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第7話 突然

「薫の憧れの人? それなら多分知っているよ」


 帰宅して夕飯にありついた僕は、ダイニングテーブルの対面に座る姉からそんなことを言われた。


 ダメ元で薫先輩の憧れの人を知っているか姉に聞いてみたら、一発で解答を掘り当ててしまったのだ。


「なになに? 融ったらもしかして薫に気があるの? ああ見えてあいつ、結構乙女だから慎重にいかないと引かれちゃうよ〜?」


 姉は僕が薫先輩に惚れ込んでいると早合点して話を進めようとする。

 こんなに恋バナに積極的な姉を見るのは1周目も含めて初めてだ。まあ、1周目は僕がまともに恋愛してきていないのもあるけど。


「そういうわけじゃないよ。たまたま会話の中に出てきたから気になってさ」


「ホントかなぁ〜、恋愛のことならお姉ちゃんが相談に乗ってあげるよ〜?」


 姉はニヤニヤしながら僕を見る。

 本当にこのまま行くと恋愛相談になってしまいそうなので、僕は無視して続ける。


「んで、その憧れの人って誰なのさ」


「うーんとね、私らよりふたつ上の代の人。軽音楽部でドラム叩いてた」


「名前は知ってる?」


「えっと、建山たてやま先輩だったっけ……、下の名前は確か……」


 僕は建山という名前を聞いて嫌な予感がした。1周目でバンドをやってるときに出会った地元の先輩ドラマーに同じ名前の人がいたから。


「もしかして、建山たてやま優吾ゆうごさん……?」


「そうそう! 優吾ゆうごだ優吾! というか融、よく知ってるね」


 姉に痛いところを突かれたので僕は一瞬戸惑う。


「あっ……、いや、軽音楽部のOBだしさ、名前くらいはね……」


 僕はそれっぽいことを言ってごまかした。

 最近うかつに口が滑ってしまうことが増えた気がする。ちょっと気をつけないと。


 それにしても薫先輩の憧れの人が建山さんだとは驚いた。


 確かに1周目で出会ったときもめちゃくちゃドラムが上手かったし、惹きつけられるプレイングもしていた。彼ならば僕と違ってドラマーとして飯を食うことも出来ただろう。歳が離れているので、僕と同じ高校出身だったのは初耳だったけど。


 でもそれ以上に困った人でもあった。

 建山さんという人は、想像を絶するくらい女癖が悪いのだ。


 ファンの女子にはもちろん手を出すし、二股をかける程度は日常茶飯事。

 僕がタイムリープするちょっと前には、高校教師をやっている女の人のヒモになっているなんて言っていた。



 ……ん? ちょっと待てよ? 高校教師……?



 そういえば、薫先輩はこのまま行くと教育大を出て高校の先生になる。


 もしかしたらもしかしなくとも、あのとき建山さんが付き合っていたという高校教師というのは薫先輩なのではないか……?


 いや、大いにあり得る話だ。


 昔から建山さんに憧れていた薫先輩なら、盲目的に惚れ込んでしまうことなど容易に想像できる。

 ましてや姉いわく『結構乙女なところがある』薫先輩だ、下手をしたら建山さんにうまく言いくるめられながら付き合っていたのかもしれない。


 それはさすがに薫先輩が気の毒だ。

 お互いに愛があるならまだしも、少なくとも建山さんはそうではないのだから。


 1周目の時雨同様、非情な結末が待っているのであれば、今ここで軌道修正を仕掛けてもいいのでは無いだろうか。


 積極的に干渉せずとも、野口のときみたいにそれとなく影響を与えることが出来ればベストだろう。


 と言っても、まだあくまで推測の域。そんな機会があるかといえばすぐにはない。


 でも、窮地に立たされた僕へ手を差し伸べてくれた薫先輩が、この先不幸になることだけは絶対に避けたい。


 ◆


 次の日、部室で薫先輩と練習をしていたら、どうも彼女の様子がおかしい。いつにも増して嬉しそうなのだ。

 ちょっと頬が緩んでいる感じがするし、気持ち声のトーンがいつもより高い気がする。


 何か良いことがあったのだろうか。


「……先輩? なんか今日嬉しそうですね?」


「そ、そうか? たまたまじゃないか?」


 先輩は白々しくそう言う。

 ここはちょっとカマをかけてみるとしよう。


「もしかしてあれですか? 憧れの人とデートとか?」


「ば、バカっ! そんなんじゃない! ……た、ただライブに行くだけだ!」


 薫先輩は本当にわかりやすい反応で助かる。そのキョドりっぷりは実質的に肯定しているのと同じだ。

 察するに、建山さんのバンドのライブに行くのだろう。


「ライブ! いいっすね、どこでやるんですか?」


「『BURNY(バーニー)』さ。そこで建山さんという先輩のバンドがライブをするんだ」


やっぱり目的は建山さんだった。それなら都合がいい。

 BURNYというライブハウスも馴染みの場所で、僕も1周目のときに実家よりも入り浸ったであろう地元のハコだ。


「良かったら芝草も来るか? 建山さんのドラムは本当に参考になるぞ」


「いいんですか!? ぜひ行きます! あっ、BURNYの場所は知ってるので、開演時間だけ教えてください」


「18時開場の18時半スタートだ、先輩のバンドはトリだから、出番は20時過ぎるかもな」


 突然訪れたチャンス。

 薫先輩の未来を建山さんから守るために、何かアクションを起こしておきたい。

読んで頂きありがとうございます!


少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけたら、下の方から評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います!


サブタイトルの元ネタはFIELD OF VIEWの『突然』です!

ポカリスエットのCMソングでお馴染みですね!最近暑いので水分塩分しっかり補給して、熱中症に気をつけて過ごしましょう!

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連載中!
「出会って15年で合体するラブコメ。 〜田舎へ帰ってきたバツイチ女性恐怖症の僕を待っていたのは、元AV女優の幼馴染でした〜」

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https://book1.adouzi.eu.org/n3566ie/

こちらもよろしくお願いします!!!
― 新着の感想 ―
[一言] 2話出てこないだけで時雨推しの私は辛いのであと何話ぐらいで出てきますか?
[一言] この感じだと建山氏が在校中に、薫先輩はすでに遊ばれてそうだから、いまさら手遅れじゃないかな?
感想一覧
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