140 サルベージ大作戦!
「あれ? 出てこない?」
米びつを操作しても、米が出てこない。
鷹野家の米びつは、30cm×30cm×120cmのタワー型で、30kg入る。
1合、2合、3合のレバーがあって、それを下げると応じた量が出てくる仕組みなんだけど…レバーを下げても米が出てこない。
どのレバーもダメ。
これは、たぶん米唐番が詰まったな…。
米には、コクゾウムシが卵を産み付けていることがあって、暑い季節になると成虫になって出てくる。
これが、米と一緒に出てきたり、米びつの中でまた卵を産んだりと、困ったことになるのだ。
コクゾウムシがふ化した米は、中身がなくなって割れてしまい、食べても美味しくない。
更に、米を出すたびに羽虫がブンブン飛び出すのは、精神衛生的にもよろしくない。
結婚当初、これをやられて、あたしは防虫剤を米びつに入れるようになった。
防虫剤といっても、米専用のやつね。
唐辛子やニンニクを入れても防虫効果はあるし、実際あたしの実家では、ニンニクを入れていた時期がある。
でも、ニンニク入れると、炊いたときにご飯がニンニク臭くなることあるんだよねぇ。
唐辛子も、乾燥してボロボロ崩れてることあるし。
そんなわけで、あたしは、米びつ専用の防虫剤を買ってきた。
「米唐番」という、唐辛子なんかの成分をゼリー状にしてボトルに詰めた防虫剤だ。
先端がシールになってる釣り紙で、米びつの内壁に吊す仕組みだ。
大体1年ごとに交換するんだけど、この釣り紙がたまに剥げる。
そうすると、ボトルが米の上に落ちてしまう。
ボトルは流線型なものだから、蟻地獄にハマった虫よろしく米の中に沈んでいき、米の出口に詰まってしまうのだ。
今回も、たぶんこれだ。
何が困るって、掘り出すのが大変なのだ。
米びつの蓋を外してみると、やっぱり米唐番がなくなってる。
釣り紙の粘着テープごと外れて落ちたらしい。
当然、米びつの下から取り出すのは不可能だから、上から、というか、米をかき分けて掘り出すしかない。
前にも沈んだことがあるからわかるけど、片手じゃとても掘り出せない。
米びつの開口部が30cm×30cmだから、両手を突っ込むのって大変なんだよねぇ。
まぁ、やるしかないか。
両手を米の中に突っ込む。力任せに突っ込んでも、全然進まない。
水をかくようにして手を沈めていくけど、かき出した米が崩れてきて押し戻される。
感覚としては、砂浜で穴を掘るようなものね。
コツは、大きく掘らないで、手をスコップ型にして左右に回転させること。
気分はドリルアームね。あんなに速く掘り進められないけど。
ズリズリ掘り進めていくと、底にぶち当たる。
これが突然到達するから、地味に指先が痛い。
なんせ鉄板にいきなり当たるわけだからね。
底にぶつかった時点で、手探りで米唐番を探してみるけど、見付からない。
これ、めっちゃ疲れるんだよね。
米唐番どころか、米の出口も見付からない。
前に掘ったの、随分昔だから、出口の場所覚えてないなぁ。
一息吐いて、再挑戦。
今度は、奥側の壁沿いに掘り進む。
…あった!
指先に、米唐番の感触。
問題は、二本指でつまんで持ち上げるとかできないことなのよね。
なにせ流線型、上の方をつまもうものなら、滑って下に逃げてしまう。
これをなんとかするには、両手で挟み込むしかない。つまり、両手が届くくらい深く潜らないといけないのだ。
これは辛い。
あたしが女だっていっても、両手を突っ込むには、幅30cmってのはちょっと狭すぎるのよ。
米びつを手前に傾けて膝で押さえ、斜めになって少し厚みの減った米の中に、再び手を突っ込む。
掘り進めながら、米びつはどんどん傾いていく。膝が痛い。重い。
泣きたくなりながら掘り進めて、ようやく両手で米唐番を挟むことができた。
手が滑らないよう、ゆっくりと引っ張り上げて、ようやく回収。
思ったよりシール部分の粘着力がなくなってるから、両面テープで米びつの内壁に貼り直す。
両手が激しく疲れてる。
おまけに肘まで米ぬかだらけだよ。
まぁ、お肌にはいいんだっけ?




