147 後でするから後悔
去年の秋、クラシックカーを運転させてくれる会社をテレビで紹介していた。
その会社は、燕市にある自動車整備工場なんだけど、色々と古い車をコレクションしていて、それを一般にも公開しているらしい。
しかも、2台だけとはいえ実際に公道を運転させてくれるんだとか。
それだけなら「ふ~ん」で終わるところなんだけど、試乗できる2台のうちの1台がマツダコスモスポーツだった。
こうなると話が変わる。
コスモスポーツは、「帰ってきたウルトラマン」に登場する防衛隊MATのマットビハイクルの元車なのだ!
元車といっても、改造とかほぼなしでまんまだから、“コスモスポーツに乗る=マットビハイクルに乗る”という図式が成立する。
これは、乗りに行かねば! こんなチャンス、そうそうないよ。
「天さん、さっきの番組で言ってたんだけど、コスモスポーツ試乗できるところがあるの。
行こうよ」
「コスモスポーツってなんだ?」
天さんはスポーツカーは好きだけど、昔の車には興味が薄いからね。
ここで「帰ってきたウルトラマン」とか言ったら、途端に引かれるのが目に見えてる。
だから、ここはこう説明する。
「マツダが昔出してたスポーツカーだよ。
ロータリーエンジンの市販車第1号なの。
ロータリーエンジン、運転してみたくない?」
今はもう滅んでしまったロータリーエンジン。
RX-7はかっこよかったよね。
天さんもロータリーエンジンには多少興味があるから、こう言えば食いついてくれる。
「ロータリーエンジンってさ、仕組みが普通のと全然違ってて面白いらしいよ。
あたし、一度運転してみたかったんだぁ」
「仕組みってどう違うんだ?」
「中学で習ったでしょ? ピストンじゃなくて三角のパーツが燃焼室の中で回るのよ。
ピストンの往復を回転に変えるんじゃなくて元々回転運動だからロスが少ないってメカドックで言ってた」
「メカドック?」
「『よろしくメカドック』っていう、昔のジャンプの漫画だよ」
『よろしくメカドック』は、車を改造して公道レースとかに出場したりする漫画だったけど、キャラの中に、フェアレディばっかり改造する人とか、ロータリーエンジン至上主義の人とかが登場する。
「元から回転運動のロータリーエンジンが最高!」とかそういう話が出てくる。
エンジンの簡単な構造の説明があったりしてわかりやすい漫画だった。
コスモスポーツは、市販車で初めてロータリーエンジンを積んだ車──それは本当なんだけど、まぁ、あたしが乗ってみたい理由はマットビハイクルだからだ。
冷房がないから、今の世の中で実用するには難があるけど、運転はしてみたい。
「ウルトラセブン」のポインターもカッコいいけど、あれは改造してのかっこよさ。
マットビハイクルは、車そのものがかっこいい。
ウルトラ系の車ではポインターとマットビハイクルが双璧だとあたしは思う。
そんなわけで、あたしはマットビハイクルのアイテムをそこそこ持ってるんだけど、そのうちのどれかを持ってマットビハイクル…じゃなくてコスモスポーツに乗りに行きたい。
冷房ないから真夏は避けて…ってことで、10月になって予約を入れることにした。
あれ? サイトの予約欄にコスモスポーツがないんだけど?
こういう時は、即電話。フットワークの良さがあたしの身上だ。
「ああ、あれ、壊れちゃったんですよ」
「壊れた!?」
「ええ、修理するとなると大変なので、試乗から外したんです」
どうやら、駆動系に部品交換が必要なレベルの故障が出たらしい。
直そうにも部品がないから、部品を作るところからになる。で、それは大変だからと言うことでお蔵入りになったそうだ。
悔しい。
あと半年早くトライしていれば、乗れたかもしれないのに。
後悔しても遅いけど、後でするから後悔なのよ!
梓ちゃんのささやかな野望、いつの日かトライ・アゲイン!
梓ちゃんのささやかな野望
梓がいつかやってみたいことたち。
究極のウルトラマン制作も、この中の1つ。




