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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第二章

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155.お留守番中のよもやま話 4(リーナ視点)

 私の名前はリーナ・ドット。ファティシア王国第一王女であるルティア・レイル・ファティシア様の従者であり身代わり、だ。


 ラステア王国に着いてから一ヶ月半。穏やかに、そして時には賑やかに過ごしていた。そんな私たちに(もたら)された悲報。その悲報を聞いて、我が主人(あるじ)ルティア様は危険を顧みずファティシアに旅立った。


 ラステアに残された私はルティア様が戻られるまで、ルティア様の身代わりを務めている。日々、ラステア国女王ランカナ様と交流し、アリシア様に令嬢としての手ほどきを受け、なんとか、なんとか……


「なんとかなっていないから、訓練をしているのですよ。リーナ」


 アリシア様から令嬢としてのマナー諸々を手解きしてもらっていた最中、ちょっと意識を飛ばしていた私はユリアナに怒られる。

 そして頭に乗っていた本を危うく床に落とすところであった。慌てて足で受け止めると、アリシア様から「すごい!」と感嘆の声が上がる。


 チラリとユリアナを見ると腰に手を当ててニコリと微笑むのみ。これは素直に謝ろう。うん。訓練中に意識を飛ばした私が悪い。


「……すみません。ユリアナ」

「大変なのはわかるけど、意識をこちらに集中して?」

「ま、まあまあ……リーナちゃんも頑張ってますし」

「頑張っているのはわかるんですが、その表情筋の硬さをなんとかしないとルティア様の身代わりなんて務まらないわ」

「うっ……」

「ルティア様は表情豊かですものね……マナーとかは大丈夫になってきたんですけどね」


 苦笑いを浮かべるアリシア様。そしてユリアナは難しい顔をしてため息を吐いている。どうにかしようと努力をしてはいるけれど、私の表情筋はとても頑固なのだ。


 これは従者云々の前に元からなのでどうすればいいのか私にもわからない。小さな頃からぼんやりしているとは言われていたけれど、それがイコール表情がないだと思う者がどれだけいるだろう?


 両親はそれも個性と笑っていたけど、それではルティア様の身代わりはできないのだ。誰かの代打ではなく、私が、ルティア様の従者なのだから。


 ムニムニと頬をひっぱり頬の筋肉を解そうとする。するとアリシア様が私を見て小さく笑った。その仕草に首を傾げると、「その仕草、似てます」といわれた。


「そ、そうでしょうか?」

「うん。ルティア様もそうやって頬をムニムニしてる時あるから」

「仕草は確かに似てきましたけどね」

「でも表情は……もう少し、かなあ?」


 結局はそこに戻ってしまい、ユリアナもアリシア様に同意するように頷く。仕草は似せられても、表情が似せられないのであればいくら認識阻害の魔法石を使っていてもバレてしまう。


 普段のルティア様を知っていればいるほど、小さな違和感は積み重なり相手にバレやすくなるのだ。もう少し表情まで補正してくれるものなら良いのだけど……

 現状はとても難しいそうだ。


 カーバニル先生ならできます!!とお願いはしているけれど、その魔術式が出来上がるのと私の表情筋が何とかなるのではどちらが早いだろうか……?

 そんなことをぼんやりと考えていると、ユリアナが私の頭を撫でてくる。


「まあ、ごく一般的な王侯貴族であれば表情をコロコロと変えるのはあまり褒められたことではないので、リーナが正しいと言えば正しいのですけどね」

「そうですよね。なるべくニコニコして、表情を読まれないように!って私も最初に教わりました。淑女たるもの〜とかなんとか」

「ですが、それだとルティア様らしくないといいますか……」

「そうなのよね。顔に出てくれた方が私たちとしても直ぐ反応できるし」


 私がそういうと、ユリアナはまたため息を吐く。ルティア様は普通の王族としての育ち方をされていない。どちらかといえば、カタージュで過ごされていたカロティナ様にそっくりだ。主に行動パターンが。

 なのでユリアナぐらいになると、ルティア様が考えていることが直ぐにわかるらしい。顔に出ている、ともいうけれど。


 でも私ができないからといって、ルティア様の行動を本来の王族らしいものに矯正するのも違う気がする。ルティア様はルティア様だからこそいいのだ。一般的な王族らしいルティア様はルティア様らしくない。


 なんとも不思議な話だが、誰一人としてルティア様を普通の王族の枠にはめようとしないのだ。それがルティア様だと。最初のうちこそ私も不思議な感じがしていたが、今では王族らしいルティア様の方がおかしい気がしてしまう。


「ともかく、リーナの表情に関しては要訓練、ね」

「はい……」

「仕草は似てきてるから、あとは表情だけだよ!」


 頑張って!!とアリシア様が励ましてくれるが、その表情が一番の問題なのだ。私は小さく頷き、ため息を吐いた。




 ***


 ーーーーコンラッド王弟殿下が戻られた。


 その一報に私の心は浮き足立つ。コンラッド様が戻られた、ということはルティア様も戻られたということ。

 でも今はアリシア様と一緒にランカナ陛下とお茶を楽しんでいる最中。気になるからといって見に行くことはできない。本当は今すぐに行きたいけれど……いや、ルティア様が戻ってきたのならユリアナが一番最初に対処するはず。


「ふふふふ……慌てずとももう直ぐコンラッドが報告に来るであろう」

「あ、いえ。はい……」


 何もかもお見通し、とでもいうような表情で言われてしまうと何も言い返すことができない。尤も、陛下に何か言い返せるほど、私の語彙力は多くないのでどう考えても無理があるのだけど。


「それにしても二週間程度か……もう少しゆっくりしてくると思ったが、意外と早かったな」

「お葬式ですし……そのぐらいかと」

「いや、何かトラブルでもあれば通常の期間では戻って来んだろうと思っておったのだ。コンラッドめ、上手く切り抜けおったな」

「そ、それは……!!切り抜けられた方がいいのでは!?」


 アリシア様の言葉に陛下はニタリと微笑う。それでは面白くないと。葬儀に出るだけで面白いことは普通起こらない。起こらないけれど、ルティア様がいれば何か起こるのでは?と陛下は考えたのだろう。


 流石に期待しすぎでは!?!?


 ルティア様は葬儀に出られたのであって、喧嘩を売りにいったわけではない。余程のことがなければ、問題行動なんてされない方だ。たぶん。


「いやな、問題を切り抜ける時にドキドキ・キュンキュンそして何かが……的な展開を期待しておったのじゃ」

「ど、ドキドキ・キュンキュン……ですか?」

「そうよ。(わらわ)はコンラッドと姫が早く婚約せんかと、今か今かと待っておるのに一向にそんな空気にならんでな」

「それは……難しいのでは?」


 私がそういうと、陛下は「それよ!」と手に持っていた扇子をパチンと閉じると私に向ける。向けられた私はビクリと肩を震わせてしまった。


「なぜ難しいと思う?」

「ルティア様は恋愛にあまり興味ないように思えます」

「そうよな。王族らしい行動はしない割に、恋愛観に関しては王族らしく政略結婚が当たり前となっておる」

「ルティア様のご両親……カロティナ様とアイザック陛下は恋愛結婚なんですよね?」


 アリシア様に問われ私は頷く。


「両親や他の者から、アイザック陛下がカロティナ様に猛アタックして実ったと聞いております。最初は、確か……カロティナ様はアイザック陛下を倦厭していたとも」

「つまり押せ押せに弱いのかの?」

「ど、どうでしょうか??」

「それよりも、コンラッド様はやっぱりルティア様がお好きなんですか?」


 アリシア様の表情が興味津々といった風にキラキラと輝いている。しかし私としてもそこは気になる。コンラッド様は大変良い方だと思うが、ルティア様と歳が離れているのだ。十二の歳の差はやはり気になるところでもある。

 ただでさえ国が違うのだし、価値観とか諸々あるだろう。


「我が国には番、というものがある。これはもう感覚でしかない。当人同士にしかわからぬものでな。妾も夫を見つけた時は、これが我が番か!と驚いたものよ」

「番、ですか……でもそれって同じ国の人同士の話じゃないんですか?」

「それよ!だがコンラッドは姫が番相手であるというのじゃ。不思議なことにな。まあ番だからというだけで相手を愛するわけではない。それは一つのきっかけに過ぎぬ」


 その話を聞きながら、私は一つの話を思い出した。押せ押せに弱い。それはもしやレイドール伯爵家の血なのではなかろうか、と。


「あの……」

「うん?リーナよ、どうした?」

「ルティア様はその、ラステアの血が流れています」

「なんと!!」

「ルティア様のひいおばあ様がラステアの方です。その、押せ押せ……でレイドール伯爵家に嫁いでこられたはずです」

「え!そうだったの!?」

「はい。ですがルティア様はご存知ないかもしれません。レイドール家はあまり表立って王家と繋がりを持ってきてませんので」


 レイドール伯爵家は表立って王家と関わっていない。それ故に、レイドール伯爵家の情報はあまりルティア様やロイ様に伝わっていないのだ。尤も、聡いロイ様のことだからご自分でお調べになっている可能性もあるが。

 そう伝えると、ランカナ陛下はなるほどなと頷かれた。


「表立って、ということは裏では繋がっていると?」

「我々がその証拠かと」

「そ、そうだったんだ……」

「ですが我々も知らないこともあるかと思います。それは我々が知る必要がないことなので」

「秘密を知る人間は少ない方が良いからの」

「はい」


 私が小さく頷くとランカナ陛下はパラリと扇子を広げる。しかし目だけはニッと笑っているのだ。何か、なにかこう……


「陛下、ご歓談中失礼致します。コンラッド殿下が帰還のご挨拶に参られました」


 その言葉にソワリとしてしまう。ランカナ陛下はゆっくりと頷くと、コンラッド様に入室を促した。コンラッド様は戻られた衣装、そのままで入室される。

 その姿にようやく、ようやくこの役目から解放されるーーーー



 そんな風に思っていた時もありました。



「あ、ルティア姫はカタージュに寄り道してから帰ってきますから」



 その一言に泣きそうになったのはいうまでもない。


今年も一年ありがとうございました!

次の一話で2章終了、3章はラステアでの話が中心になります。

よろしくお願いいたします!

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