(1)プロローグ
化け物と呼ばれていた美貌の王太子と狼獣人のおてんば令嬢の恋物語です。
プロローグと回想シーンのみ少々シリアスだったりしますが、ハピエン確約のほのぼのドタバタストーリーになると思います。
呪われた王国シリーズ10作目です。
キラキラと輝く大広間に集う着飾った大人達。
少年はその場にいるのが耐え切れず、ようやく喧騒を抜け出して庭へとその身を隠そうとしていた。
「あのお姿は流石に私、耐えられませんわ。うちの娘は弟君とご縁を結べたらと言っておりますのよ」
「我が家もですわ。お気の毒ですけれど、あのお顔の膿…とてもじゃないですが正視できませんもの」
「美醜もですが、あれでは先も長くないかもしれませんな。胸が痛みますよ」
あちこちで囁かれ、聞こえてくるのは自分への嘲笑や哀れみに隠した蔑みの声。
まだほんの7歳になったばかりの少年がそれに傷つかないはずもなく、人前では懸命に取り繕っていた強がりの仮面をとってしまえば、そこにいるのは涙を瞳いっぱいに浮かべたただの泣き虫なひとりの子供だ。
「醜いなんて、わざわざ言われなくても知っている……分かっている」
少年が容姿のことで蔑まれるのは今に始まったことじゃない。
両親によく似た面差しだった少年が今のような姿になり始めたのは、少年が5才になってからのことだった。
その年から始められた『ある教育』が進むにつれ、少年の肌はボロボロに荒れ、吹き出物や炎症で赤や黒の斑が全身を覆うようになった。
1歳年下の弟とは仲が良かったが、昨年から同じ教育を始めた弟は、不思議と少年のような姿にならなかった。
両親や年嵩の身近な使用人達は変わらず少年に優しいし、父などは良く少年を抱きしめながら『すまぬ』と涙を零すことさえあった。
母も叔父も少年の症状を見て、その教育を中止させようとしたが、それは少年自身が継続を希望した為に、今も続けられている。
しかし、それ以外の者は一様に少年を厭い避け、時には弟を引き合いに出してあからさまに蔑むことが増えて行った。
まして、15年程前に少年の伯父が起こした不祥事の影響が、未だに多くの者に迷惑をかけているとあっては、彼ら一族を疎む者さえいるのも仕方が無い状況なのだ。
容姿で蔑まれても、これ以上侮られてはいけないと幼いながらに少年は人前で泣き言は言わぬと決めていた。
夜会に先立って開かれていた昼間の茶会でも、少年は強がりの仮面を外すことなどできなかった。
同じ年頃の子供達と引き合わされたが、子供というのは大人以上に口さがない。
「うわ、まるで化け物だな」
「気持ち悪いですわ」
「近寄ったら化け物がうつるんじゃないか?!」
親達が席を外したとはいっても、公の場でそのような暴言を彼に向かって吐けば周囲に咎められるはずであった…本来ならば。
けれども、少年は大人に訴えることもせず、寧ろ護衛の者に口止めまでした。
傷つく言葉を面と向かって投げつけられても、幼い頃から己の立場に相応しくあれと教えられて培われた矜持だけを支えに笑顔で対応し続けた。
否定したくとも彼らの言葉が一部において事実であるが故に、否定すれば事実も認められぬ愚か者よと誹られるのだろうと考える少年には、ただ笑顔を見せることが自分の心を護る唯一の方法に思えていた。
だから、たった今まで頑張って笑顔を貼り付けて、両親と共に大人達としたくもない挨拶を交わしていたのだ。
けれども、やはり我慢だって限界はある。
悲しさと苦しさで胸がいっぱいになってしまった少年は、とにかく今だけでいいから1人きりになりたかった。
低木の陰に座り込んで、ギュッとつぶった瞼の裏に浮かぶのは、たった一人だけ。
そして思いを馳せるのは、今日出会ったばかりの優しく柔らかな温もりだった。
暗いスタートですみません。
次話もすぐにアップします。
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