明かされた正体(1)
月平さんと動物園デートをした次の日。
1ヶ月後に迫ったGG4公開実況の打ち合わせがあった。が、打ち合わせもそこそこに、俺は皆の集中砲火にあっていた。
「さぁ、今日の本題だ。羊くん? デートはどうだったんだ? ん?」
齊藤さんが速攻で切り出してくる。これ、話聞くまで逃してくれないやつだ。
「帰ってこなくていいって言っただろー? あの日、お前のデート話を肴に皆で盛り上がろうとしてたのに。速攻で帰ってきたせいで酒盛り15分で終了したんだけど?」
四宮は唇を尖らせて文句を言いながらも、顔は完全に“面白がってます”の顔。
「まぁまぁ。よかったじゃん。楽しかったみたいだし。動物園に行くっていうのも、羊くんらしいしな」
井口さんが優しげに目を細めて笑いながら言った。
「それで? 手くらいは繋いだんだろ?」
齊藤さんの言葉に、四宮がすかさず反応する。
「いや、繋いでないっぽいよ。昨日の羊くん、めっちゃ晴れやかな顔してたけど、どことなく“やり残した感”が漂ってたもん」
「なんでそんな察しが良すぎるんだよ……」
俺の呟きは誰にも拾われず、更なる質問責めが続く。
「家までちゃんと送ったー?」
「次のデートの約束は?」
「………」
「はーっ、そういうとこだぞ羊くん。何、リアル乙女ゲーしてんだよ」
「うるせえ」
まったく、何を言っても全部茶化される。でも、こんな会話も悪くなかった。
昨日は本当に楽しかったから。月平さんと、たくさん話をして、彼女のことを知ることができた。彼女の笑顔や2人でチンチラを眺めたあの時間を思い出すだけで、幸せになれた。そしてもっと彼女のことを知りたくなった。
俺は皆のひやかしにため息をつきながらも、頬が緩むのを止められなかった。
***
それから1ヶ月、公開実況までは目が回りそうなくらい忙しかった。月平さんとは、その日々の合間に、たまにメッセージを送り合っていた。
内容は、動物園のお礼から始まって、日向ぼっこしている猫が可愛かったとか、つばめが巣を作ってるのを見た、とか、テレビでミーアキャットの特集をやっていた、とかそんな他愛もないもの。だけど、送るたびに、彼女からの返信が来るたびに、気持ちがほっこりして、自然と笑っていた。ほんの少しでも、彼女との距離が近づいているような気がした。
そんな俺の顔を見たGG4のメンバーから「何、そんな幸せそうな顔してるの?」と聞かれ、正直に答えると「ピュアか!?」と、またしてもからかわれた。解せぬ。
でも「まぁ、公開実況が終わったら、またどこかに誘ってみろよ」と最後に背中を押してくれるのも奴らだった。
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