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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第三章

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178.商業ギルド 1

 ギルド、とはーーーー


 簡単にいえば仲介業者だ。何かをしてほしい人と、その依頼を受けられる人を橋渡しすることを生業としている。

 大体どこの国も同じギルドがあると思うが、一般的なのは冒険者・商業・手工業・花師などだろうか?


 ギルドに登録することで信頼を得られ、他国に行った時もギルド証を見せればその国のギルドと円滑に仕事をすることができる。

 仕事をする上で非常に密接な場所と言えるだろう。


 なんせギルドを介さず仕事をするのはとても難しい。職人も、商売人も、冒険者も何処かしらでギルドのお世話になるのだから。


 例えば魔物を狩った時に得た素材は商業ギルドで買い取ってもらい、商業ギルドから店や職人の手に渡る。手工業ギルドは職人の養成やその職人たちを商業ギルドに斡旋していて、花師ギルドも商業ギルドを通して店に花や薬草を卸している。唯一冒険者ギルドだけは、他とは少し違うのだけど……


 たくさんあるギルドの中で、どのギルドとも密接に繋がっているのが商業ギルドなのだ。その商業ギルドが不正を働いている、と思われる。

 本当なら由々しき事態だし、不正は正されなければいけない。でも一方の意見だけ聞いて、悪と決めつけることもできないのだ。


 盗みは悪いことだし。そしてその盗みを働いた子なのだし。男の子の言葉を全面的に信じてあげることはできない。ただ、嘘をついているとも思えない。

 私はジッと男の子の顔を見る。居心地が悪そうに身動ぎして、私から視線を逸らすけれど、少ししてチロリと私に視線を向けた。


「ねえ、貴方の友達で今も商業ギルドから斡旋されたところで働いている子はいないの?」

「……いる、けど。それがどうしたんだよ?」

「そう。いるのね」


 私が小さく頷くと、カティア将軍が軽く首を傾げてから「ああ」と小さな声をだして頷いた。


「その仕事がいくらか教えてもらうのね?」

「この子が嘘をついているようにはみえないし……だからといって全面的に信じてあげるには情報が少ないもの」

「そうね。確かに今のままでは情報が少ないわ」


 ステラさんも同じように頷きそして席を立つ。どうしたのかと思っていると、ステラさんは私の後ろに立ち、髪の毛をいじりだした。


「ステラお姉様?」

「今のままだと、仕事を探しにきた子っぽくないでしょう?」

「なるほど……?」

「いやいや、姉上。ルーちゃんこれから戻るところがあるんですけど?」

「ちょっとぐらいなら平気よ。それに子供向けの仕事は私たちじゃ紹介してもらえないもの。単純にいくらなんですかー?なんて聞いたところで、ひやかしに教えてくれるわけないでしょうし」


 それは確かに、と思わず頷いてしまう。商業ギルドは仕事を斡旋してくれる場所だ。そんなところに物見遊山で行ってはかえって怪しまれるだろう。

 そんなことを考えているうちに、ステラさんは私の髪を左右に結いお団子を作ってくれた。手鏡を渡され中を覗き込む。普段しない髪型だけになんだか新鮮だ。


「お姉様器用ですね!」

「ふふふ〜昔はねぇ、リオンの髪でもやってあげたものよ。まあルーちゃんの歳より小さい子がする髪型ではあるのだけど……ルーちゃん歳の割に小さいから平気よね」

「え?」

「ルーちゃんかんわいぃぃ〜」

「まあ、ギリいけるんじゃね?」


 思わず手鏡を落としかけた。そして私の「え?」は黙殺され、将軍とステラさんは可愛い可愛いと褒めてくれる。それは、小さい子の様で可愛いの意味なのだろうか?確かにまだ身長は伸びていないけど!!でもデビュタントも済んでいるのに!!


 思わず頬を膨らませかけて、慌てて頬に手をあてる。これでは本当に小さい子になってしまう。色々不服ではあるけれども、今はこれしか確認の手立てがないのだから仕方がない。

 そんな私をニヨニヨ笑いながらも将軍は男の子に向き直る。


「それで、えーっと少年。そういえば名前聞いてなかったわね」

「え?」

「名前。あるでしょう?もしかしてない?」

「いや、ある……けど。でも……」


 男の子は口ごもってしまう。何か言えない事情でもあるのだろうか?貧民街の子だからといって名前がない、ということはないと思うのだが……こればかりは個々の事情があるだろうしわからない。


 私たち三人の目が男の子に集中する。

 すると男の子は顔を赤くして恥ずかしそうに小さく呟いた。「リリ」と。




 ***


 まさか、まさか、だ。

 男の子だと思っていた子が女の子だったとは……人は見かけで判断できない。いい勉強になった。


「まあ、髪も短かったし顔も薄汚れていたし。それにリオンだって傍に抱えていたけれど気付かなかったのだから仕方ないわ」

「それは、そうなんですけど……」

「あれもまた身を守る術の一つよ」

「身を守る、ですか?」


 将軍と男の子改、リリを店に置いて、私とステラさんで商業ギルドに向かっている。二人とも髪の色は黒に変え、カティア家とわからないようにした。

 カティア家とわかると、リリから教えてもらった職場を紹介してもらえない可能性がある。むしろカティア家が何しにきたのだ?と訝しがられるだろう。


 それゆえの黒髪である。商業ギルドには仕事を求めて人が行き交っているので、カティア家のように特徴のある赤い髪でなければバレないはずだ。


 ステラさんが付いてきたのは、将軍と違って顔が知れ渡っていないから。流石にギルドマスターには知られているそうだが、仕事の斡旋場にギルドマスターが出てくることはまずない。

 ギルドマスターは基本的に上客との商談とか、他のギルドとの会議とか重要な場所にしか出てこないそうだ。


 一人で行くのは不安だったから、ステラさんが付いてきてくれるのは心強い。それにしても、リリが男の子の格好をしていたのは身を守るためだという。

 女の子であると不都合なことがあるのだろうか?もちろん仕事をする上で、男女で差があるのは理解できる。男性の方が力仕事を回してもらいやすいだろうし、女性の方が細かな仕事を回されることが多いだろう。


 それは力の差だ。将軍のように鍛えていないのであれば、それも仕方ないことだと思う。


「ルーちゃんの国にも、たぶんあるのだと思うわ」

「私の国にも、ですか?」

「ええ。どこの国にも。女性が性を売り物にする場所がね」

「えっと……?」

「この国では妓楼というの」

「ぎろう?」

「そこでね、男性に買ってもらってお金を稼ぐのよ」


 それはきっと、私には想像もつかない世界。最下層の人たち、とりわけ女性が辿り着く場所。自分の体を商売道具にして、男性からお金をもらうのだ。ファティシアにも存在する、娼館がそれに近い場所だろう。


 その店にたどり着くまでに借金を重ねている人がほとんどで、綺麗な服や簪は借金をしてあつらえなければいけなくて、結局、ほとんどの人が年季奉公を終わらせるまで出ることができない。


 望んでいく人なんていない。そんな、過酷な場所なのだという。


「借金が多ければ多いほど、働く期間は長くなるの。たとえどんなに疲れてもポーションがあれば関係ないしね」

「……うちの国にも似たような場所はあります。国としてどうしようもできない場所なのだと」

「そうね。黙認されている場所でもあるわ。でもその妓楼で一番になると、借金も年季を待たずに返せるし運が良ければ身請けしてもらえるの」

「身請け?」

「妓楼で働く女性を妓女というのだけど、その人の借金に今後稼ぐであろう金額を上乗せして払うのよ。そうすることで妓楼から解放されるの」

「それってものすごい金額になるんじゃないですか?」


 想像でしかないけど、借金の形に妓楼に売られてくる。衣装や装飾品は借金に足されるということは、食事も足されるのではなかろうか?さらにはその人が稼ぐはずだった金額も上乗せする。そう簡単に身請けというのができるものでないことはすぐに理解できた。


「身請けできるのは、大店の主人や貴族と役人でも上の人とかお金をたくさん持ってる人たちね」

「ですよね……じゃあ、ほとんどの人は年季というのが終わらないとダメってことですよね?」

「そうね。でも全く悪いことばかりではないのよ?文字や芸事を教わるから、妓楼を出ても仕事には困らないわね。この国の識字率はそこまで高くないから」

「リリが、男の子の格好をしているのはそこに売られないためですか?」


 私がそう聞くと、ステラさんは悲しそうな表情をする。

 盗みをして捕まってムチで打たれるくらいならいいけれど、女の子だとわかればそのまま妓楼に売り飛ばされてしまうということだ。売り飛ばされても、返して!という親がいない。いや、もしいたとしても返してもらうにはお金を払わなければいけないのだろう。


 売り飛ばした人間に払った以上の金額を……


 それは貧民街の人には無理な話だ。リリが身を守るためにわざと男の子の格好をしていたのは、そんな理由があったのか。


 私はまだまだものを知らないのだな、と感じた。




いつもご覧いたただきありがとうございます!

また細々と更新再開していきたいと思います。

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