表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/89

77 闇魔術の女

カネガの邸宅を訪れたパルトとクレア。

邸宅ないと案内されますが、、、

「こちらへ……。」



カネガの執事カズーロに案内されて、わたしとクレアは応接室へと足を踏み入れた。


金銀の装飾品が並べられ、壁には大きな鹿の剥製が掛けられているその部屋は、まさに金に物を言わせているカネガの性格が如実に現れていた。


カズーロは部屋に入らず、「少々お待ちください。」と告げてドアを閉める。



「すごいねぇ〜。」



クレアは、部屋を見回しながら好奇の視線を送っている。


反対に、わたしは落ち着かなかった。


これほどまでに高価な物に囲まれていると、ソワソワしてしまうのも理由の1つだが、1番の理由は早く終わらせてダンジョンへ行きたいというのが本音だった。



ダンジョンについては、カネガ邸宅へ向かう道中でクレアにいろいろと教えてもらった。


クレアもいくつか潜ったことがあり、中にはかなり強い魔物もいて面白かったと言っていた。


それはクレアならではの感想なので参考にはならないが、わたしは未だ経験したことのない未知の体験に心を躍らせていた。


もちろん、強い魔物と戦うことで鍛錬を積むことも視野に入れているが、レアな素材やアイテムなどの宝を見ることが1番の楽しみだった。


それもこれも、クレアが扱う真紅の剣のことを知ったから。


あの剣は、帝都付近に発生したダンジョンの攻略に駆り出された時に手に入れた剣らしい。


最深部まで辿り着き、魔物のボスを倒した際に彼女の手元に落ちてきたそうだ。


もちろん、クレアはルールに則ってその剣を帝国へ献上しようとしたが、その剣はクレアから離れることはなかった。


何人もの従者や力自慢に任せてみても、クレアから引き離すことはできず、最終的にクレアの剣として皇帝が認めたそうだ。



『解析したところ、あれは魔剣の一種です。』


(魔剣……?!)



ガイドさんの言葉には驚いたが、それ以上に心が高鳴ったのは言うまでもない。



魔剣とは、太古の昔に神々が造ったとされている剣のことだ。


神々が生きた創成の時代。


この世界を産んだ炎神、水神、風神、土神たち原神が、気紛れで造ったいくつかの武器。


それが現代では魔剣と呼ばれている。


中でも、炎神が造ったとされる魔剣は希少であると同時に、他の神々が造った魔剣よりも強大な力を持つと言われている。


その理由は、炎神の別名が"戦いの神"と呼ばれることに由来しているらしい。


炎神は生物の根源を創ったと謳われているが、それだけではなく人間に火を与え、狩猟などの技術を与え、生というものを教え、そして、戦いについても教えている。


神話ではそう記されており、それが炎神が戦いの神と呼ばれる所以である。



『クレアの魔剣名は【炎獄剣タイルロン・シリーズ薔薇】。持ち主の火属性因子の増加と、それによる火術系スキルの効果の増幅……それが主な効果です。』



炎神が造っただけあって、火属性に全振りの効果だ。


それにシリーズということは、他にもあるということだろうか。



『タイルロンはシリーズ薔薇に2本、シリーズ牡丹一華アネモネに1本、魔剣の存在が現在まで認められています。』



花の名前がついてるんだ。


炎神は花が好きだったのかな。



『炎神が造った魔剣には、ある逸話が残されております。炎神は薔薇シリーズも牡丹一華アネモネシリーズも、ある時愛した女性に贈られたものだと……』



なるほど。


最愛の人に贈るために、その名に花の名を冠したのか。



わたしが大きく頷いていると、クレアが不思議そうな顔でこちらを見たので、誤魔化すように笑顔を向けた。


わたしの態度に首を傾げるクレア。


ガイドさんと話していたなんて言えるわけもなく、冷や汗が背中を伝う。


が、そのタイミングで部屋のドアが開かれた。


クレアがそっちを見たのでホッとしつつ、わたしもそちらに視線を向ける。


すると、入ってきたのはカネガとカズーロ、そして、見知らぬ黒ずくめの人物。


わたしはその黒ずくめを見た瞬間、ギョッとして剣の柄に手を置いてしまった。



「お……おい……兎人族の娘!どういうつもりだ!」


「……そいつは……誰だ!?」



わたしが黒ずくめを睨みつけて剣を抜こうとしているので、カネガは焦ってすぐさま説明を加える。



「か……彼女はサンタク家専属の闇魔術士だ!」


「闇魔術士……」



そう説明されても、頭にはエルバたちの顔が浮かんでしまい、警戒を解くことができない。


とはいえ、クレアはクレアでわたしを止めることはしない。


ニヤニヤと笑っているクレアと睨み続けるわたし。


自分に向けられた好奇心と殺気を感じ取ったのか。


黒ずくめは小さくため息をついてフードを脱ぐと、自ら自己紹介を始めた。



「お初にお目にかかります。わたし、サヌラと申します。」



束ねられた長い黒髪と、キリッとした目つきに高い鼻。


見れば、普通の人族の女であった。


確かに、エルバやスラックのような禍々しい雰囲気は無いし、殺気も感じられない。


その顔を見て、わたしが剣の柄から手を離すと、ホッと胸を撫で下ろすカネガとカズーロ。


カネガは「これだから冒険者は……!」とぶつぶつ漏らしながら、私たちの目の前のソファに腰掛け、サヌラと名乗る女を横に座らせた。


後ろに立っていたカズーロが1枚の紙をテーブルに置くと、カネガがそれに合わせ、クレアを見ながら口を開く。



「うぉっほん……クレア殿。これはダンジョンに挑戦するための契約書です。挑戦する者には、例外なくこちらに氏名を記していただいておりますゆえ、クレアさまのお名前……そして、御連れ様のお名前を頂戴したく存じます。」



そう言ってカネガが頭を下げると、カズーロもサヌラも続けて頭を下げた。


わたしは目の前の契約書を取り上げ、その内容を一言一句読んでいく。


すると、ガイドさんが要約してくれた。



『内容としては、次のとおりです。』



・参加には50万フィル払う

・見つけた金品類と倒した魔物の素材は相場で買い取る

・魔剣などのレアアイテム、レア素材は子爵家へ献上する

・何も持ち帰れない場合、参加費用は返さない

・この件については誰にも口外しない



ご……50万フィル……!?



わたしは内心で驚いたが、クレアを見ると特に反応はない。



さっきの入領料金では怒ってたのに、今回は怒っていない……?


ということは、この金額は正規料金てことなのかな……?



そんな疑問を持ちつつ、冷静になってカネガの話に耳を傾ける。



「この契約書にお名前を頂戴いただければ、ダンジョン挑戦への入場証を発行いたします。」



ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべるカネガとカズーロ。


その横でサヌラは無表情のまま座っている。


よくわからないのでクレアの方を見ると、彼女はにっこりと笑ってカネガたちを見た。



「内容は……まぁ胡散臭いけどわかった。で、手数料はもちろん、2人で50万だよね?」


「え……?」


「え……?いいの?そのダンジョン、まだそんなに奥まで進めてないんでしょ?」



クレアはニヤリと笑う。



「わたしなら、けっこう奥まで進めるのに……奥の方にある宝が手に入れば、50万フィルなんてすぐに元を取ると思うけど……。」


「それはそう……ですが……しかし……」


「嫌ならいいや。この話はなかったことに。帝都に新たなダンジョンが生まれたって噂だから、それを確かめに行こうかな。」


「な……!それはお待ちください……!」



カネガとカズーロは焦った様子で立ち上がり、顔を見合わせると頷き合った。



「わかりました……。お2人で50万フィルで問題ございません。」


「決まりだね!!」



クレアはそう言うと、その契約書にサインした。


サヌラはそれを無表情で受け取ると、そのまま部屋を後にする。


その背中を見送ると同時に、今度は別の女性が部屋に入ってきて、2枚の紙を机に置いた。



「ささ!こちらが入場証でございます。今後はいつでもゼルケイのダンジョンへ挑戦できますよ!」



笑っているカネガとカズーロの顔には、早く出ていってくれて書いてある。


なんとも分かりやすい男たちだなと思いつつも、ここに長居する必要もすでにない。


ある程度の敵情視察もできたことだし、そろそろ帰ろう。


クレアも、そんなわたしの考えを汲み取るように立ち上がった。



かくして、わたちたちはカネガ邸宅を後にした。





「しかし……こんなことしてて、よく帝室にバレないよね……。」



わたしは頭に残っていた疑問を吐き出した。


前にも言ったが、ダンジョンは原則帝室が管理することになっている。


領地を管理している貴族たちには、発見次第、報告する義務が課せられているはず。


だが、カネガたちは自分たちで管理して、その儲けを自分たちのものにしているようだ。



「まぁ、穴はあるよね。そのルールにも……てか、穴だらけだよね〜。」



クレアはあまり興味なさそうに背伸びをする。



「だよね……。でもさ、誰かが帝室に告げ口したら、すぐ帝室にバレないのかな?」


「あ〜それについてはね……」



クレアは突然、笑顔になった。


その笑顔はどこか邪悪な感じがするが……。



「さっきの契約書……あれには闇魔術スキルが掛けられてたね。」


「え……そうなの?」


「うん。たぶんだけど、書いてあった内容を確実に守らせるような……そんな操作系のスキルだと思うよ。」



わたしは驚いて言葉が出なかった。


そんな大事なことをなぜ黙っていたのかと、焦りを覚えてしまう。



「そんなものにサインして……クレアは大丈夫なの!?」


「そうだね〜。今のところ何も変化はないかなぁ。」



のほほんとし過ぎだ。


でも、だからと言ってわたしにはどうすることもできないが……。



『特に害はなさそうです。』


(そうなの……?)


『はい。解析しましたが、闇魔術スキルの中の隷属スキル【誓約堅守】が契約書に掛けられておりました。これは契約者に決められた内容を確実に守らせるスキルです。害を与えるものではなく、守っていれば普段と変わらずに過ごせますが、対象者は契約書に記載された事項を破ることができません。』



スキルとはそんなこともできるのか。


それがわたしの第一印象。


だが、掛けられたクレアが心配だった。



(解くことはできるの?)


『聖光術スキルであれば……あるいは……。』



聖光術なんて、知り合いにもそんなスキルを使える者はいない。


本当に大丈夫なんだろうか……。



そんなわたしの心配をよそに、クレアがボソリと笑う。



「あの女……本当に人間かな……?闇魔術使える人間なんて、聞いたことないや。」

まさかの闇魔術スキルを掛けられてしまったクレア。

害はないとガイドさんは言うし、クレアも気にしてないみたいですが…


クレアの最後の言葉、気になります!!


今回もご愛読いただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ