74 洞窟ダンジョン
建物に入った時に集まる視線は無視し、受付嬢さんの元へ。
「ダンジョンの情報を教えてください」
「えっと……不死者の方とお見受けしますが……」
「異人として来ていますのでお気になさらず。特に問題はありません」
「そうでしたか。洞窟ダンジョンですね。全10層。本来ダンジョンへの挑戦権は最低でもランクC以上が条件ですが、異人の方にその制限はありません」
特産
マギアイアンとライチウム。
トラップ
矢(毒、気絶、麻痺、睡眠、暗闇、呪い、出血)
ガス(毒、麻痺、睡眠、沈黙、呪い)
スリップ床、落とし穴(スライム、槍)、部屋(魔力阻害、モンスターハウス)。
宝箱(ミミック、猛毒、混乱、爆発、モンスターハウス)。
モンスター
出現レベル40~49 ボス53
水棲、魔法生物系。
「明かりと状態異常対策は必須と言えますが……」
「不死者なのでどちらも不要ですね」
「となると……ダンジョン固有の落とし穴やモンスターハウス、魔力阻害とスリップ床などに注意してください」
「魔力阻害はなんですか?」
「魔力の練り上げを妨害してくるトラップになります。具体的に言うと詠唱が遅くなりますが、そこまで強いものではないので抵抗できるはずです」
詠唱速度低下のトラップですか。
最初だけあってそこまで厳しいトラップはなさそうですね。落とし穴の槍バージョンが即死トラップ……になるんですかね?
「落とし穴とモンスターハウスが要注意です。次点で魔力阻害とスリップ床ですかね。槍は言わずもがなですが、スライムは装備に甚大な被害が出ます。手痛い出費になりますし、装備がやられては生きて帰る難易度が上がるでしょう」
やはり槍タイプは即死ですか。後ろから聞こえる『まさかのエロスライム……男の夢』という呟きはスルーしておきます。と言うか私の装備には効きません。
落とし穴やスリップ床は微妙に色が違うと。
「ああ、そうでした。初めてでしたね。フィールドとダンジョンでの最大の違いですが、敵がかなり多いです。そして階層移動の階段付近でない限りどこまでも追ってきますので、即討伐を推奨しています。更に音には注意してください」
最低限の火力がないと押し潰されるわけですか。逆に言えば火力があれば稼げるわけですね。敵の湧きが多いのは良いことです。やはりレベル上げはダンジョンでしょうか。
そして音とな? リンク条件に音もあるんですかね。かなり厄介ですよ?
「敵はゴーレムやガーゴイル、トータスやドールなどがいますね。一部魔法や遠距離がいるので注意してください」
「ふむ……おっと、光や聖は使ってきますか?」
「いえ、四属性の2次までです」
「でしたら問題はありませんか」
「「うんうん」」
闇を使ってこないとなると、吸収は出番ありませんね。
あとは直接見に行くとしましょう。ダンジョンまでの道と敵を教えてもらい、受付嬢さんにお礼を言って、依頼板を確認。討伐は無し、納品はありですか。納品が結構いい値段してますね。まあ、物がある時に受ければいいので今はスルーで。
冒険者組合を後にします。
「さて、どうしますか?」
「やっぱダンジョンでしょー!」
「俺もダンジョン行きたいかなぁ」
「まあ、そうですよね。では行きましょう」
3人中2人が希望した時点でダンジョン行きです。私も反対する理由がありませんので問題ありません。早速南門から出て、馬を召喚します。
東側は45~49とレベルが高いので、南を経由してダンジョンへ向かいます。
山登りをすることしばらく、中腹辺りにセーフティエリアが見えてきて横穴が。その中にはクレアール様とステルーラ様の立像がぽつんと置かれています。
この2柱の立像がダンジョンの入り口らしいです。
「姫様下僕どーするべ?」
「召喚はリッチの方がボーナスあるんでしたよね?」
「あるねー」
「スケさん3体、私2体でいいのでは? 1体ワーカーにしますね」
「おっけー」
私がリーダーのPTで、スケさんが下僕召喚。キャパシティやスキル経験値を考えなければこれが1番強いようですが、キャパシティやスキル経験値を気にするため分けます。
ワーカーと一号をスケルトンで召喚。
「んー……湧きが多いらしいし、1体アーマーにしとくけぇ。タンク3枚なら大丈夫じゃろ」
「……私がカウントされてますね?」
「HAHAHAHA。大丈夫そうなら火力に切り替えるから」
「あいよ。じゃあ行くか」
召喚して装備の確認も終わったら立像に近づきます。
〈洞窟のダンジョンへ入りますか?〉
〈〈アナスタシア率いる『人間性を捧げよ』パーティーが、ダンジョンに到達しました。ダンジョンがヘルプに追加されます〉〉
〈特定の条件を満たしたため、『称号:ダンジョン到達者』を取得しました〉
ダンジョン到達者
異人で一番最初にダンジョンに到着した記念称号。
「うん、微妙ですね。行きましょうか」
「「うい」」
ダンジョンに入るかの確認が出たままなので、Yesを押すと視界が切り替わります。中へ転移されましたね。
「うん、洞窟としか言いようがないな」
「洞窟だあねぇ……」
「洞窟ですねぇ……」
土肌と言うか岩肌と言うか、とりあえず穴です。広さは……二車線車道ぐらいでしょうか? 1PTが戦うスペースとしてはまあ十分でしょう。
真っ暗ではありませんが結構暗いので、《暗視》が無いなら明かりは必要でしょう。まあ【ライト】か【ナイトビジョン】ですね。雰囲気出すなら松明。
ミニマップが機能していませんね。これは2陣用に追加されたダンジョンと同じ仕様でしょう。
何も分からない、UI枠だけな状態が初期。視界内に入って薄く記される、ちゃんと調べられてない状態。そして普段通りの色になる、ちゃんと近くで調べられた状態……の三段階変化ですね。
入った直後なので基本枠だけ。自分の一定周囲が色付き。それ以降は薄っすら。
「一応ここはセーフティエリアみたいだね。さあ、行きますか」
「転移直後の戦闘防止でしょうね」
「転移直後に殴られてるあれなー……」
あるあるですが、VRでされると堪りませんね。
あ、忘れてました。
「そうだ、2人ともこれをどうぞ」
「んー? 料理ぃ? む、これ食えるのかー!」
「お、マジだ」
アルフさんは筋力のバフ料理を、私とスケさんは知力のバフ料理を食べます。
「んほーっ! うっめ」
「俺らも食べられるようになったんだ?」
「《料理人》と《錬金術》30で、本読んだらアーツが追加されまして」
「「へー……地味に難易度高いな」」
バフ時間的にこんなギリギリで食べる必要はありませんが、完全に忘れてましたから仕方ありません。今まで2人は食べれませんでしたからね。
「ってか姫様、ずっと目閉じてるけど見えてんの?」
「見えてますよ。銀の鍵装備した時に生えたレアスキルを実戦投入し始めたのですよ。中々慣れが必要でして」
「感知系?」
「んー……心眼系というべきでしょうか? 空間認識系スキルです」
「あー、なんとなく分かった」
「ジ○ダイまっしぐら!」
「心はともかく、属性は暗黒面ですけどね。まあレアスキルなので秘密で」
「「うい」」
さあ食べ終えたところで、行き止まりに置かれている2柱の立像に背を向け、先へ進みましょうか。
とりあえず壁を攻撃しても変化がないので、生き埋めを考える必要はなさそうです。爆発系は気にせず撃てそうですね。ここの運営は妙なところがリアルなので、確認しておかないと不安です。
それぞれが武器を持ち歩くこと少し、正面に敵が見えてきました。
「あれは……スチールトータスか」
「表と同じですね。私が先行しましょう」
「ういうい」
アルフさんより少し前に出て進みます。亀さんは基本魔法攻撃なんですよね。私の戦闘スタイルに近いんですよ。接近されても自分の防御力に物言わせて魔法を撃ちまくる。亀さんは防御、私はパリィの違いだけです。
とは言え、相手が反射や吸収を持っていない限り私にとってはカモです。飛んでくる魔法を全て反射し、更に私も魔法を撃つ。
どうやら抵抗<耐性<無効<反射<吸収と上がっていくようですよ。物理は耐性<無効<反射だけらしいですけど。反射や吸収は最上位レベルらしいですけどね。
亀さんは精々耐性でしょうから、問題ありません。無効なら返す意味が無いので弾くだけですが、耐性なら0にはならないので返します。
私達に気づいた亀さんがのっしのっしこちらを向きます。勿論私達は直進。
射程に入り次第亀さんの周囲に土の槍が浮かび上がり、飛んできたので反射しつつ、私とスケさんが魔法を放ちます。その間にアルフさんが接近してサイドから近接攻撃。
1体なのでこれで完封。
「んー……かったいわ。流石鋼」
「このダンジョン近接には辛いでしょうか」
「打撃持ってきた方が良いだろうねぇ……」
「対魔法は姫様出せばいいからかなり楽だねー」
「だなぁ」
ドロップはいつも通りローテーションで。
少し進むと分かれ道が見えますが、敵も見えますね。人間サイズの少しスリムなゴーレムですね。そして色が赤い。
「エレメンタルゴーレマン。なんだ……ゴーレマン」
「ゴーレムマンじゃねー? ゴーレムにしては比較的人型だしー?」
「ヒューマンのマンか?」
まあ普通のサイズだと少々大きすぎるので、洞窟だと邪魔ですね。エレメンタルで赤ですから火属性でしょう。精霊とか云々ではなく、火属性金属でできたゴーレム……と言った方が正解でしょうか、あの見た目は。
全身赤い金属で、模様のように火のようなエフェクトがあります。エレメンタル要素でしょうか?
「こっちみんな」
「うわ来た」
バッとこっちを見たゴーレマンは全力ダッシュしてきました。
アルフさんがタゲを取り、正面からショルダータックルを受け止めます。金属同士がぶつかり、結構な音を響かせます。
一号が持ってるのは魔紅鉄なので、これ相手には向かなそうですね。全属性用意するべきか……。大人しく《付与魔法》取った方が良い気もしますが。
とりあえず弱点属性は突けませんが攻撃です。
「こいつ素手だし《格闘術》系だなぁ。攻撃が早い」
「魔法は使ってこないんかねー?」
「使うタイプには見えんが……どうだろうか」
「スケさん、ウルフの増援です」
「む、タゲ取らせるわー」
音で寄ってきたのか、スチールゴーレムウルフが走って来るのを脳内3Dマップで確認しました。
スケさんの召喚したアーマーにタゲを取って貰い、先にアルフさんの抱えているゴーレマンを叩きます。
「これ敵の近くは継続ダメージありそうだな」
「そういうタイプかー……関係ないなー!」
やはりまだ目は使いますか。
目を開けて確認すると、模様のエレメンタル部分から火を噴き出しはじめ、高温のためか周囲がモヤモヤしています。熱による環境ダメージと、燃焼の状態異常、後は火傷でしょうか?
自動回復のある我々には問題ありませんが、他のプレイヤーだと地味に苦労しそうですね。
【臨界制御】や【六重詠唱】を駆使してさっさと倒します。
ゴーレマンを倒し、スチールゴーレムウルフを攻撃し始めます。こっちはただのウルフ型ゴーレムなので、楽ですね。
「ん、アルフさん。ゴーレマンがダッシュしてきます」
「流石ダンジョン、忙しい」
「このぐらいのレベルなら、火力的には問題ないねー」
「これ、先にMPが問題になるかもしれません」
「ねー。でも節約は無理だなー」
これでもMPの自動回復系スキルは上がっているのですが、消費の方が多いです。下手に節約して時間をかけると、敵が寄ってきて捌けなくなりますし。
経験値的にも火力的にも、アメさんとトリンさんがいれば多少楽になりそうですが、まだレベル的に辛いですかね。
今度のゴーレマンは青のようです。目を開けて色だけ確認しました。今度は濡れですかね。どうでも良さそうです。
スチールゴーレムウルフは壁を蹴って移動したりと、中々アグレッシブですね。
「おや、後ろから亀さんが来ますね」
「後ろにポップしたかなー?」
スケさんと場所を交代しておきます。
ダンジョンだとアルフさんとアーマーを前にして、スケさんを真ん中におき、私が後ろの方が良さそうですね。
ウルフを倒す頃に亀さんがやって来たので、位置を調整しつつ魔法を反射し、私はゴーレマンに魔法を放ちます。
反射でじわじわ削りつつヘイトもためておき、ゴーレマンをさっさと倒します。あいつが1番煩い。と言うか大半が煩い。亀さんが1番静かでしょうね。
敵の体が金属だから大盾で防ぐだけで十分煩い。しかもゴーレマンは素手なのでガンガン殴ってるんですよ。堪りませんね。
ゴーレマンを倒し、亀さんを倒して一段落です。
「ここ、確かインスタンスじゃないんだよね?」
「中で別のPTと会うことがあるらしいですからね」
「別のところで倒されたのが近くで湧いて音でリンクか……辛そうだ」
「ソロはかなり辛いでしょう……ダンジョンPTが野良でできそうですね」
逆に言えばそれだけレベル上げには効率が良いということです。移動しなくても戦ってるだけで敵が寄ってくるのですから、楽でいいでしょう。大前提として『問題なく捌ける強さ』が必要ですけどね。なければ押しつぶされるだけです。
冒険者が言うダンジョンに挑む最低限の資格。それが押し潰されないための強さがある、もしくはその対策を取ることができ、トラップも発見と解除が可能である……でしょうか。
ダンジョンの推奨はランクC以上。つまり冒険者として1人前となってからです。それだけ危険であり、突発的な事に対応できる者でないとすぐ死んでしまうのでしょう。
冒険者って夢ありますけど、ぶっちゃけリアルだと避けたい職ですよね。ゲームみたいに死なないとか、強くなるのが約束されてるわけではありませんから。
世知辛い世の中。
「2人のMPを見ながら行くかねぇ……」
「できれば脱出用のアイテムを確保したいですが……こればかりは運ですか」
「ドロップらしいからなぁ……」
ダンジョン脱出用のアイテムはダンジョンの敵が落とすらしく、使用するとPTがダンジョンの外へ転移される。
このアイテムは2種類あるそうです。1つはダンジョン内限定のアイテムで、外に出ると消滅する。もう1つはダンジョン外に出しても残っているタイプ。
当然後者の方は保険として冒険者組合で買い取りをしている。値段を安定させると同時に、偽物を排除するために。
ダンジョンへ行くベテラン達は緊急脱出用として、確実にリーダーが持っているようです。いい値段しますが、PTの命が買えるなら安い物なのでしょう。使い捨てですが使用期限はありません。毎回使うほど危機に陥っているならダンジョンに向いてないので、死ぬ前にやめとけって事ですね。
我々異人は出やすい前者を使用して、後者が出たら組合に売るのが良い収入でしょう。流石にまだどちらも出ていませんが。
「この敵の強さ、今モンハウ踏むと死にそうだなー」
「捌ければ美味しいが、無理だと死ぬだけだからな」
「一気にMP大量消費は辛いから、避けたいかなー」
敵が沢山いる部屋……モンスターハウス。割とよくあるトラップの一種ですね。宝箱がある部屋で、開けるとモンスターみっちりの出入り口封鎖。もしくは扉開けたら大量のモンスターとご対面でしょうか。
死んだら終わりの住人からしたら最悪のトラップでしょうが、私達からしたら美味しいんですよね。敵を探しに行く手間が省けて良いトラップです。
しかし、敵が同格どころか現状格上なので、効率は悪いでしょうね。死んだらデスペナと移動のロスがありますから、死なないのが1番です。全滅しなくても、死んでる間は経験値が入らない事を考えると……やはり微妙ですね。
「おっと……」
足元でカチッといって飛んできた矢を弾きます。
「流石に全てのトラップの感知はできませんね」
「まあしゃーない」
「最初から全部見えるわけがなかった」
「何かしらスキルがあるんですかね」
「狩りしてればそのうち生えるんじゃない?」
ダンジョン用スキルでもあるでしょうか。
「ぬおっ」
「プフーっ」
「スリップ床ですか」
「戦闘中だと普通に厄介だなぁ……」
一号達がトラップを踏まないように移動させないとなので、地味に大変ですね。狩りを考えると数は多い方が良いですが、数が多いとトラップを踏みやすい。
とは言え、私達にとってトラップは精々うざい止まりなので、人数優先でしょう。
「ゴーレマンにマーダーガーゴイルですか」
「今度は黄色だー。土かなー」
「土ってなんだろうな……」
「とりあえずガゴタゲ取らせるわー」
「おう」
バサバサ飛んできたガーゴイルが、滑空状態に移行してこちらに突っ込んできます。その攻撃をスケさんのアーマーが抑え、案の定大きな音を響かせたので増援来そうですね。
そしてゴーレマンと言うと……。
「はて?」
「何だあのモーション」
少し中腰になったと思ったら、ジャンプしてドッスン……からの広がる波紋。
「ストンプかー!」
「うわめんどくせぇ!」
「これもう1番厄介なの土では?」
「「間違いない」」
他の敵と戦いながらぴょんぴょんする必要が出ましたね。
「要するにジャンプさせなければいいんですよね……移動は遅いとなると、【バインド】」
「お、なるほどな」
拘束速度が遅い代わりに、効果時間や拘束力の強いチェーン型である【シャドウバインド】を使用します。
そしてガーゴイルを放置して先にゴーレマンを叩きます。
《空間魔法》の【空間補強】でバインドが強化され、銀の鍵で《空間魔法》自体が強化されている私が拘束を担当。
敵に対する状態異常はよくあるタイプの、かけるたびに耐性が上がるやつです。状態異常になりにくくなり、バインド系は拘束時間が減る。そのためさっさと叩きましょう。
「む、ゴーレマン追加です」
「今度はー……緑! 風か!」
1回目のバインドが解ける前に黄色いゴーレマンを倒します。素晴らしい拘束時間ですね。
そしてガーゴイルを放置して初見である緑のゴーレマンを警戒します。
「風で発生する状態異常はなんでしたっけ?」
「なんだっけー?」
「えー……確か気絶だな?」
「……風と水は放置ですかねぇ」
風のゴーレマンは足が速いですね? しかも……なんか風吹いてますね。
「ちょ、待って。いるだけでノックバック系!? うぜー!」
「あ、俺変化無いんで」
「髪が乱れるのでやめて欲しいですが、特に問題はありませんね。重量判定?」
「もっと肉つけろ骨」
「スケルトンじゃなくなるだろうがー!」
ごもっともで。
スケさんは風でズリズリ後ろに滑りつつ、魔法を撃っています。私のように装備を重くするとか良いですよ? 私もしたかったわけではありませんが。
問題は一号達も滑っている事でしょうか。ここに黄色が来て避けるためにジャンプしたら、流されるんでしょうね。
水<風<火<土の厄介さでしょうか。私達的には水<火<風<土な気がします。
「ダンジョンの敵、ゲーマー向けですね?」
「がっつり戦闘プレイヤー向けだろうね」
「まあ、ダンジョンって戦ってなんぼだしー?」
「それもそうですか。表は多少物足りなさありましたからね」
「表は世界観気にしてるんじゃないかね? ダンジョンはよくある次元違うタイプらしいし、しっかり対策しないとダメそうだなぁ」
条件は不明らしいですが、何らかの理由でダンジョンが自然発生し、それを安定させるために2柱の立像を置くんだそうですよ。
危険すぎたり旨味が無いものは立像を撤去して、自然消滅まで軍や冒険者が監視するんだとか。
だからダンジョンを見つけたら不用意に入らず、まずは近くの組合に連絡。立像を持って固定しに行き、内部調査するようですね。固定に成功した時点で、その後の調査の時に出た物とかを貰えるようです。
こうしないと目先の欲で固定前に入って、そのままバイバイも十分あり得ると。立像を置く前は出入り口の固定前ですから、消えたらどうなるかも分かっていない。リスクが高すぎるので、歪みを見つけたら組合ダッシュ。
新規ダンジョンの調査依頼は高ランク冒険者へ依頼され、かなりの額だとか。なぜなら国からもお金が出るからですね。ダンジョンによっては様々な意味でとても美味しい素材が産出されるんです。国内にダンジョンがあれば……と。
そんなわけで、ダンジョンは物によってかなり違うらしいので、それぞれのダンジョンに合わせた対策が必須。
「よし、待たせたなガーゴイル!」
「やっと風止んだわー」
「追加入りまーす」
「「またかよ……しかも黄色だぁ!」」
青も来ましたか。青と黄色のゴーレマンに、最初からずっといるガーゴイルですか。ガーゴイルはまだ放置として……アルフさんに青を渡し、黄色は拘束ですね。
「【バインド】……【ノクスピラー】」
拘束した黄色を闇の柱で飲み込みます。地面指定型で動く敵には使いづらいですが、今のところ全段ヒットさせるとピラーが最大火力です。先に拘束してしまえば外すことはありません。
そして【ノクスマイン】もパリィを利用してぶつけてあげるんですよ。MPを節約しつつ、ダメージを出すにはとても良い。
スケさんと魔法で削りつつ、一号達にも殴らせてさっさと倒します。
「どっちにするべー?」
「ガーゴイルの方が煩くね?」
アルフさんの抱えている青を放置して、スケさんのアーマーと遊んで地味にHPが減っているガーゴイルを叩きます。
ガーゴイルことガゴさんは明らかに魔法による飛行でしょうから、《空間魔法》は無しで。銀の鍵で減ったとは言え、今でも十分MP食われますからね……。
「ガゴ当てるのむずくねー?」
「面倒な動きしますね。ミサイルの方が良いでしょうか」
「結果的にその方が消費は少なくなりそうかなぁ……」
威力は低いけど誘導だから大体の敵に当たる、マジミサ系で削る事にします。
直線的な動きだと偏差が楽なんですけどね。ガーゴイルは羽ばたきによる上下の動きが大きく、左右にもフラフラしています。
「ああ、そうだ。避けられない距離で撃てばいいんですね」
「まあ、うん」
距離が離れれば偏差も多く取る必要がありますが、近くで撃てば良いわけで。スケさんはともかく、私は前線に出ても問題ないのでそうしましょう。距離によってはショット系が使えますからね。
ガーゴイルを倒したらゴーレマンを倒します。
〈種族レベルが上がりました〉
「お、上がった。美味しいですね」
「双子呼べればもっと美味しいんだけど、流石にまだ追いつかんかね?」
「流石にまだじゃねー? もうすぐ来そうだけど」
こっちは必要経験値が増えるので多少落ちるでしょうし、向こうは常に貰える経験値増えてますからね。とは言え、ダンジョンが美味しいので微妙になった気がしますけど。
〈〈ムササビ率いる『海賊王に……拙者は……ならないでござる!』パーティーが、南の大陸に到達しました。以降、南大陸への航海イベントは弱体化されます〉〉
「「「おっ」」」
「ムササビさんが一番乗りですか」
「あのグループ嗜みとか言って投擲持ってるしなぁ……」
「忍ぶ気はないですよね」
「まあ、どう見てもスレイヤーだし」
「ほんそれ……ぬおーっ!」
私の前を歩いていたスケさんが落ちていきました。
「きゃ~スライムよ~」
「はっきっしょ」
オネェになったスケさんを切り捨てるアルフさんである。と言うかどこから声出してるんでしょうね。骨だけに?
そんなことより私は……。
「HAHAHAHA、ついに土へ還るのかい?」
「生憎そのつもりはないなぁー!」
「某RPGみたいに一列にならないからですよ」
「つらい」
スケルトンが落とし穴に嵌って心配する人はいないでしょう。しかもスケさんですよ。
這い出てくるのを待って、先に進みます。装備的にはアルフさんが落ちるのが1番問題ですかね。
「ふぅむ……どうせなら《落下耐性》取るかー?」
「そもそも落ちんなし」
「トラップ探知系スキル無いんかねー?」
「おっと……お?」
「おん?」
〈特定の条件を満たしたため、《地図製作》が解放されました〉
お?
《地図製作》
ダンジョンでのマッピング機能を強化する。
発見した隠し扉、トラップが記されPTに共有される。
「《地図製作》《トラップ感知》《トラップ解除》が生えたわ」
「《地図製作》だけ生えたなー」
「こっちも《地図製作》だけですね」
「《トラップ感知》と《トラップ解除》は……まんまだなぁ」
「なに、解放条件漢解除?」
「そうっぽい」
漢解除。つまり死な安。死ななきゃ安い。発動という名の解除ですね、分かるとも。状態異常が効かない我々はテヘペロっで済みますけども。
ちなみに《地図製作》の解除条件は、ダンジョン内にいる時間なので、3人同時だったわけですね。
「PTに1人いれば良い系かー。逆に悩むんだよなぁ……」
「私は取っておきましょうかねぇ……? 解除は多分器用判定でしょうし、感知は《感知》系スキルも動きそうですし……」
「姫様先頭行くかい?」
「そうですね。スキル解放しておきたいです」
「じゃあ一旦チェンジで」
アルフさんとポジションを交代して、《トラップ感知》と《トラップ解除》を解放しましょう。つまり……トラップを踏み抜く!
矢は弾いてガスは素通り。スリップ床と落とし穴が面倒です。
「あたっ……おのれ山本!」
「理不尽な恨み」
「人は知らないところで恨まれる」
「世知辛い世の中ですね」
「「おまいう」」
やって来る敵もなぎ倒しながら、安全を確保してトラップを踏み抜いていきます。
〈特定の条件を満たしたため、《トラップ感知》が解放されました〉
〈特定の条件を満たしたため、《トラップ解除》が解放されました〉
「あ、解放されましたね」
「落とし穴君の出番はー?」
「なぜ骨を落として姫様を落とさないのか」
「日頃の行いです」
「僕も解放だけしとこうかねぇ……?」
スケさんとアーマー、アルフさん、私の順で進んでいきます。
「へいっ、トラッ……槍っ!」
「お前が落ちるのか」
「案外刺さってますね」
「なぁに槍の10本や20本」
「「流石の刺突耐性」」
「むしろ落ちた先にある槍の精神攻撃」
ああ、なるほど。確かに怖そうですね。
と言うか割とHP持ってかれましたね。軽さと刺突耐性込みで3割ですか。人なら死にそう。
「おのれ山本ぉ!」
「理不尽なヘイトですね」
「「おまいう」」
スルーしてダンジョンスキルを3つ取りながら、這い出てくるのを待ちます。
SP3ずつで9ですか。まあ良いでしょう。
再び前進。
正面にゴーレマンがいますね。
〈《空間魔法》がレベル40になりました。スキルポイントを『2』入手〉
〈《空間魔法》の【グラウィタスウムケーレン】【拘束結界】を取得しました〉
おや、このタイミングでですか。《空間認識能力拡張》での経験値ですかね。
「げっ、黄色と緑だ」
「黄色の存在は許されざるよ」
確認は後にしますか。
黄色はスケさんのアーマーがタゲを取り、バインドしてピラーとマイン、更に一号達。風はアルフさんに持って貰います。
「ウルフの増援ですね。あ、ゴーレマンも来ますか」
「また黄色だー!」
「【クイックチェンジ】! 一号、ウルフのタゲを。ゴーレマンは私が持ちます」
ワーカーをアーマーに切り替え、スチールゴーレムウルフのタゲを取らせます。
最初の黄色は増援の黄色が来る前に倒せますね。ウルフはさっさと来て一号とじゃれ始めるでしょう。
「あ、更に増援ですね」
「おいぃ?」
「赤と青じゃん! 戦隊モノかなにかか……」
「スケさん最大火力のピラーを準備してください。集めます」
「まじ?」
「アルフさんは跳ねないように、範囲の【ウォークライ】を範囲入り次第使用で」
「あいよ」
「どこに出すべー?」
「黒い玉の真下に」
「おっけー」
最高の吸引力をお見せしましょう。
ウルフは先行して一号とじゃれ始めましたがとりあえず放置。ゴーレマンの合流待ちです。
ゴーレマンの移動スピード的に、アルフさんが使用した少し後ですね。
「今だな。【ウォークライ】」
「【魔力増幅】【臨界制御】」
「…………【グラウィタススフィア】」
一斉に敵がアルフさんへ視線を向け、動きの早いウルフが走り出し攻撃を開始。ゴーレマン達もアルフさんにまっしぐら。
スケさんは魔法の準備中。
しかしアルフさんから少し離れた空中に【グラウィタススフィア】を出現させます。小規模ブラックホールだと思えば良いでしょうか。周囲の敵を集める魔法です。
私もすぐにMP消費を増やす代わりに、次の魔法の威力を上げる【臨界制御】を使用します。瞬間火力が欲しい時用の魔法ですね。
「おほーっ! そこか! 【ノクスピラー】」
「【ノクスピラー】」
重いはずのゴーレマンやウルフを軽く浮かせつつ、球体は全ての敵を集めます。
そこへ私とスケさんの【ノクスピラー】を重ねると。私は続いて【ルーメンピラー】も重ねて置きます。
「無事に全員落とせたようですね」
「美味しいけど、姫様のMPごっつ減ったね」
「全て《空間魔法》のせいです」
「吸引球体良いけど、その消費量はちょっとなー……」
「まあ状況的に仕方ありません。夕食にするにはまだ早いですからね」
鍵があるにも関わらず、【グラウィタススフィア】は3割近く持っていきますからね。MPポーションが使えるならまだしも、現状ではそう使えません。
料理を【魔化】できるならポーションができても良いのでは? 要検証。
さて、《空間魔法》の覚えたものは……っと。
【グラウィタスウムケーレン】
重力系の魔法使用後に使用すると、重力を反転させる。
【拘束結界】
対象を閉じ込める結界を張る。強度や範囲により消費が増減。
ほほぅ……。
重力反転と結界系のバインドタイプですか。使う時があるといいですね。
「お、次元の結晶だ」
「脱出アイテムついに出ましたか。結晶は個人でしたね」
「うむー」
次元の結晶
使用者を即座にダンジョンから脱出させる。
ダンジョン外持ち出し不可。
人数分欲しいですね。
さあ、まだまだ狩りです。
知り合いに説明する時に言われてそうだなってなったのですが、脳内3Dマップを分かりやすく言うと、白眼に近い。
それと1巻情報です。
11月30日(金)に決まったようです。感想によると密林で予約が始まってるとか?




