136 包丁研ぎ
「小豆研ぎやしょか、人とって食いやしょか、ショキショキ」
「お母さん、それ小豆じゃなくて包丁なんだけど」
風情のわからない子だねぇ。
「研ぐ」って言ったら、アズキアライでしょうに。
夏休みに帰省するに当たって、翼から包丁を研いでほしいってお願いがあった。
翼がアパートに持っていってるのは、スーパーでポイントを貯めて買った三徳包丁1本だけ。
一応、三条産の打ち刃だ。
ものはそれなりにいいけど、メンテナンスは必要。本来、一人暮らしの大学生が使うようなもんじゃないのかもしれないけどね。
ちょうどいいタイミングで手に入っちゃったから、これは持って行かせるしかないでしょって感じで持たせてやった。
「包丁を研ぐ」と一言で言っても、業者に頼むとかイベントで研いでもらうとか、市販のシャープナーを使うとか、色々ある。
鷹野家では、砥石を使う。
小さい頃一緒に住んでいたお婆ちゃんが自分で研ぐ人だったので、あたしはそういうものだと思って育ったのだ。
鷹野家で使ってる包丁は4本。フッ素加工のステンレス包丁が2本と、鋼を鉄で挟んだ工業打ち刃が1本、鋼を鉄で挟んだ本当の手打ちのが1本。
一番高級な手打ちは、鍛冶屋さんが打ったもので、なんとタダで手に入れた。
物産展で2千円以上買うと参加できるガラガラで、二等を当てたのだ。
買うと7千円くらいする高級品だった。
同じ物産展が毎年開かれるので、そのたびに打った鍛冶屋さんにお願いして研いでもらってたんだけど、その人が事故で亡くなったので、その後はあたしが自分で研いでいる。
鋼を挟んで、というのは、刃の部分が鋼で、それを軟鉄で包み込むようにして支える作り方。
日本刀と同じ、二重構造なのだ。
これをすると、軟鉄が衝撃を和らげつつ、硬い刃でものを切ることができる。
鋼と軟鉄は、炭素含有率なんかが違うだけで、主成分は同じ鉄だから、刃を打つ過程で差を付けているだけかもしれない。手打ちと工業製品では、多分作り方も違うんだろう。
見た目的には、手打ちの包丁は、鉄の部分がゴツゴツしてて美しくないんだけど、切れ味はこれが一番いい。
ただ、全体として厚みがあるから、リンゴの皮を剥くとかだと、オールステンレスの薄い包丁の方が使い勝手がいい。
まぁ、一長一短だね。
所詮あたしは素人だから、研いでも切れ味は3か月くらいしかもたない。
こまめに研いでやらないと、段々切れなくなってしまう。
そんなわけで、時々研ぐ中に、翼の包丁も加えたってわけ。
まぁ、“包丁を研ぐ”っていったら、ネタとしては山姥くらいしか思いつかないし、自分が山姥になるのも面白くないしで、“研ぐ”だけ活かしてアズキアライになっている。
アズキアライは器量よし、だもんね♡
アズキアライ
川辺で小豆を洗う妖怪。
「小豆研ぎやしょか、人とって食いやしょか、ショキショキ」と言いながら、小豆を洗っている。
ショキショキは小豆を洗う音で、川辺の音がそう聞こえることから妖怪として成立したらしい。
川の音がショキショキと聞こえるかは不明。
アズキアライは器量よし
1976年放映の東映コメディ「ぐるぐるメダマン」のEDの歌詞の一部。
300年前に家宝の水晶のペンダントを人間に与えてしまったお化けの子孫であるメダマンが、取り返すためにやってきて騒動を起こすという物語。
いいことをすると、108個ある水晶がいくつか戻ってくるという契約になっている。
メダマンと一緒に人間界にやってきたメンバーの1人がアズキアライで、女の子(顔出し)だったため、梓はアズキアライについて女性という印象を捨て切れない。夏目雅子の三蔵法師を見て以来三蔵法師が女性であると錯覚しているのと同様。
メダマン達は、「おんみょうのんけんそわか」の呪文で力を失い倒れたりするが、仲間の1人アマノジャクはバラバラに、海ぼうずは転んで口から水を吐き、そこで金魚がバタバタはねてるのがデフォ。
なお、アズキアライを演じた人は、カズン(cousin)の古賀いずみという人らしい。




