表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cランクの最強冒険者、わがまま令嬢の護衛になる 〜正体を隠した底辺冒険者が英雄に至るまで〜  作者: 朝食ダンゴ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/79

16.夜風の邂逅①

 出立の前夜。館の中庭で、セスは偶然シルキィと顔を合わせた。

 彼女は噴水の縁に腰を下ろし、星空を見上げていた。月光に照らされた白い横顔はどこか儚げで、言葉を失うほどに美しい。


 星を映す瞳は柔らかく、ほのかに微笑んでいるような口元には気品がある。知性に溢れる居住まいは、組合で見たシルキィとはまるで別人だ。

 荘厳な一枚絵のごときシルキィの姿は、セスが気付くと同時に露と消えてしまう。彼女は柳眉を逆立たせ口元を歪ませ、歩み寄ったセスを睨みつけた。


「何か用?」


 相変わらず険のある声だ。


「夜風にあたっていると、ミス・シエラのお姿が見えたものですから。ここに来てからあまりお会いできていませんでしたし、叶うことなら少しお話でもと」


 トゥジクスの計らいによって、セスはラ・シエラの館に滞在を許されていた。シルキィはそれが気に入らないようで、意図的にセスを避けているのだ。


「あなた、何か勘違いしていないかしら? 護衛を依頼したからって、気安く話しかけることを許した覚えはないわ」


「警護の為にも、お互いに理解を深めた方がよろしいかと存じます」


「必要ないわそんなこと。ティアに勝ちを譲られたからって、有頂天になっているんじゃないでしょうね」


「とんでもない。あの時は運よくアイギスに見初められただけ。一歩間違えれば不覚を取っていたのは私の方でした」


 アイギスとは、大陸全土で信仰されている戦いと勝利の女神だ。アイギスに見初められるとは、勝負事の運が向くということを意味している。


「当然よ。私にはティアがいる。お父様の意地悪な条件さえなければ、そもそもあなたなんか不要なんだから」


 確かにティアの剣は冴えている。凡百の剣士とは比べ物にならない。だが、旅の護衛としてシルキィを守り切れるかどうかとは、また別の問題だ。


「つかぬことを伺いますが、ミス・シエラ。どのような者ならばご自身の護衛に相応しいとお考えですか?」


 問われたシルキィはしばし思案する仕草を見せてから、したり顔で口を開いた。


「かの英雄レイヴンのようなお人ならば、願ってもありません」


「レイヴン?」


「知らないの?」


 その声には責めるような響きがあった。


「存じております。とある物語の主人公ですね」


「レイヴンズストーリーはノンフィクションよ。レイヴンは、実在の人物なの」


 シルキィの口から出たのは、帝国内で話題沸騰中のシリーズ小説の名である。主人公の奴隷剣闘士レイヴンが、剣闘の世界で活躍し、国や貴族の陰謀に巻き込まれながらも剣闘士としての名声と自由を手に入れる、という大筋の英雄譚である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ