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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第三章

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190.来訪者 4

 フィルタード侯爵とその派閥はトラット帝国と繋がっている。

 アリシアの前世の話では、私はトラット帝国に嫁いでいた。モブ王女であっても魔力量の測定はしたはず。魔力量が多い者を集めているなら、私の魔力量は魅力的だっただろう。


 魔力量が多ければ、宝石に魔術式を入れることができる。ファティシアは生活に根ざした魔術式が多いが、トラットなら戦争に特化した魔術式が多いはずだわ。危険な魔法石をたくさん作り出せる。


 そして今も、私をトラット帝国に嫁がせようとしているのは……同じ理由だろう。魔力量が豊富で、魔力過多の畑が作り出せる。自国内で食料を賄うことができないから、私がいればなんとかなると思っているのかもしれない。


 それにしても――――聖なる乙女をどうして探しているのだろう?


 聖属性は土地の浄化と治癒ができるが、逆にいえばそれだけだ。戦争の役には立たない。たくさんの人が怪我をしたとして、その怪我を一気に治すことはできないのだから。もちろん魔力量が多ければ多少はいけるだろうけど……

 人と土地とは違う。たぶん怪我を治す、という一点においてはポーションの方が優秀なのだ。上級なら、その場で使えば腕とか生えてくるし。


「トラット帝国はラステアを潰し、その後ファティシアに侵攻するつもりなのかな?」

「順番としてはそれが一番良いでしょうね」

「正攻法では潰せないからレイランの術師に呪いをかけさせたということか……」

「その通りです。まあ、小賢しいことしますよね」


 シュルツ卿の言い方は……なんだかとても嫌そうだった。それがどうも引っかかる。


「シュルツ卿、貴方は……レナルド殿下に仕えているんですよね?」

「もちろん。我が主人はレナルド殿下以外いません」

「なら、レナルド殿下は皇帝陛下の行動を支持してないんですね?」


 私の言葉にシュルツ卿はニコリと微笑う。ずっと、変だなって思っていた。シュルツ卿はトラット帝国の人なのに、どうも行動がチグハグなのだ。レストアでも帝国ではなく、レナルド殿下に貸しを作ったと思ってほしいといっていたし。


 それに今も、わざわざ教えに出てきた。ここは表向き友好を結んでいるファティシアではない。敵視しているラステアなのだ。自身の身を危険に晒してまでラステアの王族を助ける理由なんてないはず。


「――――殿下は、あの邪魔な術者がいなくなればいいと思ってらっしゃるんですよ」

「レイランの術者はトラットにとって必要な存在だろう?魔力を持つ者が減っているならなおさら」

「ただの術者ならこちらに取り込めますけどね。あの男、物凄く性格悪いんですよ」

「性格が悪い?」

「今回の呪いのターゲットは……いえ、前回も王太子妃だったはず。貴方方(あなたがた)はとても愛情深いそうですね?」


 愛情深い。ラステアの人々は懐に入れた人をとても大切にしてくれる。そしてウィズ殿下とサリュー様は番同士。一番繋がりの深い人を亡くしたら、その悲しみは想像すらできない。


「サリューを亡くしたら……次はウィズに呪いをかけるつもりだったのかな?」

「その通りです。自ら死に向かうようにね。一時期帝国の後宮でも流行ったんですよ」

「それはつまり、自分の妻子で実験をしたということか!?」


 信じられない!とコンラッド様が非難の声を上げる。でもシュルツ卿は良くあることだといった。


「後宮に居られる方々は他国から連れてこられた方もいらっしゃいますからね」

「そんなの、あんまりだわ!」

「それがまかり通るのがトラット帝国なのです。だからこそ、聖なる乙女は現れない」

「どういうこと?」

「昔々の話です。まあ、そんなわけで殿下からは相当嫌われています」


 第三王子でありながら他の王子や姫を押し退けて皇太子の座に着く。それだけで恨まれるのだ。上からも下からも。ただレナルド殿下はお母様が既に亡くなっていて、他に同母の兄弟もいない。そして戦場を走り回っていた。

 戦上手な者を殺せば、次は自分にその役割が回ってくる。だからこそ手を出されずに済んでいたらしい。


「それじゃあ君は、レイランの術者がこの国にいると知り始末しに来たのかな?」

「当たらずといえども遠からず、ですかね。残念ながら僕にあの男と渡り合えるだけの魔力量はありません。腕は立つんですけど」

「腕が立つだけでは無理ということか……」

「その通りです。そちらの女将軍さんだって屈強な男たちを一瞬で始末できないでしょう?」

「時と場合によるけど……今目の前にいて、という話なら無理ね。下準備が必要だわ」


 カティア将軍はムスッとした表情を浮かべながら答えた。将軍ほどの手練れでも勝てないくらい強いのかな?

 この手の話はよくわからない。


「レイランの術者はすごく強いの?」

「強い、といえば強いんでしょうけど……あの男は常に複数の術式を発動できるようにしてるんです」

「古の術……?」

「ええ。我々が使っている魔術式とは異なります。たぶん、発動方法も」

「魔法石を複数持っているわけではないのね?」

「宝石は全く。ただ、薄い石のようなものは持ってましたが」


 薄い石、と聞いて私は将軍を見る。将軍も私を見て小さく頷いた。

 その薄い石に見える物はきっと鱗。ひいおばあ様がレイランと取り引きしていた時に持って行っていた物だろう。将軍はコンラッド様の耳元に口を寄せ何か話している。


「シュルツ卿、その男は……古の術を他人に使わせることもできるの?」

「できると思いますよ。その手の物を後宮にばら撒いてましたから」

「それって、魔力のある人に使えるかどうかの?」

「ええ。どの程度の魔力量なら使えるのか、とね」

「じゃあ、その古の術を破れた人は?」


 私の質問にシュルツ卿が考え込む。もしやいないのだろうか?できればいてほしい。そう願ったが、残念ながら私の望む答えは得られなかった。やはり古の術はとても複雑なのかもしれない。


「もしも……古の術が効かなければ、僕でも始末できるかもしれないですね」

「そんなにすごい人なのね。それなのに追放されたんだ」

「だからこそ、ですよ。性格が悪いといったでしょう?」

「レイランでも悪いことして追放された?」

「可能性は大いにあります」


 レイランがどんな国かはわからないが、処刑する程の悪いことは国内ではしなかったのかも。追放に相当する悪いことをして、追放された。そして辿り着いたトラットで自分のやりたいことをやってるとか?

 性格が悪い。だけではどんな為人かはわからないが、捕まえたとして素直にサリュー様の呪いを解いてくれるかな?


「ルーちゃん、ごめんね。席を外すわ」

「あ、はい!」


 コンラッド様と話終わったのか、将軍は話し合いの席からいなくなってしまった。後ろにいるネイトさんを見上げると、安心させるように笑ってくれる。


「大丈夫ですよ。将軍はむしろいない方が話が進むというものです」

「そ、そうかな?」

「ブチ切れて剣を抜かれても困るでしょう?」


 それは既にやっています……とはいえず、私は愛想笑いを浮かべた。そんな私の姿にみんな何かを察したらしい。

 だって私じゃ止められないもの。


「とりあえず、君はその男の顔がわかるのだな?居場所もわかるのか?」

「幾つかの棲家を転々と動いてますので、同時に押さえれば見つけられるでしょう」

「問題は見つけた後か……」

「ええ。術を使われたら、あとは一瞬で首が落ちます。殺すことを躊躇するようなタイプではないですね」


 捕まえるのが非常に難しい、といわれているようなもの。コンラッド様は難しい顔をしている。

 私で役に立てることがあれば良いのに。そう思っていると、コンラッド様と目が合った。


「ルー嬢は、今日……シュゲール・ハッサンと会ったんだよね」

「そうですね」

「そう、か……」


 コンラッド様はまた考え込む。そこでふと、デュシスの鱗が破れたことを思い出した。もしや元々呪いと聖属性の相性が悪いのではなかろうか?


「シュルツ卿!呪いは解けたらわかるもの?」

「呪いは解ければ、かけた本人に返るのでわかると思いますよ。ただ、あの男自身が直接かけたりはしないでしょうが」

「え、じゃあサリュー様にかけた呪いはその人が捕まっても解けないの?」

「それは僕にはわかりません。専門家ではないので」

「でも解けたらわかるのでしょう?」

「前回の時、使った材料は()()()()()はずです」

「確かに、そんな話を聞いているわ」


 呪いをかけた本人が死んでしまったから、解かせることができない。ランカナ様はそんな風に話していた。でもあの呪いは私が解いてしまったし……そしたらあの呪いは誰に返るのだろう?いやでもかけた人は死んでしまっている。

 わからないことがどんどん増えていく。


「前回の呪いがどんなものかわかりませんが、材料を使ったとなれば一気に仕留めるつもりだったはずです」

「でも実際はそうじゃなかったわ」

「そこがあの男にとっての誤算だったでしょうね。しかも呪いが解けた。呪いに対抗する術があるはずなんです」

「そう、ね……?」

「業腹だったと思いますよ?あの男、この国に長く潜り色々と探っていたようですから」


 にこにこと話しているが、シュルツ卿の目は真っ直ぐ私を見ている。


 その視線にドキリとした。流石に私が聖属性を使えるとは知られていない、はず。外で聖属性の力を使ったのは、レストアに入る前の森でのこと。

 私はレストアでの出来事を思い出そうと必死で記憶を探った。


 シュルツ卿はあの時なんといった?


『ルティア姫が本当に危なければ、手をお貸しするつもりだったんですけどね。ラステアの龍騎士隊まで出てきては、自分の出る幕がない』


 そういっていなかったか?

 心臓がキュッと締め付けられる。もしかしてシュルツ卿は知って、いるの――――?



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