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奥様はオタク ~梓と天平 小話集~  作者: 鷹羽飛鳥


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203/287

203 さよなら、ダンナ

 夜7時過ぎ、スマホが鳴った。

 表示されている名前は、古い友人:バラ姉のもの。もう8年くらい会ってない。そういえば、8年前に偶然会った時、ケータイの番号を教え合ったっけ。

 バラ姉はあだ名で、「江原の姉さん」の略だ。

 何事かと思いつつ電話に出たあたしに、彼女は


 「ダンナが亡くなった」


と告げた。

 癌だったそうだ。まだ60ちょいなのに。




 「ダンナ」と言っても、バラ姉の夫という意味じゃない。

 あたしが10代の頃から付き合いのあった同人系の友人で、「ダンナ」は通称だ。

 ダンナは、あたし達のグループの中心人物といえる人で、自宅がたまり場になっていたこともあり、「ダンナ」で通っていた。

 結構年上だけど、あたしはタメ口で話してた。友達は全部タメ口な気がする。

 独身時代のあたしに、「俺は20代で結婚した」と勝ち誇った人でもある。

 ダンナの奥さん「姉ちゃん」も独身時代からの友人で、要するに友人同士で結婚したって話だ。

 姉ちゃんは、あたしと同い年で、あだ名が「姉ちゃん」だ。別に姉貴分というわけでもない。

 ほかに「先輩」というあだ名の人もいて、年上からも「先輩」と呼ばれていた。


 あたしが20代の頃は、ダンナの家に土曜9時頃に集まって、ダベったりビデオ見たりしてた。

 集まるメンツも様々で、必ずしも同人系とは限らず、アニメや特撮、漫画の話と、世界情勢の話が同列で飛び交うすごい空間だった。

 あたしは、その集まりの中で一番特撮に詳しかったけど、手加減なしの全力全開で喋っても浮いたりしないってメンバーだった。

 ほかにあたしが全開で喋っても平気な友人グループはない。


 アニメとかに関して、あたしはかなり尖ってるところがあって、“記憶力が良くてヒートアップするやつ”って認識だったと思う。

 旦那が買った「ゴワッパー5 ゴーダム」のレーザーディスクをみんなで見てた時は、あたしが最初の頃に「洋子が腹殴られて気絶した振りして、後でエイプレーンで助けに来る話があるんだよ」とか言っていて、「怒れ!タートルタンク」の時に、「これ! これだよ! 気絶してないの! 『あれくらいで寝るわけないだろ』とか言って後で助けに来るんだよ!」とか大騒ぎした時も、「ミーナ、はしゃいでるなあ」くらいですんじゃった。

 「ゴーダム」のEDが、ラストでゴーダムの搭乗口が「ビュイーン」と開くバージョンに変わった時も、両手を握りしめて感動してるあたしを生温かい目で見てるだけで馬鹿にしなかった。

 すっごく居心地のいい空間だったのよ。


 集まるメンバーは、黙ってても勝手に集まる関係上、普通にしゃべるのにお互いの素性を知らなかったりすることも多くて、本名を知らないままあだ名で呼び合うのが常だった。

 あたしも「ミーナ」で通ってた。

 昔の話だから、当然のごとく誰もケータイなんか持ってなくて、連絡先だってダンナの家電(いえでん)だけ知ってれば足りるレベルだったんだよね。


 あたしは、結婚当初、天さんの土曜の帰宅が午後10時過ぎだったので、10時までに戻るようにしてダンナの家に遊びに行ってたんだけど。

 ある時、天さんの方が先に帰ってきちゃって、「どうして仕事から帰ったら家が留守なんだ!?」って天さんに怒られて。

 以後、あたしはダンナの家に行けなくなった。

 結婚後半年くらいの話だ。

 同人系のイベントも、日曜に単独行動なんて許してもらえるわけもなく、結婚以来行けてない。

 天さんは、案外束縛強いのだ。

 ヤキモチ妬きとも言う。


 あたしがケータイ持ったのは妊娠した後で、天さんへの緊急連絡用だったから、ダンナ系統の知り合いにはほとんど知られてない。

 ダンナ夫婦は、あたしの結婚式にも呼んだ間柄なんで、あたしの本名も実家もケータイ番号も教えてたんだけど、ダンナは数年前に連絡先の書かれた手帳をなくしてたらしい。

 それで、姉ちゃんは、自分が連絡先知ってる人に連絡して、訃報を広めてくれるよう頼んだんだとか。

 バラ姉は、ケータイにあたしの番号入れてあったから、なんとか連絡取れたってわけ。

 8年前に偶然バラ姉に会ってなかったら、あたしはダンナの訃報を知らないままでいた可能性が高い。




 バラ姉から、Hさんの連絡先を知らないかと言われたので、あたしから連絡した。

 Hさんは、あたしの結婚式で、新婦の友人代表のスピーチ(33回)をしてくれた人。

 いつだったかは忘れたけど、お互いのケータイ番号を交換してたんで、今でもたまに連絡を取る。

 電話すると、Hさんは入院中だった。

 「そういう年なんだよ」とか笑ってたけど、そういう問題かなぁ?




 とりあえず、お通夜には行けた。

 お通夜が訃報の翌日だったこともあって、列席できた友人は、あたしとバラ姉含めて4人だけだった。

 なんかさびしい。

 あたし自身、最後にダンナ夫婦に会ったのは、15年くらい前だった。

 ダンナが還暦になった時はお祝いに行こうかと思ったんだけど、コロナが流行ってる最中だったんで、断念した。

 仲間内みんな、年を取ったり結婚したりで、土曜の集まりも自然消滅してたらしい。

 バラ姉以外の友人2人とはほとんど四半世紀ぶりに会ったけど、お互い一目でわかる程度には面影があった。

 人の顔覚えるのが苦手なあたしでも一目でわかるほど濃い付き合いだったってことよね。

 お通夜の会場の入り口では、ダイレオンとギャバンとダイアクロンがお出迎えしてくれた。

 ダンナは終活で、超合金とかのコレクションを処分してしまってて、これしか残ってないんだとか。

 箱を捨てて飾るタイプの人だから、二束三文にしかならなかったって。

 あたしも飾る人だけど、片付けるための箱は残しとく方だから、あたしが実家のコレクションを処分した時は、結構なお金になったんだよね。

 あたしが改造した食玩のティガ(前回の改造)を「これ、飾ってやって」って渡したら、姉ちゃんはダイレオンの隣に置いてくれた。




 棺の中のダンナは、あの頃とあんまり変わってなかったけど、顔が少しむくんで、髪の毛がなくなってた。

 抗癌治療の関係だろうなぁ。

 姉ちゃんは、「あたしが看取ってもらうつもりだったのに」って泣いてた。

 うん、わかるよ。あたしも同じ気持ちだもん。

 天さんがこんな風に逝っちゃったら、あたし、立ってられるかなぁ。




 お通夜の後、姉ちゃんやバラ姉達と、ここ10年くらいの身の上話をした。

 4人とも、ダンナの子供(30代)にまで、当時の通称で呼ばれてて(というか本名言ってもわからない)、ちょっと笑ったね。

 なんだか集まってた頃に戻ったみたい。

 もう、ダンナはいないんだね。

 恋愛感情とか欠片もないけど、大好きな友達だった。

 友達を亡くすのは初めてじゃないけど、やっぱり慣れないよ。

 最後にダンナの顔を見てお別れできて、よかった。


「ゴワッパー5 ゴーダム」

 1976年放映のタツノコプロ製作のロボットアニメ。

 大洗博士が地底魔人と戦うために建造した巨大ロボ:ゴーダムを偶然発見したわんぱく坊主5人組「ゴワッパー5」が、ゴーダムを操って地底魔人と戦う物語。

 ゴーダムのメカ頭脳(コンピューター)には、大洗博士の記憶と人格がコピーされており、ゴーダム単体でも戦闘行動が可能。

 この時期のロボットアニメにしては珍しく、ゴーダムは変形も合体もコクピット分離もしない無骨なロボットだった。

 …が、商品展開としてはマグネモシリーズという磁石を使って手足を換装できるものだったこともあり、後半は、ゴーダムのボディの中で製作したパーツを射出してボディに合体させ、ゴーダムタイガーやゴーダムドラゴンなどになって戦うようになる。

 射出されたパーツの合計体積は、どう考えてもボディの中に材料が入っていたとは思えないほど大きい。

 また、ゴワッパー5のミクロマン的な可動フィギュア(サイズは一回り小さいフードマンサイズだったはず)も発売されており、梓は洋子のものを持っていた。

 このフィギュアを乗せられるエイプレーンなども発売されていたが、梓のお小遣いでは買えなかった。


 ゴワッパー5は“5人の小童(こわっぱ)”であり、その内訳は、紅一点リーダー、熱血漢、力持ち、頭脳派のガリガリ、子供と、黄金律の5人組を敢えて崩している。

 紅一点の洋子は最年長(中学生)で名実ともにリーダーだが、番組後半は戦闘時には熱血漢の豪が指揮を執るようになる。

 元々、わんぱく坊主の冒険で無人島に探検に行った結果ゴーダムを見付けたのだが、地底魔人との戦いが終わった後、洋子が「次の冒険に行くよ!」と宣言して終わる(今気付いたけど「マップス」みたいだ!)。

 番組後半のEDでは効果音が入っており、5人が指を鳴らしながら歩くシーンでは指の音が流れたり、ラストの「僕らは秘密の」のところでゴーダムの鼻(出入り口)が「ビュイーン」と効果音付きで開くシーンがあったりして、梓はEDを歌う時には、指を鳴らしたり「僕らは秘密の(ビュイーン)ゴワッパー♪」と歌うのが常なほど、ここが好きだった。

 出撃時、5人が消防署員のように鉄棒を滑って下りてくるため、梓は細い鉄の柱を見ると手で掴んで回転する癖がある。

 そういやダンナは、大洗博士のことを「おおわらい博士」に聞こえるって言ってたっけ。


エイプレーン

 ゴーダムの艦載機で、洋子が乗る戦闘機。

 エイの形をした飛行機で、腹ばいになって操縦する。

 飛行機だが、海中を進むこともできる(というか、艦載機は全部海中活動が可能。逆に、水中専用機のヘリマリンは、移動に使われるだけで戦闘には一度も参加していない)。

 ゴーダムの基地は無人島にあるため、ほかの4機の艦載機と共に海岸の難破船の中に隠され、出撃時はこれらに乗って無人島に向かう。

 艦載機中唯一の航空戦力で、梓は洋子含め大好きだった。

 大好きになったトドメが、本文に書いた助けに来たシーンだったりする。

 当時、「強化プラスチック製」という設定を読んだ梓は、「エンジンの熱でボディ溶けないのかなぁ?」とか可愛くないことを考えていた。



ダイレオン

 1985年放映「巨獣特捜ジャスピオン」に登場する巨大ロボ。

 宇宙船型から人型に変形する。

 巨獣(怪獣)との肉弾戦が主体となるロボットであるため、メタルヒーローシリーズの母艦が変形するロボとしては珍しく、着ぐるみで格闘シーンを演じる。

 着ぐるみロボで前方宙返りとかやったのは、これが初めてだったはず。もちろん吊りである。

 必殺技コズミック・クラッシュは、助走・加速しての両手パンチである。

 当時発売された超合金は、造形とギミックの調和が取れた傑作で、肘と膝が曲げられる構造になっており、遊び甲斐のあるものになっていた。

 数年前に超合金魂でも発売されたが、お通夜で飾ってあったのは当時ものの方。




ダイアクロン

 1980年代にタカラが展開していたオリジナル変形ロボット玩具シリーズ。

 このシリーズがアメリカに渡って、「トランスフォーマー」のロボットとして商品展開された。

 梓自身はこのシリーズは買っておらず、弟のものを多少見ていた程度。

 お通夜で飾ってあったのは、最近リニューアル発売されたロボットベースの下半身側だったっぽい。




ギャバン

 1982年放映の「宇宙刑事ギャバン」の主役。

 銀色に輝く左右非対称の硬質なスーツ、ゴーグルの奥で光る一対の目、戦闘時に刀身が光る剣、と斬新なヒーロー像を生み出した。

 演出的にも、瞬間変身、名乗り後の変身システム解説、バイク・戦車・変形戦艦による多様な戦闘シーン、宇宙犯罪組織とそれを追う宇宙警察の刑事、と新味あふれるものになっている。

 企画時の仮称が「宇宙刑事(ゼット)」だったため、胸の模様の黒い部分が「Z」になっていたり、右手から出るビームが「レーザーZビーム」だったりする。

 お通夜で飾ってあったのは、フィギュアーツのギャバンとサイバリアン(バイク)

 サイバリアンの上に立ったギャバンがレーザーブレードを構えていた。

 梓は、自分ならレーザーブレードを持たせないで、魔空空間突入時の“サイバリアンのサイドカー部分の上でギャバンが前屈みに構えているポーズ”にするなぁと思いながら見ていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人が逝くのは寂しいですね。 訃報ばかり聞くようになると、自分もそういう歳なんだなあと、人生の秋を感じます。 100年後には、今、地上にいるほぼ全ての人がいないので、死は等しく来るってわか…
[一言] 故人のご冥福お祈り申し上げます コロナのとき還暦 完全に同年代(もしかしておないどし) 他人事じゃないな
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