190 焼き肉よ
お風呂上がりは、あたしの自由時間。
や、細かい隙間時間を拾って自由時間はほかにも作ってるんだけどね。
でも、お風呂上がりは、あたしと天さんそれぞれの自由時間なのだ。
で、11時半から12時くらいの間に、2階の寝室に移動する。
鷹野家の場合、寝室に行くのは正に眠るためだけなので、あたし達はそれまで1階のリビングで好きなことをしてる。
あたしはこの時間、大体「なろう」で何かを読んでることが多い。
工作はお風呂上がりにはほとんどやらない。
工作中は、結構冷や汗かくからね。
せっかく汗を流したのに、また汗かいてちゃしょうがない。
で、寝に行くタイミングは天さん任せ。
体調が悪い時とかなら別だけど、基本、あたしが1人でさっさと寝室に上がると、天さんは寂しがる。
この辺が天さんの素直じゃないところで、あたしが一緒の空間にいないと不満ゲージを溜めて、一定量溜まるとぶつけてくるのだ。
一緒の空間にいるだけで、ある程度満足するらしい。夕飯の後、横になってる天さんのお腹をつんつんしても、本気では怒らない。
目に入る範囲でなら、あたしがパソコンやってても、テレビ見てても、あまり文句は言わない。
そんなわけで、寝に行くタイミングは天さん任せ。
天さんが「先に2階行くよ」って言って寝室に上がる準備をするのがいつものパターン。
あたしがさっさと上がると、天さんは拗ねる。
基本、せっかちなあたしの方が、のんびり屋の天さんより動きが速いから、「行くよ」って言われてすぐに動くと、あたしの方が先に寝室に入ることになる。
そうすると、天さんは「おっかしいなあ、俺の方が先に動いてたはずなのになあ」って拗ねる。
なので、あたしは、敢えて天さんが寝室に行ってしまってからゆっくりと動き始める。
小説とか読んでるときは、キリのいいところまでいってから上がることもしばしば。
あんまり遅いと、これまた天さんが拗ねる。
この人、ちょっと大人げないとこあんのよ。面倒くさいけど、そこがまた可愛い。
この前、そろそろ寝ようかってとこで天さんが、「焼き肉よ」って言った。
「焼き肉!?」って訊き返したら、天さんったら笑って「なんだ、ちゃんと聞いてたんだ?」だって。
本を読んでる時とか、あたしは周りの音が聞こえなくなる時がある。
あと、適当に聞き流して話を聞いてない時とか。
天さんは、あたしが聞いてないんじゃないかと思って「先行くよ」の代わりに「焼き肉よ」って言ったらしい。
あたしが訊き返したから、“ああ、ちゃんと聞いてた”って機嫌が良かったっぽい。
もし聞いてなかったら、「どうせ俺の話なんか聞き流してんだよな」とか拗ねるのだ。あたしにはわかってる。
まぁね。愛情表現が素直じゃないのはいつものことなんだけどさ。
たまには素直に「愛してる」って言っていいのよ? 昔みたいに。
ていうか言ってよ。態度でわかってるったって、あたしは言葉が欲しいのよ!




