220 煮干し
「あ、梓、これ買おう」
生協のカタログ見てたら天さんにねだられた。
香川県産の煮干し? まぁ、煮干しの出汁も美味しいけど。
今まで出汁用に買っていたCGCの「和のだし」という削り節が、最近スーパーの売り場から消えつつある。
サバ節とアジ節の混合削り節で、鰹節より荒さというか魚臭さが強くて、あたしも天さんの気に入ってるやつだった。
売り切れじゃなく、売場のスペースそのものがなくなってたので、どうしてかと思ってCGCのサイトを見たんだけど。
なぜか、ラインナップから消えていた。
結構売れてたって印象なんだけどなぁ。
原料が手に入らなくなるようなものでもないだろうし。原料価格の高騰とかかなぁ。
とりあえず、まだ残ってるお店もあるから、そこから買ってストックを作ったけど、これがなくなるまでに次をどうするか考えなきゃいけないのよね。
なので、天さんが煮干しを欲しがる理由は、出汁用だと思ったのよ。
あたしがちっちゃい頃、おばあちゃんは主に鰹節で出汁をとることがほとんど(削るのはあたし)だったけど、煮干しで出汁とることもあった。
煮干しの出汁も、魚っぽくて好きよ。
届いた煮干しは、あたしが思ってたよりずっと立派なものだった。全長5~6cm?
「天さん、煮干し来たけど、なんか大きいんだけど」
「そう、大きくて美味いんだよ。
どれ」
天さんは、いきなり袋を開けて1本取り出した。
「え、食べるの? 出汁じゃなくて?」
天さんは、頭とはらわたを取ってから口に放り込んだ。
これ、おつまみ用の味が付いたやつじゃないんだけど。
若干食べにくそうにしながら、それでも満足げに食べてる天さんを見て、あたしも食べてみることにした。
まぁ、あたしの場合は、頭とか取らないんだけどね。
一応、煮干しを食べたことは何度もある。
出汁とった後のとか、とる前のを食べたこともあった。
でも、おばあちゃんが出汁とるのに使ってた煮干しは、2~3cmくらいだった。
でっかい煮干しを、口に放り込む。
うん、ホントに大きいね。
ボリボリ噛んでると、旨みがにじみ出てくる。
「天さん、これ、美味しい!」
「だろ? ここの美味いんだよ。
小腹がすいた時のおやつにちょうどいいんだよな。
甘いものとか食べるより体にもよさそうだし」
渋い趣味だなぁ。
とはいえ、これは確かに美味しいね。
「あたしも食べてもいい?」
「全部食べちゃうのはダメだぞ」
あたしを何だと思ってるのよ!
その後、「和のだし」は復活してました。
なんで一度消えたんだろう?




