしてあげるよー)


正解エサクタ! やはりお前は恐ろしい子だよ、ラウム」


 俺は心の中でラウムと固い握手を交わす。

 この素晴らしきご褒美の為にも、俺は絶対に生き延びなければならない。


「ゴエティア。それじゃあ、ラウム。また後でな……クローズ」


(うんっ! カッコイイところを見られないのは残念だけど、応援してるね!)


 憑依を解除され、俺の体の中から消えていくラウム。

 後は続いて、あの子を憑依するだけだ。


「……見てろよ、バラム。お前の度肝、もう一度ぶち抜いてやるからな」


 俺は次に憑依する魔神のページを開き、ニヤリとほくそ笑む。

 決死の覚悟を決めた俺にはもう、バラムへの恐怖は無かった。

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