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95 神の御業

おまたせ。

 始まりの町の周辺にいる狼に絡まれながら亜空間を試しますが、戦闘中は使用不可ですか。【ショートジャンプ】使えと。

 亜空間から相手の背後に出て攻撃する事で、初発の不意打ちは可能ですが……それ系のスキルを持っていないので、あまり意味がないですね。立場的には暗殺される側だ。RP的にも無しか。亜空間より触手を積極的に使っていきたいですね。


 ご協力頂いた狼さんを転がして取り込み、今度は亜空間を開いてから狼のタゲを取り、狼・亜空間・私というポジショニング。

 私に攻撃するため走ってきた狼は、途中の亜空間を素通りして私に攻撃してきました。私自身は《高位物理無効》でダメージ無しです。


 続いて触手を使い、攻撃してくる狼さんを亜空間に向かって飛ばします。弾き飛ばすようにするとダメージが入るので、下から掬い上げるように。

 すると狼は亜空間に吸い込まれ、ポリゴンになりました。


 『認識』できなければ入ることも不可能だが、『認識』できる者が引きずり込む事は可能……か。

 まあ、でなければビヤーキーの行動が説明できませんか。


 亜空間を使用した討伐に経験値は無し。まあ『経験』してませんからね。

 経験値無し素材無しの時点で、ゲームとしては最終手段も良いところですね。経験値と素材が欲しくて狩りするんですから、亜空間で倒すのは時間の無駄か。

 様々な意味で美味しくない敵を捨てる……と言う選択肢は無くもないが、それなら視界に入った瞬間こっちが入ってスルーした方が早い。最初から除外しておいた方が、無駄な行動しなくて済みますね。


 視界に入った瞬間の逃げには最適。それ以外は亜空間の戦闘使用は無し……と。

 便利能力が増えたぐらいの認識ですか。1回ステータスをじっくり見直しましょうかね……?


 前提として、私には制限が付いている。明らかに上位種族ですからね。そのままだとバランス的にダメでしょう。スキルはあるので行動自体に制限は無いため、特に気にすることでもありません。

 この制限により進化しても与ダメが跳ね上がったりなどしませんでしたね。種族特性による光と闇系統ボーナスあり。他の人外種よりも高め? ただし他属性の威力が下がるどころか、取得不可なので正直かなり重いデメリット付き。

 ゲームである以上与ダメに目が向きがちですが、人外である最大の利点はそこではないでしょう。『人外だからこその……人外ムーブができる』です。『人外なんだから人外ムーブしかできん』とも言えますけど。

 これを利点と取るか、ストレスと取るかは人次第。会話での住人のAIも違いますし、そもそも操作面での苦労があり得る。

 だからこそRP向けとも言われる所以ですね。戦闘面では嵌まれば強い。場合によってはただのカカシ。天敵だとワンチャン即死とピーキーな設定付き。


 私のメイン火力は光と闇系統の魔法。よってメイン武器はもはや《本》です。

 アサメイは武器というより補助アイテムに近い。私の認識ではもはや盾扱い。《細剣》より《蛇腹剣》のおかげで、武器として多少の出番があるぐらい。装備枠的には右手にアサメイ、左に本ですね。

 他はパッシブ系や生産。この事からも、私のメインは種族スキルというのが分かりますね。パッシブスキルは良いものです。固定値は裏切らない……。

 戦闘に関してはまあ……良いでしょう。今まで通りです。



 RP方面で活かせるものが何かないか。

 せっかく人外種なのです。エリーのお父さんとの話もありますし、そろそろRPに本腰を入れていきたい。つまり人外ムーブはしていくべきでしょう。

 私にとって1番の人外要素は間違いなく触手。他にそれっぽいのは《死霊秘法》でしょうか。

 死霊に触手……どう考えてもヒーローではありませんね。不死者系統の種族なので、ダーク方面に行くのは致し方なし。ダークヒーローなんてのもありますが、正直これと言って興味はありません。

 正義など視点の違いでしか無いのですから。自国の英雄、他国の仇敵。

 私はヒーローよりナイトが好きですね。


 それはそうとRPですが、言動に関しては大丈夫でしょう。動きはアシストがありますし、口調は……どちらかと言えば命令形にするべきなのでしょうが、まあ丁寧語でもそれほど違和感は無い……でしょう。

 RPで分かりやすいのはやっぱり見た目。見た目が1番簡単で、一目で分かる。装備を固めるだけですからね。ただ、RPと判断するには見た目だけでは足りません。職業や趣味に合わせているだけの可能性が高いですからね。

 RPには口調や動作……言動のどちらかは必須で、両方あれば完璧でしょう。例はモヒカンさん。肩パットやベルト、短剣装備であの口調ですよ。RPガチ勢。


 印象に残すためにはやはりインパクトが必要。……アニメや漫画を参考にする場合、やはりビジュアルか。ブレないキャラというのは必須でしょう。そして方向性も決めておいた方が楽。

 んー……とりあえず、ウルフが鬱陶しいので町に帰りましょうか。


 中央広場に戻りまして……お、噂をすれば。……噂というか思い浮かんだだけですけど。


「ごきげんよう、モヒカンさん」

「あぁん? 姫様じゃねぇか! 久しぶりだぁ!」

「モヒカンさん、今お時間ありますか?」

「ヒヘヘヘ、俺に惚れちまったのかぁ?」

「まあ、惚れ惚れするRPなのは間違いありませんが、そうではなく。私もRPを本格的に始めようかと思うのですが、どうしたものかと」


 丁度良いと言えば丁度良いので、モヒカンさんに相談してみましょう。

 誰かと話した方が纏まったりしますからね。


「ヒャハハハ! そりゃ良いぜぇ! だが姫様は既にある程度イメージが付いちまってる。劇的に変えるのはお薦めしねぇなぁ」


 今から方向転換するには、有名になりすぎたのでしょう。

 それに、既に職業まで就いてしまっています。今更その辺りを変えるのは無いでしょう。


「とりあえず今の方向を変えるつもりはありません。せっかく動作アシストなんかもありますからね。ただ、よりRPぽくできないかな……と」

「ヒヒヒ、良いねぇ」

「先程何か使えないかとステータスを見直していたのですよ。それでキーワードですが……姫、聖職者、死霊、触手などで何かありませんかね?」

「……ギャハハハ! 薄い本しか出てこねぇや!」


 おや、PTですか。PTチャットですかね。


「よし、少し真面目に話すとしようか。確か攻略板に纏めてたな」


 モヒカンさんの中の人が出てきましたね。


「んんー……メインをどうするかだ。軸を姫……外なるもの……聖職者……いや、この場合は『最高権力者』とするべきかもしれない」

「そう……ですね。口調や動作を変えるつもりはありませんから、その方が良いでしょう」

「権力者……まあ、イメージは王家として、姫と言っても色んな種類がある。とは言え言動を変えるつもりが無いなら……ふむ」

「せっかく人外種なので、人外ムーブもして行きたいんですよね。使えそうだったのが触手と《死霊秘法》です」

「なるほど。年齢的にもゲーム的にも、18方向は排除するとして……ダークファンタジー系か」


 骨と触手はやっぱダークファンタジー方面になりますよね。


「女の子と骨というのは検索すれば結構でてきたはずだ。女の子と触手は検索難易度が高いな……」


 ……綺麗なモヒカンさんとあれこれ話して纏めます。


「姫やお嬢様として、骨に日傘を持たせる」

「……普通ですね。いまいち惹かれません」


 モヒカンさんもそんなでも無いのか、さっさと次へ。


「骨にお姫様抱っこをしてもらい、自分では歩かない」

「……なるほど、良いですね」


 これは召喚体との相談。少し大きめな素体が良いですね。座り心地も肝心です。収まりが良くないと辛いので、それだと長続きしません。

 要確認。


「玉座的な物に堂々と座り、骨を騎士的に待機させ、触手をうねらせる?」

「ビジュアル的には良さそうですが……邪魔では?」


 中央広場にいる今現在、モヒカンさんは周囲に目を向け頷きます。

 惹かれるのは確かですが、どちらかと言うとSS向きですね。お茶会用ではなく、豪華な椅子も用意しておくべきか?


「触手の操作性と本数は? 自由に形を変えられるならそれに座る」

「スキルレベル依存本数の操作性は良好」

「うねらせつつ数本に座るだけでも良さそうだ」


 ふぅむ……相談したのは正解でしたね。


「移動だ何だを考えると、お姫様抱っこが有力か」

「そうですね。そうなると素体厳選と……AIがどこまで対応してくれるか」

「ダメそうなら触手に切り替え」

「ありがとうございます。その方向で考えてみますね」

「ヒャハハハ! 仲間は歓迎だぁ!」


 あ、戻った。

 狩りに向かったヒャッハー系いい人を見送りまして、私は《死霊秘法》のカスタムを確認します。


 ビジュアル的にもある程度大きい方が良いのですが、サイズって召喚コストに直撃するんですよね。……どうせ戦闘中は切り替えるので構わないのですが。

 RP用なので、全てにおいて見た目優先。トロールよりはオーガですかね。

 持たせるスキルは……《重心制御》系に《足捌き》系。それとパッシブ系を持たせて、残りは防御系で埋めましょうか。

 テンプレート名は『RP移動用』ですね。


 早速召喚して試すとします。

 3メートル手前の骨オーガが這い出てきたので、早速持ってもらいましょう。お姫様抱っこは結構難しいんですよ。とは言え持つのが骨なので、なんとも言えませんが、一号にはマスターして貰います。

 私の重力を弄って軽くしておけば良いですかね。無重力だと逆に持ちづらいでしょうから、0.6倍ぐらいで良いですかね。


 一号、多少の安定性より見栄え重視で。安定も速度も個人飛行に勝るものはないので、気にしたら負けです。疲れて腕がプルプルする事がないのはアンデッドの利点か。

 座り心地などは当然『椅子に座る』を超すことは無いので、気にしたら負けです。落とさず、ストレス溜まる程でもないなら問題無いでしょう。

 ……4本腕にすれば乗り心地は安定しますかね? 頭、背、腰、足を支えて貰えば完璧なのでは?

 色々試すとしましょう。



 一号にいまいち迫力と言うか、怪しさと言うか……こう、それっぽさ? 雰囲気が足りないのが分かりました。ボロボロのローブでも装備させますかね……?

 その場合……ダンテルさんにアバターで作ってもらうべきか。ステータスはいらないので、素材性能はガン無視して見た目を追求。RPにおいて雰囲気は大事。見た目から入るのは基本。私だけでなく、一号にも気を回さないとダメか……。

 ふわふわが命になりそうなので、課金してボーンを増やすのも良いですね。

 とりあえず、ダンテルさんのところですね。一号に運ばれます。


「お? ああ、姫様か」

「ごきげんよう。相談があるのですが」

「なんだ?」

「一号のビジュアルをそれっぽくしたいのです」


 ダンテルさんにRP計画を話して、早速あーでもないこーでもないと設計図を弄り回します。

 騎士っぽい感じも考えましたが、なんかこう……微妙ですね。やっぱり黒のローブ系でしょう。死神とかあんな系のやつ。

 そもそも骨に鎧着せるなら、アーマー系召喚すれば良いでしょう。


「ローブの動きを追求したいなら、やっぱ課金は必要だな」

「アバターなので飽きるまで使えますからね。課金する事も考えています」


 袖を程々にボロボロに。裾の方は結構ボロボロに。フードは少し大きく、余裕を持たせて……色は当然黒ですね。

 靡かせるにはボーンが細かくないと不自然な動きになり得る。


「と言ってもローブだからな……そんな増やしても……?」

「初期でも結構ありますね……」


 ボーンのアイテムを所持してなくてもプレビューをさせてくれるので、見てから必要な物を買えます。

 ボーン数は装備によって違うので、何倍にするかで入手法が変わります。基本となる2倍が課金のみ。1個下がドロップと課金で1.5倍。1番下はドロップのみで1.25倍。上二つはレイドと課金ですね。2.5倍と3倍です。現状レイドが未発見なので、課金一択。


「初期でも問題は無さそうだが……2倍は過剰か?」

「過剰な気もしますが……多少過剰なぐらいで良いでしょう。500円で後悔した挙げ句、また800円出すのもあれですし」

「学生は自由にできる金も少ない。とことん拘って1個で済ますべきか」


 お値段は1.5倍から500、800、1200、1600です。

 鎧とかが初期ボーン数少ないようですね。正直増やしてもしょうがないと思いますけど。

 布製品が多いようで、その中でもローブやマントは多い。ただし多いと言っても、違和感がない程度には簡略化されていて、意識すると多少不自然だったりするぐらいの状態です。


「姫様のその外套、ボーン数いくつなんだろうな……」

「いくつなのでしょうね? この装備はユニークなので、多くなってるでしょうけど……ボーン数までは見れないんですよね」

「運営側が用意したのだと、プレイヤーができないレベルの可能性もあるからな」

「ここの運営なら聞けば教えてくれそうな気もしますね……」

「……ダメ元でメールだけ送っておくか」


 装備を弄り回すことしばらく、運営から返信がありました。

 装備担当者からの返信によると、一般的なマントの3倍より少し多いとのこと。運営側はレア度的な物で容量が決まっており、それを最大限活かし、負荷がかかりすぎないボーン数。

 調子乗って増やしまくったら過剰で動作にほぼ意味がなく、負荷だけ増々のゴミ装備ができたので、結果的に3倍より少し多い程度に落ち着いた。


「姫様の装備は普段遣いが前提なので、ゴッズにしてはかなり大人しい。容量で言えばアサメイと本が防具より多いそうだな。姫様の装備は扱い的には神器だけど、フレーバーテキスト的な意味合いが強い……だと?」

「ステルーラ様から受け取った装備なので、嫌でも扱い的には神器になるのでしょう。と言うと、本来の神器はもっとぶっ飛んでいるわけですね?」

「まあ確かに? MMOと言うのを除いても、ファンタジーで出てくる神器にしてはかなり控えめだな……とは思ってたが」


 まあ今肝心なのはボーン数だ……と言うことで。

 とことん違和感を無くしたいなら3倍。ただ、3倍は趣味に近いレベルになるそうで、普通に使う分には2倍で十分。


「明確にボーン数が出るのは丸めた時……なるほど、確かに。ちょっと待てよ」

「わざわざ丸めませんけどね。だからこそ2倍で良いと言うことですか」


 流石トップ筆頭であるだけあり、既に各種ボーン数のマントサンプルを用意しているみたいですね。

 私の外套とダンテルさんの作った各種マント。これらを丸めてみると、確かに違いが出るようで。

 綺麗に丸められる私の外套と、少々いびつになる一般マント。2倍マントは少し硬い素材を丸めたような感じに。私の外套と3倍マントは何が違うのかよく分からず。1.5倍はともかく、2.5倍は並べると確かに……?なレベルですね。


「肌触りなんかは素材依存ですよね?」

「そうだな。ボーン数が少ないとちょっと引っかかったりする感はあるぐらいか」


 ボーン数が少ないと動かないところが出てくるので、仕方ありませんね。


「おや?」

「どうした?」

「なんか『種族イベントの可能性あり 14時頃』と表示されてますね……」

「ほう、種族イベントか。外なるものか、ネメセイアか。どっちもこの世界ではあれなんだが?」

「今予想できるのはセシルさん関係でネメセイアでしょうか」

「そう言えばクロニクルが云々言ってたな。おし、こんなんでどうだ?」

「良いですね」


 誰が何してるかなど知りようもないので、他は分かりようがないとも言うんですけどね。

 形状が決まったら素材を選びまして、課金して物を購入。あとは生産依頼して待つだけです。


「これならすぐできる」

「ところで、いくらですか?」

「アバター用だからなぁ……5万でいいぞ。ローブだし」


 ダンテルさんが作るために奥の作業部屋へ引っ込むのを見送りまして、私はお店でも物色しましょうか。

 ダンテルさんは《裁縫》関係の生産者です。よって、お店に並ぶのは布や革製品になりますね。つまり対象プレイヤーは魔法系と斥候などの軽装組。

 ただ、実はタンクの人などもお店で見ることがあります。主に外套とかマント、ローブ目当ての人ですね。腰につけるベルト系もダンテルさんです。

 外套やマントは悪天候対策装備で、ベルトはサブ武器の保持数などに影響あるので、地味ですが結構重要部位だったり。レインコートありと無し、どっちが良い? という状態ですね。ベルトは言わずもがな、腰に吊るせる個数などに直結します。


 という事で、ダンテルさんの客層は結構幅が広い。そして商品の幅も色んな意味で広い。

 ファンタジー冒険者のような革装備から、どこかで見たような見た目の装備、更にはきぐるみまで展示されています。ドレスにメイド服は勿論、巫女服やらもありますし、水着なんかも並んでいますね。

 ……赤褌。こんなの好んで装備する人は……いるんだろうなぁ。

 お、ジャージまである。体操服に……これは袴ですか。


 冒険者装備にドレス、メイド服は世界的にも合うのでしょうが、ゲームだけあってやりたい放題ですね。

 うん、実に楽しんでいるのでしょう。


「できたぞー」


 ダンテルさんにお金を払いまして、早速移動用のアバターに設定。そして搭乗……搭乗? まあ、良いか。


「まんま骨……よりは雰囲気出ましたかね」

「んー……骨はこれが限界か?」

「限界ですね。サイズはコストに直結しますし、カスタムもパーツを入れ替えたり増やしたりぐらいなので」

「そうか……スキルレベル上げてワンチャンか」

「もうすぐ60になるので、何かしら覚えるでしょう」


 物足りない感はありますが、弄れないので仕方ありません。


 ダンテルさんのお店を出まして、お昼にしましょうか。14時頃になにかありそうですからね。



 お昼を済まし、少し体を動かしてからログイン。

 14時20分頃ですか。もう少しありますね。狩りをするにはあれですし……生産でもしますかね?

 おや、エルツさんから連絡ですか。


「はい、こちら王家です」

『おう、姫様。少し手伝って欲しい事があるんだが』

「なんでしょう?」

『聖水を用意できないか?』

「聖水ですか。あれならすぐできますね」

『買い取るから今から頼めるか?』

「構いませんよ。ではできたら持っていきますので」

『すまん。頼む』


 では早速作りに帰りますか。

 追憶の水と清浄の土を用意して、土で水を濾過し、お祈りします。これだけで簡易聖水ができるので、とても楽です。

 まあ、スキルを使用していないので、経験値入らないんですけど。ベースの経験値もかなり低いですし、美味しくはありませんね。

 作成条件が聖職者なので、売れると言う意味では美味しいですかね。

 そこそこ作ってからエルツさんのところへ向かいます。



 お店にやってきましたが、エルツさんは……作業場ですかね。雇われた住人の店員さんに奥へ通されました。

 扉を開けるとカンカンと音が聞こえてきたので、絶賛生産中ですか。

 中へ入ると作業中のエルツさんと、知らない男性もいますね。魔法職の……聖職者ですかね?


「お、来たか! 悪いな」

「聖水を作るのは楽なので、構いませんよ」

「じゃあ早速試してみるとするか」

「何をするんです?」

「聖水と聖火を使って剣を打ってみるだけだ」

「なるほど。では聖火要員ですね?」

「私の聖水では少々品質が低くて」


 格好からしてそうだと思いましたが、やはり聖職者でしたか。

 聞いた感じ聖水にも蘇生薬と同じボーナスがありそうですね。職業に祝福系称号、下手したら種族もですか。聖水はS+ができるので、種族も入ってそうな気がするんですよね。


 それはそうと、検証が始まりました。

 漬ける水は聖水、熱するのは聖火を使用して剣を打ちます。


「1番良いのはインゴの加工から聖火を使い、そのまま武器にする事か」

「ベースは銀が良さそうか。武器という事を考えると魔銀一択?」

「そうなりそうだな。効果は予想通りアンデッド特効だな」


 アンデッド特効は種族で、更に属性に対する特効ですか。種族特効は効果が大きいでしょうが、幅が広くなる分属性特効はおまけ程度な気がしますね。


「浄化の銀剣。浄化シリーズねぇ」

「若干光ってる?」

「淡く光ってるようですね。エフェクトありですか」


 ゲームで強化すると光っていくのは定番ですが、浄化シリーズ固有エフェクトですかね。


「浄化と言う名前ですが、浄化効果じゃなくてアンデッド特効。浄化耐性は効果無さそうですね」

「ああ、そんな感じするな。また誰かに渡して検証させっかな」


 さて、そろそろ種族クエストが云々の時間になりそうなのですが……どうでしょうね?


「魔力炉もう1個買って、こっちの聖火はそのままにしておくべきか……?」

「維持費は?」

「そこが問題か。燃料は魔石だが……」


 2人は聖火に関して話していますね。

 炉に入れた聖火を燃料……魔力を切らさずに燃やし続ける事で維持する。そうすれば作るたびに呼ばれる事はないと。

 聖水はアイテムなので私から買えば済む話ですが、聖火は魔法ですからね。

 特にマイナス効果がないなら、炉を増やさずに全部聖火で良い気もします。


「そう言えば、聖火で作った魔銀に光の宝石を混ぜ、聖火と聖水で打つとどうなるんでしょうね」

「む、確かに気になるな」


 聖火で作ったミスリルインゴットが無いとどうしようもないので、試作分を受け取っておきます。

 実際に試すのはもう少し後になるでしょうけど。



〈我が神子よ、外なるものとしての仕事です〉



 お、ステルーラ様のボイス付きだ。



〈3柱の許可が下りました。我々の管轄に幾度も手を出した愚か者に救いなどない。魂滅の執行を〉



 他プレイヤーが関わっているため、受けない場合は他の住人に回されます……ですか。

 他プレイヤーが関わっているから、時間が止まったりとかはしないわけですね。よくあるクエスト受けたままであっちこっち寄り道できないぞと。

 だからこその事前通知でしょうか。


 クロニクルクエストの種族。しかも発生条件がクロニクルギルドクエストからの派生になっていますね。セシルさんのところでしょうか。

 勿論受けますよ。『御心のままに』ですとも。せっかく発生したクロニクルクエストを断るなんてそんなそんな。


『断罪』

 禁忌である魂に幾度となく手を出し、神々より魂滅の許可が下った。

 《消去する灼熱の鎖(アフォーゴモン)》を使用して化身を呼び出し、対象を魂ごと焼き尽くそう。

 依頼者:ステルーラ


「ではクエスト行ってきますね」

「おうよ」


 2人に挨拶して離宮へ戻り、今一度服装チェックをしてから、クエストUIで対象のいる場所へ転移門を開きます。



 転移門を潜るとそこは……裁判所ですかね。いる人を第一印象で分けるとしたら裁判長、貴族、文官、騎士、冒険者、罪人でしょう。

 中央に牢のような柵があり、男性が1人。それを囲うように騎士が並び、更に冒険者が少し離れたところに。

 一番高いところに裁判長がいて、少し下に貴族達、そして文官達と段々に並んで座っています。


 そんな会場ですが、突然私が来たことにざわついていますね。騎士達なんて剣を抜けるよう手を置いてます。騎士としては当然の行動なので、そこには触れません。

 それよりも、冒険者組の中にセシルさんがいるんですよ。


「ああ、やっぱり姫様の転移門か。まだ呼んでないけど、来たんだね」

「ごきげんようセシルさん。少々別口から入ったのですが、やっぱりセシルさんのところと繋がっていましたか。それが罪人ですね。まだ途中ですか?」

「まだ始まって少しってところだね」

「では終わるまで待たせてもらいますね。私もそれに用があるので」


 人の世界のあれこれが終わってからで良いですよね。記録だなんだと残さないといけないでしょうから、それが終わったらさよならしましょ。


「俺に決定権はないけど、まあ良いんじゃない? 帝国側も拒まないでしょ。というか、拒めないでしょ……」

「拒まれてもこちらの用事は済ませますけどね」


 はいそうですか……と、何もせずに出ていくわけがなく。当然神からのクエストが最優先ですよ。

 私というか、このキャラにとっての最上位はステルーラ様。全ての立場で、女神ステルーラが主であり、優先される事ですからね。

 というか今回のは魂滅です。魂滅はステルーラ様だけでなく、4柱で決めるみたいなんですよね。クエストにも神々と書かれていますし。


 それはそうと、私はセシルさんの方へ寄ります。ディナイト帝国側の処理を待ちましょう。

 クロニクルの一覧に載るでしょうから、RP時ですね!


「構わない。続けよう」

「継続する。続きを」


 40後半の貴族……恐らく公爵や侯爵クラスでしょう。しっかりとした低い声が響き、ざわついていたのが静かになりました。

 目配せした裁判長も続いたことで、文官が動き始め、騎士達も柄から手を離して待機モードに。裁判長も同年代っぽいですね。

 あの2人、私が来た時に驚いてはいましたが、すぐに戻りました。私の情報を得ているのでしょう。少なくとも教会ではしっかり情報共有がされていたので、貴族……しかも上の方なら間違いなく知っているはずです。

 あの人も少し気になりますね……話が進む中、少しセシルさんと話しましょうか。


「セシルさん、裁判長とその近くに座っている威厳のある男性知りません?」

「最初に自己紹介されたよ。裁判長がアルトゥール・ログノフ侯爵。貴族代表がベルナルト・グラーニン公爵」

「では、あの仕立ての良いローブで、杖を持った男性は?」

「俺らの依頼主だよ。エミリアーノ・カレスティア魔法伯」


 教えて貰った事で、《識別》の情報に名前が載りましたね。公爵と魔法伯は貴族席の中では他に比べレベルが高い。ここにいる騎士達と同等。しかも上の方と同じなので、気になったんですよ。魔法伯は私が来た時、騎士達の動きに近かった。

 この3人が特に周りと違ったので、気になりました。しかしグラーニン公爵ですか。恐らくラーナの子孫ですね……。名前だけ残して……の場合もありえますが。


「――年前、小さな村の襲撃と生贄を使用した儀式。禁術の【キメラ創造】。孤児や行商人を使用した人体実験。そして先日の保護地域の水晶の森で、生贄を使用した儀式未遂。更に――」


 魂がどす黒いだけはある罪状ですね。

 ……村の襲撃。なるほど、リーザから聞いた特徴に似ていますね。仇の可能性がとても高い。良い報告ができそうですね。


「これら報告書はお手元に」


 セシルさんも関係者なので貰っているようですね。開始時に配られたのでしょう。見せてもらいます。

 村……村……これか。当時の報告書……風のバックボーン解説ですか、良いですね。私にとって重要な部分はっと。


『生贄にされていた少女、リーゼロッテを救出。彼女以外は間に合わず。儀式の影響は現在不明。本人の強くなりたいと言う希望を酌み、基礎訓練をしながら少し様子を見る』


 強くなるお手伝いを騎士がする……のを餌に、儀式の影響を調べたわけですね。リーザは騎士に教えてもらえる。騎士達は自分達が助けた子の様子が分かる。国としては情報が手に入る……と、損する者がいない。


『魂に食い込んでいるため、教会でも解呪できず。居合わせた聖女2位、ミラ・リリエンソール嬢による解呪も失敗。現状打つ手なし』


 聖女2位というと、ハーヴェンシス様の加護持ちですか。ミラ・リリエンソールさんね。覚えておきましょう。

 呪いによる影響なんかも纏めてありますね……。


『リーゼロッテ嬢は冒険者組合で見てもらう事に。どうやら度々、ミラ・リリエンソール嬢が解呪に挑戦している模様。我々騎士の役目はここで終了とする。願わくば、彼女の行く末に幸あらん事を』


 リーザはまあ……冥府軍で元気にしていますよ。そう言えば、村の人達とは会えたのでしょうか。小さな村とは言ってたので、会えてる気がします。1人だけ来ていないリーザの事は気がかりだったはずなので、少なくとも親は残っているはず。

 今回の報告ついでに聞いてみましょうかね? ラーナが何かしらしていると思いますけど。


「この儀式の詳細が不十分だな……。魔法伯、そなたでも?」

「少なくともうちにはありませんな。目処は付いてますが、陛下の許可が必要に」

「城の禁書区画か。そなたでも陛下の許可となると……」

「ええ、区画の奥に」


 儀式の報告書は……ああ、プレイヤーには見えないようですね。


[イベント] 儀式の報告書

 儀式の内容は確かに書かれているが、書いた人の理解度が低いのだろう。

 情報の取捨選択ができない状態なので、とりあえずあったものが全て書き記された報告書。

 とても見づらいが……逆に言えば全て書かれているので、分かる者が見れば分かるだろう。

 そういう意味では、この報告書を書いた者は優秀と言える……が、この内容が分かる者が地上にどれほどいるものか。


 とまあ、イベントアイテム扱いで文章が書いてあるわけではありませんね。

 ……と思いきや、栞が浮いてきて本になりペラペラし始めました。ある程度捲られると止まり、ポップアップで古き鍵の書が情報を出してくれます。


「彼らが身に付けていたマークと同じマークが表紙に書かれた本も、押収してあります。中は見たこと無い文字でしたが……不気味でした」

「文字が分からないのにか?」

「ええ……こう、見てはいけない物を見ているというか、不安になるのです。こちらになりますが……」


 文官の持っている本は黒い表紙で薄く、リーザからも聞いた彼らが身に付けていたマーク……イエローサインが表紙に浮き上がっています。

 古き鍵の書によって、その本にポップアップが表示されました。


黄衣の王

 美しくも恐ろしい言葉で埋め尽くされた、詩劇本。

 読む者も、演ずる者も、聴衆も、少しずつ狂気へと誘う。


黄衣の王

 ハスターの化身。


 ハスターの化身を指す『黄衣の王』と、詩劇本の『黄衣の王』があると。

 内容はそもそも読めないでしょうし……そうなると、《古代神語学》の資料として使用していた可能性が高いですね。明らかなミスチョイスですけど。


イエローサイン

 ハスター関連に記される、狂気と邪悪を意識下に収束させる紋章。

 健康な者が見ても特に影響はなく、不快感を覚えるぐらいだろう。

 精神の不安定な者が見ると、悪夢を見るようになる。


 本の表紙になっているので、調査の人達は全員見てそうですね……。

 精神依存ですか。私は主力ステータスなので高いですが、聖職者以外あまり上げる人いないんですよね……。

 とりあえず、魔法伯が見ようとしているので、見るのはやめさせるべきですね。


「見ない方が良いですよ。禁書区画とやらに封印する事を推奨します」

「……この本が何かご存知で?」

「簡単に言ってしまえば、外なるものに関連する本ですよ」

「これが……」

「私は止めましたよ。私の与り知らぬところで見て、狂おうが知りませんので」


 外なるものに関しては、いまいち設定が分かりませんね。そもそも善や悪など、そんな事に当てはめて考えるだけ無駄でしょうか。

 いや、本人達からしたらただの娯楽本でも、人類からすると悪影響がある可能性もありますね。全員カンストしてるので、基礎ステータスぶっちぎってるでしょう。この場合……それこそ善や悪など関係ありませんね。強いて言うなら管理責任ぐらいですか?

 その場その場で対処するしかありませんかね……。


 裁判長と公爵、そして魔法伯がどうするか話し終えたようですね。


「全く情報が無いというのも、それはそれで困る。何か記録にできる情報を頂けないだろうか?」

「そうですね……。まずその本は『黄衣の王』という名前で、表紙のそのマークはイエローサインと呼ばれる物ですね。黄衣の王とは外なるもの、ハスターの化身」


 古き鍵の書が教えてくれた事を軽く教えておきます。


「それで狂ったか、元々かは知りませんけど」

「……調査員達に影響が出ていないだろうな?」

「悪夢を見ていないか、確認しておきます」

「あまり近くに置いておきたくはないが、どうしたものか……」

「禁書区画の奥に封印してもらうしか無いのでは?」

「こちらで回収しても構いませんよ。本人に返しますので」


 更に相談した結果、私預かりに。後でハスターに返しに行きましょう。


 基本的には裁判長と文官が話を進めていき、公爵が質問。魔法伯は犯人を捕まえた際の責任者なので、その時の報告などの証言。セシルさん達冒険者も捕まえるのに協力したのでここにいるようですね。

 他にも貴族はいますが、基本的には聞いているだけ。特に問題がないので黙っているのでしょう。

 騎士達は常に全体を見て、護衛に専念しています。貴族達の護衛は勿論、犯人の逃亡、冒険者達の暴走、突然来た私などなど、気にするところは色々あります。


「以上です」


 話が進んでいき、色々報告をしていた文官が下がりました。


「何か言い分は?」

「ふんっ。なぜ私が裁かれるのだ。少ない犠牲でその他大勢が助けられるのだぞ? 貴様らとてよくやるではないか」

「我々も国を背負う者だ。綺麗事では回らない事など百も承知。だが……守るべきものを見誤るつもりはない。国とは民だ」

「何が違う! 殺すための、戦うための力だ! 生物を対象としたデータが不可欠なのだ! 騎士も! 冒険者も! 他の生物を殺すだろう! なぜ私を否定する! 力で大きくなったこの国が!」


 問題の対処のため、最小限の犠牲のみで片付ける貴族。

 問題に備え、事前に準備をしておく研究者。


「お前の言い分は分からなくもない。分からなくもないが、それを許すわけにはいかんのだ」

「『国のため、未来のために、尊い犠牲になって貰った』という言い分を通すわけにはいかん」


 大体の言い分に使えてしまうため、許すはずはないですね。

 それを抜きにしても罪状が罪状。死刑一択ですね。


 実際に死刑の判断がされました。


「その愛国心は覚えておこう。だが、許す訳にはいかない」

「私の頭脳が失われたこと、いつか後悔する時が来るぞ……!」

「心配するな。我々がなんとかしてみせるさ」

「連れて行け」


 おっと、連れて行かれては困ります。


「ああ、待ってもらえますか。こちらの用が済んでいません」

「そう言えば何をしにこちらへ……」


 セシルさん達のいる冒険者グループから離れ、犯人の前に移動。

 さて、RP本番です。雰囲気や声色を少し変えましょう。

 犯人へ向かって手を伸ばし、アサメイを呼び光剣を伸ばします。


「我が名はアナスタシア・アトロポス・ネメセイア。外なるものにして、幽世の支配者。これより女神ステルーラの命により、魂滅を執行する」

「こん……めつ……」


 今更顔色を変えたところで、もう遅い。既に審判は下されています。

 セシルさん達プレイヤー以外が息を呑みました。裁判長や公爵、魔法伯までもが。この世界において魂滅というのはそのレベルなのです。


「慈愛の女神にすら見放された哀れな子羊よ。ステルーラ様の管轄である魂に幾度も手を出した代償……死すら生温い業火をその身で受けなさい」

「い、嫌だ! そんなはずは……!」

「神の御業を今ここに……《消去する灼熱の鎖(アフォーゴモン)》」

「待っ……」


 演出どうなるんだろうと思ってましたが、対象が消えました。



〈よくやりました〉



 クエストが完了しましたね。


「彼はどこへ……」


 今頃ドリームランドでしょうか。ドリームランドがあるか知りませんが、異界にいるのは間違いないでしょう。

 巨大な石の椅子に、裸で鎖に囚われる……。

 時間の支配者であるアフォーゴモンが来るのを、永劫の間座って待ち……来たら来たで鎖が白熱し、焼き殺されてなお、魂が囚われ続ける。

 終わりない尋問と苦痛を味わいながら、消滅する事でしょう。


 ふと、彼がいたところに体が返って来ました。

 肉は焼かれていますが、不自然な程に服は着ていたまま。


「では、体の後処理は任せます」

「彼は……時の神に囚われたのか……?」

「ええ」

「愚かな……哀れな者よ……」


 公爵が哀れんでますね。恐らく愛国心は本物だったのでしょう。やり方を間違えまくっただけで。そのやり方が、大問題だったのですけどね。

 TRPGではアフォーゴモンに捕まると、存在そのものが消されます。記憶や記録までもが。つまり、そんな人間は存在しなかった……。

 それに比べれば、まだマシでしょうか? これはこれで、神々の逆鱗に触れた愚か者……と言う記録が残りそうですけど、焼かれてる本人からすれば些細な事か。


「……これにて、閉廷とする。今見たことを心に刻み、忘れぬよう……切に願う」


 裁判長の言葉を最後に、騎士達によって遺体が運ばれて行きました。

 おっと、そうだ。


「裁判長。今回の事とは別件で、ネメセイアとしてお話があります。悪いことではありませんので、そう身構えずに」


 済んだと思ったところで悪いんですけどね、一応まだ用があるんですよ。


「そちらの方も、聞いていかれますか?」

「宜しいのですか?」

「構いませんよ。代表して裁判長に預けるだけで、国に関係もありますからね」


 公爵と魔法伯も巻き込みましょう。


「以前、裁定者の召喚が行われていたはずですが、現状どうなっていますか?」

「ああ、それでしたら。愚……んん。勢力争いの際に紛失してしまいまして」

「……その辺りには触れないでおきましょうか。これを渡しておきます」

「これは……感謝します、ネメセイア陛下」

「ではこれで失礼しますね」


 セシルさんにも挨拶しまして、転移で離宮へ戻ります。


 そして今度は深淵へ。

 さっさと本を返してしまいましょう。


 さて、問題は……ハスターどこでしょう。確かアルデバランが云々だったはずですが……個別エリアとしてあるんですかね?

 あ、ワンワン王! いつも良いところに!


「どうした」

「良いところへ。これを返したいのですが、ハスターはどこに?」

「それは……奴が探していたが、やはり現世に落ちていたか。呼んでこよう」


 ワンワン王が消えたので、呼んできてくれるのでしょう。

 それより、現世に落ちていた……ですか。異界から異界に落ちる事があるんですかね。他のクトゥルフ関連アイテムもありそうですね……。


 ティンダロスの王と一緒にやってきたのは、黄色い布で全身を覆い、蒼白の仮面を付けたハスターの化身……本と同じタイトルの黄衣の王でした。

 ハスターの化身として有名な姿ですね。


「ごきげんよう、ハスター。これお返ししますよ」

「おー、確かに」


 地面にまで届く長いローブ状の黄色い布。そこから無数の触手が出ており、その1本で本を受け取りました。

 ハスター、もしかして若い感じですか? まさかの少年……いや、青年ですかね。


「現世に落ちてたか。探しても見つからないわけだ」

「その本、確か人類には害あるだろ。気をつけろよ」

「勝手に無くなるんだからどうしようもないね」

「まあそうなんだが、なるべく安定してるところに置けよ」

「善処するよ」


 その返しはダメなやつですね。考えとくよってレベルですよ。


「まあ、以後よろしく」

「よろしくお願いしますね」


 ハスターへの返却も終わりましたし、帰りましょうか。

 さて……狩りか。いや、先にエルツさん用の生産を済ませますかね。それから狩りをしましょう。

 ではミゼーアとハスター、また後ほど。


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― 新着の感想 ―
綺麗なモヒカンさん > そんなモンは存在しねぇ!! というツッコみ待ちだろうか?
[良い点] モヒカンの中の人
[一言] > 人外ムーブ 王道として巨人の肩に座る少女じゃないかなぁ 巨人の外見が幽鬼のようであれば尚良し
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