表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cランクの最強冒険者、わがまま令嬢の護衛になる 〜正体を隠した底辺冒険者が英雄に至るまで〜  作者: 朝食ダンゴ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/79

11.辺境伯②

 やがて廊下の奥に辿りつくと、ティアが扉をノックする。


「旦那様、アルゴノートの方をお連れしました」


「通せ」


 奥から男性の声が聞こえると、ティアはゆっくりと扉を開いてセスに入室を促した。

 旦那様だって? その驚きはセスの喉元までせり上がった。まさか領主と会うことになろうとは。いや、令嬢の護衛を担うのだから当然か。


「失礼します」


 戸惑いと緊張を胸に入室したセスは、奥の机につくのは初老の男を見た。彼はセスの姿を認めるとすっと立ち上がり、皴の入った顔に明るい表情を浮かべる。


「よく来てくれた」


 白髪交じりのプラチナブロンドをオールバックに整えた壮年の領主が、セスに歩み寄って親しげに手を差し出した。


「ラ・シエラ領主。トゥジクス・デ・ラ・シエラだ」


 セスは意表を衝かれた。辺境伯ともあろう地位の者が一介のアルゴノートに右手を差し出すなど、到底考えられないことである。


「ヘレネア領のアルゴノート。セスと申します」


 セスは束の間の自失を経て、躊躇いがちに差し出された手に応えた。

 トゥジクスが力強くその手を握る。分厚い笑い声は耳に心地よく聞こえた。


「よろしく頼む」


 聞きしに勝る人物だ。というのが第一印象であった。貴族にありがちな傲慢さは欠片も感じられないし、柔和な所作からもその穏やかな内面が見て取れる。


「大したもてなしはできないが、まあ楽にしなさい」


 セスはソファの上に腰を落ち着けた。向かいに座ったトゥジクスが目配せをすると、ティアは一礼を残して退室した。


「さて、セス君」


 セスは硬い表情を自覚する。これから何を言われるのか戦々恐々だ。


「ティアから組合での顛末を聞いた。自ら売り込んだそうじゃないか」


 返事の代わりに、セスは頭を下げた。


「きみ、歳はいくつだね?」


「つい最近、十七になりました」


「若いのに大したものだ。仕事とは自分の手足で獲得するもの。それをよくわかっている」


「恐縮です」


「しかし、なぜこんな依頼を受けようと? 何か考えがあってのことか?」


 セスに向けられたのは、同情とも胡乱とも違うなんとも言えぬ種類の眼差しだった。


「こんな依頼、ですか。実のところ、詳しい依頼内容はまだお聞きしていません」


「なんと。それはまことか?」


「はい。帝都までの護衛とだけ」


 いつものセスならば、依頼内容の確認は怠らない。C級ともなると、危険度の高い依頼が回ってくることもある。生き残る為に依頼の吟味は念入りにして然るべきである。だが今回に限っては、セスは拙速を尊んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ