78 ダンジョンと思惑
入場証を受け取ったパルトたちは、さっそくダンジョンへ向かいます!
しかし、カネガの下では何やら不穏な動きが…
さて、ダンジョンだ。
わたしたちは、カネガからダンジョンの入場証を受け取り、ゼルケイ郊外に発生したダンジョンへとやって来た。
ダンジョンの周りには、腰くらいの高さの簡易的な柵が設置されており、公園程度の大きさに囲われている。
出店もいくつか出ているようで、食べ物を売っている店もあれば、ポーションなど探索に必要な物資を売っている店もある。
それを見たわたしは、何となくお祭りみたいだなと感じた。
ちなみに、この場を仕切っている強面の男たちが何人かいるが、奴らはおそらく、カネガが金で雇った用心棒とかその類だろう。
しかし、冒険者が集まるダンジョンの仕切りを任せられていることを考えれば、単なるチンピラ……というわけではないはずだ。
ダンジョンの入口にはそいつらの仲間が立っており、入場する冒険者たちの受付を行なっている。
わたしとクレアはそこを目指していた。
「おい……あれ、紅蓮じゃねぇか……?」
「え……?あのAランクの……?」
歩いていると、そんなコソコソ話が周りから聞こえてくる。
やはりと言うか、クレアは相当な有名人らしい。
当の本人は気にしていないようだけれど、
「このダンジョン……まぁまぁな大きさだねぇ。」
クレアはそう呟きながら、ダンジョンを見上げている。
彼女はこれまでいくつかのダンジョンを攻略しているから、こういう場にはかなり慣れているようだ。
反対に、わたしは少し緊張していた。
ダンジョンは魔物の巣窟。
強い魔物も多く存在すると聞くし、普通は経験しない罠などもある。
強くなるためにはダンジョンだろうが何だろうが、喜んで入りたいと思っている。
が、やはり命のやり取りの場へ行く時の緊張感からは、なかなか逃れられなかった。
これは兎人族の性……。
まだまだ、心を鍛えないといけないな……。
自分自身の心の弱さを改めて思い知らされたが、ガイドさんの意見は少し違っていた。
『死と生に対する敏感さは重要です。この2つに対して敏感でないと、すぐに足元を掬われて死ぬことになります。故に恐れることは生き抜く上で必要なことです。』
要するに、ビビリは悪いことではない。
ビビリの方が生に執着しやすく、どんな場面でも活路を見出しやすい。
だからこそ、常々に努力する。
生きるために努力する。
だから、強くなる……なれるのである。
ガイドさんは、おそらくそう言いたいのだろう。
確かにそれは、間違いではないと思う。
だって、横にいるクレアもそう言っていたからだ。
彼女との付き合いはそこまで長くないが、ゼルケイまでの道中、一度だけ強さについて聞いたことがあった。
もちろん、クレアは真性の天才。
最年少でAランク冒険者になった実力者だ。
聞いても理解不能なことばかりだった。
だが、1つだけ記憶に残っていることがある。
ーーー戦う時はいつでも怖いと思ってるよ。
この言葉だった。
Aランク冒険者が何を言うのかと思われるかもしれないが、わたしにはその言葉が忘れられない。
クレアだって死ぬのは怖い。
怖いから強くなるために努力する。
怖いから敵をどう倒せばいいか考える。
怖いから敵に立ち向かう。
わたし自身もそうでありたいと感じていた。
「よう……お前たちも挑戦するのか?」
気づけば、ダンジョンの入口の前まで来ていたようだ。
隻眼の男が、わたしたちを見て立ち塞がった。
「もちろん、そのつもり。」
「なら、入場証を見せな。」
そう言われ、クレアとわたしはカネガから受け取った入場証を男に見せる。
「確かに、しかし、あんたらみたいな可愛い子ちゃんたちが挑戦するたぁ……。大丈夫かねぇ。」
男はバカにするように笑う。
だが、クレアをちらりと見て表情を変えた。
「あんた……紅蓮かい?」
「よう呼ばれるね。」
「やっぱりか。悪かったな。」
男はクレアの正体に気づき、頭を掻いて謝罪すると、道を開けた。
「あんたなら、心配はないな。そっちの嬢ちゃん……紅蓮の話をよく聞きゃ、死ぬことはねぇぜ。」
そう言って隻眼の男は笑う。
わたしは、何となくだけど彼が悪い人ではないと感じていた。
「じゃ、行こうか!」
クレアの言葉に頷く。
わたしたちは、これからダンジョンの最奥を目指す。
ミケルたちのためでもあるけど、鍛錬も積みたいのだ。
目標は高い方がいい。
◆
カネガ邸宅にて。
「予定通りですね。」
黒ずくめの女サヌラが、ソファに座ってニヤリと笑う。
その対面のソファには、カネガとカズーロも座っている。
「わしらも、サヌラ殿のおかげでかなり稼がせてもらってますしな!」
カネガが自分の腹を叩いて、ガハハと笑ったので、サヌラもそれに合わせて愛想笑いをするが、頭の中では別のことを考えていた。
(あの2人……少し注意しておかねばなるまい。)
サヌラはクレアとパルトを思い出す。
特に、クレアの方には警戒しないといけないと感じていた。
Aランク冒険者……紅蓮のクレア。
契約書に掛けられたスキルのことを知っていて、奴はわざとサインしやがったのだ。
しかも、連れていた兎人族にはサインさせない方法で、自分だけ。
サヌラは少し不安を募らせていた。
資金集めは順調だ。
カネガたちの懐には、かなりの金が集まってきている。
あともう少し集まれば、それを奪ってここからおさらば出来るわけだが、何となく嫌な予感がする。
(最悪……アレを使うことになるかもしれないな。)
そんなことを考えていたが、それはカネガたちに伝える必要もないことだった。
「サヌラ殿!このあと、食事でもいかがですかな?」
傲慢なブタが何やら笑っているが、サヌラには彼が可哀想で仕方がなかった。
最後には全て搾取されると言うのに。
「えぇ……ご一緒しますわ。」
その言葉に、カネガは顔に喜色を浮かべ、カズーロに指示を出す。
サヌラは立ち上がりながら思う。
ーーーバカな人間ども……
「では、こちらへ!」
カネガの案内に軽く頭を下げ、淑女のように振る舞いながら、サヌラはこれからの計画を改めて確認し始めるのであった。
サヌラは一体何者なんでしょうか!
彼女の計画が気になります!
次回はダンジョン編です!
今回もご愛読いただき、ありがとうございました!




