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おまたせ。
月曜日から金曜日の平日での出来事。
ログアウト中にキャパシティは増えず、ログイン中の1時間――勿論リアルタイム――で……17ですか? 1時間でスキルレベル分増えていくんですかね。塵も積もれば……なのでしょうけど。無いよりは良いけど、期待する程でもない?
まあ、《偉大なる術》君は名前の割に《死霊秘法》の強化スキルでしかないので、自動で増えるだけマシか。
死亡時キャパシティ損失を考えると現状では悪化していますが、多分2次に進化したりするタイプではないでしょう。つまり最初のうちは結構なスピードで上がってくれるはずです。
使役系は要塞をデデンと1体召喚するより、骨などで大量に出した方がスキル上げにはなりそうですね。《偉大なる術》は《死霊秘法》の強化スキル。さて、効率の良い上げ方はどんなですかね。
ん、《人形魔法》の本がありますね。常夜の城にある本って貸し出しできるのでしょうか? できるならアビーに渡せるのですが。
それにしても、なぜこれに《直感》が反応しているのか。勿論読みますけど。
〈特殊レシピ『ドールコア』を覚えました〉
[素材] ドールコア レア:Ep
自動人形のコアとなる心にして動力源。
《召喚魔法》《人形魔法》【ゴーレム錬成】が複合発展した叡智の結晶。
…………まだ作れないじゃないですかー! 素材云々の前に、最低条件に《錬金術師》とか、3次スキルを要求してきてますね。
ふぅむ……これ1人で素材集めるのは無理ですね。共同作業するか、自分で両方上げるか。私は人形使う予定がないので、作るとしたらアビーからの依頼。共同作業になるでしょうね。
特殊レシピと言えば、簡易聖水でも作ってみましょうか。
入れ物に清浄の土を入れて、川で濯いで綺麗にしてから追憶の水を注ぐ。そして下から出てくる水を確保。1回で使用する水の量に上限がないようなので、それなりの量を用意しましょうか。
そしたらその水に祈り……力を与える。
「悪しき力を払う神々の息吹よ。彼の水に聖なる力を与えたまえ」
そよ風が発生して天から光が降り注ぎ、水が光って簡易聖水の完成です。これが聖職者特有のお祈り効果。そのためスキルなどは特に使用していません。
[素材] 簡易聖水 レア:No 品質:S+
聖職者の祈りによって作成された、神々の力を持った水。
強力な聖属性を有する。
初のS+がこれですか。なんていうか、複雑ですね……。土を水で洗って水が滲み出てくるのを待ち、お祈りしただけです。これを生産品と言っていいものか。
蘇生薬が称号やらの影響があったので、これもあるかもしれません。1人で検証は不可能ですけど。検証に参加するにも聖職者になる必要があるため、進まなそうですね。
……まあ、使う予定がないので教会にでも置いてきましょうか。料理に使うわけにもいきませんでしょうし……ああ、エルツさんに渡すのはありかもしれませんね。どうせなら生産組に配って回り、残った物を教会に持っていきましょう。勝手に使い道を探すでしょう。素材に選択肢が増えるだけで、生産職は喜ぶはず。
「宅配でーす」
「は? ……姫様か」
「聖水ですよ」
「ほう。使い道考えてみるか」
「ではダンテルさんとかにも配ってくるので」
「あいよ。早速考えるとしよう」
エルツさんの他にもダンテルさん、プリムラさん、サルーテさん、ニフリートさんに聖水を配ります。
そして残りを教会へ。
「ルシアンナ様でしょうか?」
「試しに作った聖水を持ってきたのですが、保存場所はありますか?」
「それでしたらこちらです」
インベ整理と言うか、在庫処分と言うか……あれなので、お代は頂かずに置いていきます。頼まれたら依頼としてお金貰いますけど。
「この品質……流石ですね。ここへ置いてください。私達が整理しておきます」
品質を確認した後、部屋の奥にある空いているスペースに並べて置きます。
細かな事を私にやらせるわけにはいかないとか言われてしまったので、お任せします。
大体のゲームでは無視される立場が機能しているのは良いですね。RPG感が増します。問題はそれによって行動が制限される事でしょうが、別にゲームなら普通と言えば普通の事です。仕様との戦い。
「今日は球体が出ていないのですね?」
「流石にあれかな……と消しているのですが、出てた方が良かったりしますか?」
「そう……ですね。その服装で他の教会へ行く場合、出していた方が面倒がないかと思われます」
要するに……服装のデザインと色合いで信者に絡まれるか、見た目のヤバさから遠巻きにされるかの2択って極端ですね!
「王侯貴族がそれらしい格好をしているのも、ある意味マナーの面もあります。無駄ないざこざを起こさないための対策ですね。服装から『貴族です!』という格好をする事で、最初からそういう扱いを求めるわけです」
騎士は騎士らしく。聖職者は聖職者らしく。つまり制服や仕事着ですね。上下関係が厳しい貴族社会なので、円満に回すためには役職にあった格好をした方が色々と便利ですか。
まあ確かに。平民に話しかけたつもりが実は貴族で、キレられたら傍迷惑な話です。
「所謂お忍び……はお金持ちの商家辺りを装いますし、お忍びするような方々は承知の上なので、問題には発展し辛いですね」
中途半端なのが一番面倒ですか。
相手の立場や職業を見極めるのに一番簡単な手段……それはやっぱり衣服でしょう。制服最強ですよ。
私はこの装備を変える予定はありません。服装だけなら聖職者ローブのアレンジバージョンと言えるでしょう。問題はアレンジかつ色合い……つまり全てか。主神副神カラーである金黒白。聖職者からすれば大事な式典などで着る色合いです。そして聖職者風のデザイン。故に最高に判断しづらいと。
エフェクトを消すと完全にただの人間なので、見分けがつかなくなります。この服装でいる場合、いっそエフェクトを出してしまうのが一番面倒事を避けれるわけですね。
『見覚えのない顔、つまり新人? 新人がその色合いかつ、アレンジローブ?』で、注意。そしたら実は外なるものでした……とか気の毒すぎますね。
分かりやすくするのも優しさと言えるでしょうか。
ただ、あのエフェクトは《揺蕩う肉塊の球体》の有効時エフェクトなんですよ。自動反撃スキルです。町中でぶつかってきた人を張り倒さないか地味に気になりますね。張り倒すようならオフにせざるを得ない。張り倒さないならオンの方が良さそうです。切り替えも面倒ですから。
「オンにしておきましょうか。子供に泣かれたら切ります」
「ふふ、面倒事より子供の笑顔をとりますか」
「はい。子供達を泣かせないため……なら納得してもらえるでしょう。ダメな方は気兼ねなく張り倒せますよ」
能力やサイズなどの問題から隔離される外なるものたち。その理由の中に見た目のヤバさも入っているのですから、説得力は結構なものでしょう。
私は、かなり、マシな方です。はい。
「子供達なら……多分大丈夫でしょう。すぐ慣れるのでは?」
「それは確かに否定できませんね……」
「子供達は素直ですからね」
少し雑談した後、お暇します。
イベントも終わったばかりですし、学校がある平日はフラフラとのんびり散策です。
「あ、お姉ちゃん!」
「ひめさま!」
「おねえちゃん!」
ワラワラと住人の子供達が寄ってきました。
可愛いですね。撫でておきましょう。
「なんかねー。あっちで喧嘩してるの!」
「喧嘩? 誰がです?」
「いじんのぼうけんしゃー」
……何やら喧嘩をしているようですね。子供達に連れられて脳内3Dマップの範囲内に入りましたが、言い争いですか。
どうやらプレイヤー同士なので、スルーしましょう。住人が絡んでいるなら首を突っ込まなくもありませんが、プレイヤー同士なら放置安定です。問題出るようならGMが介入するでしょう。
この場合子供達を連れて離れるのが正解でしょうね。子供達の相手をした方が遥かに有意義。
関係ない私が介入したところでどうせ飛び火するんです。無駄なことはしないに限る。
異人のお兄さん達の処理は異人のお兄さん達に任せましょうね。危ないので近づいてはいけませんよ。
子供達と歩きながら話し、少し遊んでから適度なところで脱出します。子供と遊ぶのは時間泥棒ですよ。
商業組合へ行き、ブレスポーションや料理を並べておきます。
称号が加護になった事で、ブレスポーションの品質がSに。蘇生受付のクールタイムが10分から8分になりました。良いことですね。
問題があるとすれば、《錬金術》のスキルレベルがびくともしなくなった事でしょうか。全然上がりません。流石MMOの生産スキル。もうすぐ10月ですが、3次スキルになるのは来年かもしれませんね。
生産はマゾくないと生産職が死ぬので、こんなものでしょう。変わらずちまちま進めるとします。
さて、次は何をしましょうか……。
おや、アラクネだ。改めて見ると結構大きいですね。縦横3メートル前後でしょうか。下が蜘蛛なので、横幅があるのは仕方ありませんね。
お、尻尾が5本の狐さんが。あれは……ライオン? スライムに……オーガですかね。なんだかんだでそれなりに人外系がいますね。見た目が違うので目立つだけかもしれませんが。空は空で鳥系や妖精、天使に悪魔とこちらも豊富。ファンタジーしてますね。自分が一番ファンタジーしてそうな見た目ですけど。
「おっ姫様ー!」
この声はフェアエレンさんですね。斜め上からやって来ました。
「ごきげんようフェアエレンさん」
「ごきげんよう! 丁度誰かに聞いてみようかと思ってたところなんだー」
「なんでしょう」
「今ってレア種族とエクストラ種族。レアスキルがあるじゃん?」
「ありますね」
「その辺りのおさらいがしたいなーと」
「なるほど。えーっと……確か……」
種族の方は世界的に珍しい種族がレア。所謂ユニークと言われるのがエクストラだったはずですね。世界的なポジションもそのままなので、RPに活かすならこの設定で良いはずです。
ゲーム的には、レアは条件を満たせば誰でもなれる。身近なので言えばデュラハン。アーマーで馬を乗りこなせば良い。
エクストラは狙ってやるのはほぼ不可能。ユーザーは条件知りませんからね。なれるのは鯖で1人のみ。しかしプレイヤーという中身ありなら案外難しくはない……っぽい。なぜその種族でその縛りプレイをするのか……って者がユニークになりやすいわけですね。……変人の代名詞と言えなくもない。
なお、レア種族の一番最初はアルフさんのようにエクストラ扱いされる。微妙に体の一部がデザイン違ったりですね。
レアスキルに関しては、解放条件が他のスキルとは違う。恐らく解放条件がスキルレベルではない、またはスキルレベルと何か……がトリガーになっている物。そして解放条件は解放者にも分からない。つまり正確な情報を教えられない。取得SPが脅威の16で、スキル効果も特殊なものが多い。
「私はこう認識していますが」
「良かった。同じ認識だ。結局鯖1個なのはエクストラ種族だけだよね?」
「そうですね。後は一部エクストラ装備や神器が1個……? ぐらいではないでしょうか」
「エクストラ種族も現状……ルートによっては上位っぽいスキルを先取りできるぐらいかー? ステータスは制限かかるようだし」
「他は人によるでしょうね。RP勢でなければ大体空気です」
「姫様の離宮も見せびらかせないからねー」
「エリア自体が特殊ですからね……。まあ、ただの生産・採取施設と化しているので、割とどうでもいいと言えばどうでもいいでしょう」
「基本狩りとか探索に出るもんねー」
「ですね。あの位置では店にするだけ無駄ですし、割と考えられているというか、せこいと言うか……そう言えば妖精の国には行けましたか?」
「行ってきたよー! 妖精が沢山いた。見たこと無いのもそこそこいたなー」
「やっぱ初見いますよね」
「リャナンシーとかブラウニー、トムテとかプレイヤーじゃ見ないねー」
「姿から派生予想はできました?」
「リャナンシーが吟遊系、トムテが農業系だろうけど……ブラウニーの派生スキルが正直分からん!」
「んー……家妖精……掃除……?」
「あるんかねぇ……? 住人専用の可能性もあるくない? 家妖精って家から出れんの?」
「あー……そう言われるとその可能性もありますね」
「後はレプラコーンもいたよ。多分採取系。ディナンシーもいたんだけど、プレイヤーのタンクがキャバリシーらしいからこっちも住人用かなぁ?」
「ディナンシー……ディーナシー? 神族のでしたっけ?」
「多分そうだと思う。オベロンとティターニアの近衛やってたよ」
「色々混じってますが……まあ、そんなものですか」
「ゲームの設定だし、そんなもんでしょ。外なるものがもうあれだし?」
「確かに」
まあ、ゲームの元ネタが分かれば2度美味しい……程度のものですか。このゲームをしている以上、使うのはこのゲームで出てきた設定ですからね。
「そう言えば、《識別》のあれはどうしたんです?」
「あーあれねー。妖精の国で住人と話してたらなったんだよー」
住人から仕入れた知識でもアナウンスは出ると。私は図書館の本からでしたね。《識別》はスキルレベルがありませんし、扱いが少々特殊ですか。
「あ、敏捷の謎記述は解決した?」
「ああ、しましたよ。私も飛べるようになりました」
「まじでー! 飛行難易度とかどんな感じ!?」
「まず飛行方法が2つありました。それがE(A)の正体ですね」
「ほほう?」
「《座標浮遊》というスキルがE。そして《座標浮遊》と《空間魔法》の同時使用でAだと思います」
「《浮遊》や《浮遊能力》の派生系かな? 空間……と言うと重力操作系?」
「種族の隠し補正で消費が激減してる魔法があるんですよ。ソフィーさんも燃費が悪いからほぼ使わないと言ってましたので、他に考えられないので種族だと思います」
「まあ、飛行系は種族だよねぇ……」
フェアエレンさんと飛行談義。大体分かった《空間魔法》の【グラウィタスマニューヴァー】を使用した飛行を話します。別に隠す必要もありません。《空間魔法》上げれば覚えますからね。
「ははぁん……。くっそ難易度高いね。同じAでもそうまで違うかー」
「あくまで速度面などの評価であって、操作面は入ってないのでしょうね」
「基本的に姫様はロケットか」
「速度優先ならそうなりますね。速度気にしないなら《座標浮遊》が優秀でしょう」
「空間系に関係ある種族なんかね」
「と言うよりは、ステルーラ様信仰系でしょうか」
「ああ、そっちか」
フェアエレンさんが言うには、やはりFOX4すると基本的に即死するようですね。
被ダメージは敵の防御力とお互いの速度、ぶつかり方などが影響する……っぽい感じだけど、妖精は体力無いし、測定しようにも即死するからよく分からんそうで。
「残ったら奇跡」
「そこまでですか」
「ほんとプチッて逝くよ。飛んで火に入る夏の虫だハハハハ」
「自分が虫側なんですがそれは……」
「妖精は虫ではないのかー?」
「種類によっては羽根がそれっぽいですが……えらい自虐ネタですね。他の妖精達にタコ殴りにされそう」
「流石に面と向かって試してみる勇気はないなー。人外系住人えらいレベル高くない?」
「寿命の差じゃないですかね? 調べスキーさんが住人のレベルは寿命に則られている可能性が高い……とか書いてたような」
「えーっと……人類だと魔女などの例外を除き……人間より獣人。獣人よりドワーフとエルフ。ドワーフとエルフよりジャイアントで、一番長いのがマシンナリーなんだ」
まあ寿命が長い分、数は減っていくようですけどね。そのため、町で見かける人種量は寿命の逆です。
そして、ぶっ飛んだ個体は人間が出やすいらしいですよ。具体例としてはラーナでしょう。数が多いからか、寿命が短い分必死に生きるのか……はたまた両方か分かりませんが、この辺の知識は一般常識なので聞けば教えてくれるようです。
「ふぅむ……まあ、スキルの話に戻ろう。種族スキルの方はどう? オンリー的なものありそう?」
「えーっと……今のところオンリーは無さそうですね。種族制限的にかなり辛そうなのがありますが、逆に言えばなれてしまえば自動取得ですし。スキル名だけ変えて他の種族に持っていけそうなスキルもありますね」
《異形の神の幼生》とか《活性細胞》、これらは粘液系でもスキル名変えるだけで使い回しできそうですよね。
「だよねぇ……じゃあオンリーはエクストラ種族と、一部エクストラ装備や神器ぐらいかなー」
「そうなりますね。RP面でも見るなら……役職は早いもの勝ちになるかもしれませんが、ログインしないと強制的に外されそうでもありますね」
「それは十分ありえる。MMOだしそんなもんかー」
「そんなものでしょう。全部オンリーではありがたみがないと言うか、ノーマルですし……レア度高いのが全員に出たら……ねぇ?」
「レア度関係なく値段下がるわなー。レアは出ないからレアなのである。ドロップ品とかは『もしかしたら』のために頑張るわけで……」
「達成感無いゲームをやるか? って言われると……」
「まあ、やらないよねぇ……」
ゲームはやった分だけすぐにスキルレベルやアイテムなど、数値に出るのが良いんですよね。大体嵌まるのはそのせいでは。
「エクストラ装備はポジション的にはどんな感じ?」
「んー……他ゲーで言うオプションやエンチャントが豊富で、素の攻撃力が低いタイプですね。正直最大の利点は『壊れない』ではないでしょうか」
「ふぅむ……」
「修理費が不要なのは地味に大きいですね。装備用の素材を集める必要がないのを利点と取るか、欠点と取るかは人次第でしょう」
「装備を変える必要がないのを良しとするか、楽しみが減ると取るかだねー」
「ですね。とは言え人外だと進化があるので、どっこいどっこいでしょうか」
「人外系は頭使うし、動くのに慣れも必要だからねぇ……」
情報が全然出きっていない今、人外系の進化はぶっちゃけギャンブルですよ。リビルドができるので救いはありますが、進化先が自分のやりたいスタイルと一致しない場合涙目ですね。フルダイブであるこのゲームだと特に、そこがズレると辛い。
人外系の普段とは違う動かし方に慣れる必要があり、自分の種族と性格に合ったビルドと戦い方を考える頭も必要。
「割と脳死プレイできませんよね」
「狼とか馬が考えるの楽よねー。骨格的にある程度制限されるし」
「あれらはビルドは楽ですが、戦い方が大変ですよね」
「難しいのはスライムとかゴブリンだよねー」
「割と何でもできる人外種……がかなり厄介ですね。つまり不死者系も……」
「だねぇ。妖精はスキル上げに気を使うしー」
「種族変わってしまいますからねぇ……」
「種族特性に合わせて特化させるか、弱点を潰すビルドをするか……人類より性格出るよねー」
「私は一応特化型ですね」
「私も特化型だなー。MMOで器用貧乏は……」
「地獄見ますからね……」
「固定PTなら1人いても良いかもしれないけどねぇ……」
何でもできるタイプは前半火力不足に陥りがちです。そうなると敵を倒すのに時間がかかりますし、ダンジョンではクリアできなくなるでしょう。
つまり、PTに呼ばれづらくなるという悲しみの状態に……。
「そうだ。フェアエレンさん、基礎ステータスのパッシブ系取ってますか?」
「《知力強化》《精神強化》系は取ってるかなー」
「無いよりマシですかねぇ……」
「まあ、パッシブだし? 確殺はしやすくなるんじゃないかな。筋力と体力、器用と敏捷、知力と精神で統合2次になるよ」
えーっとなになに……。
《筋力強化》と《体力強化》で《身体強化》。《器用強化》と《敏捷強化》で《肢体強化》。《知力強化》と《精神強化》で《霊魂強化》ですか。そして、恐らく《身体強化》《肢体強化》《霊魂強化》で何かに統合3次スキルになるのでしょう。
「全部取るべきか……3×6……SP18ですかー」
「《体力強化》と《精神強化》で派生なかったっけー?」
「えー……《最大HP上昇》と《最大MP上昇》ですか」
「《体力強化》と《最大HP上昇》を取るべきか悩んでるわー。プチッと逝きすぎる……」
「弱点カバー用ですか」
「最終的には全部取りそうだけどさー」
「基礎ステータスが高いに越したことはありませんからね」
「スキル上げが面倒だけどね。筋力とか使わねー。体力上げも事故死しそう」
「ああ、ありえそうですね。私は……体力と敏捷以外は比較的楽に上げれそうですかね。取りますか……」
「私も取ろっかなー」
さらば、SP18。ようこそ、パッシブスキル。
「防御系スキルがさっぱりなんですよねぇ」
「当たらなければどうということはない。なお、オワタ式」
「スリル満点ですね」
「流石に敵も遠距離攻撃してきてつらみある」
「ダンジョン行きました?」
「行ったよー。北のは無理だな! 狭い!」
「やっぱそうですか」
「割とトラップもヤバい!」
「私達トラップはガン無視でしたね」
「状態異常効かないのええなー。西も状態異常対策必須だわ。というか西の方が状態異常ヤバいけど、エリアは広いから個人的には楽」
「西まだ行ってませんね。採取は薬草とかですか?」
「うむー。後は木材とかだね。肥料が云々シュタイナーが言ってた気もする」
なるほど。森だから肥料も良いの採れそうですね。しかし、うちの畑は土地自体が特殊ですからねぇ……。
深淵の探索もしてませんし、奈落も実は行ってない。いやはや、世界が広いですね。
「よし、狩りでもするかなー」
「ええ、ではまた」
「またのー」
フェアエレンさんが飛んでいくのを見送り、私は……《縄》上げついでにキャパシティ増やしなどしましょうか。
要塞都市キャストレイユ。そしてディンセルヴ砦ですか。
ネアレンス王国で王都の先にある第七、第八エリアですね。キャストレイユは色合いこそ今までと似ているものの、雰囲気は一気に物々しい感じに。町で見かける人達も武装していますね。騎士や冒険者、そして彼らを相手する商人。
ディンセルヴ砦はもう、名の通り砦です。町ですらない。
「む!? 侵入者!?」
「どうやってここまで入った!?」
あ、はい。騎士に囲まれてしまいました。
「騒がしいな、何事だ?」
「あ、隊長! それが……」
「異人なので、立像転移ができるのですよ」
「そうか。次の会議で指示を出す予定だったが、遅かったようだな。お前達、武器をおろせ」
「『はっ!』」
「うちの者達が失礼した。ここは魔物達との最前線の砦になる。戦力になる冒険者は歓迎だ。お前達は持ち場に戻れ」
流石騎士。キリッとビシッとしていますねー。
隊長さんと少し話して情報を入手。周囲の敵は大体55レベぐらいらしいので、異人が戦力になるのはもう少し先ですね。
ただし、物資の輸送依頼なんかが受けられるらしいので、そっち方面では非常に役立ちそうな異人達。護衛依頼はまだ厳しいでしょうけどね。
話しているとざわざわと騒がしくなり始め、次第にざわつきが大きくなっていきます。
「む? なんだ……?」
「はて、何かありましたかね」
「隊長ー! 隊長ー!」
「なんだ!」
「ジェノサイドバイパーとグラップラーベアが戦いながらこっちに来ます!」
「奴らか……」
割と焦り気味の騎士さん。隊長の顔も歪んでいますね。厄介な敵なのでしょうか。
「全員フル装備だ。寝てるのも叩き起こせ。私も出る」
「はっ!」
「私も手伝いましょう。異人なのでご心配なく」
「……感謝します」
隊長達は準備がありますが、私は真っ直ぐ現場へ向かうとしましょう。
「ジェノサイドとグラップラーだ! 盾忘れんなよ!」
「おう!」
おー、戦闘前って感じですね。
どごんどごんと、随分派手に殺り合っているようで地面が揺れますね。これ、かなり大きいのでは?
「よりによってあいつらか……」
「1体でも苦労するんだがな……」
隊長や起こされて急いで来た騎士達も合流。早いですね。土煙が上がり、木が倒れてる……らしい方を前方に、隊長の指示で陣営が組まれていきます。
剣や盾装備の他にも杖装備の騎士もいますね。魔法師団とかでしょうか。少し後ろの方にいるので、私もそこへ合流しましょう。
「分かってるとは思うが、後ろに通すなよ。野宿確定するからな?」
「『それは勘弁!』」
砦で暮らしているようなので、居住区やられたら野宿確定ですね。作り直すのも大変でしょうし。
ドッスンドッスン鬱陶しいですね。浮けば良いでしょう。
そして、そろそろ一号を召喚しておきましょう。要塞は向かないでしょうね。遠距離攻撃系……霊体で埋めましょうか。
「一号、敵は強いのでタゲを取らないよう騎士団の援護を」
騎士というタンクが沢山いるので、私も魔法攻撃に徹しましょう。
魔法師団に混じり、隊長の指示通りに敵を待ちます。
木をなぎ倒し土煙を上げながら現れたのは、4メートルクラスのクマと、10メートルクラスの蛇でした。レベルは両方共50後半。
騎士団と協力して敵を倒せ……というクエストが発生したので、これ突発の防衛クエストですね。発生がランダムなだけで、一般クエストです。つまり、ここの騎士団からすれば日常茶飯事。ご苦労さまです。
しばらくは様子見です。潰し合ってもらう分には好都合ですからね。これ以上無理だな……という位置に来たら、隊長の指示に従い参戦します。
見てた感想としては、怪獣大戦争。
大盾持ちの騎士達がヘイト稼ぎを使用したのを確認してから、攻撃を開始します。
「【Ra'se Mea Persepho Ilda】」
一号達とグラップラーベアにひたすら魔法を撃ち込み、触手で頭を叩き続けます。流石に筋力対抗は厳しいですか。恐らくレベル差のせいでしょうけど。
このクエスト、ボーナスクエストでは? 流石、最前線の防衛を任される騎士達。とても優秀ですよ。遠距離組からしたらボーナスクエストですね。近接組は少々リスクありますが。
15以上の格上だ! 《縄》スキル上げが捗りますね! そして《聖魔法》も上げられる大変貴重な状況です。かすり傷などの軽傷で後回しにされている人を回復しましょう。
騎士達は慣れたもので、割とあっさり片付きました。
〈種族レベルが上がりました〉
〈《縄》がレベル10になりました。スキルポイントを『1』入手〉
〈《縄》のアーツ【レッグキャプチャ】を取得しました〉
〈《縄》がレベル15になりました〉
〈《縄》のアーツ【ホウルキャプチャ】を取得しました〉
〈《暗黒魔法》がレベル45になりました〉
〈《暗黒魔法》の【ダークエンチャント】が強化されました〉
〈《聖魔法》がレベル5になりました〉
〈《聖魔法》の【キュア】を取得しました〉
〈下僕のレベルが上がりました〉
んー……でりしゃす。
「協力、感謝する」
「いえいえ、こちらも良い経験になりましたのでお気になさらず」
「これといった報酬は出せないが、森へ入る時が来たらある程度のサポートはさせてもらうよ」
「それは助かります」
騎士団からはこれといって報酬は無いけど、ゲーム的なクエスト報酬が貰えますからね。お金とか経験値ですけども。
それとは別に、騎士団の好感度が上がるのでしょう。この言い方だと好感度が高いほど、何かしら助けてくれる……でしょうね。
つまり、このクエストとても美味しい。たまに来ましょう。
探索と言うか、ある程度分かったのでお暇します。
そして、アーツの確認。
【レッグキャプチャ】
片足に絡まる。その後は使用者次第。
【ホウルキャプチャ】
全身に絡まる。その後は使用者次第。
【キュア】
かかっている状態異常から1つランダムで、強度を2下げる。
《縄》系のアーツはまあ、今のところあまり使いませんね。
【キュア】ランダムというところに使いにくさが出ていますね。とは言え、無いよりは遥かにマシでしょう。そもそも種族的に効かない私には関係ありませんが、アルフさんとスケさん以外と組んだ場合は使えるでしょう。
基礎ステパッシブ系も上がってますし、これらと《縄》を2次スキルまで持っていきたいですね。狩りしましょうか。キャパシティもありますし。
さ、やるぞー。
ディスプレイ「俺だと思った?」
グラボ「俺だよ!」
ディスプレイ「俺もだけどな!」
ディスプレイ君はもうすぐ死ぬでって自己アピールあったけど、グラボ君……。
グラボが死ぬのは予想外だったけど、画面消えた時再起動かかったもんね。
画面の消え方と再起動で察したよね。ディスプレイ死んだだけじゃ本体強制再起動かかるわけないし。
それはそうと、誤字報告ありがとうございます。
ただあれ、システム的に余計な文字入れた時点で削除不可避なんでよろしく。




