90 ○○○○図書館
「お姉ちゃんなんか出たー?」
「ゴミが沢山」
「はい」
「はいじゃないが」
「次に来た頃には微妙そうだね」
「そうだねぇ……別の所で発生すると良いけれど」
「まだ未実装だったりして」
「流石に1個だけじゃないとは思うけど……どうだろうね」
話しながら町へ戻りまして、集団でエルツさんのところへ突撃。
「鉄武器だろ?」
「『いえす!』」
「へいへい」
リスト機能を使いさっさと済ませていきます。私も売り払いまして、今度は冒険者組合でゴブリン素材を買い叩かれます。いやまあ、元々安い挙げ句にみんな売りに来ますからね。普段より安かろうがインベ占領される方が邪魔なので処分します。
最後に商業組合。委託やらを確認して、お金を預けます。大体のプレイヤーがこの行動をするので、人口密度がですね……。
隣にいる妹と避難します。
「ふいー。ほんと増えたねー」
「増えたね。良いことだ。さて、マイハウスでスキル確認しようかな」
「私も行くー」
2人で私の離宮へ行きます。
庭にある椅子を陣取りまして、2人して花をガン無視してUIと睨めっこ。花よりデータ。まさにゲーム好き。
《聖魔法》
【リラクゼーション】
対象のスタミナを急速回復させる。
《影魔法》
【シャドウフェイク】
直前の状態を再現する実体なしの影分身。攻撃は不可。攻撃されると消える。
【シャドウポケット】
影をインベントリショートカットにできる。
《死霊秘法》
【夜天光陣】
陣を置くことで召喚体を強化する。
《偉大なる術》
下僕に与えられるスキル数:3個。
召喚時使用キャパシティ:進化するレベル×9。
下僕死亡時のキャパシティ消失:3割。
下僕浄化時のキャパシティ消失:6割。
《揺蕩う肉塊の球体》
球体が5個に。
《狂える無慈悲なもの》
触手が3本に。
【リラクゼーション】は他の人用ですね。我々にスタミナという概念自体がありませんからね。
【シャドウポケット】は……うん。そのままなので特に言うことはありません。強いて言うなら、ベルトポーチあるので不要。
《偉大なる術》君はレベルが上がって来ていい感じになり始めましたね。まだ死亡時は《死霊秘法》単品より悪化してますが、使用キャパシティも減りだしたのは良いこと。
球体と触手もそのまま。触手が1本増えたので、マクロを弄るぐらいですかね。
そして検証が必要なのは【シャドウフェイク】と【夜天光陣】です。
早速試しましょう。【シャドウフェイク】からですね。
「なるほど? 確かに説明通りではありますか」
「使い道がいまいち分からん魔法だね?」
直前の状態。言い換えれば、魔法使用時の体勢そのままの影分身をその場に生成する魔法ですね。
フェイントなどには使えそうにない……と。
「敵をおびき出すのに使えなくもない……かな?」
「わざと見つかってから入れ替わる? ダンジョンの角とかでは使えるかな……」
では次、【夜天光陣】ですね。夜天光……月などの天体が無くても見える淡い光でしたっけ? まあ、なんでも良いか。大事なのはゲーム内の仕様。
早速使用。おや、座標指定型ですか。しかも……なんですかねこれ。指定座標を中心に球状で範囲指定。それとは別に指定座標からラインが4本。
「んんー……? んー……」
「謎なもの覚えた?」
「ああ、そういう……?」
とりあえず1個設置してみると、魔法陣的なエフェクトが表示されて消えます。……消えましたね?
「消えたよ?」
「んー……魔力視で見えるね」
【夜天光陣】の魔法陣と【夜天光陣】の効果範囲が薄らと見えるように。効果範囲は魔法陣を中心に球状ですね。これが設置時に見えていた1つでしょう。
では伸びているラインに従い、更に【夜天光陣】を離れたところに設置。同じように魔法陣的なエフェクトが表示されて消えました。ただし、魔力視を有効にすると最初に置いた陣とラインで繋がっていますね。2個置いたので球状の効果範囲が2つ表示されています。
もう1個離れたところに設置すると、3個がラインで繋がり三角形に。それによって球状に表示されていた範囲が三角形の内側のみになりました。
ラインに従い陣を設置していきましょう。
「なるほど、最大は7個ですかね」
「置いていくと効果上がっていくタイプかな?」
「範囲が変動して数値も上がっていくはず。範囲だけで見れば1個が広いけど、置く手間があるのに数値まで同じなら1個だけでいいし」
検証した感じ、1~2個だと球状。3個だと三角。4個で四角。6個で六芒星。7個でクロウリーの六芒星ですね。六芒星の中心に設置するとなります。
強化具合は後でラーナの方へ行って確認すればいいでしょう。
スキルの確認はこのぐらいですね。
「3次スキル入った!」
「お、60だっけ?」
「うん。SPは10。どれを3次にするかちゃんと考えないと……」
「《高等魔法技能》がもう少しかなー……」
「こっからが本番らしいけどね!」
「私はメインの大半が種族スキルだから多少は楽かな?」
「うらやま」
まあ、そもそも100レベまで上がるようなスキルも多いんですけど。
「そう言えばお姉ちゃん、《超高等魔法技能》見た?」
「特に見てないけど?」
「《超高等魔法技能》も結構トリガーになってるらしいよ。持ってる魔法によって便利系の魔法が一気に使えるようになるとか」
気になりますね? どれどれ……。
【落下制御】
落下速度を下げ、落下ダメージを軽減させる。
これ、ソフィーさんが言っていたやつですね。《風魔法》30と《超高等魔法技能》で解放……? 私覚えられないじゃないですか。まあ……私の場合不要か。
【氷上歩行】
氷の上を普通に歩けるようになる。
《氷魔法》と《超高等魔法技能》ですか。スパイクでも付ければ不要そうですが、魔法使うだけで良いと言うのは利点でしょうか。まあ、選択肢が多いのは良いことですね。
アイスニーク……スニーク? スニーキングでしょうか。
それはそうとこれ……。
「これ、4属性が取れない私は大半が覚えられないのでは?」
「お姉ちゃんそもそも種族的にいる?」
「んー……いらないかな……」
「ですよね」
「いやでも、【消音魔法】や【消臭魔法】辺りは欲しいね。【防汚魔法】も良いし」
「うちはPTで使えるようになるし良いかなー?」
「アルフさん持ってないし、スケさんも闇! 双子は闇以外あるんだろうか?」
「種族がねー……」
人外系のデメリットか……。とても地味なデメリットですね。系統を合わせると魔法が偏る。まあ詰むときは詰むのが人外系なので、そんなものでしょう。
空間系の解放情報がまだ出ていませんね……結界に期待しましょう。
「そう言えばお姉ちゃんぽーよん作れるよね?」
「うん? まあ、錬金で作れるものならね」
「お姉ちゃんからも買えるー?」
「んー……基本的には自分用しか作ってないからなぁ」
「品質さえ高ければ多少高くても良いよ! サルーテさん人気だからさー。売り切れもあるんだよー。お姉ちゃんから買えるなら探し回る手間が省けるわけよ!」
「なるほどね。魔法職だからMP回復系は畑に用意してるけど、HPはほぼ無いよ? 自動回復あるし、魔法もあるし、そもそもあんま被弾しない」
「こっちもHPはあんま使わないから良いかな。やっぱダメージソースのMPぽーよん沢山使う」
「まあそうよね」
基本的にポーションの値段はHPよりMPが高い。魔法で回復してMPポーション飲むなら、HPポーション飲んだ方が安上がりの可能性もあります。
当然1番良いのは余計なダメージを受けない事。HPポーションの方が安いとは言え、お金はかかっていますからね。
上手いPTほど被弾が減るので、HPポーションの使用量は少なくなります。ポーションの使用時間も減るので、その分経験値稼げますし。
ガッツリ持っていかれる狩場でもない限り、そろそろ使っておこうか……ぐらいの使用量でしょう。私の場合は、数発程度なら自動回復で良いか……になるので。種族的にHPに防御力、回復力がありますからね。
「MPポーション系なら畑に素材があるから、そこそこ在庫はあるかな」
「エクス? メガ?」
「メガポだね」
[回復] メガMPポーション レア:No 品質:B+
主に40レベル帯で使用される、MPを回復させる魔法薬。
丁寧に作られたため、一般的な物より多少回復量が多い。
不死者使用不可。
「お姉ちゃんから買えるな!」
「そう言えばMPならレモネードもあるね」
「レモネード?」
「MPリジェネ状態になるジュース。濃縮系よりもじんわりだけど、回復量は悪くないよ。脱水状態にも効くね」
「へー! 狩りする前にとりあえず飲んどけば良さそう。ポーション中毒を考えると貴重だ!」
レモネードは【瞑想】に近い状態になりますね。
今はポーションもあるようなので、レモネードを売ります。
ちなみにポーション中毒は、ポーションを飲みすぎるとステータスが下がるらしいですよ。低レベルのうちは薬効も強くないのでなりづらいようですが、レベルが上がるとポーションの薬効も上がるため、なりやすいようですね。
「そう言えば、濃縮以外にもリキュール系があるみたいだよ」
「お酒?」
「うん。リキュールポーション。普通のより回復量多いけど、飲みすぎると酩酊するって」
「デメリットある分回復量は多いか。ポーション中毒考えると、リキュールはありかな?」
「レアスキルに《酔拳》が確認されてるから、持ってる人はリキュールだね」
《酔拳》は酩酊状態の時に威力を上げ、酩酊状態も和らげるらしいです。フラフラだけど、戦える程度にはなるようですね。
レアスキルなので条件は見れませんが、お酒飲みながら戦ってれば解放されるとかなんとか。
妹と話しながらのんびり。
「今月のイベントは何かなー」
「10月はハロウィンでしょ」
「何やるんだろうね? 冥府来れたりしないかな」
「来ても何もないけどね。お店とか無いし……」
「悲しい」
冥府、正直1回散歩すれば飽きるんじゃないですかね。
「と言うか、この世界だと冥府より妖精の国じゃない?」
「あー……お菓子かいたずらだもんねー」
「この世界、普通に薬師として魔女いるし? 元々は収穫祭だったらしいけどね」
「でも公式イベントだと世界観ガン無視してこない?」
「まあ……まあ、うん」
ここの運営油断なりませんからね。10月には入ったので、もう少しで発表されるでしょうか。
おや、ラーナとリーゼロッテが来ましたね。確認が終わったのでしょうか。
「確認は終わりましたか?」
「はい。どうやら1人いないようです」
「既に清算が終わっている可能性は?」
「年代から考えて、魂に手を出した以上ありえません」
「騎士団から逃れているわけですか」
寿命だ何だで勝手に奈落に行くとは思いますが、気にはしておきますか。
「宰相には?」
「伝えてあります」
「ん、分かりました。地上に行った時は気にしておきます。普段から魂はチェックしていますので」
「もし見つけて手に負えないようでしたら、鍵で我々をお呼び下さい」
「分かりました」
「ではこれで」
リーゼロッテを連れて訓練場へ向かいました。これからどんなものかチェックするようですよ。頑張って下さい。
勿論犯人の特徴は聞いてメモしておきました。
「何の話ー?」
「リジィ……魂の方はリーザにしましょうか。リーザに呪いをかけた者達が全員奈落にいるか、確認させてたの」
「で、1人いないと」
「みたいね。探せってクエストが発生してない。またなにかやらかすとして、何らかのクエストのバックボーン……というか、前科になるのかな?」
リーザに呪いをかけたのは私達プレイヤーが来る前でしょう。でなければ確実にワールドクエストが発生している内容ですからね。村1つ潰れている設定らしいので、ワールドクエスト規模になる。
探せというクエストに派生しない以上、キャラ設定ですかね? もしくは姿を見た瞬間捕らえろが発生するかもしれませんが。帝国側のワールドクエストの1つに関わりあるとか。
「あ、しくじりましたね。何の儀式をしようとしていたのか聞いてない」
「それ最重要じゃない?」
「いやほんとに。スキルの確認もしたいし……こっちから聞きに行きますかね」
魂を生贄にするほどの儀式。まあ、ろくな事じゃないでしょうね。……贄が必要な時点でろくでもないか。
「む、狩り!」
「行ってらっしゃい」
リーナがミニポータルで転移するのを見送り、端の方にある訓練場へ向かいます。
ラーナとリーザが派手にやってますね……。
まあ、当然のようにラーナが楽々相手していますね。それこそ過ごしてきた時間が違いますし、レベル的にも格上ですから。
地上ではリーザも英雄手前の大ベテランと言えるレベルですが、冥府はカンストしかいませんからね……。
先に検証しましょう。
一号を40レベのスケルトン素体……フルアーマースケルトンで召喚。スケ、赤スケ、メタスケと来まして、アーマースケルトンのフルアーマースケルトンですね。スケルトン達自前で鎧着だすんですよ。まあボロいんですが、ちょっと強そうに見えます。スケさんが言うには防御力が多少高いらしいですよ。
さて、HPゲージのメモリが細かい訓練用の的を攻撃させます。プリムラさんの射撃場のような物ですね。通常時と陣設置時を比べていきましょう。
やはり置いていくと強化されていく方向で間違いは無さそうですね。1個は範囲が広い分誤差に近いですが、強化はされているのでとりあえず置いとく……ぐらいで良いかもしれません。7個置くと結構な効果具合で、1.5倍ぐらいでしょうか。
さて……。
「ラーナ。儀式の内容は聞いていますか?」
「召喚の儀式だか言ってましたわね」
「……邪教徒か何かですかね。そんな物があるのですか?」
「異界の召喚儀式ではないでしょうか。我々のいる冥府も異界ですし、外なるものも異界の住人です」
「……召喚できるんですか?」
「可能ですわ」
「てっきり召喚は無いのかと。違反したら転移して来ますから……。地上では召喚云々を聞いたことがありませんでしたし……」
「大体召喚するのは宮廷の魔法使いのはずですわ。私は剣士なので、細かい事は存じ上げませんが……主に王家や貴族のはずです」
ふぅむ。しかし彼ら……と言うか、我々を召喚したところで特に意味はない気がしますけどね? 原作とは違い、召喚されても暴れたりするような者達ではありませんし。
「召喚内容によっては暴れますわよ?」
「えっ」
「正確には召喚された対象にもよりますが……。召喚し用件を伝え、見合った報酬や代償を差し出せるなら、それは契約です」
ああ、リアル側で言う悪魔を召喚して契約するみたいなものですか。このゲームでは悪魔は天使の対となる存在なので、悪魔召喚とは言わないみたいですね。
つまり、召喚された異界のもの……召喚体の性格と相手の要求が一致すれば、報酬自体は大したこと無くても了承する場合があると。
おや? それはとてもマズイのでは?
「外なるものクラスになると、召喚自体生半可な事では不可能なはずですわ。女神ステルーラに隔離されてますから」
「何を召喚しようとしたんですかね……」
「外なるものや我々以外となると……あ、まさか魔族……?」
「魔族? どんな存在ですか?」
「物凄く性格の悪い邪悪な存在らしいですわ。確か宰相ぐらいの時代の話だったような……。知っているのは私の時代よりも昔に大規模な侵略があり、神々が動いたとか。その時に地上に降りた魔族達と大規模な戦争をしていたはず……」
歴史系の本を漁れば出てきそうですね?
とりあえずメインストーリーになりそうな存在が魔族とメモしておきましょう。リアルで言う悪魔=こちらの魔族……と。神々が出張っている以上、トップは魔王如きではなく魔神でしょうね。
「サイアー」
「なんでしょう」
「あいつらはこんな感じのお揃いのマークを身に着けてた」
リーザが教えてくれたのは、点を中心に手裏剣のように3本のくねった棒が……ん? 見覚えがありますね。えー……イエローサイン? ハスターだこれーっ!
ハスターにはまだ会ったことありませんね。さて、どんなキャラをしているのか……それが問題です。場合によってはこの教団……か知りませんが、潰した方が良いのでは? 深淵……行きますか?
とりあえず魔族は関係無さそうですね。
それにしても……ハスターもクトゥルフ神話のグレートオールドワン。つまりステルーラ様信仰なはずなので、魂の要求はありえないと思うんですが? 魂は女神ステルーラの管轄。それを要求するなどありえないはず。
ふぅむ……?
「基本的に有名にならないと召喚などされませんが、ネメセイアは有名ですからね。それとは別に裁定者も呼ばれる可能性があります。外なるものは変なのに好かれますね。最近召喚を聞きませんね? 平和なのか忘れているのか判断できませんが」
「前は結構あったのですか?」
「割とありましたよ? 国によっては大事な裁判などに裁定者を召喚するのですが……宰相には話が行っているでしょう。報告するはずですもの」
「宰相のところへ行ってから、深淵でハスターを確認してみましょうかね……」
では訓練場を後にしまして、お城の宰相の元へ向かいます。
「さいしょー」
「なんですかな?」
「最近裁定者召喚されてます?」
「む? されていたはずですな。えー……クリクストンで47年前ですなぁ」
「召喚頻度に変化はありませんか?」
「気になると言えば、ディナイトはまだありますかな?」
「ありますよ」
「1番召喚頻度の高い帝国からの召喚がないのが気がかりですな」
クリクストンは……北の大陸西の王国ですね。
そして宰相はディナイト帝国から召喚がないのが気になっていると。
「どのぐらいの頻度だったんです?」
「数年に1回ですな。領土が大きい分馬鹿も増える。馬鹿を黙らせスムーズに、そして確実に処罰するため、裁定者を召喚し同席してもらうわけですな」
「どちらも下手な事はさせずに、粛々と法に則り進めるわけですね?」
「ですな。無駄に喚いて進行のジャマをすると裁定者が《裁定の剣》を振るうでしょう。裁定者の前で嘘を重ねれば、そのまま罪が重くなる」
裁定者はどちらの味方ではなく、その国の法が正常に機能しているかを見届ける役。善人というだけではダメなので、不死者の役割の中でも裁定者は数が多くないようですね。レア職業!
まあそんな事より……召喚方法を教えてもらい、メモしておきます。住人に伝えられるでしょう。
「宰相、外なるものの召喚方法は知っていますか?」
「ハッハ、それは本人達に聞いてくだされ」
「はい。では深淵へ行ってきます」
ということで、今度は深淵のパブリックエリアへ。
相も変わらず綺麗なマップですよ。マップだけは。そこにいる者達の見た目があれなだけで。
さて、来たは良いですが……どうしたものか? 目的はハスターの性格確認。それ以外にも、外なるもの達の召喚方法。
最悪召喚されても、私のエイボンの書とスケさんのネクロノミコンで、退散できる気がするんですけど……。
「なにそんなところで突っ立っているんだ?」
あ、ワンワン王だ。
丁度良いので聞いてみましょう。
「外なるものが召喚できると聞いたのですが、方法は知ってますか?」
「む? まあ知っているが、お前にはその鍵があるだろ」
ああ、この鍵で外なるものも呼べちゃうんですね。未来や過去には行けませんが、門は開けるので呼べるし帰れるか。ですが私は別に呼びたいわけでは無いんです。
「鍵で呼べるのは良い情報ですがそうではなく、外なるものを呼ぶのに魂の生贄は必要ですか?」
「魂の生贄? そんな物はいらん。というかそんな物要求したら我々が怒られる」
「やはりそうですよね……となると、間違った方法が伝わっているんでしょうか」
「とりあえず詳しく説明してみろ」
リーザ関連の情報を話しておきます。
「……なるほどな。そう……だな。可能性としては、魂を使用する事で魂の持つ膨大なエネルギーを利用し、召喚しようと考えたのだろう。ハスターへの贄ではなく、儀式のエネルギーとするのが目的だろうな」
「ああ、なるほど。そっちでしたか」
「我々を召喚するには人間だと数百人規模必要だからな。しかし、魂まで使用すると言うなら格段に減る。禁忌も良いところだがな」
「ステルーラ様が許さないですよね?」
「確実にな。まだ何かしているようなら《消去する灼熱の鎖》がありえるかもしれん。自業自得だし同情などせんが」
とりあえず魂はハスターが要求した訳ではないと。しかし教団的な物がある事は分かっているので、ハスターの事はある程度知っておきたいところですね……。
「ところで、召喚されて地上がヤバそうなのはどれぐらいいますか?」
「安心しろ。精々国1つ持ってくぐらいでやめるだろうよ。神々に怒られる」
「人類からすると国1個でも被害甚大なんですけどねぇ……」
「ふむ? まあ些細な事だ。止めたければ強くなって抑えられるようになるんだな。そうすればそういう役職が与えられるかもしれんぞ? 役職さえ持てば基本的には従うだろうよ。そういうルールだからな」
それカンストしろ言ってますよね? 何年後の話か。……外なるものの時間感覚からすれば一瞬なんですかね?
自分達の国が大事なら、召喚する前にしっかり対処しろ……とも取れますか。
外なるものからすれば住んでるのは深淵で、地上で国1つ消えようが影響ありませんからね。私の管理する冥府はえらいことになりそうですが!
「と言うか、物凄く損な立ち位置では?」
「自由に地上へ行けるんだ、役割的には適切だろう? それに有無を言わせない程強くなれば楽な立場だろ。頑張って支配種族になるんだな」
まあ、言われなくてもレベル上げはしますけど……。どのような役職が貰えるか、楽しみではありますね。
なんかもう、わざわざハスターに会う必要も無さそうですね。外なるものが召喚されたら、国1つ持っていかれるつもりでいた方が良さそうです。
「ところでお前、知識欲はそれなりにあったな?」
「ん? 人並みにはあると思いますけど」
「図書館には行ったか?」
「深淵にもあるんですか? 気になりますね」
「城から行けるぞ。行ってみると良い」
「夕食にはまだ微妙に時間ありますし……早速行ってみましょうか」
道を教えて貰ったらミニマップにマークが付いたので、行ってみましょう。
という事で、まずはお城へ。
ここを曲がって……ここは真っ直ぐ。ここを曲がって……と。
むむむ、綺麗な庭がありますね。深淵にも庭師がいるんでしょうか? 見た目とのギャップが凄まじい事になりそうですが……今更か?
おや、あれは?
「……にゃんこ?」
お、にゃんこが振り向……目が3つありますね。ただの猫がこんなところにいるわけないか。
特徴的な燃えるように赤い三つ目に黒い毛並み。ん……? 燃える三眼?
「ニャル……」
「ッチ……」
遊んでやがりますね。危うく騙されるところでした。図書館行こ。
特に引き止められもしないので、ガチの遊びですよあれ。
あった。あの扉ですね。早速中へ……ん? 転移した!
おお……本棚が視界に入っている以上、ちゃんと図書館なのでしょう。マップ見る限り図書館と思えない広さですが……ん? ミニマップの下にエリア名が出るのですが、ケラエノ図書館って書いてありますね。クトゥルフ系の図書館と言えばケラエノ図書館か。もしくはミスカトニック大学図書館?
それはそうと、扉に触れた瞬間にケラエノまで転移したわけですね。 恐らく図書館最大級の広さなので、《直感》に期待するしかありませんか……。今までの図書館もそうしていましたけど。流石に目的の本を探すのも大変ですからね。
受付に円錐状の何かがいますね。ケラエノ図書館管理生物。何という名前でしょう……NPC感が増々ですね!
「ようこそケラエノ図書館へ。書物の持ち出しは禁止。メモは許可。綺麗に使う」
「分かりました」
利用許可は得ましたので、探索しましょう。
いや、既に《直感》が反応している? ……していますね。試しに近くの本を手に取り開いてみますが、何も書いていません。必要としていないのは見えないタイプですね! 楽でいい。
《直感》が反応しているのはこの棚ですね。光ってるのはどんな本でしょう。
えー……この2冊は後回しにしまして、これからいきましょう。
〈ケラエノ断章を、所持している言語スキル《古代神語学》で解読を開始します〉
〈特殊レシピ『旧き印』を覚えました〉
〈特殊レシピ『星間の呼び笛』を覚えました〉
〈特殊レシピ『黄金の蜂蜜酒』を覚えました〉
〈特殊呪文【ビヤーキーの召喚】を覚えました〉
んんー……断章でこれとか、他の2冊がどうなることやら。
ねえ? ハイパーボリア版『エイボンの書』。アブド・アル=アズラッド作『キタブ・アル=アジフ』。魔導書のやべーやつら。TRPGだとシナリオブレイク&キャラクターブレイクするので、まず出ることはない代物。
そもそもTRPGの方では存在しないと言われるハイパーボリア版。本の形にされる前の完全なエイボンの書。ネクロノミコンのオリジナルであるキタブ・アル=アジフも既に無くなっているはずですね。
まあそれはTRPGの話なので、このゲームだと普通に目の前にありますね。このゲームにSAN値はない。つまり、喜んで読みますとも!
まずエイボンの書を棚から取り出し……あれ? 体の制御が奪われた……ここでイベント?
腰に吊ってあったエイボンの書と、ハイパーボリア版のエイボンの書が空中で向き合います。
そして、魔力を派手に撒き散らしながらお互いにペラペラとページが捲れ、ハイパーボリア版から私の持っていたエイボンの書に、文字のようなエフェクトが流れ込んでいます。
コピーしているんでしょうか。ハイパーボリア版が白紙になったりしませんよね? その場合確実に怒られるのですが……。
魔力を派手に撒き散らしているので、ケラエノ図書館管理生物が確認しに来ましたね……私まだ動けませんけど。
「ふむ……女神のお心のままに……」
あ、戻っていきましたね。
そう言えば、私の持っているエイボンの書はGoで、ハイパーボリア版はExですね。神器が起こしている現象なので、ケラエノ図書館管理生物もスルーですか。
終わったと同時に操作が返って来ましたが、太りましたね……ページ数増えたんですか。
[装備・武器] エイボンの書 レア:Go 品質:S+ 耐久:─
禁断の知識が込められた超古代の魔導書。
ハイパーボリア版の完全写本品。
所有者に深淵の知識を与える。
【共鳴行動】:魔法使用を意識すると持ち主の周りを浮遊しながら付いてくる。
【オートスペル】:手に持つ必要がない。
【アンチスペルⅡ】:所有者に向けられた敵性魔法に自動抵抗する。
適用スキル:《本》《高等魔法技能》
名前が英語表記から変わり、説明も少し変わり、【アンチスペル】が強化されてますね。他は変化なし。
ハイパーボリア版を確認しますが、コピーだったようで一安心です。特に覚える物はなし。装備強化でしょうか。
では次、キタブ・アル=アジフ。
本に触れると再び制御を奪われ、私のエイボンの書とキタブ・アル=アジフが浮かび上がります。それも吸うんですか? もはやエイボンの書ではなくなりますよね?
あー……どんどん本が丸々としていきますね……。
ちなみにこの2冊だけで1300ページ超え。エイボンで500、ネクロで800以上になります。よって、かなり分厚い。正直読むのに不便なレベル。幸いなのはゲームなので、本を持っている腕がプルプルしない事でしょうか。それ以前に、書物ではなく装備扱いなので読めませんが。
と言うか、その分厚さ腰に吊るすの嫌なんですけど?
コピーが終わったようですが、フワフワと本が移動していきます。私もそれを追って自動で歩いていきます。まだ操作が返ってきませんね。地味に長いイベントなのでしょうか。
と言うか、どこへ行くつもりでしょうか。
もはや本に触れずとも、勝手に別の本から吸い取りながら移動しています。
地下へ行くだろう階段を降り、本棚を抜けてどんどん奥へ。
何やら厳重な扉の前で、くるくると本が回ると扉が開いていきます。扉をくぐると環境が変わり、どこかの洞窟のような場所へ。更に進んで行くと大量の触手をウネウネさせた無形の何かが視界に入ります。
その何かからアメーバ状の何かが分離して動いていますが、無形の何かの触手に捕まり取り込まれ、分離しては捕まって取り込まれを繰り返しています。
こちらも捕まえに触手が伸びてきますが、避けています。制御は未だにシステムが持っているので、演出ですね。
見た目としては……ショゴスが近いでしょうか?
私の装備はそのまま頭上……と言っていいのか分かりませんが、上を通って奥へ向かいます。
私も装備を追いますが、触手の抵抗が激しくなり近づくのは不可能ですね。下がって装備を待つようです。
んー……? ジメジメした洞窟にいる、触手が沢山の無定形。そして自分の体から分離した何かを取り込むを繰り返す……。
あー……まさか、ウボ=サスラとウボ=サスラの雛ですか。あれ、ウボ=サスラのところにもヤバい石版か何かがあったような? 名前忘れましたけど。
把握できない距離なので、何してるか分からないんですよね……。
お、返って来ましたが…………栞? いかにも魔導書的な本の見た目、結構好きだったのですが。
私をスルーして戻っていく栞を追って、再び図書館へ戻ってきます。私が扉から出ると栞が輝き、とても太ましくなった本が出てきます。本がくるくる回り扉が閉まると、栞に戻って私の腰に戻りました。
〈『称号:Book of Eibonの完全解読者』が『称号:知識の海に漂いし者』へ強化されました〉
おやおや?
漸く体の制御が返ってきましたね。分厚い本を吊るすのは避けたかったですし、栞が収納状態だと分かったので良しとしましょう。
戻りつつ確認をします。
[装備・武器] 旧き鍵の書 レア:ExGo 品質:S+ 耐久:─
世界の叡智が記された魔導書。所有者の求めた知識を与える。
【共鳴行動】:魔法使用を意識すると持ち主の周りを浮遊しながら付いてくる。
【オートスペル】:手に持つ必要がない。
【アンチスペルⅢ】:所有者に向けられた敵性魔法に自動抵抗する。
【ミラースペル】:使用した魔法が2連射される。
適用スキル:《本》《高等魔法技能》
ああ、そうか。ウボ=サスラのところにある石版は旧き鍵でしたね。
使われる事無く【アンチスペル】がⅡからⅢに。
そして新規の【ミラースペル】。言うまでもなく強い。とても強いですが、まだ使用条件をクリアしていないため能力がロックされています。悲しい。
条件はベースレベル50以上かつ、《超高等魔法技能》所持。
どっちもクリアしていませんね。
そして称号。
知識の海に漂いし者
その知識量は余りにも茫漠であった。
旧き鍵ですから、そうでしょうね……。
後はケラエノ断章で覚えたやつですね。
…………どこだ? えー……《古代神語学》か!
【ビヤーキーの召喚】
ビヤーキーを呼んで運んでもらう。
魔力を込め、ハスターを崇めよう。間違えたら、最初から!
いあ! いあ! はすたあ!
はすたあ くふあやく ぶるぐとむ
ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ
あい! あい! はすたあ!
わぁ……呪文唱えるんですね。1回やってみたさはある。
そして他のレシピが……ふぅむ。
[道具] 旧き印
魔族から逃れるための印。
扉や通路に記すと魔族が通れなくなる。
鎧に記しても一応効果はなくもないが、鎧以外は普通にダメージを受ける。
つまり旧き印のペンダントなどを作ってもほぼ効果がない。
身につけないと不安なあなたは、盾にするのがベストだろう。
[道具] 星間の呼び笛
ビヤーキーを召喚するのに必要な笛。
《細工》系で石を削る。耐久が低め。修理不可。
《鍛冶》系で合金を作り笛にする。耐久がとても高いが素材が大変。
召喚手順
石笛を作り、石笛に魔力を込め、笛を吹き、呪文を唱える。
込める魔力はそれなりに多いが、1回で込める必要もないので、回復を待って込めればよい。
呪文が必須なのは初回の1回だけ。ただし、毎回詠唱した方が多少丁寧に運んでもらえるだろう。
[飲料] 黄金の蜂蜜酒
一時的に真空と環境の変化の中を通り抜けるための耐性を得る。
とても優れるが、作るのがかなり大変。
呼び笛にも呪文が書いてあるので、魔法扱いの【ビヤーキーの召喚】を覚えるか、笛を手に入れれば召喚できるようですね?
そして旧き印。神話生物対策が魔族対策に変わっています。やはりこのゲームの悪役は魔族のようですね。
さて、ケラエノ図書館管理生物さんに挨拶して帰りましょう。
出入り口の扉に触れると無事に深淵のお城へ帰って来ました。
早速作ろうにも素材がありませんね。
呼び笛はそもそも《細工》か《鍛冶》系で私は持っていません。《鍛冶》は銀とメテオライトで合金を作り、その合金で作るようですね。メテオライトが未発見。
旧き印は形を作れば良いので割と幅は広いですが、作ったところで出番がありません。今のところ魔族云々聞きませんね。
黄金の蜂蜜酒は……自分の種族的に作る意味がないというか……。ゾンビと同じく呼吸の必要ありませんし、環境の変化の中は高温と低温での環境ダメージですよね。こちらも種族的に無効です。
つまり収穫としては装備の強化……旧き鍵の書がメインでしたか。まあそんな日もある。装備が強化できただけ上々です。
さて、そろそろ夕飯ですね。
夕食後、旧き鍵の書の挙動……演出を確認します。
始まりの町の周辺にいる兎さんに付き合ってもらいましょう。
戦闘を意識すると栞が腰から浮いて、とても分厚い本に。
歩くとフワフワ後ろを付いて来て、立ち止まると衛星のように周るのは以前と変わらず……と。
では魔法を……お、変わってますね!
今までは発動待機状態……MPを消費して発動キーワードを言う直前の状態ですね。その発動待機状態だと敵に向かって本が開き、ページをペラペラしながら私の周囲を周りながら回っていました。
今は発動待機状態で前までの動きに加え、ページも飛び立つようになりましたね。ページが本の周りを舞っています。
ちなみに手のひらを上に向けた状態で出すと、本はその手のひらの上で浮遊します。割とスタイルは自由だったり。
では次。
……前半は大丈夫でしょう。問題は……ぶぐとらぐるん、ぶるぐとむですね。ぶぐとらぐるんぶぐとらぐるん。ぶぐとらぐるんぶるぐとむ……よし。
やってみましょう。
【ビヤーキーの召喚】を選択。
旧き鍵の書が私の正面に留まり、天に向けてページを開きます。ペラペラ捲った後止まり、魔法陣が……違いますね。イエローサインが浮かび上がりました。
これで呪文ですか。
「いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい! あい! はすたあ!」
呪文中にMPが消費されていき、言い終わると同時にイエローサインが輝いて溶けるように消えました。
結構遅めに言っても良いようですね。
空から翼をバサバサさせながらビヤーキーが来ました。
ビヤーキーを簡単に言うなら……そうですね、人間のような皮膚や目を持ち、コウモリのような翼を持った蟻……でしょうか? 尻尾もあるし、トカゲっぽい口してますけど。身長は2メートルから3メートル。
ちなみに地上は時速70キロぐらいで飛び、気圧が下がる程飛行速度が上がる。つまり普通の生物が運んで貰う場合、寒さ対策は必須ですね。このゲームで宇宙空間に運んでもらうことは無いでしょう。
「む……? ああ、新入りか。話は聞いている」
「先程召喚方法を知ったので、試してみたかったのです。以後異人達がお世話になるかもしれませんが、よろしくお願いしますね」
「手順を踏むなら構わない。それで、どこかへ行くのか? 挨拶だけか?」
「挨拶です」
「うむ、ではな。ハスター様を布教しておけ!」
と言って飛んでいきました。ビヤーキー喋れるんですよね。
ハスター……布教して良いものか。移動に馬ではなくビヤーキーを使うなら、いあいあすることになるでしょうけど……。
掲示板で布教して寝ますか。
今日からあなたもハスター教団DA! 存分にいあいあして下さい。
魔導書はキーパーコンパニオンをベースにしています。無ければ基本ルルブ。
そしてセラエノはケラエノで統一する予定です。
キタブ・アル=アジフ:クトゥルフ神話技能18%
ハイパーボリア版エイボンの書:クトゥルフ神話技能17%
ケラエノ断章:クトゥルフ神話技能9%
ケラエノ断章には他に【クトゥグァの招来】もあるようですが、流石にね?
プレイヤーには呼ばせないし、銀の鍵で召喚しようにもイベント関係だ。
本来【ビヤーキーの召喚/従属】ですが、移動手段なので召喚のみ。
旧き印
図面レシピ化。活性化させるのにMP消費?
黄金の蜂蜜酒の製造
同じくレシピ化。『黄金の蜂蜜酒』
耐熱耐寒などに対する最強のアイテムだろうが、素材がとてもめんどい。
蜂蜜酒なので当然消耗品で、効果時間あり。
魔法やそれぞれのアイテム使った方が良いんじゃねぇのぐらいなバランス予定。
その分真空、高温、低温に対する完全耐性。ぶっちゃけいる?
真空とかデストラップ過ぎて出せないよね。
ホイッスルに魔力を付与する
こっちは笛そのもののレシピに変更。『星間の呼び笛』
【ビヤーキーの召喚】が無くてもこの笛で召喚できる。
召喚の仕方でビヤーキーの運び方に差がある。
つまり1番簡単な方法で召喚するとめっちゃ雑に運ばれる。達者でな。
プレイヤーは馬を買わなくても笛を買えば移動手段ゲット。
簡易召喚ビヤーキー「手が滑って落としちゃった☆ テヘペロっ」




