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Cランクの最強冒険者、わがまま令嬢の護衛になる 〜正体を隠した底辺冒険者が英雄に至るまで〜  作者: 朝食ダンゴ
第2章

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28.サラサ・クローデン③

「それは流石に話を盛りすぎだぜ! メイドの嬢ちゃん!」


「いくらなんでも、一人でコヴァルドをやるってのはありえねぇよ!」


「まぁまぁ、かわいらしいじゃねぇか。強がりの嘘なんて」


 従者達は思うがままに笑い、口々に嘲りを重ねる。

 サラサはというと、羽扇子で口元を隠して肩を振るわせていた。


「野蛮人の護衛に、ホラ吹きのメイド。ラ・シエラはお金だけでなく、人材も不足しているようですわね」


 シルキィは何も言わなかった。否、何を言っても無意味だと分かっているのだ。


「久々にこんな笑わせて頂きました。それでは、ごきげんようミス・シエラ。帝都でお会いできること、アイギスに祈っておりますわ」


 再び高笑いを響かせて、サラサは去っていった。

 兵士らが後に続く中、その筆頭であるディーンは、去り際にセスを一瞥し鼻で笑っていいた。


「言いたい放題だったな」


 セスは溜息交じりに呟いた。なんともいけ好かない連中だ。アルゴノートを蔑むだけでなく、同じ帝国の貴族までを貶めるとは。

 シルキィは顔を紅潮させ、わなわなと震えている。


「なんなのよ! もう!」


 耳元で鈴を鳴らされたような怒鳴り声である。


「あなたなんか連れているせいで、クローデンに馬鹿にされたじゃないの!」


「俺のせいじゃ……いや、そうだな」


 セスが一緒にいた、というのも大いににあるだろう。サラサがシルキィを嘲る格好の材料を与えてしまったのだから。


「今日はもう帰る!」


 地団駄を踏んで悔しがりながら、シルキィは大股で部屋へと戻ってしまった。

 行くと言ったり帰ると言ったり。かくも、人の心とは縁に左右されやすいものだ。


「申し訳ありません。私としたことが、感情に任せて失言を」


「無理もないさ」


 いつも表情に乏しいティアが怒りの感情を発露させたことは、少々驚きであった。シルキィに向ける想いの強さが窺える。


「長居は無用だな」


 シルキィの背中を見ながら、ぽつりと口にする。

 先程聞いたサラサの話が本当ならば、街の厳戒態勢も納得である。

 魔導馬が引く大馬車は、良くも悪くもとにかく目立つ。賊からすればこれ以上ない獲物だろう。早急に手を打たなければなるまい。


「ティア。明日の朝にはここを出られないか」


 セスの唐突な提案に、ティアが僅かに首を傾げた。


「エルンダには明後日まで滞在の予定ですが……いかがなされたのです? お嬢様には十分な休息を取って頂きたいのですが」


「さっきの話を聞いてただろう? 賊が出るってさ。お嬢の安全を考えるなら、できるだけ早く出発した方がいい」


 ティアは細い顎を押さえ、視線を彷徨わせて思案する。


「承知いたしました。お嬢様には、夕食の際にご説明いたしましょう」


 彼女はセスの提案を受け入れた。あとはシルキィの承諾があれば問題はない。

 ちゃんと説明すれば、シルキィとてわかってくれるだろう。

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