1 兎人の少女、老人に拾われる
お久しぶりです。
noah太郎です。
やっと新作の投稿にこぎ着けました。
できるだけ毎日投稿したいですが、、、
と…とりあえず、頑張りますので、ご愛読よろしくお願いします!!
ちなみに、今日は2話まで同時投稿します!
「う……」
わたしは……いったい……
わたしの意識は、突然の目覚めに困惑していた。
瞼はとても重いし、意識もハッキリしていない。
それに弱々しく開いた瞼の先には、虚ろでぼやけた世界が広がっている。
そして、その世界はとても薄暗く感じられた。
ここは……どこ……
わたしは今……どこに……いるの……
それに……体がなんだか冷たい…………
朦朧とした意識の中で生まれたいくつかの疑問。
だが、思わず体を動かそうすれば、強烈な痛みが全身に走った。
「……っつ……」
全身が軋んでいるのがわかる。
い……痛い……
なんで……こ……こんなに……痛いの……
そう考えたところで、理由なんかわかるはずもない。
ただ、わかっているのは自分がここにいることと、全身に走る激痛のせいで、手も足も動かせない事実だけ。
指ひとつでも動かそうとすれば、針を刺すような激しい痛みが身体中に襲いかかってくる。
その痛みから逃れるように、わたしは体の力を抜いて動くことをやめた。
だけど、その痛みが連れてきたのは、悪いことばかりではなかった。
痛みのおかげで、わたしの意識は少しだけ覚醒した。
自分が水の上に仰向けで倒れていることは認識できた。
身体が冷たいと感じたのは、そういうことだったんだと気づいたが、視界の先にはぼんやりとだけど、相変わらず薄暗い空が広がっていた。
どうして……こんなところにいるんだろう……。
ハッキリとしない空模様を見ながら、覚醒した脳みそを回転させてみるが、天気と同じようにモヤモヤとした影が霞のように頭の中に広がっていて、何も思い出せなかった。
ならば、自分のことはどうだろうかと思い、自身に問いかけてみる。
あなたは……だれ?
わたしは……パルトだ。
兎人族のパルトで13歳。
父ボーノと母ポルムの子。
よかった……ちゃんと覚えている。
自分が誰なのかを覚えているという安心感は、わたしの心を少しだけ落ち着かせてくれた。
だが、記憶がすっぽりと抜けているという感覚は、やはり気持ちが悪かった。
何度思い出そうとしても、頭の中のモヤモヤがそれを邪魔してくる。
まるで、思い出すのが嫌みたい……
そんな思いが頭をよぎるが、なぜそうなのかは自分でもわからなかった。
記憶を取り戻すのもダメ。
体も激痛でまったく動かせない。
でも、そんな中で聴覚だけは機能していた。
わたしの長耳には、流れる川の音が聞こえている。
平瀬の緩やかなせせらぎ。
少し早い流れと、白波が立つ優しい早瀬の声。
それらを想像させる明確な音が、わたしの耳に届いてくる。
ここはどこかの川……わたしはその浅瀬に倒れている……
自然の中に身を置いていることがわかると、少しだけ安心できた。
けれど、新たな疑問も生まれてくる。
わたしの集落の近くには……川なんてなかったはずだけど……。
そういう記憶は残っているらしい。
自分が住んでいる集落は森の奥深くにあるけど、川や湖などの水場は近くにはない。
集落の生命線は、地下を流れる水脈から引いた古い井戸。
それだけだ。
だから、ここは集落の近くではないことはわかった。
それなら、ここはどこなんだろう……。
そう改めて考えてみても、ここにわたしがいる理由は相変わらず思い出せない。
辺りをを調べようにも、体は相変わらず動かない。
結局、巡り巡ってどうしようもなかった。
少し……疲れたな……
いろいろと考えすぎたのかもしれない。
再び頭がぼんやりとしてきたし、なんだか呼吸もしづらくなった気がする。
それにしても、川の水は冷たいなぁ……
ふと、自分の体温が感じられないことに気づいた。
それに、さっきまで動かせていた指すらも動かなくなっている。
瞼が……重い……
眠気も強くなってきた。
もう……目を閉じよう……
そう思って目を閉じると同時に、ある直感がわたしの中で働いた。
あぁ、わたしはこのまま死ぬんだ……
そう思っても、どうすることもできない。
眠たい意識のせいか、それすら受け入れようとしている。
わたしは、自分の命の灯火がゆっくりと終わろうとしているのを感じていた。
でも、そんな時だった。
「ぬぁ!」
突然、どこからか声が聞こえた。
そして、水を掻き分けて走る音も。
「だ……大丈夫か?」
しゃがれてはいるが、とても優しい声がわたしの長い耳に吸い込まれていく。
「安心せい!わしが今、助けてやるからのぉ!」
その声はわたしの心に染み渡り、安心感を生み出した。
体を持ち上げられる浮遊感。
そして、感じられる体温がすごく心地良い。
その心地良さに、いつしかわたしは意識を預けていた。
◆
次に意識を取り戻したのは、見知らぬベッドの上だった。
細く開けた視界から、木組みの壁や天井が見える。
それらは、わたしがいた集落の住処よりもしっかりとした造りで、技術の高さが窺えた。
それが意識を取り戻してから、最初に思ったことだった。
それにしても……ここは……どこだろう……
誰かに……助けられた気がするけど……
少しだけ頭がボーッとしているが、なんとなく寂しさのようなものが胸に湧く。
それと左耳が少し痛む。
動かずにはいられなくなったわたしは、全身に感じる痛みに堪えながら、ゆっくりと体を起こした。
すると、ひとつの窓が目に止まった。
優しい風が吹き込んで、淡い緑のカーテンが揺れている。
その先で、小鳥たちの楽しげな合唱が聴こえてくる。
どうやら、視覚と聴覚はしっかりしているようだ。
それらを認識すると、なんとなくここは安全なんだと理解できた。
「目が覚めたようじゃな。まずは何よりじゃ。」
ドアが開いて、人間族の老人が入ってきた。
この声には聞き覚えがあったから、驚くことはなかった。
わたしを助けてくれた人物と同じ声。
川瀬で倒れていたわたしを、助けてくれたあの声と同じだった。
老人はゆっくりと近づいてくると、わたしが寝ているベッドの横に腰掛ける。
そして、持っていた木のお椀をわたしに差し出した。
「ジジイの手作りで申し訳ないが、キノコと山菜のスープじゃ。」
恥ずかしげに笑う老人。
彼の皺くちゃな手から差し出されたお椀を、わたしは無意識に受け取った。
ふわりと立ち昇る温かな香りが、わたしの鼻を優しく撫でると、自然と口の中に唾液が溢れた。
自分がこんなにも空腹だったことに気づき、少し驚いてしまう。
だが、困惑した視線を老人へ向けると、彼は「ゆっくりと飲むんじゃぞ。」と優しく微笑んでくれた。
皺くちゃな顔を、さらにくしゃくしゃにして。
それを見て、胸の中に温かい何かが生まれた。
これは安心感なのかな……。
よくわからなかったが、お腹が空いていたわたしはお椀をゆっくりと口元へ運ぶ。
鼻先で濃くなったスープの香りが、わたしの空腹感を刺激する。
一口、また一口。
ゆっくりとスープを口の中へ運んでいく。
喉を通って胃の中で広がる温かさ。
なぜだか涙が溢れた。
「焦らんでいいし、おかわりもあるからのぉ。」
そんな老人の言葉が身に沁みる。
悲しいことがあったわけでも、苦しいことがあったわけでもないはずなのに、なぜか心がギュッと締めつけられるんだ。
そんな胸の痛みに耐えながら、わたしはスープを飲みながら泣いていた。
やっと投稿できて安心してますが、これから2章の執筆に取り掛からねばなりません!
投稿しつつ、書きつつ、、、
いけるかなと不安もありますが、頑張りたいと思います。
ぜひご一読くださいませ〜。




