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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第四章

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226.イザベラ・シュルツという人


 ひとまず二人で宮に戻るといい。そういわれて、ロイ兄様の小離宮を出されてしまう。

 戻ると良いって、私の宮に?


 イザベラ嬢に視線を向ければ、彼女はにこりと微笑む。

 その笑みからは何かを察することはできない。でもロイ兄様からの信頼を勝ち得ているのであれば、彼女は安全だと思っていいのだろうか?


「えっと……」

「レッスンは週に2回とのことです。私は王宮図書館に通うことになっておりますので、その時間をレッスンに当てさせて頂きます」

「それは、その……本当に大丈夫なの?」

「大丈夫とは?」

「フィルタード派の……エスト・フィルタードが着いてきたりとか……」

「それは大丈夫です。留学をする際、国王陛下へお願いして魔術式研究機関の方に魔術式を専門的に教わることを了承頂いておりますから」

「つまり、着いてこない?」

「ええ。さすがに邪魔はなさらないでしょう」


 それに必ずしも王宮図書館にいるわけではない。そうイザベラ嬢はいう。

 トラット帝国では、貴族でも魔力持ちが少ない。だから専門的に学ぶ者も少なくなっているそうだ。


 だからこそ魔術式が他国よりも発展しているファティシア王国に留学にきている。


「そんな理由があるのに邪魔なさるようでしたら、動けないように足を踏みつけなければなりませんわねぇ」

「足を踏みつけるの!?」

「ええ、こっそりと」

「えっと……それが帝国流なのかしら?」

「これは私流ですわね。短気な者でしたら扇子で顔を叩いていますわ」


 微笑みながらいわれてしまい、トラット帝国の女性って怖いと思ってしまう。

 気が強い、とでもいえばいいのかしら? みんなこうなのかな??


 イザベラ嬢と歩きながら、今後の予定を立てていく。

 年相応の淑女として、私ができなければいけないこと。権威を傘に着ることと、堂々とした立ち振る舞いは別だともいわれた。


「素直なことは良い面もあります。ですが政敵が跋扈するような場所では、それは徒となります」

「それは、確かにそうだけれど……でもそう簡単にできたらきっと治っていると思うのよね」

「そうでしょうか? 姫殿下はどちらかと言えば、甘やかされている方かと」

「あ、甘やかされている……」


 私って、甘やかされている?? 

 イザベラ嬢の言葉に私は驚いてしまう。私が驚いて固まっていると、イザベラ嬢はちょこんと首をかしげた。


「もしやご自覚がなくいらっしゃいます?」

「わた、しは……元々の育ちが普通と少し違っていたから……」


 自分の小離宮に着き、部屋に戻る。

 ユリアナたちにお茶の準備をしてもらっている間、私は自分の生い立ちを彼女に話した。


 イザベラ嬢は私の話を最後まで静かに聞いてくれる。

 そして話し終わると、ひとつ、と指をたてた。


「姫殿下が、甘やかされているのではなく――――周りがそうであることを求めているのですね」

「そうであること?」

「天真爛漫で、自由であることを……ですわ」

「そう、かしら?」

「本来ならその天真爛漫さは徐々に落ち着いていくものです。歳を重ねれば、それだけではいけないことは気がつきます。気がつかぬほど、貴女様は愚かではない」


 イザベラ嬢が何をいいたいのか、わからないわけではない。

 私は私でいたいという気持ちと、王女であるのだから王族としてきちんとしなければいけない気持ちと両方持ち合わせている。


 それを両立させることが難しいことも。


「私は……」

「姫殿下。貴女様は代わりではありません。求められることに、同じように応える必要はないのです」

「そんなこと、思ってないわ」

「いいえ。姫殿下が天真爛漫であること、自由であること……それは亡くなられた側妃様。つまり姫殿下の母君を彷彿させる。似ているからこそ、そうであってほしいと求める」

「そんなこと! みんな、私のこと大事にしてくれているわ!!」

「似ているから大事にされている、そう思っておられませんか?」


 ドキリと心臓が跳ねた。


 お父様に「お母様に似てきたね」といわれる。

 ロックウェル魔術師団長に「そういうところはよく似てますよ」といわれる。

 ハウンド宰相様に「そういうところは似なくて良いんですよ」といわれる。

 リュージュ妃様に「彼女も苦手だったのよ」といわれる。


 他にも、お母様を知っている人たちは私を通してお母様の面影を探す。

 お母様は強くて、自由で、天真爛漫で、でも一本筋の通った愛情深い人だった。


 私も同じようになれるかな。お母様と同じになれば、たくさんの人を救えるのかしら? 三番目と、蔑まれ嘲笑われてきた私にも……


「わた、わたしは……」

「姫殿下、貴女様はファティシア王国第一王女、ルティア・レイル・ファティシア様です。他の何者にもなれません」

「そんなことは、わかっているわ」

「では、ご理解ください。どう足掻いたところで、思い出には勝てません。なぜなら思い出とは美化されるモノだからです」

「美化される……?」

「はい。自らの中に、後悔と大切な思いがあればあるほど美化されていきます。きっと彼女なら、と。ですが生きた人間がそれを背負う必要はないのです」


 背負っているつもりはない。ただ、お母様ならもっと何かできたのではないか? 行動に移せるのではないかと、そう思うだけで。


 お父様たちの話の中のお母様は、何でもできる人だった。

 ちょっとマナーは苦手だったけど、太陽のようにみんなを照らしていた。


 私にできることは、凄く少ない。知識も足りなければ、立場も弱いからだ。

 誰かを動かすにも、フィルタード派の動きを見越して動かなければいけない。また犠牲者をださないためにも。


 だから、だから私は……お母様のようになりたいと思う。


「私は……背負っているつもりはないわ」

「では背負わされそうになったら、お逃げください」

「逃げるだなんて……」

「逃げて良いのです。それは背負わす側の勝手であり、今を生きている貴女様がその方々の願いを叶える必要はありません」


 ハッキリと言い切られ、私はどう答えて良いのかわからなかった。

 望まれていることを叶えることは、悪いことなのだろうか?


「私、は……どうするのが正解なのかしら?」

「その答えは私が決めるものではありません。姫殿下自らが決めねばならないのです」

「とても難しい話しね」

「王女であることと、自分の未来を決めることはまた別です。もちろん王族として、その務めを果たすその先にあることかもしれませんが」

「……私は、この国の人たちに幸せに暮らしてもらいたいの。お腹がすくことも、寒さで凍えることもなく、幸せに暮らしてほしいの」

「それが王女としての望みですか?」

「そう、ね……そうなのかも。でも私は……何がしたいのかしら?」

「それを考え続けることが大事です。受け売りではありますが」

「受け売り……?」


 私が聞くと、イザベラ嬢はにこりと笑った。

 そしてレナルド殿下の名前を私に言う。


「あの方は、トラット帝国の中でも不遇な方なのです」

「とてもそうは見えないのだけど」

「トラット帝国の後宮が魔窟のような場所である、とお伝えすればご理解いただけるでしょうか?」

「魔窟……もの凄く、仲が悪いのでしょう?」

「ええ。仲がもの凄く悪いですわね。血の繋がったご兄弟どうしでも」

「そ、そうなの……」

「ですので後宮はとても危険な場所です。ほら、レナルド殿下はお顔がよろしいでしょう?」


 よろしいでしょう? といわれ、私は小さく頷く。とはいえ、シュルツ卿の方が私の中で印象が強いのだけど。

 神出鬼没だからかな。ぬるりと出没して、するっと消えていくところが猫のようで。


「……そのご様子ですと、レナルド殿下の印象はあまり残っておられないようですわね」

「えっと、その、そんなことは……」

「いいのですわ。あの方々、ご自身の顔が良すぎて言い寄られることに馴れていらっしゃいますの」

「そうなのね?」

「ええ。ですので是非振り回して差し上げてください」

「振り回す!?」

「問題ありませんわ。私、喜んで手を貸させていただきます」


 いやそれはどうなのだろう? でもこの様子だと、アリシアたちと懸念していた事態にはならなさそうだ。




 ――――イザベラ嬢が、嘘を言ってなければ。だけれど。

現在モブ姉王女と龍花は交互更新中です。

よろしくお願いします。

本日は龍花も更新予定です。

龍は花姫の愛を乞う https://book1.adouzi.eu.org/n1321jk/

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