142 翡翠を拾いに行ってみよう
NHKの「72時間」って番組で、糸魚川のヒスイ海岸を扱っていた。
糸魚川…読めない地名でクイズにも出るここは、「いといがわ」と読む、新潟県最南端にある市だ。
何がすごいって、同じ新潟県のくせに、JRは西日本だし、交流電流の周波数は西日本と同じ60Hzだし。
40年くらい前は、佐渡と糸魚川に引っ越しするときは、電化製品の買い換えが必要だったらしい。
「宇宙刑事シャリバン」伊賀電の渡洋史さんや、「未来戦隊タイムレンジャー」タイムレッド:タツヤの永井大さんの出身地でもある。
それはともかく、番組を見た天さんが「翡翠を拾いに行きたい」とか言い出した。
昔、翼が小学生だった頃に、1回、糸魚川に行っていて、その時は時間の関係で拾いに行けなかったのが燻っていたらしい。テレビのせいで、それが再燃したみたい。
糸魚川には、ヒスイ峡という谷があって、そこで翡翠が取れる。
でも、そこで翡翠を取ることは禁止されていて、ヒスイ海岸でだけ取ってもいいのだ。
雨とかで自然に落ちた翡翠が川を下り、海に流れでて、波で浜に打ち上げられるというかたちなんだって。
当然というか、そうそう簡単に見付かるようなものじゃなくて、1万個の石を見て1個見付かるかどうかって確率らしい。
正直言って、ずぶの素人がひょいっと行って2~3時間探したくらいで見付かるとも思えないんだけど、まぁ、こういうのも漢のロマンだからねぇ。
「天さん、お出かけには、猫とパンダ、どっちがいい?」
「バルタン」
「はい、却下。翼、猫とパンダ、どっちがいい?」
「パンダ」
というわけで、着ていくTシャツはパンダに決まった。
これは、あたしが以前から遠出の時に着ている“戦うTシャツ屋”の商品で、猫は「もうがんばれません」と伸びている猫の絵が描いてある。
パンダは、「やさぐれパンダ」という商品名で、前面に座り込んだパンダと「何見てんだよ」の文字、背面にそのパンダの後ろ姿と「ほっといてくれよ」の文字が描かれている。
そんなわけで、3人で糸魚川までやってきた。
道中、北陸道の米山SAで浜焼きや雪室珈琲ソフトを食べて。天さん的にはこっちがメインのような気がしないでもない。
まぁ、そこはどうでもいいや。
楽しくお出かけできるなら、あたしは別に。
翡翠とか、全く興味はないけど、探してみたいという気持ちは理解できる。
まぁ、あたしは宝石っていったら“宇宙にきらめくエメラルド”が最初だったし、ダイヤモンド、サファイヤ、ルビー、エメラルドクラスの超メジャーなやつしかわかんないもんね。
誕生石とかもよくわかんないし、はっきり言ってイミテーションで十分。
ウルトラマンのペンダントから、ダイヤカットされたカラータイマーを外そうとしたら落っことしてなくしたって前科持ちだったりするし。
まぁ、やるとなったら全力で遊ぶのがあたしの信条だ。ぜひとも翡翠を拾ってやりたい。
翡翠は、波に運ばれてくる。
そのため、波打ち際や海水の中で見付かることが多いんだって。
だから、波が寄せて返す際の辺りで、波を避けながらそれっぽい石を探す。
ちょっと調べたくらいでわかるものじゃないから、いくつか。
ほかにも翡翠探しに来ている人達の中、そうやって少しずつ移動してたら、テトラポッドの根元みたいな隅に辿り着いた。
波が巻くところならイケるかな、と思って探してたら、突然一気に波が押し寄せた。
あまりに一気に押し寄せてきたから、逃げ遅れた。というか逃げようがなかった。
両足ともに思いっきり水に浸かって、びっしょりっていうよりたぷたぷ。歩くと、きゅぽって足音がする。
スニーカーを脱いで、テトラポッドの上に置いて乾かしつつ、自分も上に乗って靴下を脱ぐ。
わずか20分で、あたしの翡翠探しは終わった。
翼からは、「裸足でやりゃいいじゃん」とか言われたけど、ショック(主に逃げ遅れたことの)が大きくて、もう何もしたくない。
なんなら、今すぐ帰ってふて寝したい。
膝を抱えて丸くなってるあたしは、正に「何見てんだよ」「ほっといてくれよ」状態だった。
天さんに言ったら、「ああ、そうだな」って軽く流されたけど。
結局、いくら天気がいいったって、1時間やそこらじゃ靴が乾くわけもなく、あたしは家に着くまで裸足でぐちょぐちょのスニーカーを履いたままだった。ちくせう。
で。
あたしが拾った7~8個と、天さんが拾った20個くらいの翡翠(希望的観測)は、誰かに確認してもらわない限りタダの石のままわけなんだけど。
「72時間」では、翡翠海岸にもボランティアの鑑定人がいたんだけど、時期のせいなのかなんなのか、この日はいなかった。
一応、糸魚川のフォッサマグナミュージアムに持っていくと、無料で鑑定してもらえるらしいんだけど、コロナの関係で、鑑定には整理券が必要な上に、1時間に3組までとか、制限が入ったりしているらしい。
つまり、飛び込みで鑑定なんてしてもらえないのだ。
天さんは、出掛ける前は「鑑定なんて、後でいいだろ」とか言ってたくせに、いざ拾うと「早く白黒付けないと落ち着かない」とか言い出した。気が短い。
まぁ、何を言っても無理なものは無理だから帰ってきちゃったけど、しばらくは「新潟で鑑定してくれるとこないかなあ」って独り言を聞かされることになりそうだ。
そして金曜日。
「梓、明日、翡翠の鑑定やってもらいに行こう!」
知ってた。天さんは、こういうの堪え性ない人なんだ。
今月中で、無料鑑定やってるのは、この土日だけ。
そして、米山SAで雪室珈琲ソフトが食べられるのは今月中だけ。
天さんが行きたがる要素がてんこ盛りだもんね。
土曜日は、9時に5回×3グループ、13時に3回×3グループ分の無料鑑定憲が配付される。
当然、9時の回に言った方が当選確率は上がるけど、そんなに早いとSAでお店やってないし、朝がメッチャ早くなるしで、天さんが選ぶわけないのだ。
そんなわけで、13時の回を目指して出発!
SAでは、なぜかお店が縮小営業してた。
普段なら、浜焼きの売り場と雪室珈琲ソフトの売り場は別(隣)なのに、浜焼きも雪室珈琲ソフトと同じ売り場でやってる。
そのせいで、浜焼きは、予め焼いたものをチンして売ってるだけになってる。
売り場が減ってるせいで、お客の列も長い。
お客が増えるのがわかりきってる三連休で、なんで縮小するかね?
雪室珈琲ソフトも、前回より盛りが悪い。なんか損した気分。いや、前回がサービス良かっただけかもしれないけどさ。
まぁ、美味しかったよ。
フォッサマグナミュージアムでは、競争率3倍の壁を乗り越えて、天さんが当選した。
ほんと、天さんってくじ運強いよねぇ。
新婚当初、ネスレの四季のケーキを二度も当てたもんねぇ。
あたしも割と当てる方だけど、天さんには敵わないなぁ。
無料鑑定は、1人5個まで。
2人して、なるべくよさげなのを選んだけど、全滅だった。
一番マシだったのは、翼が拾ったネフライトだった。クンツァイトはぁ?
まぁ、白黒ついてすっきりしたね。石は、ネフライト以外、ヒスイ海岸に返してきた。




