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65 ソルシエールの少女

 朝起きて、せっせと鉱石を掘り掘り。

 《採掘》スキルが2次の《採鉱》に進化したので、2個採れるようになりました。そしてスキルレベルが上がって来た影響か、マギアイアンの出る確率も上がりましたね。実に美味しい。ホクホクです。


 昨日の午後の採掘で戦闘スキルも育ちましたが、基本的な2次スキルは30までは新しいアーツや魔法を覚え、35からは以前のスキル強化が入るようですね。

 《高等魔法技能》が35になりましたが、生活魔法がより効率良くなりました。つまり効果的な恩恵はあまりない。スキルレベルが上がる事で全体的な補正は上がるので、よしとしますけどね……。

 《魔法触媒》は20で【マジックスタンス】です。魔法攻撃力上昇で、魔法防御力が下がる。基本は【マジックスタンス】で良いかもしれません。

 《閃光魔法》も【ルーメンレイ】を覚えたので、レーザーが撃てます。


 よし、掘り終わったので朝食にしましょう。



 朝の行動を済ませ、早速ログイン。今日は何しましょうかね。

 ……とりあえず魔粘土を少し作りましょうか。離宮から出て土と水を集めます。

 集め終わったら離宮へ戻り、錬金室で自分にエンチャントを使いバフを付けつつ、魔粘土を錬成します。清浄の土と追憶の水、そして魔石代わりにオーブを使用。


 さあ、魔力を解き放て!


 ……まあ、格好良く言おうがただの自爆なんですけど。しかも原因は自分の技量不足と言う恥ずかしい理由。HPがゴリゴリ減る。

 ついでに作った魔粘土を使用し、水を入れる水瓶でも作っておきましょう。



〈《錬金術》がレベル25になりました〉

〈《錬金術》のアーツ【属性合成】を取得しました〉



[道具] 追憶の浄瓶 レア:Ep 品質:B

 魔力をふんだんに含んだ魔粘土から作られた水瓶。

 魔力を含んだ水を保存するのに適している。


 うん、まあ良いでしょう。


【属性合成】

 2つの属性を合成する事で、より属性を強化させる。


 ふむぅ……複合属性が可能ということでしょうか。

 この辺りは要検証ですが……検証するための素材から集めないとですから、当分無理ですね。そもそも属性素材がそんな見つかってません。

 属性金属複数用意して試す手がありますが、コストがねぇ……。


 魔粘土を25個ほど作り、オーブが残り32個。クリアオーブは今20個ですか。

 生産にオーブ使用は消費が激しすぎますね……。とは言え魔石はレアドロップですし、ただで手に入る魔石としてはとても優秀なのですが。


 んー……とりあえず、魔鉄鉱石を8個使用してインゴット2個作りましょう。そしたらアルマンディンマギアイアンへ。これで3個になるので、エルツさんに渡せば片手武器になるでしょう。


 よし、お昼までラーナに構ってもらいましょう。



〈特定の条件を満たしたため、《古今無双》にエクストラアーツが追加されました〉



 お昼は家にあった素麺で済ませ、午後のログイン。

 午前中に【守りの型】を取得しました。あまり出番は無さそうですけど。


 作った水瓶に追憶の水を汲んで補充。

 エルツさんのところへ行きましょう。


「いらっしゃいませ」

「店主に会いに来ました。アナスタシアです」

「少々お待ち下さい」


 店員さんにエルツさんを呼んでもらいます。

 出てきたエルツさんに「加工してみませんか?」と、鉄が薄っすら赤くなったインゴットを渡します。


「おぉ!? 早速新しい施設の出番だな! 3個か。何作る?」

「片手槌をお願いします。そうですね……メイスで」

「メイスだな。早速作って来るか」


 片手槌と言っても、形状が複数ありますからね。モーニングスター的なイボイボ球体やただのハンマー、そしてメイスと。

 形状はシンプルなほど耐久率が高い……らしいですよ。より具体的に言うと、表示耐久数値が同じ100だとしても、両手剣と細剣のそれは違う。片手剣で斬る場合の100と、刃じゃないお腹部分で防御する100は違う。

 このゲームの耐久は全てパーセント表示であり、使い方によってはへし折れるんですよね。つまりシンプルな方が壊しづらいと言った方が良いかもしれません。

 武器は攻撃に、防具は防御に……と、それぞれ適した使い方をすれば耐久の減りは少なくなる。そのためウェポンガードなどは失敗するとリスクが高い。アーツだけに頼らず、しっかり使いこなす必要があると。


 作るのに少しかかるでしょうから、バナジウムとモリブデンを店員さんに買い取ってもらい、ツルハシを補充しましょう。


「やっぱりこ……姉さんでは?」

「ん……? ああ、いち……いえ、委員長ですね?」


 お客としてお店にいたプレイヤーの1人、クラスメイトですね。


「ラピスです。噂の姫様……アナスタシア? となると妹ちゃんは……」

「私の妹ですね。私はターシャ、もしくはスターシャ。別に姫様でも構いません」

「んー……ではターシャでいい?」

「構いませんよ」


 クラスメイトの委員長。一ノ宮(いちのみや)瑠璃るり。瑠璃→瑠璃色→ラピスラズリ→ラピスでしょう。ある意味そのままですね。


「ターシャもゲームするんだね?」

「勿論しますよ。妹がゲーム好きですからね。このゲームも妹からベータの武闘大会景品として貰いましたので。と言うか、委員長もするタイプには見えません」

「たまたま買えちゃって。いい値段したからやらないと勿体無い……から、これが中々面白くて」


 いざやってみたら面白くてハマったと。

 ようこそ、沼へ。歓迎しよう。


「おう、待たせたな。予想通りの物ができたぞ」

「火属性のメイスですか。いくらです?」

「金の代わりに情報が欲しいな。こっちが金出しても良いぐらいだ」

「んー……まあ、良いでしょう。ではラピスさん、また今度」

「またねー」


 フレンド登録してから、エルツさんに付いていって工房の方へ。

 当然ながら錬金室とはだいぶ雰囲気が違います。鍛冶工房なので炉や金床ですね。


「さて……属性金属ですが、《錬金》で作った物ですよ。他の作り方は不明です」

「《錬金》かぁ……」

「今のところ魔鉄のインゴット、魔石中以上、宝石中以上です」

「それでアルマンディンマギアイアンか。そもそもマギアイアンがなぁ……」

「まだ出ていませんか?」

「少なくともまだ持ち込まれてはいないな」

「我が家で採れるのを考えて推測するに、マナ濃度の濃い場所に鉄鉱脈がないと、魔鉄にはならないと思います。ハウジングで結界と鉱脈を置くのが条件かと。冥府はマナ濃度が濃いっぽいんですよね」

「なるほどな。あの結界高いが……試すべきか? どのぐらい採れる?」

「《採鉱》になって20回中半分ぐらいは魔鉄なので、結構な確率ですね。濃度によるのかもしれませんが、比較ができないのでなんとも」

「ふむぅ……。1陣の運命、人柱になるしかないか……」


 1陣は基本手探りですからね。出回る新しい情報はトッププレイヤーと言う名の人柱から提供されたものが大半です。

 仕様が分かるのは運営のみ。誰かしらが試して情報を出さないといけません。期待以上の時もあれば、期待外れな時もある1種の賭けですね。

 1人目が情報を出してくれないと、犠牲者が増える……と。


 属性金属はとりあえず置いておき、エルツさんと交渉です。

 マギアイアンのインゴット加工。ハルチウム製装備の作成ですね。


「魔鉄の加工はこっちも美味しいだろうから構わない。ハルチウム製は情報貰ったし値引きしてもいいな。普段持ち込みはインゴからだが、1番上の素材は別だ。ハルチウムならこっちの経験値になるから問題はない」

「マナ濃度云々は魔蚕関係でダンテルさんには話しています。まだ検証段階だとは思いますが……」

「後で聞いてみるか……とりあえず、片手剣、片手槌、両手剣、両手槌、小盾、大盾だな?」

「そうですね」

「装備できる召喚体持ちは大変だな。値引きして67万ぐらいか」

「お、だいぶ減りましたね。問題はお金がない事ですけど」

「ハウジングにでも使ったか?」

「ええ、そりゃもうガッツリと……」

「まあこれから作るし、今すぐじゃなくても良いけどな」


 料理でお金を稼ぐか、魔石を委託で買って魔粘土にして売る……と言うのも良いですね。今なら御札も需要ありそうですし、とても悩ましい。

 昨日寝る前に、ダンテルさんに鞍の作成を頼んだんですよね。それで20万が飛ぶので、お金がカツカツすぎますね。


 とりあえず鉱石を渡して、出稼ぎに行きましょうか。いや、内職の方が近い気も。


 まあ、1度エルツさんのお店を後にし、組合へ行き委託の売上を回収。御札と魔粘土で50万乗りましたね……貯金と合わせて1.1Mほどですか。

 売らなくても足りる額にはなってますが、すっからかんになってしまうので結局売らないとダメですね。

 魔粘土が売れている以上、それなりに使っている人がいるんですねぇ……。


 魔石の中サイズは……約800ですか。オーブよりこっち使った方が良いのでは? 今のところ魔石は需要がいまいちですからね。使い道が見つかって値上がりする前に確保しておきますか。

 8万で100個。


 ジャーキーは……今主流ですから結構出回っていますね。値段も私が売っていたより多少落ちていますが、思ったより落ちてはないと。つまりまだまだ稼ぐのに使えそう。


 えっと……魔力紙のレシピは……植物性繊維と魔力粘性ゲル。魔力粘性ゲルは……スライムジェルと水に魔石。

 これはサイズ不問なので極小で1個200。繊維は紙の実または木材の端材。

 買うと1枚400ですが、自作なら5枚。原料費は魔石とスライムジェルで1枚60ぐらいですか。師匠から買うよりは委託で素材買った方が良さそうですね。

 作る手間はまあ、【再現】でも使用しましょう。

 2万8000で魔石とジェルを100個ずつ。


 料理の材料は既にあるので、特に買う必要はありませんね。


 マイハウスへ帰ってひたすらジャーキーや御札、魔粘土を量産します。


 ランプとトッケイが沢山あるので、ランプはジャーキーに、トッケイは唐揚げにしてしまいましょう。竜田揚げ的な感じで。

 イベントで交換した調味料セットで味付けは問題ありませんからね。



〈《料理人》がレベル25になりました〉

〈《料理人》のアーツ【短縮処理】を取得しました〉



【短縮処理】

 下処理にかかる時間が短縮されるパッシブアーツ。


 地味ですが、便利ですね。


 魔力粘性ゲルの水を追憶の水で作ったりしつつ、せっせと量産。稼ぐには数が必要です。


 ジャーキーが900個。唐揚げが190本。御札が1200枚。魔粘土が15個。

 単価が高いのは魔粘土ですが、換金効率で見ると微妙ですね。他は複数個できますが、魔粘土は1個しかできません。

 正直、ジャーキーの換金効率がぶっ飛んでいるんですよ。お肉1個から60個できますからね。作るのが面倒なのは確かですが、作る価値はあります。



〈《空間魔法》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉

〈《空間魔法》の【インベントリ操作】【空間補強】を取得しました〉



 おや、空間ですか。勝手に上がっていくのは便利でいいですね。使い道と使い勝手がいまいちなのが最大の問題で、最高にネックですけど。


【インベントリ操作】

 インベントリの拡張操作が可能になる。個別に時間停止するかしないかを選べる。

【空間補強】

 防御系魔法やバインド系が強化されるパッシブアーツ。


 なるほど? これまた地味ですねぇ……。便利なのは間違いないでしょうけど、インベントリの時間操作ですか。

 ……そう言えばワイン樽を部屋に出しておきましょう。ええ、もうマイハウスがあるので……正直イマイチですね。

 【リターン】が1番嬉しい感じでは? 短距離転移とか覚えないのでしょうか。


 まあ、組合に行きますかね。地上へ出ると生産で時間が潰れ、ゲーム内が夕方へ。

 鞍用の20万を残して組合に預け、作った4種を出品します。


 ダンテルさんと連絡を取り、買いに行きましょう。


「お、来たか」

「ごきげんよう。買いに来ました」

「20万な」

「どうぞ」

「まいど」


 早速UIからホースとワイバーンに装備。素体が骨だと問題があるので、ゾンビです。

 鞍があると《騎乗》系スキルに補正が入るようです。より乗りやすくなるわけですね。


「そういやあれ買ってみたが、ちゃんと解放されたぞ」

「それは良かったです。条件合ってましたか」

「早速集めだしたが、中々数揃えるのは大変だなぁ。育成系スキルあった方が良いかもしれん」

「取ったんです?」

「うむ。世話になりそうだからなぁ。何部屋か占領されそうだ。と言うかさせる」


 複数買えば純粋に採れる数増えますからね。問題は増築用土地スペースですか。


「そう言えば別件だが、ドレスとメイド服の目処も立ったぞ」

「別件?」

「アラクネの人がスパイダーシルク出せるようでな。納品待ちだ」

「スパイダーシルク……なるほど。特性は?」

「前衛向けがスパイダーシルク。後衛向けがワイルドマナシルク。そして万能型、ロイヤルマナシルクだろうか? 困ったらロイヤル! なお値段」

「エリーとアビーはお金の用意、出来てるんですかね?」

「値段自体は伝えておいたから、一応姫様にも報告をな」

「そうでしたか、ありがとうございます」


 少し話して、ダンテルさんのお店を後にします。


 空が橙に染まる中歩いていて、ふと西側を眺めると……何か来ますね?

 飛んできたものは……箒に人が乗ってる! まさに魔女! 緑マーカーが見えるので住人ですね。


 そう言えば魔女達が集まりそうとか言ってましたねぇ……。実際に集まってきたのでしょうか? となると、昨日の人も魔女の可能性が高いですね。

 お目当ては追憶の水でしょう。

 とは言え、私が直接関わる必要はありません。死に戻りした人達がお持ち帰りしてますからね。品質高いのを求める場合ぐらいですか。


 綺麗な銀髪と碧眼を持った魔女の少女が、真っ直ぐこちらへやって来ます。


「濃厚で濃密な死の気配……高位不死者。名を知りたい……」


 綺麗な声ですが、のんびり屋さんですね? 表情の変化に貧しいマイペース少女ですか。

 ……魔女は研究者気質で変人が多いとも聞きましたね。


「アナスタシア・アトロポス・ネメセイアです」

「ネメセイア……! 流石の私も初めて。大当たり……会えて光栄……」


 少女の名前は、ソフィー・リリーホワイト・ソルシエールと言うそうです。


「ソルシエールさんですね」

「んーん……違う。それは称号に近い。ソフィーでいい……」

「あらあら、リリーホワイト様まで来ましたか。しかも早速接触を……あまり迷惑をかけてはいけませんよ?」

「ん、久しぶり」


 ルシアンナさんではないですか。

 少なくともルシアンナさんが様付けで呼ぶ程度には、地位がある人なんですね? そして親しげです。

 称号に近いと言うのも気になりますね。ん、ソルシエール? フランス語で魔女でしたか?


「ソフィーさんは魔女ですか?」

「ん、ソルシエールの名を持つ魔女」


 ソルシエール自体に意味がある言い方ですね……これは。


「アナスタシアさん。異人の間で魔女に関しては?」

「恐らくさっぱりの人が大半かと。私はメーガンさんに少し聞きましたが、名前までは……」

「では名に関して説明しましょう」


 教えてくれるそうなので、教えてもらいましょう。断る理由がありません。


「魔女には一応ランク付けがあります。一番下が魔女見習いアプレンティスウィッチですね。試練をクリアして一人前の魔女(ウィッチ)となります。そして薬学は勿論、力も得た者を大魔女(マギサ)と呼び、その中でも極一部の者が不老の魔女(ソルシエール)となります」

「と言うことは……」

「はい。リリーホワイト様は間違いなく天才であり、魔女で知らぬものはいません。最年少でソルシエールへと至った者ですね。ソルシエールとなった時点で成長が止まる……つまり以前のままです」


 ソフィーさんを見ると、乗ってきた箒を持ってふふんと無いむ……いえ、多少ある胸を張っています。

 ちなみに見た目は12ぐらいの少女で、服装は所謂ゴスロリ風のワンピースに大きな帽子です。当たり前のように色は黒。

 うん、魔女ですね。


「今はもう少し成長してから……とか思う。己の感情に素直に突っ走った結果がこのザマ……」


 じとっと私の胸を見ながら言うので、表情の変化はほぼ無いものの、手に取るように分かりますね……。


 とりあえず、魔女の中でも1番凄い人の1人ですか。

 大魔女(マギサ)の時点で戦う力も持っている……と思って良いのでしょうね。


「うちに泊まりますか? それともマルカラント家に行きますか?」

「ん、世話になる。お土産は持ってきた……」

「ではお部屋を用意しておきますが、すぐに来ますか?」

「んーん……後で」

「では私は戻っていますので」

「ん」


 ソフィーさんは教会お泊りですか。

 ルシアンナさんは帰宅。


 私はソフィーさんの持っている箒に興味津々です。

 ここの運営がそう簡単に飛ばせてくれるとは思いませんが、道具があれば人も飛べるんですね?


「ダンジョン産のグラビティコアとエアスラスターを付けた……」


 私の視線に気づいたソフィーさんが見せてくれました。

 ダンジョン産ですか。実に気になりますね。


「前と後ろにエアスラスター……中央にグラビティコアが付いてる。慣れると燃費が悪い以外は中々……」

「慣れないと?」

「グルングルン回った挙げ句にスラスターでぶっ飛ぶ……」


 イメージ的には……鉄棒に跨っている状態で、スラスターにより方向転換ですか。バランスが取れないと回って、更にスラスターでも吹っ飛ぶと。

 流石運営。期待を裏切らない。


「もっと手に入れば安定させられたんだけど、もう慣れたからいい……」

「自分で作れるんですか?」

「重要部品、エアスラスターやグラビティコアさえ手に入れれば良い……」

「なるほど……」

「そして……空で魔力切れになると当然落ちる」

「まあ、うん……」

「よって、余程の魔力がない限り大人しく従魔や召喚体が安定……」


 魔動式なわけですね。

 箒なのでグライダーもできるわけがなく、燃料が無くなった瞬間地面と熱い抱擁を交わすわけですか。デンジャラスですね。

 そしてこの子は相当な魔力量と。


「ところで、冥界の素材を見せて欲しい……」

「今持ってるのは5種類ですね。えっと……」


 持っているのを1つずつ見せていきます。ロータスに水、土とプニカ、そしてネザーライトですね。


「とても良い物。全部欲しい……。特にムーンネザーライト。これのもっと上等な物……」

「私のスキル的にこれぐらいが限界ですからねぇ……」

「ネメセイアは王家のはず。採って貰えばいい……」

「…………そう言えばそうですね。言えば良いのか」


 なんという盲点!

 侍女に言えば担当者に話がいって採ってきてくれそうです。

 少なくとも現状なら、私よりもスキル高いでしょう。ハウジングの鉱脈はともかく、他のは頼みますか……。


「気づかなかった……?」

「ええ……次からそうしましょう」

「宝石のお礼は……異人用リザレクトポーションの開発研究。完成したらレシピをあげる……」


『異人用リザレクトポーションの開発研究』

 生きる伝説、ソフィー・リリーホワイトの興味を惹けた。

 彼女の欲するアイテムを渡し、恩を売っておくと良いかもしれない。

 1.品質A以上のムーンネザーライトを渡す。

 発生条件:蘇生薬の製造法を知っている住人との交渉

 達成報酬:異人用リザレクトポーションのレシピ


 これは……やらざるを得ませんね……。ようやく蘇生薬のお出ましですか。

 とは言え、今すぐは怪しいですか?


「ソフィーさん、しばらくこの町にいます?」

「ん、いる予定」

「教会でしたね。一度冥府に行ってくるので、後程お会いしましょう」

「戻る前に、今持ってたお水売って……」

「この品質で良いのですか?」

「物によって変えるから良い……」


 正直我々からしたら汲んでくるだけなので、大した値段にはならないんですよね。売るのが私だけではないので、値段を決めるのがとても難しい。

 入れ物はあるようなので移し替え、あげてしまいましょう。

 これから採ってくるであろう、品質が高い方はお金貰いましょうかね。


 ゲーム内が夜に切り替わるので、一度ソフィーさんと別れて離宮へ。


 転移して近くにいた侍女に魔粘土で作った水瓶3個と、中身をリセットした湧き出る水筒を渡し、汲んできてもらいます。

 そうしている間に大体傍にいる……多分私の専属が来たので聞いてみましょう。


「ムーンネザーライトの品質A以上が欲しいのですが、手に入りますか?」

「勿論。サイアーがお望みでしたらすぐさまご用意致します」

「では必要なので1つお願いします」

「畏まりました」


 少しすると水がやって来たので品質を確認すると……A+でした。自分で汲むより遥かに高いです。

 湧き出る水筒もA+になっているので、ホクホクですね。


 更にもう少しすると大粒の綺麗な宝石がやって来ました。同じく品質A+なムーンネザーライト。

 これでクエストが先に進みそうですね。ゲーム内が朝になるのは18時でしたか。先にエルツさんの方へ行き、装備を受け取りましょうかね。


 再び組合に足を運び、67万引き出します。全財産残り20万ですか……だいぶ減りましたが、今出している委託を回収すれば増えるでしょう。しばし我慢。

 エルツさんのお店に突撃します。


「……あ、ターシャ。良いところに」

「ラピスさんでしたね。どうしました?」

「装備で悩んでて、アドバイスが欲しくて……」


 ほほぉん? 2陣が来てから1ヶ月は経つので、武器種の悩みではないでしょうし、素材ですかね?


「今青銅なんだけど、鉄に変えるべきかな?」

「今ベースレベルはいくつなんです?」

「今21」

「なら鉄は飛ばして鋼ですね。青銅からなら鋼、銅からなら鉄。20台は武器が変わらないと思っていいので、理想は鋼です。今最新のコバルトハイスは30台が目安なので、それまで鋼で頑張ることになります」

「じゃあ少し奮発して鋼を買った方が良いんだね?」

「トップ組がコバルトハイスにシフトするため、鋼装備の値段が下がっていますから、買い時ですが……もう少し待った方が良いかもしれません」


 鋼とコバルトハイスの装備は値段差が結構あります。

 これはトップ層や1陣向けなのでその分高い……と言うのもありますが、コバルトハイスって5種類の合金なんですよね。原価が上がるので売値も上がると。

 鉄を鋼にして、鋼にクロム、コバルト、モリブデン、バナジウムを混ぜる。鉄を鋼にしてそのまま武器にするより当然値段が上がります。

 アーツの【再現】を使用しても、手間は手間。


「何かあるの?」

「ここ数日、ハルチウムが出てきたんですよね。恐らくコバルトハイスの上なので、鋼が更に下がる可能性があります」

「なるほど……なら待つべきかな……」

「それにしても、両手槌とはパワフルですね」

「いやぁその、叩きつければいいから楽でね。私あまりゲームしたことないから」

「なるほど。片手剣と盾がオーソドックスなスタイルと言われますが、シンプルさで言えば両手槌ですか」


 斬る時によく刃を立てるとか、刃筋を立てるとか言いますが、刀剣系は地味にあるんですよね。

 剣を使うにはそれなりの技術が必要。特に日本刀系は影響が大きめだとか。

 それに比べ槌は鈍器なのでぶん殴ればいい。ただし、鈍器は鈍器でクリーンヒットさせる技術が必要ですが。


 ラピスさんの背負っている両手槌はハンマー……ウォーハンマーですね。

 盾で防ぐとかも考えなくていいため、実にシンプルです。全力でぶん殴るのみ。


「おう、来てたか。できたぞ?」

「67万で良いんですよね?」

「おう」

「委託を回収してお金ができたので、持ってきています」

「中々良いスキル修練になった。マギアイアンも渡すぞ」


 お金と装備をトレードして、装備はそのまま《死霊秘法》の方へ回し、テンプレートの装備を切り替えておきます。

 そして、ハルチウム装備のアーマーを召喚。


「どうです一号。問題はありますか?」

「カタカタ」

「無いようですね」


 アーマーを送還し、骨で召喚します。


「問題は?」

「カタカタ」

「では、【チェンジアームズ】」


 一号が前に出た魔法陣に持っていた片手槌と盾をしまい、両手槌を引き出します。


「そちらで問題は?」

「カクン」

「あるんですか……」


 とは言え一号は喋れないので、モーションで表現してきます。

 持ち上げる動作をしていますね……。


「重い? 重量問題ですか?」

「カクン」

「筋力不足」

「カクン」

「ああ、そういやハルチウムは硬い分、結構重量があるっぽいな?」


 ふむぅ……骨ではなく、ゾンビ素体で召喚し直します。


「問題は?」

「カタカタ」

「ふむ……骨素体の欠点ですか。軽い武器は骨に、重いのはゾンビですかね……」


 ゾンビ素体からスケルトンウルフに切り替え試させます。


「そちらだとどうです?」

「カタカタ」

「問題なし?」

「カクン」

「んー……四足だからでしょうか? 同じ骨でも素体で違いありと……」


 テンプレートを少し弄って保存しておきます。

 青銅の片手槌、ゼルコバの円盾はお役御免ですかね。エルツさんに引き取って貰います。


「ハルチウムよりコバルトハイスの方が軽いか。その辺りでバランス取るかねぇ。合金も試さないとな……じゃあ、作業に戻る」

「ええ、ありがとうございます」

「おう、まいど!」


 エルツさんは工房に引っ込んでいきました。


「67万を払えるのかー。流石1陣?」

「生産もしているので、そちらで稼いでいます。装備は召喚体用なので、数が多いためどうしても値が張るんですよねぇ……」

「召喚系気になってるんだよね……」

「基本的には育成ゲームになりますね。戦闘させたり食事させたり、どう振る舞うかで多少変わるらしいですよ」

「兎とか抱えてる人見るとちょっと羨ましいんだよね」

「骨も……見てると可愛いですよ……」

「その趣味はないかなぁ……」

「可愛くないですか、ミニスケルトン」

「あ、これはちょっと可愛いかも……」

「一応ちゃんとデフォルメされてますからね?」


 まあ、ミニスケルトンはワーカーなので特殊ですけども。



 この後しばらくラピスさんと話して時間を潰しました。

 主に掲示板の使い方を教えておきました。情報収集には便利ですからね。とは言え、鵜呑みにしないようにも言っておきます。


「ではゲーム内が朝になったので、用事を済ませに行きますね」

「うん、ありがとうね」

「いえ、では」


 日が昇って少し経ったのでラピスさんと別れ教会へ向かい、近くのシスターにソフィーさんを呼んでもらいましょう。

 しばらくして、少し眠そうなソフィーさんがトコトコやって来ました。


「おはようございます。ご注文のお品をお届けに参りましたよ」


 そう言って水瓶3つを並べ……た時点でバッチリ目が覚めたようですね。眠そうな目からキラキラお目々に変化しています。

 そしてムーンネザーライトを渡します。


「おぉ……とても良い。流石王家、凄い……」

「そちらで問題ありませんか?」

「ん、完璧。こちらも約束を守る……」


『異人用リザレクトポーションの開発研究』

 生きる伝説、ソフィー・リリーホワイトの興味を惹けた。

 彼女の欲するアイテムを渡し、恩を売っておくと良いかもしれない。

 1.品質A以上のムーンネザーライトを渡す。

 2.異人の死亡場面を彼女に3回見せる。

 発生条件:蘇生薬の製造法を知っている住人との交渉

 達成報酬:異人用リザレクトポーションのレシピ


 目の前で死ねと申すかこの少女は。


好きな要素を住人に詰め込むマン。

主人公みたいなのも良いけど、ソフィーみたいのも良い。

これ以上キャラを増やすな? そりゃ無理な相談だ。なぜなら勝手に増えるからな。HAHAHAHA。


そしてレビューを頂きました。ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
異人の死亡場面を彼女に3回見せる、って凄い条件だな!? ていうか、デスペナのない姫さまが適任?
[気になる点] > ふむぅ……骨ではなく、ゾンビ素体で召喚し直します。 > 「問題は?」 > 「カタカタ」 ゾンビだと首ふりの擬音は「フルフル」とか「ブンブン」とかの方がらしいのでは?(書き分けが面…
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