表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cランクの最強冒険者、わがまま令嬢の護衛になる 〜正体を隠した底辺冒険者が英雄に至るまで〜  作者: 朝食ダンゴ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/79

10.辺境伯①

 深い森の奥。整備の行き届かない石造りの道に、長い木漏れ日のカーテンが垂れ下がっている。セスはブーツの底で、でこぼこ道に軽快な足音を鳴らしていた。

 視界の奥には煉瓦造りの塀とそれに囲まれた大きな館が見える。敷地の周辺は森林を切り開いており、日光が燦燦と降り注いでいた。


「なんか、ボロボロだな」


 見上げるほどの門は鉄製でいかにも頑丈そうだが、ところどころ錆びついており、長らく手入れがされていないことが窺えた。煉瓦造りの塀は色褪せ、いくつかの罅割れが見て取れる。広大な領地を持つ大貴族の館にしてはやけに古ぼけた印象だ。


 屋敷の前にたどり着くと、セスの到着を待っていたかのように――実際待っていたのだろう――金属の軋む音を立てて門が開かれた。現れたのはティアだ。彼女はセスを見とめると、両手を重ねて折り目正しく一礼した。


「お待ちしておりましたセス様。恐れ入りますが、お腰のものを」


 セスに大きな荷物がないことを確認すると、彼女は目を伏せて白い両手を差し出した。


「よろしく」


 セスが剣を預けると、ティアはくるりと踵を返す。


「こちらへ」


 ティアの先導で、セスは館へと立ち入った。剣を抱えて前を歩くティアは無用な口を開こうとしない。なんとなく気まずさを感じながら館の廊下を歩いていく。

 大きな館だ。塀や外壁と同じく修繕が必要な場所は多々見受けられたが、好意的に見れば情緒豊かであるとも言える。開け放しの窓から見える中庭には、古ぼけた大きな噴水がある。が、稼働はしていない。庭園は人の手が入れられなくなって久しいようだ。木々の枝葉は整わず、雑草が生い茂っている。


「やけに人が少ないね」


 使用人の数はそのまま貴族の力を表すステータスとなる。ラ・シエラほどの大貴族であれば、屋敷の使用人は多すぎるくらいが自然だ。


「当家にも事情がございます。いらぬ詮索はなさらぬよう」


「ああ、うん。そうだね。失礼した」


 ラ・シエラの財政は火の車、という噂を聞いたことがある。先の戦争で多大な戦果をあげたラ・シエラがよもやこれほど困窮しているとは、実際に目にするまで信じられなかった。戦後、戦果に適う恩賞を得られず疲弊したままというのは本当のようだ。


 皮肉なものである。ともすれば、侵略された地であるヘレネア領の方がよほど豊かではなかろうか。これではラ・シエラは皇帝に使い潰されたようなものだ。勝ったからといって領地が栄えるわけではない。セスは戦争の非情に憂いを禁じえなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ