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没落寸前の崖っぷち令嬢、山で野生の執事を拾ったら全てが上手く行きはじめました  作者: ひだまりのねこ


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第三十四話 決着


「グレイ、この辺で降ろしてくださる?」

『ぐるううっ!!』


 上空四千メートルの高高度、ゆっくりと旋回飛行するグレイの背中からクレイドールは飛び降りる。


 金属の塊のような重量物はどんどん加速し――――


 ズガアアアアアアアアアアアアアアアン


 帝国軍の本陣近くにクレーターを生み出す。


「な、なんだ!? 隕石でも落ちてきたのか?」


 さすがのガビエルも突然のことに動揺するが、近衛魔導士たちの魔法障壁で守られているので無傷である。


「ごきげんよう、貴方が皇帝ですの?」


 土煙の中から姿を現したのは――――灰色髪に赤銅色の瞳を持つ可愛らしい令嬢。


「ほう……これは可愛らしいお嬢さんだ、もしかして迷子かな?」

「いいえ、貴方を捕まえに来ましたの」

「ハハハハ、誰を捕まえるって? この私を捕まえる? やってみるがいい、出来るものならな」


 退屈していたガビエルは大笑いして手招きする。


「良いんですの? それではお言葉に甘えて――――」


 ゴンッ 何か見えない壁のようなものが接近を許さない。


「これは?」

「ククッ、物理攻撃無効のアーティファクトだよ、たとえドラゴンの一撃でも耐えてみせるだろう」


 ゴンゴンゴンッ 


「なかなか硬いですわね」

「無駄だ、怪我をするだけだぞ」

「そうでもないですわ」


 ゴオオオオオオオオオン、ドガアアアアアアアアン――――ピシリ ピキ、パキッ


「なっ……!? 嘘だ……あり得ない……」

「次で壊れそうですわね」

「や、やめろおおおおおおおっ!!!」


 バキイイイイイイイイン クレイドールの打撃に耐えきれずアーティファクトが砕け散る。


「さあ、一緒に参りましょう」

「く、来るな、化け物め、そ、そうか……お前、魔法を使ったんだな? おかしいと思ったんだ、物理無効のアーティファクトが破壊できるはずないからな」


 冷静になって見れば十歳前後の少女だ、アルテリードと同じ魔法特化タイプなのだろう。それなら――――


「見ろこの指輪を!! アンチマジックフィールドリング、絶対魔法無効のアーティファクトだ、つまり今のお前はただのか弱い少女に過ぎない」


 ガビエルは帝国の至宝『帝剣インペリアルソード』を鞘から抜き放ってクレイドールに突き付ける。


「この剣は使用者の身体能力を飛躍的に向上させるアーティファクトだ。仮に魔法が使えたとしても丸腰ではどうにもなるまい」

「私、どちらかといえば……素手の方が得意ですのよ?」


 クレイドールが剣先を指でつまむと、ガビエルがいくら力んでもビクともしない。


「くっ、あり得ん……どうなっているんだ」

 

 


「陛下っ!!! ご無事ですか!!」

「おお、剣聖ニバンテ!! よく来てくれた、この女を殺せ!!」

「陛下を害するものは処分する!!!」


「困りましたわね、戦うなと言われてますし……出でよセリオン!!」


 剣聖セリオンが現れる。


「なぜすぐに呼ばなかったんだクレイドール嬢」

「てへ……忘れてましたの」

「はあ……まあいい、おいニバンテ、お前が剣聖だと? 私に一度も勝てなかったのに」


 ニバンテは一瞬怯んだが、すぐに余裕を取り戻す。


「それは昔の話だ、今の俺にはこれがある!!」


 数々の身体強化系アーティファクトや魔道具で身を固めたニバンテはもはや化け物じみた力を持っている。


「何かと思えば……そんなものに頼っている時点で私には一生勝てないということを――――」


「動くな、皇帝を殺されたくなければな」


 いつの間にか現れたゼロが、ガビエルの首筋にブラックミスリルのナイフを押し当てる。


「くっ、わかった……降参する」


「ゼロ……貴様、せっかく私がカッコよく戦うところだったのに……」

「戦うなって言われただろ、任務忘れんな」

「ぐ、そうだったな……すまん、感謝する」

 

「あれ……? もしかしてもう終わったの? あら、兄上ごきげんよう」


 気合を入れて出てきたアルテリードだったが、すでに終わってしまっていたので、仕方なく兄を揶揄う。


「皇帝は捕らえた、戦争は終わりだ、全軍武装解除せよ!!!」 


 英雄ヴァルキュリアの宣言に、元々士気の低かった帝国軍は進軍を止めて武装解除を始めた。


「よし、後はガビエルをこの縄で拘束――――マズいっ、ゼロっ、逃げろ!!!」


 メルキオールの言葉の意味を本能で察知して距離をとるゼロ。


「く、ククク……お前たち全員終わりだ――――」


 ガビエルの身体からどす黒い煙のようなものが周囲に広がってゆく。


「あれは……強力な弱体化の呪い……クレイドール、皆を逃がしなさい!!」

「はいミレイユ姉さま、収納!!」


 慌てて周りにいた全員を収納するクレイドールに、すべての呪いが襲い掛かってくる。


「強い者ほど弱くなる――――残念だったな、切り札は最後まで取っておくものなんだよ!!」


「それは結構ですが……お気をつけあそばせ、呪いを使っていいのは呪われる覚悟がある方だけですのよ」 


 ――――レフレクシオ・マレディクタ


 呪いを反射する聖女のみが使える神聖魔法。


「うぎゃあああああっ!!!」


 反射した呪いがガビエルを飲み込む。


 呪いというのは、跳ね返されると効果が何倍にも増幅する性質を持っている。数秒後――――そこには弱体化し剣すら持てなくなったガビエルがいるのだった。

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― 新着の感想 ―
もうここまでくると弱い者いじめですね(ォィ それはともかく戦後処理がこれまた大変そうですね。
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