89 始まりの町防衛戦、再び
冒険者組合を後にしまして、始まりの町へ飛びます。
〈ワールドクエスト:始まりの町防衛戦が準備中です〉
はいはい視界視界。
南に集まっているようですね。スキルを確認しながら行きましょう。
リーゼロッテさんが持っているのは……3次スキルの《両手斧術》と《投擲術》、それから1次の《闇魔法》ですね。【ナイトビジョン】と【ダークヒール】目的でしょうか? 残りはパッシブ系ですね。
ふぅむ……《投擲術》ですか。遠距離物理もできるのですね。そう言えば、あの感じだとリーゼロッテさんはソロですか。ソロなら自分で色々できないと辛いでしょうから、遠距離攻撃手段としては悪くありませんね。最悪石投げれば良いので。
投擲武器を小さい棺にしまって、【泡沫の輝き】で具現化できるようにしますかね? 具現化に多少MP使いますが、投げ放題ですよ。戦闘力上がるでしょう。防衛戦終わったらエルツさんから買いましょうか。こたつさんが投擲なので売っているはずです。
両手斧で近接戦、遠距離は投擲、多少の自己回復と一時的な暗視。他はパッシブ系でとてもシンプルな近接アタッカーですね。
スキルに関しては生前スキルはそのままに、セット可能スキル数が《死霊魔法》系統スキルレベルの半分。最大50個まで有効にできるわけですね。
下僕のスキル数はスキルレベル/5の20ですが、種族スキルも20個なので合計40個。棺の方は種族スキル無しで50個まで。あくまでベースは遺体か。人外の遺体入れたらどうなるんでしょうね?
まあ、やろうと思えば生前ガン無視してカスタムが可能です。その場合遺品が武器だと変えづらいので、デメリットではありますか。アクセが当たりですかね。
でも生前ガン無視すると、何かしらのデメリットありそうなんですよね……。とりあえず今は弄らないでいいでしょう。
お、リーナいましたね。セシルさんも一緒ですか。
「あ、お姉ちゃん!」
「やあ姫様」
「ごきげんよう。セシルさん最初から町にいました?」
「いたよ。でも申請は来なかったからやった人は後回しかな?」
「なるほど」
総隊長や分隊長が全員違う人だったので気になっていましたが、1人1回ですかね。ということは、気兼ねなく最前線に行けますね!
「お姉ちゃんPTこっち入る? スケさん達どっかにいたけど」
「んー……折角獲物が沢山いるから使役上げたいんだよね」
「召喚枠かー」
パーティーメンバーと召喚数被りますからね。
妹のPTは5人なので、私が入ると1体しか召喚できません。
「みんなのアイドル、スケさんだよー!」
「あ、スケさんこの契約書にサイン下さい」
「なにそれ怖い」
「姫様PTは?」
「使役上げたいので2体は召喚したいですね」
「ええぞー。だからバフプリーズ」
「あ、はい」
結局いつものメンバーでPTを組みます。
「「姫様いた!」」
「おや、アメさんとトリンさんではないですか」
「「PTはー?」」
「私2体召喚しますが構いませんか?」
「「おっけ!」」
「スケさんもそれで?」
「おけおけ」
アメトリンさんが加わりました。アメシストとシトリンがくっついた宝石ですね。双子だからそういう方針にしたのでしょう。仲が良くて何よりです。
〈〈一定の人数の参加を確認したため、サーバーを分断します。別PTにいる知り合いと一緒にやりたい場合はレイド、またはユニオンを組んで下さい〉〉
「『お? おお?』」
おや、GMが来ましたね。
「はーっはっは! 俺だぁ! 簡単に言うと人が多すぎるから鯖分けるぞ!」
「サーバーを分けて同じクエストを同時進行するので、一緒にやりたい人がいるなら、分断カウントまでにレイドやユニオンで関連付けておいてください」
「ちなみに分断された場合、結果が良い方が反映されるから安心しろ!」
そう言って帰っていきました。
確かに身動きできなさそうなぐらいにはみっちりしているので、分けないとゲームになりませんか。
「どうしようか。固まる? それとも分かれる?」
「良い方が反映されるんだし、固まった方が良くない?」
「俺らは経験済みだし、3陣と隔離されたりしてね」
「それはそれで気にせず好き勝手できるから良いけど、人数偏りすぎるでしょー」
「大半が3陣だからね。とりあえずユニオン立てようか」
セシルさんとリーナが話してた方針で問題は無いでしょう。
分かれた方で総隊長が選ばれるはずですし、私がユニオンリーダーの必要は無さそうですね? セシルさんの方へ合流します。
クエスト開始10分前に分断されるようですね。
セシルさん、こたつさん、ルゼバラムさん、ムササビさん、フェアエレンさん、トモ、リーナ、エリー、そしてうちのPTですか。
「おっす」
「おいすー」
「お邪魔します……」
「あれ、ラピスさんじゃないですか」
「うち1人空いてるから入れといた。不死者組で組んでるだろ?」
トモスグPTにラピスさんが入ったようですね。
「やっほー!」
「ヒャハハハ! 久しぶりだぁ!」
フェアエレンさんPTですか。ユニオン入った事で場所が分かりますからね。ぞろぞろ集まってきます。
フェアエレンさんのところはモヒカンさん、ミードさん、キューピットさん、クレメンティアさんに……駄犬さん。
「姫様じゃん撫でてくれてもいいのよ!」
デカワンコですね。ヘルハウンドですか。見た目はかっこいいのですが何分言動がその……。
ワシャワシャ……。
「あ……」
「む! 姫様の体液! ペロッ……ゲフッ! 死ぬっあーっ! 死ぬっ!」
「何してんだこいつ……」
「流石駄犬」
「そっとしておこう」
のたうち回るヘルハウンドと、それをガン無視するみんな。
ちなみに名前はヴィンセントだそうです。かっこいいですね。言動これですけど。
「賑やかね、ごきげんよう皆さん」
「おはようです!」
エリーとアビー組もやって来ましたか。
「お、そろそろ分断されるな」
カウントが進んで時間が来ると、転移させられました。
とは言え複製マップなので、見た目に変化はありません。強いていうなら人口密度が減った。この減り方、2分割じゃないですね?
「いよーう!」
「随分減ったでござるな!」
「合流するのも面倒な量だったからねー」
ルゼバラムさんにムササビさん、こたつさんのPTもやって来ましたね。これでユニオンは集まりましたか。
「この減り方、2分割じゃないねー?」
「そうみたいだね?」
「そのようでござるな」
〈〈Wクエストに必要な役職に適切な異人達を検索中…………〉〉
結果として私達の方には来なかったので、やっぱり1回ですかね?
「よしよし、最前線行けるな!」
「後10分か。そろそろ準備するかねぇ」
そろそろ召喚しておきましょうか。スキルを確認して……肉塊の浮遊要塞を召喚します。
「お姉ちゃんそんなの召喚できるようになったの……」
「おー、姫様なにこれー?」
「肉塊の浮遊要塞ですね」
「タンクかー」
「ゴブリンの集団にでも突っ込ませておこうかと思いまして、《高位物理無効》と状態異常系である《未知なる組織》を付けておきました」
「ゴブリンさん逃げてー!」
「という事で一号、スキル上げよろしく」
いつも通り触手をフリフリしているので、一号に任せます。ゴブリンでは《高位物理無効》は抜けないでしょう。私も棒立ちして触手系スキル上げたいですね。
倒すのはリーゼロッテさんに任せましょう。という事で……へぇ? もしかしてデフォルトの発動キーはキャラによって違うのでしょうか。
「零れ落ちた夢、虚空の人形。今一度、心を弾ませよう……リーゼロッテ」
私の横に召喚位置を指定すると、魔力が集まり人の形になっていきます。すると足と指先から色がついていき、数秒後には無表情のリーゼロッテさんがいました。
リーゼロッテさんが右手を地面側に翳すと、手の影からごっつい両手斧が飛び出して来て掴みます。
斧を地面に立てて、リーゼロッテさんは直立不動状態へ。
それにしても、改めて見るとこう……ミ=ゴやイスの姿がチラつくようなデザインした両手斧ですね……。いえ、かっこいいですけどね?
その体格でよくこれを振り回しているものです。
「姫様詳しく!」
「これが【夢想の棺】の【泡沫の人形】ですね。先程遺体をゲットしまして、召喚したのは初めてです。割とMP持っていかれましたね……使役系にしてはかなり多い消費と言えますか」
「ほぉーん……僕も欲しいね!」
「私は棺クエストでしたよ。一応なるべく遺体を残す方面でクリアしました」
「ふぅむ……」
「むむむ……妹枠が……」
「いや、魂は冥府に送ったから……」
「あ、そうなの?」
開始時間までまだあるので、クエストの内容とリーゼロッテさんの事を話します。
「へぇ……やっぱそういう重めのクエストもあるか」
「少々解決法考えるのに苦労しましたよ……ネメセイアで良かったですね」
「僕そのクエスト無理じゃね?」
「そもそもリーゼロッテさんはもうここにいるので、違う設定のが来るのでは?」
「それもそうか。ふむぅ……」
「結局育てる事になるので、遺品と見た目で決めて良い気もしますね」
「見た目は重要。やっぱ召喚したくなる見た目じゃないとね!」
私はクエスト内容的にもリーゼロッテさんで良いでしょう。近接アタッカーなところも不満はありませんし。
「そうだ。エリーとアビー、リーゼロッテの愛称何が良いと思います?」
「リーゼロッテ……ドイツだったかしら?」
「エリーザベトとシャルロッテです!」
「リーゼやロッテじゃ普通過ぎるわね。ロッティやリリ?」
「可愛い系で行くです? 両手斧だしリーザとかリジィはどうです?」
「そうですね……リジィにしましょうか。いや待て、中身一号じゃないですよね」
違うそうです。なら以後リジィで。
本人無反応。喋らないし、表情も変わらない……と。
「そうだ、こたつさん」
「お? なにー?」
「投擲武器ってどんなのがあるんですか?」
「え、投擲?」
「この子が《投擲術》持ってまして」
「へー! そうだねぇ……まず石。しかも拾った奴より、多少加工した物の方が補正入るよ。後はスローイングナイフとか、トマホークかな?」
「やっぱり基本はナイフですか?」
「うん。1発の威力が欲しい時はトマホーク。トマホークの問題は威力あるけどコストと命中率かな……」
石を《細工》などで加工すると補正。基本はスローイングナイフで、低コスト低威力で手数勝負。威力が欲しいならトマホーク。強いけど生産コストがナイフより上がり、何よりクリーンヒットさせるのが難しいとか。
「実はトマホークより、モヒカンが持ってるアトラトルで投げやりの方が効率良いんだよね……」
「あー……キャンプの時使ってましたね」
「そうそうあれ。あっちの方が遥かに楽。ぶっちゃけ投げナイフより楽かも。確かに威力だけ見ればトマホークなんだけどね。デメリットとしては本当に投げる事にしか使えない事かな? 取り回しが少々悪いね」
「メインが両手斧なので、アトラトルはダメですね……」
「トマホークにフランキスカ、クナイとか手裏剣、チャクラムなんかがあるよ」
何だかんだありますね。投擲最大の問題である本数は【泡沫の輝き】で解決します。まあMP消費しますけど。
「後は……鎖鎌とかモーニングスターかな?」
「あの辺り《投擲》なんですか?」
「《鞭》系でも使えるわよ」
こたつさんとエリーによると、《投擲》で投げれるし、《鞭》でも操れるようで。
ふぅむ……サブ武器として何かしら持っていたんですかね?
無表情で佇んでいたリジィがふと、視線を森の方へ向けました。
わらわらとゴブリン達が出てきましたね。
「お、始まるな」
「行こうぜ行こうぜー」
1匹見たら……な、異世界のゴキブリことゴブリンさん。
お互い横に並び向かい合います。
〈〈ワールドクエスト:始まりの町防衛戦、開始します〉〉
「『うおおおおお!』」
始まりましたね!
「一号、突っ込んで良いですよ。リジィも戦い方を見せて下さい」
一号は少し前に出て、わざとゴブリンに囲まれます。殴られるたびに触手で叩き、状態異常チャンス。敵の遠距離に向けて落とし子で攻撃させましょう。
そしてリジィが……あー……ごつい両手斧だなぁとは思ってましたが、分裂するんですかそれ……。
「ちょっと、リジィかっこいいのではなくて?」
「姫様なにあれ! あの斧なに!?」
「はて、何でしょうねあの斧。まさかギミック付きとは……」
遺品なので私が用意したわけではありませんからね……。しかし……なるほど、所持スキルに納得です。
リジィは両刃の両手斧……ハルバートと言うより、ラブリュスに近いですかね。ただし、片刃が大きくもう片方は少し小さいんです。
その小さい方がスポーンとリジィの方に飛んで、左手でキャッチしてぶん投げました。トマホークブーメランよろしく飛んでいくそれを追うようにリジィも突っ込み、ゴブリン相手に片刃になった両手斧を豪快に振り回しています。
ゴブリンを数体真っ二つにして戻ってきた斧は手で取らず、攻撃しながら両手斧で直接受け取っていますね……。
「ゴブリンが弱すぎて攻撃力は分かりませんが……強いですね。やはり主力級か。遺品と戦闘スタイルを考えると、運要素が大きいですかね? とは言え、育成できるでしょうから最終的には誤差と言えば誤差か。やっぱ気にするのは見た目と遺品ですかね」
一号は見た目とは違って物凄い地味な戦い方をしています。浮いてる肉塊の球体が殴られるたびに触手で叩くというとても地味な……。
あえて言うならそう、恵まれた体格から繰り出されるクソみたいな攻撃。まあ、あれの役目はタンクなので良いんですけどね。
状態異常になったところで他の人達に狩られてますし、役には立っているでしょう。リジィが派手なだけです。
そんなリジィが大ジャンプしました。空中で回りながら斧を振り回しています。赤い光を纏っているので攻撃アーツですね。
そして地面に叩きつけられると、ダメージと共に地面ごと敵を巻き上げます。その直後、その場で斧を振り始めました。地面ごと巻き上げられたので敵はいないのですが……。
いや……なるほど、巻き上げられた石を両手斧で弾いて、離れたゴブリン殺ってますね……。
「凄い……ロマンを感じますね……」
「お姉ちゃん私もやりたい!」
「うん、頑張れ?」
「最初は恐らく両手斧の3次アーツ……問題はなにで飛ばしてるんだろ……」
敵倒しながら考え始めましたね。
私は向かってきたゴブリンの攻撃を避けずに、攻撃して倒します。ただのゴブリン達に《高位物理無効》を抜くことは不可能です。
「アルフ今から横文字禁止な!」
「は? 良いぞ。お前はお嬢様言葉な」
「は? 上等ですわ!」
「ちょっと、キャラ被りやめてくださる?」
「あ、はい」
「オネエでも良いぞ」
「ちょっとぉやめてくれるぅ~?」
「「それも被るの!?」」
声の聞こえた方を見ると、こう……また濃いキャラですね……。
「どぉ~?」
「あら、あなた見事な足ね」
「凄いです!」
確かにとても綺麗な足をしていますけどね。
チャイナ服のオネエです。えっぐいスリット入り! 太ももではなく腰辺りからですよ。攻めてますね……! 青色のチャイナにハイヒール。銀の簪は黄色で……月ですか? メイン武器は長い棒。
「ヒャハハハ! 美月じゃねぇか!」
「あら~奇遇ねモヒカン。今日も燃やしてる~?」
「ギャハハハ! 勿論だぜ!」
「お前ら知り合いかよ! 視界の暴力が過ぎる」
「もっと見て良いのよぉ~?」
「ヒャハハハ! ビンビンだぁ!」
「やめろぉ!」
勿論絶賛戦闘中です。これは酷い。
チャイナ服オネエ……美月さんだそうですね。美しい月! まあ、うん。良いのではないでしょうか。
モヒカンさんと並んで絵面が凄い。なお美月さんは細マッチョ系。スラッとして身長は170ちょっとでしょうか。それとハイヒールなので170中盤ぐらい。あの瞳は三白眼と言いましたか?
「ネットは広いです!」
「ほんとにね」
ええ、広いですね。人間の業が深いというか……まあ、見てる分には面白いです。
それにしても、明らかにゴブリンよりホブゴブリンの方が多いですね。やはり参加メンバーのレベルとかで多少変わるんでしょうか。
とは言えゴブリンとホブゴブでは誤差ですけど。この分だとエリートの数も増えてそうですね。
そう言えば《人形魔法》の戦闘場面、じっくり見るの初めてかもしれませんね。
アビーは両手鎚を持ったアタックドール。大盾を持ったディフェンスドール。片手剣と円盾を持ったサポートドールの3体。
どれも人形のサイズは大体1メートル前後ですかね。
ディフェンスドールがガードした直後に、後ろからサポートドールが【バックスタブ】で瞬殺。
サポートドールが足払いで敵を転ばせると、そこにアタックドールが【ヘビィスタンプ】で瞬殺。
アタックドールは単体でも移動系攻撃アーツで瞬殺。
ふぅむ……面白そうですね。人形同士の連携忙しそうですけど。
無防備の本体にはドリーさんが護衛に付いて、抜けてきたゴブリンを張り倒していますね。スチームパンク風アレンジのメイド服で《格闘》です。
エリーは《鞭》で足止めしたり妨害しながら、レティさんが短剣でとどめを刺して回ると。
敵が弱いですが数は多いので、ある程度上がってくれると良いんですけどね。まだ1次スキルのパッシブ系がそこそこ上がるとは思うのですが……。
一号のところへ《蛇腹剣》の【グランスラスト】で攻撃して一掃します。状態異常でHP減っているので楽々。まあ……どうせすぐに囲まれるんですけどね。《蛇腹剣》の経験値稼ぎには良いでしょう。まだ低いですからね。
こっちに飛んでくる遠距離は反射して別のに当てます。遠距離攻撃Mobは私にとってダメージソース。
そう言えば、今回もライドバグに乗ったシーフ来るんですかね?
来たら上に行きましょうか? しかしフェアエレンさんとかもいるので大丈夫な気もします。今なら弓使ってる人大体が対空持ってるでしょうし……。
「ふと思いましたが、もう総隊長しない方が良い気がしますね……」
「なんでー?」
「進化してから視界が変わって遠くが見えない。こういった防衛戦だと、司令部から全体が見えないのは致命的だと思ってね」
「あ、その目隠し飾りじゃなかったんだ……」
いやはや、こんなところに障害が出るとは思いませんでしたね。スキルレベルでそれなりに範囲は広がって行きますが、範囲外はぼんやりとすら見えないのが問題です。逆に範囲内なら範囲ギリギリだとしても角度を自由にバッチリしっかり見えるのですが……。
「あ、いや……一号を霊体で派遣すれば【ビジョンシップ】で見れますか。しかし召喚制限もあることですし、むむむ……。それに総隊長じゃなければこうして最前線出れますからね。やはり今後はやめておくべきか?」
「お姉ちゃんのバフを受けれないのは惜しい」
「統率系スキル上げには良いんだけどね」
逆に言うと総隊長の利点がそれしか無いので、ボランティアと言われる所以ですね。しかも私の場合、統率系は使役系で上げられますし。
やはり他の人に譲りましょうか。セシルさんとかに擦り付けましょう。
「おいカマ! キモいからさっさと死に戻れ!」
「あ゛ぁ゛? オカマ舐めるんじゃないわよ!」
美月さんがめっちゃドスの利いた声で言った後、ゴブリンをなぎ倒し始めました。
「ギャハハハ! こいつ普通につえーからなぁ!」
「これは草」
美月さん実は2陣らしいですよ。
「まあ、照準がこっち向かなければいいよね」
「あんら~セシルちゃんじゃないの~!」
あ、セシルさんの標準搭載笑顔が引き攣っていますね。私は助けませんよ。人の恋路の邪魔はしませんとも。本人達の問題です!
ある意味ボーナスステージである今回で、低いスキルの底上げを図りたいですね。《蛇腹剣》にパッシブ系、状態異常系もそうですし、《聖魔法》と《影魔法》も上げたいですね。それにカウンターである《揺蕩う肉塊の球体》辺り。
低くはありませんが、一号とリジィを出しているので、《死霊秘法》と《アンデッド統括》、《偉大なる術》は勝手に上がるでしょう。
あー……一号はあえて《高位物理無効》外した方が良いですね。そうした方が《聖魔法》を上げられます。別のスキル持たせましょう。一号を再召喚。
……抱え込ませても余裕ですね。この方針で行きましょう。
「あ、ライドバグ来た!」
「そう言えば司令部は大丈夫でしょうか?」
「ダメなら救援要請来るでしょー」
それもそうか。流石に即死はしないでしょう。
初回より数は増えていますが、1陣率いる人外飛行部隊と地上からの対空射撃によって、ボトボトとエリート達が降ってきます。
「いっっってぇ! クソゴブが!」
「上から降ってくるの普通に危ないんですがそれは」
正直、頭上注意ですね。
私の上に降ってきたゴブリンを触手で叩いて逸らし、落下地点の地面から触手を生やして百舌の早贄が完成。
「ふふ……哀れですね。まるで炎に向かう蛾のようです」
「言い方よ。どこの悪役だ?」
「捕れたてですがどうです?」
「丁重にお断りさせて頂きます」
「残念です。あ、状態異常が有効だったので溶けてしまいましたね」
「それ食べたら死ぬよねぇ!?」
まあ、そもそもゴブリンの肉は食用になりえないらしいですが。ゴブリンは数が多いのに活用できるのが魔石のみ。持ってる装備もしょぼいですからね。鉄装備まで行くとまあ良い物。鉄は何かと入り用です。プレイヤーからするとあんまりですが。
一号を抜けて私に攻撃してくるゴブリンは放置して、触手の反撃に殴られては怯み、また殴って反撃で怯み、しかも状態異常も付くので実に哀れです。このAIに逃げるという選択肢がありませんからね。
スキル上げにご協力下さり、誠にありがとうございます。
他の場所では降ってきたエリートをタコ殴りにしていますね。
「数体抜けたっぽいでござるな」
「ま、暇してるだろうし良いんじゃね?」
「ねー」
ルゼバラムさんが言う通り、総隊長達は見てるだけですからね。暇潰しにはなるでしょう。
ついにエリート達が動き始めました。ある意味本番はここからですね。
リジィは……問題なし。一号は……流石に包囲されるといい感じに減り始めますか? 《聖魔法》が捗りますね。
私? 私はジェネラルクラスにならないと話になりません。《高位物理無効》をそもそも抜けませんからね。
「……ん? おっと……」
「あ、無傷なんですね」
「《高位魔法無効》も持っているので、【エクスプロージョン】はギリギリ範囲内ですね」
魔法防御系も上げたいので、どんどん撃って欲しいのですが。
……今度インバムントの港で棒立ちしてましょうかね? カラビーヌプワソンからの魔法とか、フィーラーカルキニオンからの触手。あれらが防御系上げにとても良さそうでは? 無効系でダメージ受けなくても、被弾判定は行われているわけで、経験値入りますからね。
【グランスラスト】で一号に集まってるのをなぎ払います。瀕死で残ったのは一号に向かい、反撃されて死ぬので放置ですよ。すぐ新しいエリートが補充されますから、美味しいクエストですね? 3次スキルになるとどうか分かりませんが……。
「そろそろ別のエリアでワールドクエスト発生しませんかね?」
「そういや、まだここだけかー」
「クロニクルクエストが始まったし、連動するのも何個かあるんじゃないかな?」
確かにセシルさんが言うことは有り得そうですね。
教会関係しかやってませんし、探してみるのも面白そうですが……はて。
「後はほら、純粋にここのゴブリンみたいなキーを達成してない」
「ゴブリンは討伐数でしたっけね」
「3陣の成長待ちじゃないかな? 散らばれば嫌でも見つかるでしょう」
それもそうですね。
正直インバムントのワールドクエストが気になります。海戦とかしませんかね? とても楽しみです。
片付いてきましたね。そろそろジェネラルが動くでしょうか?
「そろそろ動くでござるか?」
「そういや、最後のラッシュ総隊長大丈夫か?」
「あれでござるかー……」
「タンクも育ってるわけだし、大丈夫でしょ」
「ああ、それもそうか。1陣のタンクならジェネラル超えてるか」
今回のジェネラルは37レベですね。前回は36だったので1だけ高いです。他のゴブリン達のようにジェネラルも多少のレベル幅があるのでしょう。
とは言え1陣は既に40超え。問題は無いはずです。
いい感じにスキルが育ちますね。
《蛇腹剣》の10は【エアスラスト】ですか。【グランスラスト】の空中バージョンですね。残念ながら既に出番は過ぎています。
「動き出したぞー!」
「お、行こうじゃないの」
私はどうしましょうかね……。
んー……触手でジェネラルを叩きつつ、他と遊んでいましょうか。リジィをジェネラルに向かわせても良いですね。しかし、大体の人がボスに釣られるでしょうから……今が一番のスキル上げチャンス!
という事で、ジェネラルは気が向いた時に触手で殴り、状態異常にするだけにしましょうか。
とかやってたら、ジェネラルが1陣タンク達に完封されてサヨナラしました。もうあの時のような栄光は無いのです……。
成仏して下さい。
「『俺達の勝利だ!』」
〈〈ワールドクエスト:始まりの町防衛戦、完了〉〉
〈〈クエスト評価を確認中…………〉〉
〈〈総隊長死亡回数…………0回〉〉
〈〈部隊長死亡回数…………0回〉〉
〈〈異人兵死亡人数…………2528人〉〉
〈〈防衛対象の被害…………0%〉〉
〈〈住人死亡人数…………0人〉〉
〈〈クリア評価…………Sクリア!〉〉
〈〈更にパーフェクトクリアとして、報酬にボーナスが追加されます〉〉
〈〈無傷で守りきったため、住人からの異人に対する評価が上昇しました〉〉
と言うか、終わりのセリフが人によって違うんですね? 考えられるのはキャラの立場と性別でしょうか。開始も違ったような……? まあ……良いか。
ベースも1だけですが上がりましたし、スキルの底上げもできて、15万のお金。うん、まだ美味しいと言えますね。
さて、町に戻ってゆっくりスキルの確認しましょうか。
お金も預けたいですし、ゴブリン素材というゴミが沢山来たので、処分したいですからね……。




